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浜岡原発は東海地震の震源域の真上にあるとされる。その東海地震は果たして予知できるのか?
http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/723.html
投稿者 taked4700 日時 2011 年 1 月 27 日 23:44:15: 9XFNe/BiX575U
 

鹿児島県と宮崎県の県境にある新燃岳が50余年ぶりに噴火した。桜島は小規模な爆発が続いている。太平洋戦争後長く続いてきた地震の静穏期が終わり、地震の頻発期、活動期に入っていると言っていいだろう。

浜岡原発のある東海地震の震源域。東海地震が果たして本当に予知できるのか、それを簡単に検討してみよう。

1.東海地震は日本で起こる大規模で唯一予知できるとされている。その理由は太平洋戦争終了の前後に起こった南海地震や東南海地震の時、東海地震の震源域で大きな地殻変動が観測されたからだ。このことについては「現実的な地震予知の可能性については、茂木清夫(東京大学名誉教授、前地震予知連絡会会長)が指摘した。すなわち、1944年の東南海地震の直前に静岡県掛川市で実施されていた水準測量で、地震の直前に異常な変動が観測されたというものである。これはその後、『東海地震は予知可能』との国の見解や世論へと発展した。一方で鷺谷威(名古屋大学教授)など、その水準測量データや解釈に疑問を持つ科学者も多い。」(ウィキペディアの「地震予知」からの引用:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%BA%88%E7%9F%A5

2.しかし、1で述べた地殻変動を観測した時は東海地震は起こっていないのだ。東海地震が起こらなかったときの地殻変動を観測して、東海地震の予知ができると言っているわけで、これ自体が矛盾している。

3.巨大地震の時には事前にスロースリップが起こるとされる。現在の観測体制はかなりのものがこれを捉えるためのものだ。(ウィキペディアの「東海地震に関連する情報」の「観測体制と予知の根拠 」を参照のこと:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%81%AB%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%81%99%E3%82%8B%E6%83%85%E5%A0%B1#.E8.A6.B3.E6.B8.AC.E4.BD.93.E5.88.B6.E3.81.A8.E4.BA.88.E7.9F.A5.E3.81.AE.E6.A0.B9.E6.8B.A0)しかし、スロースリップによって地震予知が成功した例は今まで世界中で一例もない。日本の東海地震予知が最初の試みなのだ。更に、もし、他の場所で先にスロースリップでの予知に成功しても、地下構造がどこも皆異なるので、それがそのまま東海地震の予知が成功すると言う証しにもならない。つまり、スロースリップが地震の本震の前に起こったとしても、一つ一つの地震で起こり方が異なり、どの程度のスリップが本震の前触れかはなかなか決めらないのだ。

4.南海地震、東南海地震、東海地震の3つを日本におけるプレート境界型地震として、これらが超巨大地震になるとされる。そして、今までの記録を見ると、基本的に東側から起こってきているのだ。つまり、これらの地震がほぼ同時期に起こるとき、歴史は、東海地震や東南海地震が先に起こり、その後南海地震が起こると言う順序になることを示している。この意味でも、東海地震は突然起こる巨大地震ということになる。

5.また、緊急地震予知情報のP波を観測して地震に備えるという方式も、東海地震と浜岡原発の関係では無理なのだ。それは、浜岡原発が東海地震の震源域の真上にあり、しかも、東海地震は震源が10kmから20kmほどとされるかなり浅い地震だからだ。これは、P波とS波の時間差が少ないことを意味していて、その時間差があまりに少ないから緊急停止ができないと言うことだけではない。一定以上の大きさの地震でかつ震源深さがあまりない時、震源の真上にある構造物はP波、つまり縦波(衝撃波ともいう)の直撃を受け、構造物がいっぺんに破壊されてしまう可能性が強いのだ。このことについては、以前投稿した記事を参照してほしい。それを以下に引用する。


★阿修羅♪ > 原発・フッ素6 > 608.html  

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静岡沖地震と浜岡原発、原発は縦波に耐えられるか!?
http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/608.html
投稿者 taked4700 日時 2010 年 8 月 01 日 02:53:24: 9XFNe/BiX575U


静岡沖地震

 昨年8月11日午前5時ごろに静岡沖地震が起きている。M6.5震源深さ23kmの中規模地震だが、震度6弱の揺れを御前崎市などで観測し、浜岡原発も自動停止した。浜岡原発には合計5基の原発があり、そのうちの1号機、2号機は廃止が決まっている。3号機は定期点検中で、稼働中の4号機と5号機が自動停止した。原子炉のすぐ近くの地盤が20cmほど沈下したり、250本ある制御棒の駆動装置が約30本分故障するなどの被害が出ていた。また、5号機で基準設計で想定していた揺れよりも大きな揺れを観測した結果、一年後の今年もまだ運転再開が出来ていない。

 浜岡原発は東海地震の震源域のほぼ真上にあると言われている。また、東海地震の震源深さも10kmから20kmぐらいであるはずで、そうであれば、地震の縦波が原発を直接襲う世界で初めての例になるはずだ。縦波とは粗密波のことで、日本のような地盤が軟らかいところでは比較的減衰しやすい。また、大きな地震が起こるところに原発を立てる事例も世界中では日本や台湾以外ほとんどないし、更に、大きな地震が起こること自体、50年から数百年と言う間隔だから、今まで、原発の直近で強い縦波が起こるような大きさの地震が発生したことがない。

 浜岡原発は、東海地震の震源域の真上にあるとされ、しかも、震源からの距離が10kmから20kmほどしかないようなのだ。また、基本的に原発は岩盤の上に直接建てられるから、縦波が減衰しないで原発の建物を直撃することになる。
Googleで検索してみると、「地震 "縦波の加速度" に一致する情報は見つかりませんでした」と出るから、そもそも、縦波の加速度自体を計測してはいない様子だ。それだけ、縦波はあまり影響を与えない事例が多かったのだ。つまり、被害をこうむる建物と震源が離れていて、その間に軟らかい地層があるため縦波そのものが減衰してしまっていたのだろう。

 ただ、縦波は衝撃波、粗密波と言われる通り、ハンマーで叩くのと同じような効果を持っている。だから、ヘタをしたら、原発のコンクリートでできた基礎自体が壊れてしまったり、原子炉を支えているスカートの部分が崩壊してしまうなど、原子炉自体の存続が危険にさらされるような被害が出るはずだ。
地震加速度はガルと言う単位で表すことが多い。980ガルはちょうど重力加速度と同じだ。今の原発は縦方向の揺れは横方向の揺れのほぼ二分の一の耐震強度を持つと言われている。浜岡原発は1000ガルの揺れに耐えることが出来るとされているので、縦揺れについては500ガルまでは大丈夫だと言うことのはずだ。しかし、過去の大地震の記録では、人間の体がまるでゴムまりのように跳ね上げられたとか、田んぼの水が一面そのまま1mの高さに跳ね上がったと言うようなことが伝えられている。つまり、優に980ガルを超える縦方向の加速度があったことになる。
 
 更に、こういった揺れは現実には表面波の影響であったことが多いはずで、縦波の影響が観測されてしかも記録として残されている可能性は限りなく少ないはずなのだ。なぜなら、昔は縦波の影響を受けるような建物自体が少なかったはずだからだ。このことは長周期地震動の影響がこの10年ほどでやっと認識されだしたのと同じだ。

 静岡沖地震は直接東海地震と結びつくものではないとされている。しかし、元々、東海地震の予知研究自体が、1945年の南海地震、東南海地震の時に東海地方で異常な地面の隆起があったことに基づいている。つまり、本当は起こらなかった地震の前兆を使って、地震の予知をやろうとしているのだ。既に前回の東海地震から150年以上が経過し、いつ起こってもおかしくはないと言われている東海地震。その揺れ、特に縦波に原発が、浜岡原発が耐えられるかどうか、まさに日本はその世界で初めての実験台になろうとしている。

*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<83>>
 

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コメント

01. taked4700 2010年8月01日 02:58:16: 9XFNe/BiX575U: tC8f2oPwcc
更に、縦波はP波だから、最初に到達する揺れであり、その後、横波、つまり、S波が建物を襲うことになる。普通の地震なら、P波はほとんど被害を出さないが、浜岡原発は震源域の真上にあるので、P波の影響をまともに受け、かなりの損害を出したところにS波が到来し、さらなる被害を及ぼすという形になる。

