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ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上 敦
https://twitter.com/murakamiatsushi
ドイツのエネルギーヴェンデって・・・(その1)
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51823182.html
※エネルギーヴェンデ(Energie Wende):
エネルギー源をこれまでの既存の化石・原子力から再生可能エネルギーに転換することを、日本ではエネルギーシフトと呼んでいるが、ドイツではエネルギーヴェンデ(Energiewende)と言い、最近この言葉は世界語にもなり、英語圏でも「The Energiewende」と原語のまま使用されている。
これは、技術的には化石・原子力燃料への依存から脱却し、社会のエネルギー供給を再生可能エネルギーに転換することであるが、経済的にも分散型の投資や地域内におけるお金の循環によって、また社会的にも市民参加型で行われる、といった広義の意味合いがある。
まさに社会のヴェンデ(Wende=革命的大転換、維新)であり、単なる電源がシフトするだけの、例えば脱原発とは意味が異なる。
ドイツのエネルギーヴェンデが分かりにくい。
とりわけ電力分野について、福島原発事故の後、エネルギーヴェンデがマスコミで持ち上げられたと思いきや、ここ数年、秋になれば再生可能エネルギーが「電気料金の上昇の原因だ」として一斉にドイツのメディアによって批判されている。
エネルギーヴェンデとは、日本語で言われるようなエネルギーシフト、つまり電源の置換えだけを示す言葉ではない。技術的だけではなく、社会的、経済的な大転換、いわゆる経済革命、維新とも言える。
今回は、この分野に精通している人でしか理解できなくなってきたエネルギーヴェンデを総合的に俯瞰し、解説してみる。
ドイツのエネルギー政策
現在のドイツで有効なエネルギー政策は、2010年秋に、保・保連立の第二次メルケル政権が打ち出したエネルギー戦略に基づいて策定されている。ドイツは、2050年までに二酸化炭素の排出量を最大95%削減する目標を掲げているが、これはほぼ脱化石燃料の社会を実現するとも言い換えることができる。2022年の脱原発は当然これに含まれている。
その代替となるエネルギー、つまり再生可能エネルギーとは、太陽光や太陽熱、風力、水力、地熱、バイオマス(生物由来の資源)など持続可能な自然資源を、私たち人間が消費できる形(電力、熱、動力燃料)に転換したエネルギーのことを言う。
この脱原発・脱化石のエネルギー政策を、ドイツではエネルギーヴェンデと呼んでいるが、これは以下の3本の柱から成り立っている(それぞれがお互いに関連している)。
1.大々的な省エネ、エネルギーの高効率化対策の推進
エネルギー政策の中の一番重要な柱は省エネである。毎年、社会に投入されるエネルギー供給量(一次エネルギー換算)を2%ずつ省エネしてゆき、2050年までには少なくとも現在のエネルギー消費量の半減を目指している。
この取組みは、次の3つの柱から成り立つ。
1-1.社会におけるエネルギー消費量(最終エネルギー換算)の30%を占める暖房エネルギー、4%の給湯のエネルギーを2050年までに8割削減する。
具体的には省エネ建築の徹底があげられ、2021年から新築建物(住居、商業ビルなどすべて)では、上記の熱の部門について外部からの化石、原子力エネルギーを不要とするゼロエネ建築が義務化される。
同時に、既存建物を省エネ改修する助成措置も旺盛で、2050年までにはドイツのほとんどすべての建物において、断熱が強化され、太陽熱温水器などの自然エネルギーの導入も大々的に見込まれている。
現在すでに省エネ建築は年間55万戸ほど実施され、30万人を超える雇用がもたらされているが、将来的には改修100万戸、雇用70万人規模を目指している。
1-2.後述するが、熱効率が低い(35〜45%)、つまり排熱を大量に大気中や河川に捨てている石炭、褐炭、原子力発電所が徐々に廃止され、2050年までにすべての電源が再生可能エネルギーとなれば、現在莫大な量の排熱を捨てている分だけ、省エネ効果があがる。ここでの雇用増加数は2020年の段階で50万人を超える試算となっている。
1-3.熱効率が著しく低い(30〜40%)ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの内燃機関による自動車交通が、熱効率の高い(60〜80%前後)、電気自動車やプラグインハイブリッド、燃料電池車に2050年までに置き換えられれば、現在、車のラジエーターから莫大な排熱を捨てている分だけ、省エネ効果があがる。
内燃機関よりも高価となる車への置き換えのためにドイツの自動車産業にも大きな変革の波がやってくるだろう。またマイカー所有から共有車の利用という発想の転換も必要とされるだろう。自転車交通においてはすでに電化によるルネッサンスが訪れている。都市圏内の公共交通推進にも拍車がかかっている。これに超高齢化社会の波が来ることを予測すれば、ここで雇用が増加したり、経済効果があがるかどうかは、今後の自動車産業の取り組みにかかっているといえる。
2.地域暖房+コジェネの推進
暖房や給湯のためのエネルギーが8割削減されても、残りの2割は熱として必要となる。また、産業などでは工程熱などが必要である。こうした熱は、将来、出来る限り地域暖房によって供給されることになる。つまりエネルギー資源(灯油、電気、ガス)を購入して、自身の建物内で熱に変換するというスタイルではなく、温水、あるいは冷水の形で、地下の地域暖房網から熱を購入する形となる。
