投稿者 ヤマボウシ 日時 2010 年 3 月 29 日 03:12:36: WlgZY.vL1Urv.
転載元:Like a rolling bean (new) 出来事録 by Rolling Beanhttp://ameblo.jp/garbanzo04/day-20100323.html
2010-03-23
あのジョセフ・ナイ氏も「原子力発電が気候問題を解決するような錯覚を捨てる」と1年以上前に講演
昨日のエントリーで、コイズミ内閣の元で策定され、閣議決定にまで至った「原子力政策大綱」のことを書きました。
業界と官僚が次に内定している改訂が2010年頃であることが、急激すぎるように見える原子力推進をごり押ししていることを危惧しています。
このことに関連して「国際燃料バンク」のことを調べていたところ、「核不拡散科学技術センター」のサイトで、ある情報を見つけました。
それは、あのジョセフ・ナイ氏が、「原子力発電が気候問題を解決するというような錯覚を捨てること」と講演で語った、(それも重要なポイントとして指摘した)とあります。
また、再処理に対しても否定的だそうです。
日本の産業界からは非常にしばしば、原子力発言が温暖化対策に有望視されているのはアメリカでも同じだ、などと喧伝されますが、ジャパン・ハンドラーの筆頭とも称される、駐日大使就任とも言われたアメリカの要人までもが、「原子力発電が気候問題を解決するというような錯覚を捨てること」と明言しています。
特に業界の皆様、官僚の皆様、その意を汲むために連立与党の紐帯を傷つけることを厭わない議員の皆様、「だってアメリカでも・・・」の言い訳は通用しません。
原子力開発にしても(築地市場の豊洲移転についても)、きわめて優秀であったはずの官僚は、たかがごく一部の利益のために無理やり敷かれた規定路線を、あたかも「避けられない時代の潮流」であるかのように自分自身に洗脳をかけて受容し、そして、現実にどんな嘘があっても、あるいはどんな危険事態が発見されても、それらを一部のおかしな人の妄想や杞憂だ、などと恥ずかしげもなく切り捨てて、そしてひたすら間違った判断に突っ走っています。
いっぽうで、お手本にしているはずのアメリカ側は、もっとすっきりと物事を割りきっています。
見慣れすぎた風景です!!!
核不拡散ニュース No.0113 2009-1/30
<ジョセフ・ナイ氏の講演>
http://www.jaea.go.jp/04/np/nnp_news/0113.html">http://www.jaea.go.jp/04/np/nnp_news/0113.html
【概要】
昨年12月9日、イタリア外務省及び米国ブルッキングス研究所の共催により、在米イタリア大使館にて「1970年代と今日における原子力エネルギーと不拡散のトレードオフ」と題するイベントが開催された。同イベントでは、1970年代後半にカーター政権下で核不拡散政策を主導したハーバード大学ジョセフ・ナイ特別名誉教授が、現在の原子力ルネッサンスと呼ばれる状況を1970年代になぞらえて講演した。以下にその概要を紹介する。
(略)
最後に、我々が今日直面している世界で原子力の平和的側面と破壊的側面の両面をバランスよく保つため、以下を指摘する。
1. 原子力発電が気候問題を解決するというような錯覚を捨てること
2. 70年代までに核兵器が25カ国に増加するとケネディ大統領が予想した数字と比較すると、核兵器国が9カ国という現状は必ずしも悪い数字ではなく、過度な悲観論を避けること
3. NPTの抜け穴を修復するため燃料バンクや国際的な燃料供給保証体制のような制度革新を行うこと
4. 外交政策として核不拡散に高いプライオリティを置き、維持すること
5. 不拡散政策は原子力政策と部分的に関連しているが、安全保障、効果的な外交、安定維持、地域の危機管理などが核不拡散レジームを維持する上で重要であることを忘れないこと
【解説】
ナイ教授は、現在の核不拡散体制が侵食されつつあるという懸念を生み出している状況を1970年代のそれになぞらえ、類似しているとの見解を示した。1970年代後半から1980年代にかけては、国際核燃料サイクル評価(INFCE)の影響を受けて国際プルトニウム貯蔵、燃料供給保証、国際使用済燃料管理などが検討された時期であり、ナイ氏が述べたように、今日でいう国際核燃料バンク構想の検討と同様の状況が存在した。
ナイ教授は、ワンススルーの維持を主張していることから、再処理について否定的な立場であると言える。また、温暖化問題等に対する原子力発電の有用性をある程度認めているものの、全体のトーンとしては原子力発電が温暖化問題の解決策であるかのように原子力発電の拡大を進めることには否定的で、そのような過度な拡大は濃縮及び機微技術の拡散につながると警鐘を鳴らしている。
また、米印原子力協力協定に対しても、具体的な方策については言及しなかったものの、やり方によってはもっと核不拡散上の損失を小さくできたかもしれないと評価しており、ブッシュ前政権時代の手法をかなり否定的に見ている点が、特徴的である。1977年から1979年、米国カーター政権下で国務次官補代理(安全保障支援・科学技術担当)として核不拡散政策を主導し、東海再処理工場を運転する際にも米国政府の一人として日本と関わりを持ち、クリントン政権下で国防次官補(国家安全保障問題担当)を務めた経験を有する同教授は、オバマ政権下で駐日大使に就任する見通しである(管理人注:その説があったころの記載ですね)。ナイ駐日大使の誕生によって即座に我が国の原子力政策に何らかの影響が及ぶとは考えにくい。しかし、プルトニウム利用や米印原子力協力協定に対する否定的な見解は、民主党の伝統的な核不拡散に対する考え方を反映していると考えられる。他方で民主党の中でも原子力平和利用・核不拡散や米印原子力協力に対してより現実的な立場をする人もおり、今後、米国の原子力・核不拡散に関する人選や政策の動向には十分注視する必要がある。
