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完全主義者の頭の中
2012年 10月 31日 18:57 JST
クリスティーン・チェン・シルバーズ氏によると完全主義は遺伝だという。几帳面なコンピューター科学者で、中国から米ミネソタ州に移住してきたシルバーズ氏の母親は「より良い仕事に就くために常にクラスを履修していた」そうだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を、ハーバード大学で医学学士号を取得したが「最高の母親でもありたかった」と話すシルバーズ氏は、緊急治療室で常勤ではなく、非常勤として働いていた。3歳、5歳、8歳の子供たちと過ごす時間を増やすためだった。
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アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は、コンピューター内部の美しさにこだわった時期もあった
現在42歳のシルバーズさんは米マサチューセッツ州マーシュフィールドで在宅勤務をしている。同氏のMITの博士号論文を基にモバイルヘルスモニターを開発している新興企業で最高医療責任者を務めている。シルバーズ氏は「ワーク・ライフ・バランスの仕事の部分をするために」夜中に起きることがよくある。それでも家の片づけなど、できていないことすべてに苛立ちを覚えてしまうという。「やるべきことが多すぎるが、どれに関してもずさんな仕事はしたくない」とシルバーズ氏は話す。
そうした完全主義者の兆候は、5歳の息子にもすでに現れている。「絵を描くのが大好きなのだが、思った通りの線が描けないと泣いて仕方がない」という。
このような完全主義はどこからくるのだろうか。専門家たちはだいぶ以前から、やり遂げることを強調しすぎたり、特定の目標に達するという条件を満たさないと愛情を傾けない親たちを責めてきた。ところが最近の研究では、両親から受け継がれる遺伝の役割の方がずっと大きいかもしれないということが示唆されている。
ミシガン州立大学ツイン・レジストリー(双生児登録)の研究者たちは、12歳から22歳までの女性の双子を対象に完全主義をいろいろな側面から調査してきた。双子には遺伝子を100%共有する一卵性双生児と50%共有する二卵性双生児があるが、登録されている各双子たちは同じようにしつけられている。今年1月に医学誌「Depression and Anxiety(落ち込みと不安)」に掲載された292組の双子を対象とした研究では、完全主義と不安の測定値において、二卵性双生児よりも一卵性双生児の方がずっと似通っていた。これは育てられた環境よりも遺伝子の影響の方が強いことを示唆している。
今月出版された摂食障害に関する医学誌「International Journal of Eating Disorders」に掲載された340組の双子を対象とした研究では、モデルや有名人のからだを偶像視する度合いにおいて、二卵性双生児よりも一卵性双生児の方が似通っていた。研究者たちが体重差でデータを調整した後でも、身体のイメージの問題でより似通っているのは、しつけられ方だけが同じな二卵性双生児ではなく、一卵性双生児だった。
両方の研究で、双子の態度により大きな影響を与えたのは、共有した家庭環境ではなく、違った活動をする、違うグループの友達と付き合うといった双子が共有しなかった環境の方だった。ミシガン州立大学の心理学の助教授で、不安に関する研究のリーダーを務めたジェイソン・モーザー氏は、要するに完全主義は「遺伝子的なリスク要因と家庭外でのユニークな経験に起因するところが大きいようだ」と話す。
科学者たちが完全主義にかかわっている特異遺伝子を特定するのはまだ先になりそうだが「このことは、われわれがもっと理解しなければならない重要な生物学的要素があることを示している」とモーザー氏は述べた。
完全主義は心理状態ではなく、正式な定義すらない。それを何かを成し遂げるために頑張ることや細部に細心の注意を払うことに誇りを持つことだと考える人もいる。しかし、人々があり得ないほど高い基準を設け、そこに達することができないと自分は役立たずだなどと思ってしまうと、完全主義は有害になり得ると専門家たちは指摘する。
この種の機能不全に陥っている完全主義は往々にして落胆、自己不信、消耗などを招き、うつ病、不安神経症、強迫神経症、摂食障害、夫婦間の問題、仕事中毒、先送り、不眠症、自殺といった多くの精神衛生上の問題の核となっている。
米ミネソタ州ミネアポリス在住の心理学者で『Moving Past Perfect』などの著者でもあるトム・グリーンスポン氏はこう指摘する。「成功している完全主義者は完全主義者だから成功したのではなく、完全主義者であるにもかかわらず成功したということがわれわれの研究でわかった。何をしているかよりも、以下に上手くしているかに重きを置けば、つまずくことになる」
グリーンスポン氏や他の心理学者たちは完全主義がしつけで身に付くと今も信じている。「誰でもいつの日にか自分は十分に期待に添えていないというメッセージを受け取ることになる。それは必ずしも両親が意図していることではないのだが」とグリーンスポン氏は説明する。(たとえば、800点満点の大学進学適性試験SATで780点を取った子に母親が「残りの20点はどうしたの」と聞いてしまうといった場面だ)
遺伝子は完全主義の範囲や傾向を設定するかもしれないが、環境や経験も大いに影響してくると考える専門家もいる。米オハイオ州クリーブランドにあるケース・ウエスタン・リザーブ大学の心理学者、エイミー・プシェボスキ氏によると、わずか3歳で、靴のひもの長さが違うことに取り乱してしまう子供がいるという。同氏は、こうした早期の傾向を両親の手助けで緩和させることも可能だが「まずは両親が自らの不安に対処しなければならないこともある」と指摘する。
プシェボスキ氏が大人にも子供にも使っている方法の1つに疑似体験療法がある。「あえて小さな間違いをして、それを直さないようにする」たとえば靴ひもを長さがそろわないように結んだり、コンマやピリオド抜きで文章を書いたりする。「これを最初から楽しめる人はいないが、小さな間違いがプロジェクト全体を台無しにすることはないということが学べる」という。自らも完全主義を克服したというプシェボスキ氏はかぎ針でドロップスティッチだらけの毛布を編んでいるという。
認知行動療法からのその他のテクニックには、過度に念入りになっていることに気付くことを学ぶ、良い点と悪い点を天秤にかける、優先順位を付けることを学ぶなどがある。専門職や経営者の女性をウェブサイトTooMuchonHerPlate.comで指導している心理学者、メリッサ・マクレアリー氏は次のように助言する。「うまくいかないときは、否定的思考に陥らずに好奇心を養うようにする。このことから何が学べるかと自問すると良い」
完全主義を克服した人のなかには、戦略を自分で考案している人もいる。米サウスカロライナ州チャールストン在住のテクニカルライター兼編集者のエリザベス・ラーブ氏はプロジェクトに取り組む際にタイマーを使っている。「プロジェクトごとに妥当な作業時間を決め、時間が来たら次に進むようにする」と同氏は話す。その結果、「より多くの仕事をこなせるようになり、1語ずつ厳密にチェックしているときよりも質がずっと向上した」という。
記者: Melinda Beck
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