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http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20091119ddm003030102000c.html
クローズアップ2009:核安保サミット準備会合 核防護へ日米連携第一歩
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
◇来月3日、共同議長で 原発保有・計画43カ国招く
「核兵器のない世界」を目指すオバマ米大統領が2010年に開く「核安全保障サミット」の東京での準備会合の詳細が18日、明らかになった。12月3日、米国がインド、パキスタンなど核保有国と日本など計43カ国を招き、日米が共同議長となって核物質が非核国やテロリストに渡るのを防ぐ国際管理体制作りを目指す。13日の日米首脳会談で合意した「核不拡散に向けた行動」の初めての具体策だ。背景には、核物質が世界的に蓄積され、危機が潜在している事情がある。【花岡洋二、ワシントン草野和彦】
「危険にさらされている世界の核物質の安全を管理する体制を4年以内に作る」。14日の東京での演説でオバマ米大統領は、来年4月にワシントンで開く「核安全保障サミット」の目標をこう訴えた。
大統領の指摘する「危険」とは、核の闇市場を通じ核兵器技術を入手する北朝鮮のような国が出てきたことや核によるテロが米同時多発テロで現実味を帯びたことを指す。「冷戦が終わったのに核攻撃の危険は増した」(4月のプラハ演説)と大統領は心配する。
準備会合では、非核国への核物質流出と兵器化阻止▽核の闇市場の解体▽核物質の輸送の発見や阻止▽核取引を金融手段で防止▽核テロに対抗するための国際協力▽原発など核関連施設への破壊行為、盗難の防止−−などを念頭に「核防護」の体制構築を話し合う。
「核防護」の先例としては、90年代に旧ソ連の核兵器解体や、それにより発生する核物質の管理を支援し、テロリストへの流出を防いだ米国の「ナン・ルーガー計画」がある。また、核兵器開発が疑われるイランに対しては米国などが、ウランを国外に持ち出して濃縮し、燃料に加工して返還する提案を行っている。
サミットへの重要な一歩となる準備会合の開催地を東京に選んだのは、日本が「数十年にわたり核兵器開発を拒否し、核の平和利用を享受してきた好例」(オバマ大統領東京演説)だからだ。日本の優れた核管理技術を生かし、米国が最重視する核テロ防止を実現する日米の連係プレーだ。
準備会合の日本側関係者は「核軍縮を希求してきた国として核の安全強化に貢献したい」と話し、米政府高官も「日本の高い専門技術と長年の実績を世界に見せる機会になる」と高い期待を寄せる。
準備会合の招待国は原発(計画中を含む)を持ち、核安保サミットへの出席が想定される国で、米国が選んだ。露仏英中や核兵器保有が強く疑われるイスラエルを含んでいる。ただ北朝鮮やイランは招待されない。北朝鮮やイランは米国と核開発を巡り対立関係にあり、6カ国協議など別の枠組みで核開発断念を迫る方針とみられる。
共同議長は外務省軍縮不拡散・科学部の佐野利男部長と米ホワイトハウス国家安全保障会議のゲーリー・セイモア調整官(大量破壊兵器担当)が務める。
◇目標はテロ防止
原子力政策に詳しい鈴木達治郎・東京大学公共政策大学院客員教授は「オバマ大統領の短期的な目標は核テロ防止であり、このサミットを非常に重視している。核物質の管理強化と透明性向上を目指し、カットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の締結も併せて核不拡散体制を作ろうとしているようだ」と話している。
◇プルトニウム・高濃縮ウラン、蓄積に危機感
世界的に核兵器に転用可能なプルトニウムや高濃縮ウランが蓄積される動きがあり、「核防護」の重要性が強調される背景になっている。
まず、地球温暖化対策として原発が注目されており、新設や増設を目指す「原子力ルネサンス」と呼ばれる原発回帰の動きが世界で広がっている。新設を目指す国は20カ国以上とみられるが、使用済み核燃料が蓄積し、プルトニウムを分離して獲得する機会が増す。原発大国のフランスはテロの危険が常に潜在する中東地域にも原発の売り込み攻勢をかけているが、核防護はなおざりなままだ。
また、今後予想される米露の大幅な核軍縮に伴い、解体される核弾頭から高濃縮ウランやプルトニウムが取り出される事態も見逃せない。高濃縮ウランで動く軍事用艦船の原子炉の解体への対応も重要だ。
核物理学者らが作るネットワーク「核分裂性物質国際パネル」の推計では現在、使用済み核燃料から分離したプルトニウムを保有しているのは、10カ国以上で、計約500トン(国外での保有含む)ある。また高濃縮ウランは1310〜1910トン(同)あり、ほとんどが米露にある。
日本は非核兵器国で唯一、使用済み核燃料からプルトニウムを再処理している。同パネルによると、海外に再処理を依頼した分も含め40トン以上もプルトニウムを保有している。核防護では重大な責務がある。
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■ことば
◇高濃縮ウランと分離プルトニウム
天然ウランには大量の熱エネルギーを出すウラン235が少量しか含まれておらず、濃縮して原発の燃料にする。兵器にはさらに高濃縮が必要。プルトニウムは天然にはほぼ存在せず、原子炉でウランを燃やした後に残る使用済み燃料から分離して生成する。核兵器の原料となりうる。
毎日新聞 2009年11月19日 東京朝刊