02. 2010年8月03日 06:44:43: E1yZCrtQpI
被告の中電が結審延期を申し出たそうですね。
最新鋭の5号機だけの異常な揺れ。
東海地震が来る前に浜岡原発を閉鎖を求める知事あての団体署名、35の市町村のうち28市町村が署名されています。早く止めることが日本を救う道だと信じています。

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以上引用終わり。

結論として、東海地震の予知は限りなく難しく、それが可能であるとする科学的な裏付けも実際にはほとんどないと言うことなのだ。

だから、だからこそ、浜岡原発は早く、一刻も早く、廃止するべきだ。
 

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コメント
 
01. taked4700 2011年1月29日 11:03:16: 9XFNe/BiX575U : DKpxXrpBxE
新燃岳の爆発的噴火は50年ぶりというよりも約300年ぶりのものと言われている。
1716年から1717年の享保噴火以来のものだと言うのだ。そして、東海、東南海、南海地震の連動型超巨大地震が前回起こったのは1707年だ。つまり、新燃岳の噴火がこのまま数年間継続し、その間に超巨大地震が起こる可能性がある。もし、東海地震が起これば、ほぼ確実に浜岡原発での原発震災が起こる。

02. 2011年1月29日 13:05:52: lmE9ADqfvM
コメントを投稿してあるだが、表示されない。

03. taked4700 2011年1月29日 14:44:13: 9XFNe/BiX575U : lmE9ADqfvM
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%B5%B7%E9%9C%87/
海震(かいしん) [ 日本大百科全書(小学館) ]
海上にて航行中あるいは操業中の船上で感じる地震。震源から海底下の岩石を伝わってきた地震波が海底面で屈折して、鉛直に近い角度で縦波として上ってくるものなので、船内の人々には、波による揺れとはまったく違う非常に特別な振動として感じられる。地震が大きいほど、また震源が浅いほど強く感じられる。震源が青森県沖の海底にあった1968年(昭和43)の十勝沖(とかちおき)地震(マグニチュード7.9)のときには、震源の近くを航行中だった多くの船では、船のエンジンの故障(スクリューを回している太いプロペラシャフトの折損)による振動と錯覚したといわれる。海震によって船がばらばらになった例もあり、船の一部が破損した例は、日本でも外国でも古くからある。

[ 執筆者:島村英紀 ]


04. taked4700 2011年1月29日 14:46:55: 9XFNe/BiX575U : lmE9ADqfvM
http://www.weblio.jp/content/%E6%B5%B7%E9%9C%87

海の事典


海震(かいしん)sea shock, seaquake
船舶が海上で感じる地震波動を海震という。海底の地震動が音波として海中を伝わってきたもので、短周期の上下動が卓越する。激しいときには船に被害を生じることがあるが、海震が感じられるのは、震源地の直上か、非常に近い海域に限られる。
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ウィキペディア


海震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/03/06 14:01 UTC 版)
海震(かいしん、英: seaquake)とは、水中・水上において観測される地震動のこと。海上の船舶において観測される事は珍しくない。

概要
地震動は、各種の地震波によって引き起こされる。このうち、S波や表面波は固体中しか伝播しないために、水中・水上では観測されない。P波は疎密波であるために、液体中も伝播できる。このため、地中で発生した地震波(P波)は、水中を伝播し、船舶などにおいて観測されることとなる。

船舶においては、それなりの衝撃を感じ、船が破壊されるケースもある。また、陸上の震度階級にならい、海震階級も作られている。


05. taked4700 2011年1月29日 15:03:25: 9XFNe/BiX575U : lmE9ADqfvM
http://blog.livedoor.jp/faithischoice/archives/50825815.html
上のURLにカヤックに乗っていて海震に会った体験談が載っている。この時の地震はhttp://tenki.jp/earthquake/detail-1453.htmlであり、M6.8、震源深さは約10km

06. taked4700 2011年1月29日 15:10:33: 9XFNe/BiX575U : lmE9ADqfvM
http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/13789/1/jib0010024.pdf
でかなり前に実際に船で観測された海震の記録を読める。

07. taked4700 2011年1月29日 15:16:13: 9XFNe/BiX575U : lmE9ADqfvM
上の記事の最後に記載されている海震は

昭和三陸地震(しょうわさんりくじしん)は、1933年(昭和8年)3月3日午前2時30分48秒に、岩手県釜石市東方沖約200km(北緯39度7.7分、東経144度7分)を震源として発生した地震。M8.1。

によるものらしい。


08. taked4700 2011年1月29日 15:25:17: 9XFNe/BiX575U : lmE9ADqfvM
http://www.ailab7.com/lib_015.html


ライブラリー

15.地震は爆発現象に違いないと判断する理由:海震の説明

画像をクリックすると
拡大します

[解説]
 「海震」というのは、船の上で感じる地震のことです。船乗りの証言では、航海中に海図にないような岩礁に衝突したのだろうか、あるいは潜水艦にでも衝突したのだろうかと云うような激しい衝撃をうけるのだそうです。しかし、少し離れた近くを走っている仲間の船には何も感じないと云う不思議なことがあるのだそうです。これは、地震波が屈折率の違いによって震源の真上に集中するので衝撃を強く感じるのです。津波が浅瀬に集中するのと同じ理屈の屈折現象です。
チリー沖の地震津波が、大陸棚と直角方向にしか伝播しないというのとは波動の進行が逆の現象です。チリー沖の陸棚と日本海溝の陸棚が平行になっていることが、地球儀をみるとよくわかりますが、それゆえに太平洋の向こう側の地震津波が日本沿岸を襲うのです。少し脱線しましたが、地震波も衝撃波だから、震源の真上を航行する船にしか衝撃を与えないのです。この「海震」という現象を見ても、地震がズルズルと滑って起こるような現象ではなく、爆発現象であることは間違いないと思います。

なお、地震の主要動であるS波が海中へ抜けることはありません。S波は液体中を伝播することはないからです。したがって漁師は沖合いで漁をしていると大地震に気がつかず、津波にも気がつきません。ところが港に帰ってから悲惨な状況に気付きビックリします。津(湊、港)を襲う波という意味が津波の語源です。

マントルが液体であるとすれば、P波は地球の真裏へしか伝播せず、S波はまったくマントル中を伝播しません。殆どの地震は別の仕組み(地殻の二重構造)で遠方にまで伝播しているのだと思います。(ライブラリー35 ニューオフィス8参照)
(石田)(2006・2・24内容を修正しました。)

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09. 2011年1月30日 20:55:18: CYvCpsKwWs
噴火のことで50年ぶりという話が良く出ますが、50年とは人間の感覚だと大きいものの、地球にとっては一瞬なのです。安政東海・南海地震も地球にとっては一瞬の前のことです。
この30年で、インターネット、ロボットなど、たくさんの夢が実現していますが、地震予知、高速増殖炉、核融合、核廃棄物処理など、人間の手では出来ないことが分かったものもたくさんあるのです。それを忘れてはいけません。

10. taked4700 2011年1月31日 01:57:54: 9XFNe/BiX575U : tZolgGLkMt
09さん、

50年ぶりというのは間違いです。マグマ組成は享保噴火と似ていて、そうであればほぼ300年ぶりです。そして、その時期には東海、東南海、南海同時地震が起こっている。

そして、原発も人間には無理な技術であると考える方が正しいと思いますね。


11. taked4700 2011年1月31日 02:03:36: 9XFNe/BiX575U : tZolgGLkMt
なお、鹿児島県にある川内原発の反対運動は温排水の問題を取り上げている。しかし、川内原発の近くでは大きな地震が1997年に起こっていて、地殻のボーリングサンプルのすり替えも明らかになっている。つまり、原発反対運動自体が、本来の意味での反対をしていない。バスが崖に向かって走っているのに、カーラジオの音がうるさいと言っているようなものだ。

12. taked4700 2011年2月01日 14:51:03: 9XFNe/BiX575U : VhAABKfWlI
http://daysjapanblog.up.seesaa.net/image/201101E6B59CE5B2A1E789B9E99B86E8A68BE9968BE3818D_E8BBBD.jpg

