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週刊新潮 12月17日号
やっぱり「すぐいる?」は麻薬だった
特集「押尾学」再逮捕までの嘘八百
薬物使用のカドで裁かれ、執行猶予中の身だった押尾学(31)が再び逮捕された。被害女性に部屋で落ち合う直前に送ったメール「来たらすぐいる?」の解釈を巡って嘘八百を並べ立て、まんまと捜査当局を欺き通した男の命運が、漸く絶たれたのである。
押尾学に再び逮捕状――。速報が流れた12月4日夜、警視庁麻布警察署は喧騒を極めていた。
「午後10時頃には、署に集まったマスコミの数は100人以上に膨れ上がっていたでしょうか」
と話すのは、現場に駆けつけたカメラマン。
「車が来る度にマスコミが取り囲み、フラッシュが焚かれる。レポーターは全く関係のない車を追いかけながら“今、押尾容疑者を乗せたと見られる車が麻布署に……”とマイクを持って喋り、”押尾さん! 被害者にクスリを渡したんですか!”などとまくしたてていました。ところが、待てど暮らせど押尾は移送されてこない。そのうちにみんな疲れてしまい、弛緩した雰囲気が漂っていました」
逮捕状に記された押尾の容疑は、麻薬取締法違反(譲渡)。六本木ヒルズの一室で亡くなった元銀座ホステス・田中香織さん(享年30)に合成麻薬MDMAを渡した、との疑いだ。警視庁は同日付で押尾の他に関係者2人の逮捕状も取った。1人は押尾にMDMAを渡したとされる知人の泉田勇介(31)。もう1人は押尾の元マネージャーの遠藤亮平(28)。
結局、麻布署で空騒ぎが繰り広げられた4日夜、そして翌日も翌々日も、”3人逮捕”の報がないまま過ぎ去っていった。ようやく身柄確保に至ったのは、逮捕状が出てから3日が経過した、7日午後4時すぎのことであった。
「もちろん警視庁としても逮捕状を取った日の身柄確保を目指していました。が、3人のうちの1人、泉田の行方が分からなくなってしまった。逮捕状が出た段階で、泉田に行動確認を付けていなかったのです」
と、全国紙の警視庁担当記者はこう語る。
「東京地検は押尾の再逮捕にゴーサインを出す際、”3人を同時に逮捕せよ”との条件をつけていました。まず泉田を取調べ、その内容を押尾にぶつけるためです。結局、7日に泉田と連絡が取れたから良かったものの、杜撰極まりない捜査です。ちなみに、押尾は横浜市内の人気モデルのマンションで逮捕されました」
警視庁関係者によれば、
「捜査一課は、最終的には押尾を保護責任者遺棄容疑で立件することを目指しています。MDMAの使用罪で判決が確定している押尾を、譲渡の罪で再逮捕したのはそのための布石。これまで押尾は"薬物は田中さんからもらった”と主張していましたが、実は彼自身が渡したものだった。それを立証することにより、被害者に対する保護責任者の立場を明確にすることができます」
しかし、である。ここで1つの疑問が頭に浮かびはしまいか。わざわざ裁判を間に挟まず、最初からMDMAの使用だけではなく、譲渡容疑でも立件し、そのまま”本件”である保護責任者遺棄容疑に繋げれば良かったのではないか? 今回のケースは同一事案での逮捕だが、別の容疑なので、同じ事件を二度裁いてはならない、という「一事不再理」の原則にはあたらない。とはいえ、一度判決が下された後に同じ事案で再び逮捕されるのは、「異例中の異例」(元最高検検事の土木武司氏)。
何故、そのような事態になったのか? この疑問を解き明かすには、警察の”迷走捜査”を嘲笑うかのごとく嘘八百を並べ立て、反省の欠片も見られない態度に終始してきた押尾の様子に触れながら、これまでの経緯を振り返っておく必要があろう。
六本木ヒルズの部屋で田中さんが死亡したのは、8月2日のこと。この部屋の所有者は下着通販会社『ビーチ・ジョン』の野口美佳社長で、押尾は自由に使うことを許されていた。
「田中さんの異変後、押尾からの電話で現場に駆けつけたのが、今回逮捕された泉田と遠藤。泉田は自らのツテを頼って”クスリ抜き”を手配し、遠藤は田中さんの携帯電話をマンション近くの植え込みに棄てたことが判明しています」
と、先の警視庁担当記者。
「人が1人死んでいるので当然、当初は捜査一課が出張ってきていました。しかし、”殺人の疑いなし”と判断されると、一課は第一線からは退き、薬物事案を扱う組織犯罪対策第5課が捜査を主導することになった。
これが間違いの始まりです。組対5課は薬物事案として淡々と処理しようとし、押尾の”薬物は田中さんからもらった”との供述を鵜呑みにしてしまったのです」 押尾が保釈されたのは8月31日。情勢に多少の変化があったのは、それからほどなくした頃だった。
「”押尾を保護責任者遺棄か、遺棄致死容疑で挙げろ”と、米村(敏朗)警視総監や、東京地検の岩村(修二)検事正が指示した、との情報が流れ始めたのです。それを受けて、現場も押尾の再逮捕を本気で視野に入れ始めたようだ、と」(全国紙社会部デスク)
“中村玉緒さんみたいに”
