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KARAを踊るインドネシアの子供たちと中途半端な日本の戦略
2012/03/08
大上 二三雄
韓流ドラマを始めとした韓国のテレビ番組が、アジアを席巻している。そして、それに後押しされるように、韓国のミュージシャンや俳優、アイドルタレントが各国に進出している。さながら、1945年に第2次世界大戦が終了して、アメリカのハリウッド発文化が世界を席巻し、それに日本人を始めとした世界の若者が憧れたように、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナム、インドなどの成長するアジアの若者は、韓国に憧れを抱くようになってきた。
お陰で、はるかに優良なコンテンツをたくさん持っているにも拘わらず、日本の存在感は薄くなる一方である。
何故このような状況になっているのだろうか?
戦略をもって取り組んだ韓国
金融危機が発生しIMFに救済された1997年、韓国のテレビ番組輸出は1000万ドル足らず、それに対して輸入は6000万ドルと、大幅な輸入超過であった。それが、金大中大統領の歴史的な文化開放政策(例えば、それまでは原則禁止であった日本のコンテンツを、全て解放した)に端を発し、三次にわたる「放送映像産業振興5カ年計画」の結果、2008年に輸出は1億8000万ドルに達した。それに対し輸入は2000万ドルまで減少し、立派な輸出産業に成長した(注1)。
この取り組みは、大統領府の強力な指導の下、中央の全省庁、地方政府が民間をバックアップする形で行われ、TV番組の輸出振興のみならず観光客の増加、海外興行収入による外貨の獲得をもたらしている。また、間接的効果としても韓国のイメージ向上に加え、韓国製品の輸出促進や韓国企業の海外進出円滑化に多大な貢献を果たしている。
この取り組みに掛けられた予算は、平均すると年間約1200億ウォン(現在の為替レートで約1億ドル)である(注1)。TV番組の輸出だけでは充分に元を取ってないように思えるが、その他の効果を勘案すると測り知れない効果をもたらしている、莫大な効果を生んだ戦略的に成功した投資であると言えるだろう。
戦略的な行動ができない日本
それに対して日本はどうだろう。
過去蓄積されてきたコンテンツは、大河ドラマやアニメ、トレンディードラマなど膨大なものがあり、その一部、例えば『おしん』や『ドラえもん』は、各国で放映されそれなりの効果を残している。最近では、『ポケモン』や『ワンピース』など、各国で大人気と聞く。
しかし、「旬」のコンテンツの大量投入による効果は劇的である。例えば、インドネシアでは国民の多くが視聴するTVニュースの合間に、韓国アイドルのKARAが流れ、子供たちは皆KARAの真似に夢中である。かの地における日本のイメージは今のところ大変に良いが、韓国のイメージは急上昇しており、5年後を考えると寒いものがある。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120305/229468/?mlt&rt=nocnt
何故、膨大な蓄積を持つ日本のコンテンツは大きく海外展開ができないのか?主要な理由は以下の3つであると、筆者は考える。
1.著作権等権利処理の制約
コンテンツを商業利用するにあたって、権利関係の扱いは極めて重要かつデリケートである。昔の大河ドラマをはじめ過去のコンテンツにおいては、日本国内における放送や上映などの特定目的の利用を想定した権利処理が行われており、その海外利用やネット利用に当たっては、例えば画面に映る全ての出演者のパブリシティ権を本人と処理するという、想像を絶する手間が掛かるのである。
また、権利関係人の数が多く、かつ相互の権利が明確でない事も、問題をより複雑にしているところがある。
これらに関して、韓国や米国では、基本的に全ての著作権等の権利をコンテンツ作成者に集中する方策が法制度と実務の両面でとられているが、日本ではそのような方策はとられていない(注2)。
2.それなりにぬくぬくとした国内市場に満足し、手間が掛かりリスクのある海外市場への進出に気乗りがしない企業
日本の国内市場に比べれば、アジアの市場は価格や利益が相対的に小さい。人気があるコンテンツは、国内だけでも充分に稼げるので、わざわざリスクもあり利益が小さい海外展開の手間を掛ける事を、自然に避ける傾向が強い。
3.関係省庁がばらばらに政策を展開する中央官庁
文化行政を行う文部科学省、TV局を管轄する総務省、クールJAPANを推進し映画などコンテンツ産業を振興する経済産業省、著作権等権利関係の法律を所管する法務省という4つの省庁が各々の考えで行政を行っていくため、国家的戦略の遂行にあたって政策の統一性とスピードに欠ける。ちょっとネットで情報検索すると、同様の調査を複数の省庁やその外郭団体で行っているところ、腹立たしさを通り越して放心してしまう。最近は、外務省もポップカルチャー外交を謳い、昨年、21の国家戦略プロジェクトの一つとして制定された「クールジャパン推進に関するアクションプラン」(PDF)には各省庁のアクションプランが羅列されているが、とりあえず関連するものを全て並べた印象は免れず、とても戦略的なアクションプランと呼びうる代物ではない。
これらはいずれも、強い意志を持った政治リーダーがやる気になり、持続性を持って取り組めば解決できる問題だ。
だが、所詮コンテンツ産業という小さな産業における問題という認識なのか、国家戦略上における影響の大きさにも拘らず、誰も踏み出そうとはしない。官僚と民僚は、相変わらずためにする議論を延々と続けている。
日本は、果たしていずれ危機の津波が押し寄せて、そこで変わることを待つしかないのであろうか?
(注1)「韓国政府による対東南アジア「韓流」新興政策」 イ・ミジ 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科 東南アジア研究48巻3号 2010年12月
(注2)「映像コンテンツに係る諸外国の契約実態調査等に関する委員会報告書」 社団法人 著作権情報センター附属著作権研究所 2009年3月
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120305/229468/?P=2
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