上のアドレスにDAYSJAPANの今年1月号の浜岡原発のページ紹介があります。

http://www.daysjapan.net/


13. taked4700 2011年2月02日 13:52:07: 9XFNe/BiX575U : E5p3AOO9mg
http://wwwsoc.nii.ac.jp/kazan/J/QA/topic/topic39.html

火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

噴火現象と噴出物・岩石・鉱物

空振・衝撃波

Question #37
Q 空震によって建物の窓が割れることがあるということを火山に関する書籍で読みましたが、実際にはどの程度の破壊力があるのでしょうか。 (9/2/97)
野元洋一:会社員:29歳

A
 桜島や浅間山などのように火山活動が爆発的な場合、火口から衝撃波が発生 し、周囲の空気中を伝わって行きます。火口から離れるに従い衝撃波は減衰 し、音波に変化します。火山学では、これら空気中を伝わる圧力波のことを空 振(空気振動)とよんでいます。伝わる過程において周囲にある家屋の窓ガラ スなどを破壊することがあります。圧力波の有する破壊力は、通常、波の衝撃 圧によって評価されます。各地点における波の衝撃圧は、爆発エネルギー量と 火口からの距離によって大ざっぱには定まります。火山の場合、どれくらいの 圧力条件下で窓ガラスが破損するかの正確な調査はありませんが、人工爆発に よる実験結果を参考にすると、0.01気圧位の過剰な圧力が加わると窓ガラスは 破損するものと考えられます。しかし実際には、ガラスのサイズ、歪みぐわ い、受圧方向なども破損か否かを左右しており、あまり簡単な問題ではないよ うです。もちろん、同一地点であっても爆発エネルギー量がもっと大きい場合 、あるいは同一エネルギー量であってももっと火口に近い場合、衝撃圧はもっ と大きくなり、十分に家屋そのものや樹木を根こそぎにしたりするようになり ます。(9/2/97)
谷口宏充(東北大学・東北アジア研究センター)

Question #38
Q 空震について再び質問なんですが、回答していただいた文章の中に各地点での衝撃圧は爆発エネルギーと火口からの距離によって大ざっぱに定まるとされているのですが、実際にはどのような関係があるのか具体的に教えていただけないでしょうか。 (9/3/97)
野元洋一:会社員:29

A
 爆発エネルギー量:Q(kgTNT)、火口からの実距離:R(m)、火口からのス ケール化距離:λ(m/kgTNT**1/3)とすると、cube-rootscaling則により、
  λ≒R/Q**1/3 が成立します。
 スケール化距離と衝撃圧(ΔP、bar)との間にはTNT爆発実験にもとづき、例え ば次のような実験式が与えられています。
  ΔP=6.91×λ**-1.69 ...  (ただし、ΔP≒0.2〜0.7、λ≒4〜8の間で成立する) (9/3/97)
谷口宏充(東北大・東北アジア研究センター)

Question #152
Q 空震とは、どのようなものを言うのでしょうか。震度計と空震計は、どうちがうのでしょうか。また空震と噴火の関係(火山性微動と火山性地震の関係も)を教えてください。 (10/27/98)
Taka:公務員:33

A
 空震(空振)とは,火山の爆発や火砕流の発生により火口周辺の空気が 動かされ,その振動が遠くまで伝わる現象です.噴火の衝撃で窓ガラスが 震えたりするのも,この空振が発生するからです.空振計のセンサーは基 本的にはマイクロフォンです.風が強いとその振動が記録されます.

 一方,震度は,地震によって地面が揺れる強さを階級で示したもので す.この階級(震度2とか震度3とか)は,かつては気象台職員などが各 自の体感で決めていました.が,最近では,地面が揺れる際の加速度を計 測し,それを基に客観的に震度を決める計器が用いられるようになりまし た.これが震度計です.加速度や地面の変位そのものを測るのは,地震計 と呼ばれています.


 まとめると,空気の振動を測るのが空振計,地面の振動を測るのが地震 計,地震計のデータをもとに震度を決めるのが震度計,ということになり ます.それぞれの機械は,名前は似ていますが,測ろうとする振動現象の 種類や設置する目的が異なっているんです.設置する場所なども,当然な がら違ってきます.


 さて,空振に戻ります.火山の噴火は,地下の物質を空気中に放出する 現象ですから,結果として周囲の空気を乱すことになります.爆発的な噴 火が起きれば,衝撃的な空気振動が生じます(ボンという音を想像してく ださい).一般的には,爆発が大きければ空振も大きくなります.です が,噴火現象は単純ではないので,厳密な比例関係は成り立ちませんが. また,噴煙柱が立ち登るような噴火では,空振は衝撃的なものではなく, 連続的な振動になります(ゴーという音を想像してください).


 火山性地震,火山性微動は,いずれも火山の活動に関連した地面の振動 です.これまでの話に関連させると,空振計ではなく地震計で記録される 振動ということになります.地震と微動の区別は,主に振動の継続時間に よってなされることになります.火山性地震は単発的な振動で,地下でな んらかの破壊現象が起きて発生すると考えられています.一方火山性微動 は,振動が数十秒から数分,時には何時間も継続する現象で,地下のマグ マやガス,熱水といった流体の移動が原因ではないかと考えられていま す.


 以上,似たような単語が並んでわかりにくいかもしれませんが,ご理解 いただけましたでしょうか.ご不明な点があれば,またご質問ください. また今後は,できれば質問だけでなく,その背景(どうして知りたくなっ たのか)を少しでも書いていただけると嬉しいです.こちらもお答えしや すいし,応答ももっと楽しくなると思います. (10/28/98)

西村裕一(北海道大学・理・有珠火山観測所)

Question #370
Q はじめて質問します。よろしくお願いします。
火山噴出物についてなのですが、火山からどれくらい離れた位置では、どれくらいの大きさの噴出物が、どれくらいの速度で被弾する。といった想定データというのは何かありますか。(もちろんケースバイケースなのでしょうが、、、、、、)
私は建築設計をしており、浅間山の南東約10キロの位置(中軽井沢付近)に病院の計画をしております。病院という建物の性格上、ある程度の噴火時にも機能を確保しなければならないため、ガラス窓等に被弾対策を施さなければならないと考えています。
とはいうものの、どれくらいのものが飛んでくるのか想定しないと対策もできないので、何かヒントがあればお知らせ下さい。
「ここに聞きなさい」とか「これを読みなさい」といったお答えでもかまいません。
よろしくお願いします。
(01/04/00)

漆間 一浩:建築設計:31

A
 実際のデータに基づいて主に噴石の大きさや種類についてお答えします.1900〜60 年頃の浅間山は頻繁に爆発を繰り返しましたが,1935年4月20日の爆発の調査では, 火口から3km以内で50cm-1m以上の岩塊(見かけの密度が最大2500kg/m3程度の緻密な 安山岩)が多数発見されました.これらの17個について落下地点,落下角,射出角な どに基づいた落下速度が133-198m/s (空気抵抗を考慮した場合) と見積もられていま す.しかし火山灰が降下した東南東側では,火口から15-20kmの距離にも10cm程度の 岩塊が発見されました.径が小さい噴石は空気抵抗や風の影響を受けるので挙動の詳 細を決めるには難しい点が多くあります.1973年の爆発では,火口の東南東方向で 降ってきた石の最大直径が,峯の茶屋 (火口距離4.4km) から塩壷付近(7.5km)の範 囲で20cm,横川3cm (20km),安中1cm (35km)でした.この時は,軽井沢町で噴石の落 下によりフロントガラスが割れた車が5台あった他,屋根・壁の破損,電話線・電灯 線の断線が起きました.噴石の温度が高い場合には,山火事や家屋の火災(1920年代 には東北東6kmの分去茶屋が焼失)なども起きます(以上,水上, 1940; 村井, 1974 等による).
 一方,天明3年クラスの噴火の場合はさらに大きな被害が予想されますが,1900年 代の活動とは事情が少し異なります.それは過去の大噴火の地層を調べると発泡のよ い軽石(見かけの密度が500-1200kg/m3程度)の層が出てくるので,次の噴火でも軽 石が降ってくる可能性が高いためです.現在,塩壷温泉付近(南東7.5km)では軽石 の最大直径が約6cmの天明3年の軽石層 (厚さ12cm) が認められます.天明の時は噴煙 が上空の風で東南東方向へ強く流されたので塩壷付近より北方で大量の軽石が降りま したが(現在,万山望付近で厚さ1.7m以上),古文書によると少量の軽石や石が中軽 井沢にも降ったようです.中軽井沢駅の北方800m付近では平安時代や5世紀の軽石層 が見つかるので,天明以前の噴火でも同じように軽石が降ったことがわかります.こ のような軽石層には平均的な軽石より桁外れに大きい軽石が時々入っています.天明 の場合は,南東4kmの大窪沢付近で60cm位,東南東13kmの熊野神社付近でも10cm位の 大きい軽石が見つかります.噴火当時の軽井沢宿での焼石による焼失家屋は約50軒と みられています.軽石は衝突の衝撃でそれ自体が割れやすいこともあり,衝突による 破壊力は大きくないと思われますが,大きい軽石は火災の原因になる可能性がありま す. (1/6/00)
安井真也(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