(略)
ジョセフ・ナイ氏のスピーチ全体はブルッキングス研究所のサイトにアップされています(英文のPDFです)。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_saku.htm">http://www.brookings.edu/~/media/Files/events/2008/1209_nye/20081209_nonproliferation.pdf
〜〜〜
また、前回、原子力政策大綱をコイズミ内閣時代に作るにあたり、「新計画策定会議」というものが前年から開かれていました。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_saku.htm">http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_saku.htm
ここには、原子力資料情報室の伴さんが委員として加わっていて、『原子力政策大綱批判 策定会議の現場から』
という本を出版されていました。
版元ドットコムのサイトに目次と前書きがあります。
『原子力政策大綱批判 策定会議の現場から』
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-8228-0618-7.html">http://www.pen.co.jp/syoseki/datugen/0618.html
ここでは、きわめて重要な指摘が数多く挙げられていますが、その中で、「原発は温暖化防止に役立たない」という事実は(当然ですが)すでに前回の大綱作成時点から明確に示されていた、という点と、上のジョセフ・ナイ氏発言(2008年)とあわせて注目しておく必要があると思います。
2005年10月に日本の原子力政策の基本的考えである「原子力政策大綱」がまとまった。その新計画策定会議の委員に就任して議論に加わった脱原発 NGOメンバーの孤軍奮闘記。1年半の審議のなかで対等に渡り合ったわけだが、国策に異議を唱え続けた貴重な記録である。
目次
はじめに──新計画策定委員になって
第1章 原子力委員会の任務
公平な人選を求める
第2章 「原子力長期計画」から「原子力政策大綱」へ
改名はなぜ行なわれたか
閣議決定の必要性
少数意見を提出
第3章 原子力政策大綱の構成
基本目標と共通理念
強調された安全確保の重要性
少数意見の概要
第4章 三割から四割を原子力発電に依存し続ける
結論にあわせる条件設定
将来の予測はあたったためしがない
二○三○年のエネルギー需給展望
原発は温暖化防止に役立たない
放射性廃棄物も二酸化炭素も削減しよう
老朽原発を苛酷に利用するための危険な諸施策
欠陥原発の運転を許す維持基準
高経年化対策の危険性
見直すたびに下方修正の原子力発電計画
第5章 「夢」の高速増殖炉
かつても今も「夢」の原子炉
一周遅れのトップランナー
机上の空論、二○五○年の実用化
組織維持のための「実用化戦略調査研究」
高速増殖炉が有利になる条件とは
高速増殖炉の時代に燃料プルトニウムが不足する
プルトニウムの倍増時間
高速増殖炉か高速炉か
もんじゅ運転再開の空疎な目的
「もんじゅ」改良工事で安全は確保できるか
第6章 焦点の核燃料サイクル
抽出された四つの選択肢
六ヶ所再処理工場の稼働の是非が焦点
プルトニウムはプルサーマルで消費
総合評価とその結果
安全規制に従うのだから選択肢に大差はない?
地層処分技術はどちらも未熟
査察を受けるのだから選択肢に差はない?
ニューヨークで六ヶ所再処理工場の無期延期を求める
プルトニウムの多国間管理構想
「余剰プルトニウム」を持たない国際公約が崩れる
放射性廃棄物による被ばく評価
放射性廃棄物に関する新たな提案
直接処分コスト
隠していた過去のコスト試算
技術検討小委員会の設置
直接処分コスト
シナリオ間のコスト比較
スティーブ・フェター氏を招いて
政策変更コスト
再処理は既得権
再処理積立金制度の導入
第7章 斜陽化すすむ原子力産業
斜陽化すすむ原子力産業
立地地域との共生
「国民の信頼」と「国民参画」
あとがき
参考資料
1 新計画策定会議の構成員
2 高経年化対策で惨事の危険性が増す
──原子力資料情報室 山口 幸夫
3 高速増殖炉原型炉「もんじゅ」事故
4 要請書と署名
5 経済産業省虚偽答弁と隠匿された報告書の内容の問題点
──社会民主党党首 福島 みずほ
昨2005年10月11日、原子力政策大綱が原子力委員会決定された。この大綱の案をまとめた新計画策定会議の委員に、32人中ただ1人の「脱原発派」として加わった著者の奮戦記であると同時に、日本の原子力政策についての類書のない入門書。それが本書である。
著者は、2004年6月の第1回会合から05年の9月の第33回会合まで、すべての会合で、脱原発を求める立場から意見を述べた。また、04年8月から 10月まで6回開催された技術検討小委員会にも、8人の委員の1人として全回出席し、使用済み燃料の直接処分と再処理のコストを比較検討。大綱案が決められた際には、反対意見を提出した。
その反対意見を大きくふくらませ、策定会議での議論を踏まえつつ、著者は、原発、高速増殖炉、核燃料サイクルの策定をていねいに批判している。ぜひご一読を。
原子力資料情報室通信 2006年4月1日より
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