しかし、10月23日に初公判が行なわれるまでに押尾が再逮捕されることはなかった。そして、法廷では次のようなやり取りが繰り広げられたのである。
「押尾が田中さんに最後に送ったメールの文面についてです。そこには『来たらすぐいる?』とあり、その意味を問う検察官に、押尾は”『僕自身をいるか?』ということで、『薬がいるか?』ということではない”と答えていました」
と、司法記者が話す。
「検察官はさらに“それ(僕自身)は陰茎のことですか?”と聞き、押尾が頷くと、“でも当日の他のメールを見ても陰茎の話は出てこない”“これまでのメールを見ても陰茎やセックスの話は出てこない”などと畳み掛けた。それでも最後まで押尾は、MDMAを用意したのは自分ではない、と主張し続けていました」
寂とした法廷に幾度も響く”陰茎”という言葉−−。被害者の田中さんが欲していたのは”薬”ではなく、”陰茎”だとは、いかにも不自然である。そんな押尾は、法廷の外ではどんな顔を見せていたのか。
「4年前から取材を続けてきて、初めて押尾と会ったのは2年ほど前。彼が保釈されて3週間が経った頃、″話がしたい″と本人から電話があったのです」
こう語るのは、芸能レポーターのあべかすみ氏。電話を受けた翌日、早速あべ氏は東京・多摩市の実家に押尾を訪ねたという。
「最初は押尾と2人で、途中からは彼の両親も一緒に話をしました。事件だけではなく、離婚した矢田亜希子さんや息子のりあむ君のことなど……。彼は“留置場には帰りたくない”と言っていました。他の容疑者たちがいる房の前を通る時に“おい、押尾!と”野次を飛ばされるのは堪えたようです」
会話を続ける中で、リビングの隣室に置かれたダンボール箱があべ氏の視界に入った。
「それは何かと尋ねると、“アッコ(矢田亜希子)が着払いで送ってきた僕の私物です”とのことでした。矢田さんについては、“アッコももっと賢くなれば良いのに。中村玉緒さんみたいに、旦那(勝新太郎)が遊び歩いているのを許せれば、懐の深い女性だと世間で評価され、女優として、人間としての価値がもっと上がると思うんですけどね”とも話していました」
救いようのない男なのだ。
あべ氏はその後、10月9日と29日に押尾のために食事会を催した。参加者は、芸能事務所の女性社長や押尾の友人など数人。
判決前夜の電話
「1回目は韓国料理、2回目は鍋とかをつつきながらお酒を飲み、押尾はどちらの時も終始穏やかなムードだったんですが……」
と、あべ氏。
「1回目の時、私が亡くなった方のご遺族への謝罪を勧めると、それまで笑顔だった押尾が急に真顔になって“だーかーらー、その話はやめようよ、もうやめよう!”と語気を強めて言ったのです。最初に会った時とは明らかに変わっていて、"彼女が亡くなりさえしなければこんなことにはならなかった”という気持ちになっていたようです」
押尾に懲役1年6ヵ月、執行猶予5年の判決が下されたのは11月2日。
「その前日の夜、押尾から電話がありました。明らかに酔っ払った様子なので“大丈夫なの?”と聞くと、“飲んでますよー”(裁判所には)酔っ払ったまま行っちゃおっかなー”と言う。さすがに酷い態度だと思って頭にきました」(あべ氏)さらに、判決当日の夜にも電話があったという。
「やはりどこかの飲み屋と思しきにぎやかなところからでした“疲れました”と言いつつ、“でも5年は長いですよねぇ。まあ、これであっち(保護責任者遺棄容疑)に関しては立件されないってことですよね”と楽観的な見通しを語ってもいました」
先の社会部デスクは、
「判決の際、裁判官は犯行に関する押尾の言動を“信用し難い”と断じました。これは、押尾に対してだけではなく、“信用し難い”供述を鵜呑みにして立件・起訴した警察、検察への苦言でもあったのです」
として、こう語る。
「この裁判官の一言もあり、警察、検察当局は保護責任者遺棄容疑での立件に向けて“本気”で動き始めた。公判後、捜査が煮詰まっていく雰囲気を、押尾も肌で感じていたのでしょう。親しい知人には”再逮捕されても、刑務所には入らなくて大丈夫ですよね?”などと聞いていたといいます」 自らが渡したクスリで田中さんを死なせておきながら警察を欺き、法廷では嘘を繰り返して“刑務所行き”を免れた押尾だったが、果たして今度はどうか。
「通常、執行猶予中に別の犯罪を犯して逮捕されれば、それだけ罪は重くなる。しかし、今回のケースは、同じ案件での再逮捕であり、通常のケースには当てはまらない」(法曹関係者)
しかし、元最高検検事の土木氏(前出)によれば、「今回、押尾容疑者が保護責任者遺棄罪でも立件された場合、2年から2年6ヵ月の実刑判決が妥当でしょう。実刑判決が出れば、前回得ていた執行猶予は取り消しになるとみられます」 今度こそは獄に繋がれる可能性が高いのである。
死亡した田中さんの父親が慨嘆する。
「今後、色々なことが明らかになれば良いと思っています。押尾には真実を語って欲しい。真実が明らかになることが、娘の一番の供養になる。このままでは忍びないですから……」
異例の経緯を辿った後、再び法廷へと引きずり出される押尾。事件の全容解明へ、僅かに近づいたことだけは間違いない。