 火口から10 km も離れている中軽井沢では,落下角はほとんど垂直に近いと推定さ れます(風が強ければその分だけ斜めに落下しますが).したがって窓ガラスは余り 問題ではなく,屋根の強度が問題になります.通常の強度で充分であるとは思います が.屋根の強度の問題は,降下火砕物物の量に直接関係し,有珠火山1977 年噴火の 例では,わずか40cm 軽石が堆積しただけで,ラーメン構造の陸屋根が変形しまし た.しかし屋根が破壊する前に人々は避難すると思います.
 一方,衝撃波(空振)による窓ガラスの破壊がかなりの被害を与える可能性があり ます(国土庁,1992参照).中軽井沢ではかなりの被害実績がありますが,私の個人 的データ(未発表)によると,破損は複雑な要素によって決定されるようです.コン クリートに直接固定されたガラスが最も破損しやすいようです.鬼押し出し園駐車場 における被害実績が参考になります.
 天明クラスでも空振が重要だと思います.建物が振動して,重しの石が屋根から落 ちるという古文書の記述が多く,これは空振によるものと思われます.
  国土庁;火山噴火災害危険区域予測図作成指針,1992 (1/6/00)

荒牧重雄(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


14. 2011年2月02日 19:28:54: cNTQxcUeqA
地震保険のCMを見たことがあるんですが、地震のせいで原発の放射漏れが起きて被爆したら誰が保障してくれるんでしょうね。

15. taked4700 2011年2月04日 19:00:37: 9XFNe/BiX575U : kBgBilh6Ho
14さん、

>地震のせいで原発の放射漏れが起きて被爆したら誰が保障してくれるんでしょうね。

 原発に起因する災害は、一定額までは電力会社に損害賠償義務が課せられています。確か、数十億円ぐらいまでだったような、本当に小規模な事故のときしか、電力会社は損害賠償義務を負いません。しかし、原発が故障して事故になったとき、数十億円の規模で済むはずがないので、電力会社は原発震災のときは一切責任を負わないということでしょう。

 一定額を超えた場合、国が賠償責任を負うとしているようです。しかし、現実問題、原発が壊れるほどの被害があれば、その地域全体が地震により直接被害を被っているので、放射能による被害であるとの証明が難しく、結局、国も何もしないということではと思います。

考えてみてください。原発が地震で壊れたとき、その地域全体が壊れているはずです。けが人は数十万人はいるでしょうし、阪神大震災の比ではない被害が一般に生じているはずです。しかも、漏れた放射能から逃げる必要があります。地震被害を受けた地域を大きく越えて放射能汚染は広まりますから、被害地域以外の人々はまず逃げることになります。こういったとき、被害地域の人々には、他の人々からの援助など一切ないと思います。それどころか、放射能汚染を広めないように、被害地域へ閉じ込める政策さえとられる可能性があります。

もちろん、大規模な原発震災の場合であり、ちょっとした事故に伴う放射能漏れならそう言ったことは起こらないでしょう。そして、この場合は、放射能が漏れていても、漏れていないと断言して無視するのでしょう。

基本的に、プレート境界型地震は多くの人々が経験していないものですから、実際にその被害が生じたときには、思いも寄らないことになるわけです。

2006年だったかに起こったスマトラ沖地震での津波被害は津波自体はそんなに大きなものではなかったのに、20万人を超える死者を出しました。日本の近代都市は本当に大きな地震にはまだ経験がないのです。どんな被害が出るか分かっていません。自分としては縦波、つまり、衝撃波の被害が震源域に近い場所では大きく出ると思っています。その場所は東海地震の震源域である静岡県御前崎市でしょう。浜岡原発がある場所です。


16. taked4700 2011年2月06日 14:50:19: 9XFNe/BiX575U : JRfst47InY
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jepsjmo/cd-rom/2003cd-rom/pdf/s049/s049-009.pdf

リアルタイム地震情報システム、気象庁ナウキャスト、ユレダス等の、P波から地震動を予報するシステムでは、P波の強度がS波のそれよりも小さい場合に、予報の効果が大きい。しかし、95年1月の兵庫県南部地震の際は、震源域に近い点ほど、P波/S波の比が大きく、壊滅的被害の多くはP波による上下動によって生じたと言われている。上記のK−NETの銚子の 02/06/14 及び 02/10/16 の波形からも、P波による被害の方が大きいことが推定できる。それ故、電界観測も取り入れ、P波の地震動も予報すれば、予報の効果が大きくなる。

 地震の際、原発の原子炉は P 波の地震動を感知して緊急停止するため、地震時の原発の安全は万全と言われている。しかし、米国北東部が無人になるかもしれないと言われた79年3月の Three Mile Island 原発事故の炉心溶融は、緊急停止から6分後に始まっている。86年4月の Chernobyl の場合は、事故は緊急停止と同時に始まった。即ち、P波で緊急停止しても原発事故は起こる可能性がある。しかし、たとえ、1秒前でも、停止していれば、地震動による突沸・暴走・水蒸気爆発・水素爆発・原子炉爆発・日本全土から避難、と言ったシナリオは描かなくても済む。即ち、電界観測により地震動を予知し、対処すれば、原発の地震被害は、最大でも Three MileIsland 程度で済み、画期的に軽減できることになる。
 


17. taked4700 2011年2月06日 14:52:02: 9XFNe/BiX575U : JRfst47InY
http://www.yokanet.com/pdf/backnumber/no76.pdf

地震の生々しい記事読ませていただきました。
福岡市は震源に近く、また震源が浅かったため
にP波の震動も大きかったようですね。神戸の
地震ではP波の一撃でコンクリート構造物が破
壊しました。地震学の常識ではP波はエネルギ
ーが小さく、建物は壊れないとされていますが、
P波による被害は今後の研究が持たれます。お
そらく大陸の地震被害はこのタイプです。関東
大震災や南海道地震のような海溝型地震ではこ
のような(P波による破壊)被害は生じません。
(大阪府高槻市 中川 要之助


18. taked4700 2011年2月07日 02:57:29: 9XFNe/BiX575U : AuOxA3GRME
17のコメントにある「関東大震災や南海道地震のような海溝型地震ではこのような(P波による破壊)被害は生じません」と言うのは多少誤解を招く表現だと思う。要は震源からの距離が問題なのだ。南海地震などは、陸地からかなり離れた海の地下が震央だ。だから、その真上は海であり、海震しかP波の影響はない。しかし、東海地震は陸域に震央があり、その震央の真上に浜岡原発がある。しかも、海溝型地震はM8程度の巨大地震になるから、どんな被害が出るか、はっきり言って見当がつかない。

また、関東大震災も海域が震源だとされているので、影響がないと判断しているのだろう。

勘違いしやすいが縦波(P波)と縦揺れは全く別のものだ。P波は衝撃波なので、揺れると言うよりも衝撃を与えることになる。理科の実験でやる金属製の振り子をいくつか並べておき端の振り子を少し持ち上げて放すとそれがとなりの振り子に当たり、その衝撃がどんどんと隣へ伝わって反対側の端の振り子がぴょんと飛び上がるものがあるが、アレがまさに衝撃波だ。決して揺れるわけではない。その意味で16の記事も不正確だと思う。


19. taked4700 2011年2月20日 16:20:53: 9XFNe/BiX575U : gwC7qJ7g1G
http://higusumi.world.coocan.jp/japanisch/koramu/kyodaifunka.html

超巨大噴火の危険

富士山大噴火の1000倍レベル

2002年2月10日(日)