その温水を作る熱源は、ガスで稼働する内燃機関の発電機、あるいはガスタービンの発電機の排熱利用となる(電熱併給、コジェネと呼ばれる)。
再生可能エネルギーでは、常に需要に応じて発電することができないため、バックアップの発電施設が必要となる。このときに利用される発電機はガスで稼働するタイプのものであるが、熱効率を高めるため、必ず地域暖房に接続され、発電時の排熱が温水として有効に使用されなければならない。
こうした地域暖房のための工事(温水配管の埋設など)ではすでに大きな雇用効果があり、今後の増加が見込まれている。
また、再生可能エネルギーは、需要に応じて発電することができないため、電気を作りすぎてしまう時間帯も多くなる。その際は、余剰電力によって水を電気分解し、水素ガス、メタンガスを人工的に製造する。現在のロシアや北海油田からの天然ガスは、2050年の将来には、再生可能エネルギーからの電力余剰ガスに置き換えられる(Power to Gasと呼ばれる)。
ガスであれば貯蔵容量はドイツ国内にほぼ無限にある(岩塩採掘跡地の地下坑道など)。そのガスを利用してバックアップ電源や熱の供給が行われる。もちろん電力をガスに転換するプラントも、地域暖房の発熱コジェネ施設内に設置しなければならない。排熱を余すことなく利用するためだ。
現在のドイツのプラント製造などに関連する産業界は、このPower to Gas事業への先行投資で湧いている。他国よりもこの技術を先に推進し、成果が上がれば、一大輸出産業分野がここに出現する。
蓄電といえば、バッテリー技術への先行投資が盛んな日本であるが、バッテリーはB to C(ビジネスから消費者へ)の製品にならざるを得ない。もし、高性能の次世代バッテリーが世界で普及するようになれば、技術はコモディ化(大衆化)し、製造拠点は中国などの新興国になることは時間の問題だろう。その点、プラント建設というB to B(ビジネスからビジネスへ)の製品においては、コモディ化は起こらないか、ずっと後のこととなる。
3.再生可能エネルギーの推進
再生可能エネルギーの推進の部門では、熱と電気をわけて考える必要がある。
熱の部門では、薪ストーブやペレットボイラーなどのバイオマス燃料、あるいは太陽熱温水器がメインとなる。現在のドイツでは、新築や大規模修繕の際には、その建物における一定割合の熱供給を再生可能エネルギーで行うことが義務化されている。ただし、発熱量を数倍に増加させるようなバイオマス資源はドイツ国内にはすでに存在しないので、どちらかというと、上手なカスケード利用と、熱消費量そのものの削減、太陽熱温水器(あるいは太陽光発電+ヒートポンプ)がメインの対策になる。
電力の部門では、 ドイツでは、過去20年にわたって再生可能エネルギーの推進が国策として進められてきた。
1991年には、再生可能エネ電力を電力事業者が決まった金額で買い取りしなければならない法律(固定価格買取制度)がスタートし、それが2000年には全面的に強化された。ドイツ政府は2050年までにすべての電源を再生可能エネルギーで置き換える目標を立てている。ドイツの地理的、気象的な条件から、蓄電する必要の最も少ない黄金比率は、全体の電力需要の25〜30%を太陽光発電、60〜65%を風力発電、残りをバイオマス、水力などの発電で担うようになる。
1991年には再生可能エネルギー電力といえば大型の水力発電のみで、ドイツ全体の電力消費量の3%程度しか供給していなかった。しかし2012年末までには、太陽光発電が5%、風力発電が8%、バイオマス発電が6%、水力発電が4%と、合計23%の電力が再生可能エネで供給されている。
2050年までに、もし同じ電力量を必要とする社会になるなら、太陽光発電を現状の6倍、風力発電を8倍設置する必要がある。この2つの電源への投資は、もっとも雇用効果も高く、経済性も高い。市民が投資や建設に直接携われるのも魅力である。ドイツでは現在、700を超えるエネルギー協同組合が各地で設立され、エネルギーヴェンデを推進している。
また太陽光発電の原価は8〜15セント/kWhを下回るようになっており、陸上風力のそれは7〜8セント/kWhである。両者は近い将来に6セント/kWh前後のレベルに収束すると予測されており、年々高くなっている化石燃料の発電よりも安価となる。
一方、日本では再生可能エネルギー電力といえば、ダム式の伝統的な水力のみの状況が続いており(約7%を供給)、国際的にも遅れている。そのため、2012年にはドイツをお手本とした「固定価格買取制度」が施行された。しかし、まだまだはじまったばかりでもあり、水力以外のすべての再生可能エネ電力を合わせても2%程度という状況に留まっている。
(その2に続く)
ドイツのエネルギーヴェンデって・・・(その2)
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51823184.html
ドイツの省エネ政策の成果 燃料費2.6兆円節約
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51762291.html
メルケル首相への手紙 ドイツのエネルギー大転換を成功させよ
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51819472.html
- 「再生エネ」10分野で協定 県と独の州が技術融合 「福島民友新聞」 蓄電 2014/2/19 01:02:39
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