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遺伝子変異、高齢の父親が子に伝える傾向強い−自閉症などのリスクに
2012年 8月 23日 10:40 JST
22日に科学誌ネイチャーに掲載された論文によると、比較的高齢の父親は、若い父親と比べると、新規の遺伝子変異を子どもにより多く伝えることが分かった。このため、自閉症、統合失調症、その他の病気の発症リスクが高まるという。
Christopher Lund
カリ・ステファンソン博士
母親が高齢であることがダウン症のような染色体異常の主な要因とされている。その一方で、受胎時の母親ではなく父親の年齢が新規の遺伝子変異を子どもに伝える主な要因であることを示唆する研究結果が最近相次いで出ており、今回の研究もその流れに沿ったものだ。
今回の研究は、自閉症ないし統合失調症と診断された子どもを持つアイスランドの78家族を対象に実施された。
論文の主執筆者で、アイスランドのデコード・ジェネティクス社の最高経営責任者(CEO)を務めるカリ・ステファンソン博士は、「父親の平均年齢の上昇が、われわれの社会で自閉症が増えているようにみえる現状にある程度寄与している可能性が非常に高い」と述べた。
アイスランドやその他の国を対象にしたいくつかの研究で、父親になる年齢が上がるとともに、自閉症や統合失調症の発症リスクが著しく高まることが示されている。アイスランドで父親になる人の平均年齢は現在33歳で上昇傾向にある。それは多くの西側諸国でも同様だ。
今回の研究では、新規の遺伝子変異と呼ばれる遺伝子コードの自発的な変化に注目した。こういったエラーは親から子へと受け継がれるのではなく、卵子や精子の細胞で起きるか受精直後に起きる。この場合、子どもは、どの細胞にも遺伝子変異を保因する。しかもそれは遺伝的疾患の家族歴なしに発生する。
こういった遺伝子的なスペリングエラーは精子の方が多い。精子は卵子と違って常に作られており、より多くの細胞分裂を経るからだ。そして高齢の男性の精子はより多くのエラーを保因する。
こういったエラー、つまり変異の大半は健康にほとんど影響をもたらさない公算が大きい。実際、有害で病気の原因となるのはごくわずかだ。
一方、新規の遺伝子変異は時に有益にもなり得る。選択肢を増やし、多様性をもたらすこういった変異は、人類の進化の根幹となっている。
前出のステファンソン博士は、「高齢の父親は子どもにとっては危険だが、種(しゅ)の未来にとっては有益である可能性がある」と指摘する。
高齢の父親と新規の遺伝子変異の増加について同じような関連を指摘した過去の研究は、ゲノム(全遺伝情報)のわずか1%程度の分析に基づいていた。米エール大学の遺伝学者スティーブン・サンダース氏は、今回の研究がこれまでの研究結果を裏付けていると指摘、「対象を残りの99%の遺伝情報に拡大する」ものだと述べた。同氏は今回の研究に関わっていない。
有害な新規のエラーは、とりわけ子どもの脳機能に影響をもたらす可能性がある。それはおそらく、脳に発現する遺伝子は他のどの臓器に発現する遺伝子よりも多いからだ。
数年前に、40歳を超えた男性が自閉症児の父親になる確率が、30歳未満の男性よりも約6倍高いという研究が発表された。また、高齢の父親の子どもは統合失調症、双極性障害、てんかんの発症リスクが高いことも示されている。2009年の研究では、高齢の父親と、子どもの比較的低い知能検査結果との関連性が示されている。
今回のネイチャー論文は、父親の年齢が子どもに表れる新規の遺伝子変異の極めて大きな部分を説明することを示した。
また、20歳の父親が平均で25のエラーを子どもに伝えるのに対し、40歳の父親はおよそ65のエラーを伝えることが分かった。つまり、父親の年齢が1歳上がるごとに子どもに伝わるエラーが平均で2つ増えることになる。
一方、母親が子どもに伝えるエラーはおよそ14と一定で、年齢による差がなかった。
このような包括的な遺伝的分析はわずか数年前でも難しかっただろう。しかし、現在はヒトの全ゲノム解析がより容易になったため、科学者は遺伝の仕組みのかなりの詳細まで調べられる。
ステファンソン博士のチームはアイスランドの78家族、親子で合計219人のゲノムを解析した。子どものうち44人は自閉症スペクトラム障害、21人は統合失調症と診断されていた。同チームは比較の目的で、アイスランド人1859人のゲノム解析も行った。
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記者: Gautam Naik
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