*今日は朝から風が冷たく吹き渡っていました。夜に入った今、寒々と澄んだ空に、星がきれいに輝いています。空を見回しながら、地球外の意識が、無数の星の彼方からこちらを見下ろしているような気分がしました。

 先日の2月1日、アメリカ・ワイオミング州・イエローストーンにある巨大火山を紹介する番組(NHK教育テレビ、地球時間)を見ました。このカルデラ火山は、過去200万年前、120万年前、60万年前に大噴火したことが分かっている。60万年周期で大噴火するこの火山が最後に噴火してから60万年がたっている。強大なマグマ溜まりの上昇を意味する、地盤の上昇も始まっている。

 地球で最後に噴火した巨大火山は7万4千年前のスマトラ島トバ火山の噴火。1980年のアメリカ・セントヘレナの大噴火の数千倍もの、ものすごい噴火だった。2500キロ離れた所に35センチもの火山灰が堆積している。1707年の富士山の最後の「大噴火」の時、100キロ離れた江戸で数センチの灰が降ったそうですから、トバ火山の噴火の規模はけた違いに大きい。
 7万4千年前のトバの噴火では、地球の気候が激変し、「火山の冬」が訪れて、地上の人類が数千人にまで激減したらしい。遺伝子解析で分かった事実。人類を滅ぼすには、核戦争による「核の冬」、巨大隕石の衝突による「冬」、そしてこの「火山の冬」までありえるわけです。イエローストーンのケースは、噴火がいつ起ってもおかしくない時期にさしかかっています。詳しくは明日報告します。

2月11日(月)

*知られざる超巨大火山

NHK教育テレビ2002年2月1日放映(地球時間「知られざる超巨大火山」想像を絶するパワー) 

 制作:BBC/ディスカバリーチャンネル(イギリス/アメリカ2000年)

(  )内は樋口注。

イエローストーン

 アメリカ北西部に広がるイエローストーン国立公園。1872年に世界で最初に国立公園となった公園だ。豊かな温泉、原生林があり、毎年300万人の観光客が訪れる。
 しかし、この公園の下にとてつもなく巨大な火山があることは、最近まで知られていなかった。

1千万年前の大災害

 超巨大火山の災害として次の別の例が挙げられる。

 米ネブラスカ州オーチャッドで、ネブラスカ大学教授のマイク・ヴォ-ヒス(古生物学)は、太古の大災害の痕跡を見つける。1千万年前のトカゲ、ウマ、ラクダ、それに200頭の犀が同時に息絶えた化石群だ。化石にはどれも奇妙な特徴があった。骨がみな、柔らかな突起物に覆われていたのだ。これは骨の中から細胞が出てきているのだった。化石を見つけたヴォ-ヒス教授は、これがいったいどういうことか、最初は見当がつかなかった。この骨の化石を鑑定したネブラスカ大教授のカール・ラインハルト(古生物病理学)は、この症状が現在の獣医学のいうマリー病に似ていることに気がつく。これは死に至る肺の病気であり、粉塵を吸い込んで窒息死したことを意味している。細かで鋭い塵によって肺が出血し、動物たちは血を吐きながら死んでいったのだ。オーチャッドを埋め尽くすほどの量の粉塵を出すのは火山の噴火しかありえない。しかしネブラスカ州には火山がないのだ。

 その後、化石のあるオーチャッドから、アメリカ大陸を半分横断するほど離れたアイダホ州ブルノー・ジャーブリッジで、地質学者のビル・ボニチセンが1千万年前の火山岩を見つける。そこの火山が噴火したのだ。時期的にはオーチャッドの大災害と一致している。でも、ふつう火山灰が積もるのは、遠くても火山から300キロまでだ。1600キロは離れすぎている。
 しかし双方の灰に含まれる鉱物を精密に分析した結果、ぴったり一致する。ブルノー・ジャーブリッジの噴火は1600キロ離れた地域を2メートルの灰で埋め尽くしていたのだ。これは通常の噴火の数百倍の超巨大噴火だったことになる。

(富士山史上最大の大噴火と見られる1707年の噴火 − 年代的に最も近い噴火でもある − が100キロ離れた江戸に数センチの灰を降らせたことを考えれば、いかに凄い噴火だったかが分かる。)

 ロンドン大学教授のビル・マクガイアーによれば、巨大噴火は、噴火の規模を表す火山爆発指数VEIでいうと、最大の8に当たる。数字がひとつ下がると10分の1になる。1980年の米国セントヘレナの噴火はVEIでいうと、5になる。1000分の1だ。
 ふつうの噴火では、マグマが徐々に出てきて円錐形の山を形成する。しかし巨大噴火では、地下のマグマ溜まりから火山性ガスが一気に抜けて、地面が陥没する。マグマは濃度が高く、何千年もの間ガスが蓄積され高圧となる。その噴火の威力は通常の数百倍となる。噴火のあと、上部が陥没し、クレーターが残り、カルデラが出現する。

 巨大火山は、そもそも多くない。最も近いところで7万4千年前の、インドネシア・スマトラ島トバ火山の噴火があるが、もちろん歴史にその記録はない。有史以来、人類は巨大火山の噴火を経験していないのだ。

(群馬大学教育学部早川由紀夫教授によれば、トバ火山のこの噴火は7万3千5百年前に起り、マグニチュードで言うと、M8.8)

イエローストーンの巨大火山

 ここで、話はワイオミング州のイエローストーン国立公園に戻る。

 米内務省地質調査部のロバート・クリスチャンセンは1960年代からこのイエローストーンを調査研究している。公園の岩石が圧縮された火山岩で出来ていることは、調査を始めてすぐ分かった。この公園は古代の火山のあとなのだ。しかし、肝心の死火山も、カルデラも発見できずにいた。ところが、そのカルデラは、月面探査を目指すNASAが月面を上空から撮影する機材を使う練習に、このイエローストーンの航空写真をとったことで、偶然見つかることになる。公園の中を探したって見つからないわけだった。なんとカルデラは公園全体に及ぶ、長さ70キロ、巾30キロの巨大なものだったのだ。

 クリスチャンセンは、イエローストーンの何十メートルに及ぶ地層から3つの異なる層を発見した。これは3回の噴火があったことを示している。この火山は古代の死火山などでなく、活動中なのだった。噴火は年代の古い順から言うと、200万年前、120万年前、そして最後が60万年前だった。この巨大噴火は60万年周期で噴火していることになる。そして最後の噴火から、既に60万年がたっている。

 ユタ大学教授の、ロバート・スミス(地質学)は1973年から、イエローストーンの湖のほとりにキャンプをして、実地調査を行っている。彼はある時、湖の南の端からの景色がいつもと違うことに気がついた。船着場が水没しているのだ。近くの園内の木々も数センチから数十センチ水没している。そこで彼は園内の海抜を調査してみる。この種の最後の調査は50年前の1923年に行われていた。同じ地点で調べてみたのだ。すると、測量士が様子がおかしいと言い出す。なんと740ミリメートルも上昇しているという驚くべき結果が出たのだ。湖の北側が隆起し、水が移動して、南側が水没していたのである。
 その下に巨大火山が眠っているわけだが、それではいつ、どれくらいの規模で噴火するのだろうか。

 公園下のマグマ溜まりが調査された。マグマ溜まりは地下8キロにあった。その大きさを測定するには、地震が利用された。マグマと岩石を通るときでは地震波の伝わる速さが違う。スミスたちは、公園内22箇所の地震観測基地で、測定。データはユタ大の中央科学センターに集まる。その結果、マグマ溜まりは、公園のほぼ全域にわたって広がっていた。長さ4,50キロ、巾20キロ、厚さ10キロ。公園の3分の1から半分の大きさだ。

 スマトラのトバ火山

カルデラ型火山の場合、マグマに閉じ込められていた火山性ガスが大噴火を起こす。噴火後、上部が陥没してカルデラになる、7万4千年前のスマトラのトバ火山噴火の場合、その跡がトバ湖となっている。

 大量の火山灰は地球の気候に影響する。トバ火山の場合は、3千立方kmの物質が噴きだした。1980年のアメリカのセントヘレナの大噴火の時より数千倍も大きい噴火だった。

(1980年のセントヘレナは1立方キロメートルで、4億トンのガス、灰、岩石の噴出物。ちなみに1707年の富士山の大噴火では1立方km以上。ポンペイを滅ぼしたヴェスヴィアス火山は、推定3立方kmの噴出物となっている。歴史に残る最大の噴火はインドネシアのタムボラ山のそれで、推定80立方km。

