05. 2013年9月13日 18:03:07
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2013年 9月 12日 13:27 JST マウスの体内で成熟細胞を幹細胞に戻す スペイン研究チームが成功 By GAUTAM NAIK スペインの研究チームが、マウスの体内で成熟細胞を原始的な幹細胞状態に変えることに成功した。このアプローチが洗練されてヒトにも応用できれば、生きた患者の体内で新しい細胞組織を創出し、それによって病気を治療できるようになる可能性がある。 幹細胞をめぐる科学者たちの長年の夢は、実験室で作られた細胞組織を患者に移植することだった。しかし、長年の実験にもかかわらず、このような細胞組織の質は依然として貧弱なままだ。代替アプローチは、実験室ではなく、患者自身の体内で新しい細胞組織を作り出すことだ。 画像を拡大する image それは成功させるのに容易な業ではない。スペイン国立がん研究センターのがん研究者で、今回の論文の主要執筆者マニュエル・セラノ博士は、生きた体内の成熟細胞を「胚に似た細胞(幹細胞)」に転換することは「あらゆることが所与の環境下で前に進もうとしている時に、時を戻すこと」を意味すると言う。同氏は「われわれは(この実験が機能したことに)ショックを受けた」と述べた。 しかし、この研究はフランケンシュタインのような結果も生み出した。このようにして生み出された細胞がさらに進んでマウスの胚に似た細胞を創出したからだ。 ボストン小児病院の幹細胞研究者ジョージ・デーリー博士は「それは本当に衝撃的だ」と述べた。同博士は今回のスペインチームの研究に加わっていない。博士は「それは、体内のあらゆる細胞が新しい細胞組織を再生する潜在力を持っているかもしれないことを意味する」と語った。 スペインチームの研究結果は11日、科学専門誌ネイチャーに掲載された。 科学者たちは過去において、マウスの体内にある一つの成熟細胞を、たとえ控えめな方法であるにせよ、もう一つの細胞に転換することはなんとかできた。食べ物の消化に関与する膵臓の細胞は、インスリンを製造する細胞に転換された。血液の一つの形態は別の形態に転換された。心臓の構造に不可欠な細胞は鼓動する細胞に転換された。 セラノ博士の研究チームは、4つの遺伝子(成熟細胞を幹細胞に転換することで知られる遺伝子)を体内で発現するようにした遺伝子組み替えマウスを使って実験を開始した。4つの遺伝子は通常活動していないが、マウスに抗生物質を投与すると、これら遺伝子は活性化した。 マウスの体内で遺伝子を活性化させると、劇的な変化が現れた。とりわけ細胞の無秩序な塊であるテラトマ(腫瘍の一種)がマウスの胃、腸、膵臓、腎臓の中に生成された。体内の組織のあらゆる形態になれるテラトマは、胚を創るのに失敗した試みの産物だ。しかしテラトマの形成は再プログラミング(初期化=成熟細胞が自己のアイデンティティーを失って、胚に似た幹細胞になる逆行現象)が発生したことを示している。 しかし驚きがあった。マウスで生成された幹細胞をマウスの血液から隔離し、シャーレの中で培養したところ、それらは原始的な全能性細胞の特徴を持っていた。全能性細胞は胚の成長を維持する胚盤細胞および、あらゆる形態の組織を形成できる細胞だ。 印象的なのは、全能性に近い特性は、実際の胚に由来する幹細胞、あるいはシャーレの中で生成された胚に似た幹細胞では見られないことだった。 スペイン研究チームの次の段階は、フランケンシュタインのような結果につながった。全能性に近い幹細胞をマウスの腹腔に移植すると、それらは胚に似た構造を生成した。これは、幹細胞が自己増殖して完全な器官になる潜在力を持っている可能性を示唆している。 セラノ博士は「それらは、(必要条件である)正しい順序で組織された3層構造になっている」と述べた。 こうした実験をそのままヒトに適用するのは危険で非倫理的だ。テラトマは腫瘍の一形態だ。しかし、この技術を人間の恩恵になるように採用できる可能性はあるかもしれない。 一つの考えは、生きた患者の成熟細胞について、時間を戻すが、すべて戻すことはしないというものだ。例えば、インスリンを生成しない膵臓の細胞は、インスリンを生成して糖尿病を治療するのに十分なだけ変化させることができる。 難題は多々ある。デーリー博士によれば、主要な難題は「このプロセスが管理可能なのか、あるいは腫瘍だけを形成するのか」ということだという。 セラノ博士は近くこれを突き止めるつもりだ。同博士はマウスの体内で組織ダメージを引き起こし、その後、成熟細胞を再プログラム化(初期化)する遺伝子を短時間だけ活性化させる。同博士は、正しい量によって活性化プロセスを調整することでテラトマの形成を回避する一方、ダメージを治癒できる新たな細胞を形成できるのではないかと期待している。 何が起こるにしても、セラノ博士のアプローチによって、現代の最も驚くべき生物学上の発見の一つ、つまり哺乳動物の細胞の極端な順応性にもう一つの展開が加わったことになる。 http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323410304579070111224801956.html |