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<特集>里山戦略2014 第4章[1]農作物も電気も、畑に太陽光発電 東日本大震災を機に整備
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/miraitsunagu/48374.html
高さ2・5メートルの架台に2千枚余りの太陽光発電パネルが並ぶ。足元には公園や庭の緑化に使われる
園芸品種タマリュウの苗が等間隔で広がる。三重県菰野(こもの)町にあるこの約5千平方メートルの
農地では、作物と電気を同時につくっている。
農家の小掠三八(おぐらさんぱち)さん(57)が設備を造ったきっかけは東日本大震災。東京電力福島
第1原発事故に心を痛め、原発を1基でも止めるため個人にできることを考えた。20年以上栽培してきた
タマリュウは、日陰でも生育する。「3・11」の翌4月には農地での発電を頭に描いていた。
太陽光発電の施工会社や旧知の農業用設備会社に声を掛けた。だが農地法は農地の開発を規制している。
設備会社には「農地法は崩せない」と言われたが、三重県の担当者は「タマリュウを作る限り農地と
認めましょう」と計画を支持し、基礎部分の転用許可が下りた。地銀も1億数千万円に及ぶ融資を承諾した。
こうして約500キロワットの設備が完成し、2012年9月から一般家庭約150戸分の電気を生み出している。
小掠さんは「田舎のおやじの夢物語にみんながつきあってくれた」と振り返る。
12年7月開始の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度を追い風に、全国では大規模太陽光発電所(メガソーラー)
の導入が加速。農地を含めた土地需要が高まっている。だが、小掠さんは「私にとって上(太陽光)はおまけ、
大事なのは農地」と言い切る。
実際、パネルの間隔や傾斜は、霜対策をはじめとするタマリュウ栽培を第一に設計した。土を保護するため
全パネルに雨どいを付けた。一方、パネルがあることで霜害を防ぐ覆いを掛ける期間を短くしたり、
夏場の日焼けを防いだりする栽培上の利点もあった。
農林水産省は昨年3月末、生産性の高い優良農地に太陽光発電の支柱を立てて営農を続ける場合の取り扱いを
都道府県などに通知。支柱の基礎部分を一時(3年間)転用許可の対象とし、太陽光発電を認めた。
優良農地は原則として転用が禁止されている。営農を続けながらの太陽光設備が増えたことを受けての措置だった。小掠さんの持論と同様、“本業”の生産に大きな影響が出ないことが条件となっている。
県内にも発電と営農を両立する農地がある。
福井市土橋町の西岡清美さん(57)は、自宅隣の約500平方メートルの畑に太陽光パネルを設け、昨年3月から発電している。これまでにキュウリやレタス、小松菜、白菜、スイカ、カボチャなどを作った。「特に葉物はよくとれた。今後は1年目の結果を踏まえて植える作物を決めたい」と手応えを感じている。
西岡さんは野生動物管理・被害対策の資材メーカー「グリーンコップ」(福井市上河北町)の社員。設置には長谷川雅雄社長(63)の助言が大きかった。同社は社屋や工場の屋根に太陽光パネルを整備しており、植物の生育に関するノウハウもあった。
長谷川社長は、環太平洋連携協定(TPP)の影響や高齢化による農業離れを危ぐしている。だからこそ「農家に安定収入をもたらす太陽光発電は農地を維持する上で有効な手段だと思う。つくった電気を作物生産に使う方法もあるだろうし、農家にとってチャンスといえるのでは」と話す。
現段階では「農地の上の太陽光」を事業化する計画はないが、将来的に農業の活性化や自給率アップに貢献したいという青写真を描いている。
兵庫県姫路市では、市と地元のパネル製造会社が昨年から、稲作をしながら発電する社会実験に取り組んでいる。コメ作りは畑の作物に比べ多くの日照量が必要で、パネルで日陰ができる太陽光発電との共存は難しいとされてきた。
約1200平方メートルの水田に、パネル製造会社が開発した4基の発電設備(合計17・6キロワット)が点在する。このパネルは時刻に沿って太陽を追う。発電効率が約1・5倍になり、日陰になる部分を分散できる利点があるという。年間100万円の売電収入が見込める。
1年目、最も陰になる部分でも近隣水田の8割以上の収量があり、昨年3月に農林水産省が示した一時転用許可の条件を満たす出来だった。
担当の同市農政総務課は「市内では耕作放棄地が増えていて、農地を守るために市として一石を投じた」と狙いを説明する。通常設備より割高なため初期費用回収に15年弱かかるが、普及が進めばそれも早まる。
タマリュウの畑にパネルを設けた小掠三八さん(57)=三重県菰野町=も後継者不足に悩む日本の農業、農村に強い危機感を抱いている。だから小規模農家のモデル事例になればと考え、あえて法人化しなかった。
既に4千人超が視察に訪れている。自ら助言に出向くことも多く、四国ではパネル下の農地を温室にして、連作できる高効率の栽培と組み合わせる計画があったという。
太陽光設備があれば、若者を農村に呼んでもすぐに給料が払える。「継承や世代交代のきっかけになる。10年後には、農地の上にパネルが載っているのが当たり前の世の中になってほしい」
営農と発電の両立をいち早く実現させた小掠さんの夢だ。
太陽光や小水力などの再生可能エネルギーを利用した地域おこしの動きが広がる。雇用創出や産品のブランド化につなげている例もあり、まさに“地域のエネルギー”となっている。各地の現状を追った。
<環境記者室>
● 農地つぶさない工夫を ●
固定価格買い取り制度を受け、農地をつぶして太陽光パネルを設置する例が増えている。田畑は基本的に平らで日当たりがいい。太陽光発電をするのに好都合だからだ。
県によると、太陽光発電設備を造る目的で知事の転用許可を受けた農地は昨年末時点で14件、計1ヘクタール。約4万ヘクタールの県内農地全体からみればごく一部だが、栽培を続ける西岡さんらの例とは違い、これらは農地でなくなってしまった分だ。
農地にはさまざまな役割がある。用水の掃除など集落の共同作業は農地に関係したものが多い。田畑がなくなれば、地域のつながりは弱くなるだろう。大雨のとき農地はダムとなる。多くの生き物のすみかでもある。
同一面積で得られる収入は、太陽光発電と農業ではけたが違う。経済原理だけで、田畑が単なる「パネル置き場」に変わらないための歯止めと工夫が、より必要になる。
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