 なお、VEIで言うと、以下のようになる

8:7万4千年前のトバ
7:1815年のタムボラ、8万年前の阿蘇山
6:1991年のピナツボ
5:1707年の富士山

2:2000年の三宅島
1:2000年の有珠山)

 ニューヨーク大学教授のマイケル・ランピーノはインド洋中部の海底からとったコアを調べ、トバから2500キロも離れた地点で35センチの堆積物があることを発見している。硫黄分が多かった。

 火山灰は成層圏に噴出し、細かな灰と二酸化硫黄が太陽光を遮る。その結果、地球全体の気温が下がったはずだ。1991年のフィリピン・ピナツボ火山のケースでは、0.5度下がった。噴出した硫黄の量と気温低下の巾が比例していることから、7万4千年前のトバの噴火では、地球全体の気温が5度下がっただろうと推測される。これは地球の生物に大変大きな影響を及ぼしたはずである。高緯度地方では、夏の気温が15度も低下する。こうして「火山の冬(volcanic winter) 」現象が起る。農業もできなくなる。海の生物も壊滅的影響を受ける。

 この危機的状況は地球の生物に激的な変化をもたらしたと思われる。それは人間の遺伝子にも刻印されていた。

 ユタ大学教授のリン・ジョーデとヘンリー・ハーディングは1990年初頭から人間細胞内のミトコンドリアDNAを分析して、そこに刻み込まれた人類の歴史を研究していた。ミトコンドリアDNAは大きなできごと、たとえば、人口が大きく増減したり、ある集団が他の集団と混ざり合ったりした時、DNAの構成に変化を起こしてきた。
 彼らは数年前、歴史上の各年代の人間のミトコンドリアDNAを調べるうち、奇妙なパターンをみつけた。それは、人口が歴史のある時点で劇的に減少したことを示していた。数千人にまで減少したらしい。ふつう、人類の人口は、歴史を通じて安定していると思われがちだが、そうではなかったのだ。人類の歴史の長さに比べて、DNAの多様性が少なすぎる謎が、それで解けた。ボトルネック現象が起こっていたのだ。ボトルネック現象と言うのは、それ以前、多くの人口があって、多様な遺伝子のバリエーションがあったのに、ある時点で人口が激減する(ビンのくびれの部分で対比できる)。多くの遺伝子のバリエーションが、その時しぼり込まれる。そして、わずかに生き残った人間の遺伝子が元になって、そこからまた増えていく。これが、現在の人間の遺伝子に、人類の存在する長さに見合った多様性がない理由である。

 ミトコンドリアDNAは規則的に変異しているので、変異の回数を数えれば年代も分かる。その年代測定法で、この人口激減は7、8万年前と出た。

 イリノイ大学教授のスタンレー・アンブローズは、トバ火山大噴火の論文を読んで、人口激減と時期が一致していることに気付き、その旨、ヘンリー・ハーディングに伝える。ヘンリーたちのDNA分析による人口激減期の推定値、7、8万年前の範囲内に、トバ火山が噴火した7万4千年前が入るではないか。
 

(なお、シュタイナーの人類の進化の流れを知っている者は、レムリア期の最後に人類のほとんどが、「火の力」の乱用で滅んだ時期が、これかな?と思ったりするが、安易な比較はできない。)

 
 イエローストーンの将来

イエローストーンの巨大火山が噴火した場合、マグマが50kmも吹き上がるだろう。想像を絶する未曾有の大噴火である。火山から千キロ以内は直接の影響を受ける。ロッキー山脈から東のグレートプレーンズは世界の穀倉地帯であるが、大打撃を受けるだろう。地球全体の気候が変り、気温が低下する。

 この巨大火山がいつ噴火するかは誰にも分からない。しかし遅かれ早かれ、その時はやってくる。その時に備えて我々にできることは何であろうか。

(以上です。イエローストーンの巨大火山の噴火の周期が60万年なら、誤差も数千・数万年単位であるでしょう。それが証拠に、最初の200万年前の噴火と、次の噴火の間は80万年もあります。20万年ずれている。
 次の噴火の時期も、1万年くらいは軽くずれそうです。
 でも、地面の隆起が既に起っているのも不気味です。マグマ溜まりは地下8kmか…。そこからまた下に10kmの厚いマグマの層がある。世界最高峰エベレストがすっぽり埋まる厚さ。その上にエベレストの高さの地殻が乗っている。マグマはそれを貫いて上昇し、裂け目を見つけて、数十万年間高めたガスの圧力で、そこから一気に吹き上がるわけです。50kmの高さ? なんだそれ? 大きな噴火でもふつう噴煙は20kmが限度ですが。ま、いたずらに心配してもしかたない。)

2月11日(月・祝日)

*<知られざる超巨大火山>を読んでどう感じられたでしょうか。書いている私としては、知っておくに値する衝撃的内容だから、知らせようという気持ちに促されているわけです。ただ結果的には、ただでさえ、希望の少ない世の中に、またひとつ心配の種を蒔いた形になってしまったかもしれません。でも人間のたかだか80年くらいの寿命では、気にしなくてもいいくらいの、何千年単位の誤差のある話です。いつ地球に衝突するか分からぬ巨大隕石を心配するのと同じくらいの、日常には縁の薄い話といえます。
 日常的には、もう少し規模の小さい心配が並んでいますね。人類全体を滅ぼしそうな60万年周期の巨大噴火が、そろそろという話より、関東地方を襲う60年周期の大地震がそろそろという方が、現実味があります。でも、これはもう古い話。今では、東海、東南海、南海地震が3つ同時に起るかもしれないという懸念の方が、説得力をもつ。研究者の間で高まっている懸念です(毎日新聞2月6日朝刊、「巨大地震に備える」)。それだって、気にしていたら生活できないから、ふだんは忘れています。「南海、東南海地震の発生確率は今後30年以内40〜50%、50年以内80〜90%」と言われても、あまりピンと来ないように、日本人の心性はできている。それぞれM8クラスの地震ですが、同時発生だとM8.6となる。と言われても、まあ、自分が生きている間は大丈夫だろうくらいに考える。準備といっても限りがあるから、あとは天命に任せる。これが、日本人のふつうの対処の仕方でしょうか。欧米人とは違った態度です。自然災害がひんぱんに起る場所に住む者が会得した、神経症防止法です。環境に適応したわけです。まあ、くよくよ考えても始まらないよ。という対応が、ふつうにできていれば、適応しているわけです。でも地震のあとの津波のことを頭に入れておくなど、心構えは十分にする必要はありますね。


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20. taked4700 2011年2月20日 16:24:54: 9XFNe/BiX575U : gwC7qJ7g1G
http://higusumi.world.coocan.jp/japanisch/koramu/fuji-funka.htm

富士山噴火?
2001年1月26日(金)

*今朝の朝日新聞朝刊一面に

「富士山の低周波地震
過去最多 噴火シナリオ検討へ
防災へ作業班設置協議 予知連 来月」

という見出しが躍っていました。記事の一部を紹介すると:

「 気象庁の観測では、低周波地震の震源は山腹北東の深さ10−20`付近。昨年9月から急に増えはじめ、10月には133回、11月に222回、12月に144回を記録。1月に入ってからも24日までに40回起きている。
今回の活動以前は、山頂の測候所に地震計を置いた87年以降、多い時でも月に10回前後だった。
一方、浅い所で起きるふつうの地震の回数は増えていない。傾斜計や全地球測位システム(GPS)の観測でも異常な地殻変動はないことから、気象庁は<マグマの上昇の証拠は見られない>としている。」

火山噴火予知連絡会会長の井田嘉明氏(東大地震研究所教授)の話によると、深いところでのマグマの活動が高まったと考えられるそうです。

この記事を読んだとき、感じていいはずの恐ろしさはありませんでした。それよりも、おおーっ、ついに「富士山噴火」の文字が新聞の一面を飾る時がきたかという感慨が起こりました。以前だったら、そんな人心を惑わす「虚言」を口にする人間は、それこそ「とんでも人間」の典型として扱われたのではないでしょうか。私としては、「UFOから異星人現われる」という見出しが新聞一面に出たら感じるだろう興奮に近いものを一瞬感じてしまいました。

