★阿修羅♪ > 原発・フッ素6 > 186.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
生かされていなかった広島被爆カルテ=辻加奈子(毎日新聞 記者の目)
http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/186.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 8 月 13 日 11:29:45: twUjz/PjYItws
 

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20090812k0000m070121000c.html

記者の目:生かされていなかった広島被爆カルテ=辻加奈子


 原爆の脅威は、熱線、爆風、放射線と3種類に大別できるが、人間の感覚でとらえられない放射線による被ばく死は、今も遺族らの間に“謎の死”として記憶されている。毎日新聞は今夏、原爆投下直後に治療にあたった東広島市の傷痍(しょうい)軍人広島療養所(現東広島医療センター)の19人分のカルテを独自に入手した。いずれも被爆時はたいしたけがはなく助かったはずが、やがて体調を崩し、被爆後数週間から1カ月で亡くなった人たちのものだ。被ばく死の解明は進められてきたが、現代の被ばく医療の視点からこの死をどう説明できるかを取材すると、意外に現在の研究に当時の資料が生かされていないことが分かった。

 「原爆の悪いガスを吸うたんじゃなかろか」。カルテの一人、広島市水主町(かこまち)(当時)の警察練習所で被爆し、約1カ月後に亡くなった岩井義雄さん(当時33歳)の妻日子(てるこ)さん(89)=山口県岩国市=は、夫の死因について今も首をひねる。被爆で大やけどしたしゅうとめが生き延びたのに、額に少し傷があっただけの夫が死んだのは「不思議で仕方なかった」と話す。

 「ガス」と表現する遺族は日子さんだけではない。被爆後何日もたってから突然脱毛し、高熱を出して亡くなる様子を見て、当時は毒ガス説が出た。伝染病説もあった。放射線による被害の分かりにくさを示していると思う。

 このカルテの分析を、99年に起きた核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所(茨城県)の臨界事故で緊急治療にあたった東大名誉教授、前川和彦氏(68)ら3人に依頼した。結果は7月30、31日大阪本社版朝刊(東京本社版は31日のみ)で報告したように、白血球が減少して感染症や敗血症にかかり死亡する、急性放射線障害だった。

 それ自体は既に分かっていたことだが、現代の知見から被ばく線量は2〜6グレイと推定された。4グレイなら50%が死亡、7グレイ以上なら100%死亡とされるから、今ではまったく“謎の死”ではなかった。

 一方、爆心地からの距離と遮へい物の有無などからの物理的計算式「DS02」では、岩井さんの被ばく線量は2グレイ程度だった。他のカルテの人でも、医学的な被ばく線量の見立ての方が上回る傾向にあった。警察官として市内にとどまり、さらに被ばくしたことなどが理由だと思う。今回の検討だけで結論は出せないが、カルテを再検討することで被ばくの実態をさらに正確につかめるのではないか。

 今なら岩井さんらを救えたかについても検討された。JCO事故では血液を作り出す元となる造血幹細胞が移植されたが、今回のカルテの患者なら移植は不要で、集中治療と、造血細胞を刺激するサイトカイン療法が有効という。

 しかし、これは限定された人数の患者に最新医療で対応できた場合のことだ。また放射線は長期にわたって人体をむしばむ側面がある。これには、有効な対応策が今もない。結局、前川氏の結論は「一定数の患者の急性期の救命はできる」というものだった。

 一方、前川氏らカルテを見た医師らは「物資がない時代に、誠心誠意の治療が尽くされている」と驚いていた。白血球増を狙う刺激療法としての異型血液の輸血などは、現代ではリスクが高く行われないが、未知の症状への果敢な対処と評価すべきだという。

 電話局で被爆して死亡した女性の妹(78)は、看病で付き添っていたから当時の様子が分かる。「死亡前日に250CCの献血」とあるカルテを見て、「看護婦さんが血をくれたのでしょう。本当にありがたい」と目を潤ませた。

 前川氏らによると、こうしたカルテの存在は医療関係者にもあまり知られず、研究に生かされていないという。前川氏は「こういうものを伝承する文化を持たなくては」と反省していた。被ばく研究は、遺伝子解析などを追究しがちで、被爆当時の資料を見直すことが少ないからだ。

 先月には東京の病院で、太平洋ビキニ環礁での水爆実験で被ばくし死亡した第五福竜丸の元無線長、久保山愛吉さんのカルテが見つかったが、被爆者治療に詳しい鎌田(かまだ)七男(ななお)・広島大名誉教授は「なぜ行方不明になっていたのか。恥ずかしいことだ」と、過去の資料を重んじない姿勢を批判した。さらに広島療養所のカルテなど資料の研究を積み重ねれば、「原発事故など、患者が大量に出た場合の治療優先順位の決定(トリアージ)で役立つ」と述べた。カルテは個人情報で、無制限な公開は難しいかもしれないが、研究に生かすのが当然だろう。

 当時の貴重な資料は他にもあるはずだ。少しずつでも探し出し、報道していきたい。原爆の悲劇を繰り返さないため、当時の資料を今に生かすことが求められている。(大阪地方部)


毎日新聞 2009年8月12日 0時17分

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      HOME > 原発・フッ素6掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。