今、手元に『富士山大爆発』(相楽正俊著、1982年、徳間書店)という本を置いています。著者の相楽氏は元気象庁予報官の経歴があるため、その「予言」は物議をかもしたことを思い出します。この TOKUMA BOOKS の背表紙にある紹介がふるっているので引用します。

「恐るべき90パーセントの確率!
1983年9月、日本のシンボル富士山が、275年間の沈黙を破って大爆発を起こす。相前後して、東京を直下型大地震が襲う ー 。
世界をおおう異常気象のピークが来るのだ。
気象学の権威が明かす戦慄の警告!」

1983年10月以降、彼はさぞかし、肩身が狭い思いをしたことでしょう。というより、社会的に「とんでも人間」の烙印を押されたと思います。
その後の彼がどうなったか、私は知りません。

富士山噴火関連の流れを追うと、その後、1987年8月20日から24日にかけて、山頂付近で3回地震がありました。20日弱震、23日微震、24日軽震。朝日新聞1987年8月26日朝刊:

「あれっ!富士山頂揺れました
有感地震が3回
震源は「山体」の中か真下
「深刻に考えないで」と学者」

という見出しの記事から引用します。

「(前略)気象庁は25日、地震火山部の火山観測機動班を派遣、山頂の測候所とふもとの御殿場事務所に地震計を設置して当分観測を続けることにした。気象庁の推定によると、震源は富士山頂の真下で、数キロのごく浅い場所。この付近の有感地震は極めて珍しいが、気象庁や地震学者は「これだけのデータで火山活動が活発になったとはいえない。深刻に考えない方がいい」と冷静に受け止めている。」

ちょうどこの頃、伊豆大島の三原山が噴火していて、その関連も論議されたようです。大島の大噴火は1986年11月15日17時25分に始まり、23日ごろに終息。翌87年11月16日・18日にも山頂で噴火。88年11月25・27日、90年10月4日に小噴火。(大島観光協会のHP「大島の気候と火山」から)

上に挙げた記事の中で、当時の火山噴火予知連絡会会長・下鶴大輔氏(東大名誉教授)が次のように言っています。

「地震は、富士山自身の活力によるものなのか、今は全く分からない。大島の噴火によるひずみがあちこちに伝わっていれば、例えばその影響も原因の一つになりうる。データがもう少し集まるのを待ちたい。」

この記事と並んで、「伊豆大島で震度2」という記事があり、大島の噴火・地震との関連性に真実味を添えています。

私は、去年から続いている伊豆諸島の地震・三宅島噴火と、今回の富士山の鳴動との関連が考察されてもいいと思っています。

なお、1987年8月27日午前6時26分にも富士山頂で有感地震(震度1)が記録されています(朝日新聞1987年8月27日夕刊)が、それ以降、富士山の地震が新聞記事になったことはありませんでした。

さて、しかし、相楽氏が表舞台から去ったあとも、この問題を果敢に取り上げている学者がいます。琉球大学理学部海洋学科の木村政昭教授です。彼の著書『地震は予知できる』(1989年1月、 TOKUMA BOOKS )の第1章には、「<三宅島 → 大島 → 富士山噴火>は一応の目安」という小見出しもあります(三宅島とあるのは1983年の三宅島噴火のことを念頭においている)。第4章はずばり「富士山は活動期に入ったか」。その小見出しは:

「富士山がおかしくなってきた
280年間、活動をやめている富士山
不十分な現在の富士山観測態勢
次の噴火は、火口から北東斜面に要注意
富士山噴火には、どのような予兆があるか?
富士山の落石事故は、山体の膨らみが原因か
南海トラフの巨大地震が、富士山噴火と休止のスイッチ
海抜上でも地震も、マグマ上昇のためか?」

とありますが、今朝の記事の中に、
「低周波地震の震源は山腹北東の深さ10−20`付近。」
とあったことに注意すべきだと思います。1989年に出版したこの本で木村教授は、「次の噴火は、火口から北東斜面に要注意」と警告しているのです。彼は自分の理論でそう予想しているのですが、「ここ40年間の地震活動は、まさに火口から北東側にかけて集中しているように見える」と、観測結果の分析も交えています。

1994年4月に青春文庫から出た『これから起こること』でも、木村教授は警告し続けます。第3章の(1)富士山 − 噴火があるとすれば北側?の中で、彼はこう言っています:

「さて、それでは富士山が再び噴くとしたら、それはどのあたりから火の手が上がるものなのかだろうか?
西暦800年以降の噴火歴をたどり、その規則性から判断すると、北東斜面よりの噴火の可能性が一番高い。」

木村教授は、最近は沖縄の海底にある「遺跡」の研究でも知られています。グラハム・ハンコックが注目した「海底遺跡」です。この説はまだ学界では異端扱いですが、教授はその海底から、加工された遺物も発見しています。

いたずらに富士山大噴火を心配しまくるのも考えものですが、気象庁が観測を強化して、あらゆる事態に備えることは必要だと思います。

2002年6月13日(木)

*富士山が噴火した場合のハザードマップが昨日発表されました。ハザードマップ作成協議会の中間報告です。約7億立方メートルのマグマが噴出した295年前の宝永噴火レベルの噴火という想定ですが、火山灰の分布図に限って言えば、2001年1月31日(朝日新聞朝刊)に宝永火山の時のものとして描かれた図とほとんど同じものです。
今回は、新たに溶岩流の到達予想時間を含め、被害全体の予想が出されました(毎日新聞6月12日夕刊)。「木造家屋の全壊2000戸、総延長3700〜1万4600キロの道路が通行止め、1日515便の飛行機欠航、溶岩流は静岡県御殿場市、富士宮市、山梨県富士吉田市などに2〜24時間以内に到達、農業被害、最悪約9000億円、観光も最悪約1400億円の被害」となっています。

 お住まいが富士山に近い人ほど、不安感が大きいことでしょう。でも、観光に打撃を与えるからとタブー視されていた噴火と被害の可能性が公式に発表され、観測態勢も強化されたきたことは、対策を講じる上で大事なことだと思います。

 あの美しい富士山、日本のシンボルとしての富士山が大噴火するというイメージには、特別な世界崩壊感というか、大破局の感覚を呼び起こす力をもっていますね。少なくとも以前の私には、東海大地震・東京直下型地震と並んで、<この世の終り>的な感じがしたものです。でも、<火山の冬>をもたらす超巨大噴火の存在を知ってから、その感覚が薄まりました。超巨大噴火をレベル8とすると、富士山大噴火もレベル5にすぎないと相対化されたからだと思います。

 とはいっても、相対化したところで、富士山噴火の被害が減るわけでもなく、やはり深刻な事態であることには変わりありません。


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21. taked4700 2011年2月20日 16:57:22: 9XFNe/BiX575U : gwC7qJ7g1G
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/onShizushin060327.html

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2006年3月27日付静岡新聞1面記事 <東海地震説に「間違い」> は「誤報」

2006年4月2日
石橋克彦(神戸大学都市安全研究センター)

 2006年3月27日付静岡新聞の1面トップに、<東海地震説に「間違い」>という大きな見出しの付いた、かなり長い記事が掲載されました。<提唱から30年 石橋教授見解>という副見出しが付いています。
 しかし、この記事は私の見解を正しく伝えるものではありません。不正確な内容、センセーショナルな見出し、大きなスペース、掲載位置によって、私の本意とは懸け離れた記事になっています。それは、東海地震は当分(または永久に)起こらないのかとか、これまでの対策は無駄だったのかというような誤解を引き起こし、東海地震に備える行政、民間、個人、研究者・専門家の努力に水を差しかねないものです。東海地震の切迫性は依然として否定できず、これまでの取り組みは今後も一貫して続けていくべきものですから、この記事は「誤報」とさえ言えます。
 私のところにも、自治体、マスメディア、研究者、一般の方から「真意を聞きたい」という問い合わせが多数寄せられています。そこで、とりあえず、この記事の問題点を説明しておきたいと思います。
 なお、この記事は静岡新聞ホームページからも見ることができます(http://www.shizushin.com/feature/jisin/jisin_kiji/20060327000000000016.htm)。実際の紙面に較べれば視覚的なショッキング度は低いですが、同じ見出しと内容で誤解を振りまくことに変わりありません。どこからでも読めることと長く残ることで、かえって困りものです。

 まず、1976年に私が発表した「駿河湾地震説」(「東海地震説」ともいわれる)を振り返っておきます。なお、以下では「震源域」という言葉を頻繁に使いますが、大地震は地下の岩盤中の広大な断層面に沿う岩石破壊によって地震波が出る現象であり、断層面が広がっている地下の領域や、対応する地表の範囲を「震源域」と呼びます。
 東海地震は、1976年以前も予知研究上重要な対象でしたが、遠州灘を震源域とする「遠州灘地震」というのが定説でした。駿河湾地域は、プレート同士が衝突していて大地震発生能力がないと考えられていました。そのために、沖合の地震というイメージが強く、地震対策もさほど熱心にはおこなわれていませんでした。
 これに対して私の「駿河湾地震説」は、次の東海地震の震源域は遠州灘東半部+駿河湾の領域だろうと主張しました。その領域が、1854年安政東海地震の震源域に含まれていたにもかかわらず、1944年東南海地震のそれには含まれていない、いわゆる「割れ残り」であることがわかったからです。
 発生時期に関しては、「現状では予測困難、もしかすると20〜30年後かもしれないが、数年以内に起こっても不思議ではない」と述べました。切迫性も考えた理由は、安政東海地震からすでに122年経過していたこと(東海地震・南海地震の繰り返し間隔は一般に100〜150年)、測量データから岩盤の変形が限界に近いと推定されたこと、当時の駿河湾周辺地域の地震活動が安政東海地震の前に類似しているようにみえたことなどです。
 さらに、予想震源断層モデルを提出して、マグニチュード8級の直下型巨大地震だから被害が激甚になること、発生の兆候が明らかになってからでは手遅れであることから、直ちに対策に着手すべきであると訴えました。以上が、1976年5〜10月に私が地震予知連絡会と地震学会秋季大会で発表した「東海地震説」の概略です。

 さて、静岡新聞の問題の記事は、リード部分で、「駿河湾地震(東海地震)は一九四四年(昭和十九年)の東南海地震の割れ残りで、すぐにも起こるかもしれないと考えた。三十年たって、現実にまだ起こっていないのだから、『割れ残り』という解釈は間違っていたと言われても仕方ない」という私の発言(以下では発言Aという)を紹介しています。
 「割れ残り」は学術用語とはいえませんが、研究者もよく使います。今の場合、二つの異なるニュアンスを区別することが非常に重要です。第一は、「1854年の震源域には含まれていたが、1944年のそれには含まれていない」という空間的な意味、第二は、第一の意味に加えて時間的追随性も念頭に置いた意味(置いてきぼりを食ったのだから、じきに追随するはず)です。切迫しているかもしれないと考えた背景には、前述の安政東海地震からの経過年数、測量データ、地震活動などに加えて、遠州灘東半部+駿河湾地域が第二の意味の「割れ残り」ではないかという「解釈」がありました。1976年時点で1944年からすでに32年経過していましたが、辛うじて持ちこたえていて、いつ東海地震が追随しても不思議ではないと考えたわけです。もちろん、切迫していると断定したわけではなく、前述のように、20〜30年後かもしれないとも述べました。駿河湾地域が注目されていなかった当時としては、まさに「発生時期は予測困難」であったわけです(実は、後述のように、中期的な発生予測の困難性は今でもあまり変わっていません)。
 しかし、その後30年間東海地震が起こらなかった現在では、駿河湾地域が第二の意味の「割れ残り」で「数年以内に起こっても不思議ではない」とした1976年時点での切迫度の解釈が、結果的に間違っていたことは明白です。この点を私は認めますが、むしろ、認めるまでもないことです。
 ただし、では遠州灘東半部+駿河湾地域を震源域とする東海地震が当分(例えば今後10年)起こらないのかというと、そんなことは現時点では言えません。まして、東海地震が消えて無くなったなどということは全くありません。遠州灘東半部+駿河湾地域が第一の意味の「割れ残り」であることは現在でも厳然たる事実で、岩盤の変形も増え続けていますから、ここで近い将来大地震が発生する可能性、つまり現時点での東海地震の切迫性、を依然として否定することはできないのです。今世紀半ば頃と考えられている東南海地震・南海地震と連動するまで持ち越すのではないかという考え方も1976年当時からありましたが、未解明の問題がたくさんあって、そう断定することはできません。

 当該記事のリード部分の発言Aは、「割れ残り」を第二の意味に使って、私が取材中に話したことです。しかし、それは、1976年当時に感じた大きな切迫感の説明に過ぎず、現在と将来の東海地震問題にとっては重要なことではありません。記事にするならば、科学欄あたりに書くべきことだと思います。ところが当該記事は、発言Aを針小棒大に膨らませ、以下に述べる誤った記述を付加し、不適切な大見出しを掲げて、「誤報」といわれても仕方のないものになっています。
 リード部分は、石橋が「今年に入って、静岡新聞社の数回の取材に応じ、地震発生のメカニズムと切迫性についての当時の解釈が結果的に間違っていた−とする考えを明らかにした。」と、さも重大な特ダネのように書き始めていますが、この書き方がまず読者に誤解を与えるでしょう。また、ここに「地震発生のメカニズムと」と書かれているのは、副見出しに<発生、別メカニズムか>と書かれているのと並んで重大な誤りです。「東海地震説」は、1976年当時の大きな切迫感が間違っていただけで、他の部分は、発生メカニズムも含めて、現時点ではどこにも「間違い」はありません。
 リードの最後に「学説の提唱者が自ら『間違い』を口にしたことで、東海地震対策が大きな転機を迎える可能性も出てきた。」とありますが、これも、従来の東海地震対策が間違っていたかのような誤解を与えるとんでもない書き方です。発言Aは現行の東海地震予知・防災事業に何の影響も与えないことですから、関係者は「笑止千万だ」と思うとともに、大きな迷惑を被ることでしょう。私も実に迷惑です。そして、以上を包括して括弧付きの「間違い」という言葉を見出しに使ったわけですが、これは致命的に不適当だと思います。「東海地震説は」でなくて「東海地震説に」というのが微妙ですが、姑息な言い回しです。

 このセンセーショナルな記事の掲載は、31面(社会面)で開始した連載記事を読ませるための、紙面作りのテクニックという面が強いようです(業界では「ストレートニュースの形をとった企画記事」というらしい)。しかし、そんなことのために報道を著しくゆがめ、社会に誤解と混乱をもたらすのは、マスメディアの責任とモラルを放棄するものと言わざるをえません。

 なお、30年前に、発生時期の予測が困難なのに東海地震の切迫性を強調したのは不適切ではないかという批判があるかもしれません。しかし、阪神・淡路大震災を思えばわかるように、大自然の理解がまだ極めて不十分な私たちとしては、限られた知識で危険性が考えられれば、それを共有して備えるべきだ(観測・調査・研究の強化も含む)というのが私の持論です。30年間地震が起こらなかったというのは結果論であり、幸運だったというべきでしょう。
 また、今後、東海地震対策に見直したほうがよい点が出てくることはあると思いますが、それは関係者が絶えず考えていることであり、私も多少の議論をしています。
 これらのことに関心のある方は、参考文献の4)〜8)をご覧ください。

参考文献
1) 石橋克彦:東海地方に予想される大地震の再検討−駿河湾大地震について−,地震学会講演予稿集,1976 No.2,30-34,1976.
2) 石橋克彦:東海地方に予想される大地震の再検討−駿河湾地震の可能性−,地震予知連絡会会報, 17,126-132,1977.
3) 石橋克彦:大地動乱の時代−地震学者は警告する−,岩波書店,234pp,1994.
4) 石橋克彦:地震予知はできるか,in 阪神・淡路大震災の教訓.岩波書店,37-53,1997.
5) 石橋克彦:地震は予知できるようになりますか? 予知できれば人命が損なわれることはなくなりますか?,in 別冊世界/50問これが核心だ!(世界687号),82-85,2001.
6) 石橋克彦:東南海・南海地震について,自然災害科学,21,190-198,2002.
7) 石橋克彦:「駿河湾地震説」小史,科学,73,1057-1064,2003.
8) 石橋克彦:東海地震防災対策の幾つかの問題点,日本の科学者,38,584-589,2003.

(この文章は、今後修正することがあります)

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