02. 2013年12月26日 08:36:06
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断熱住宅はいいことばっかり! 健康増進、疾病予防のデータずらり http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131201/biz13120118010004-n1.htm いよいよ師走。暖房を使う冬が一番エネルギーを消費する季節です。省エネ法に基づく断熱性能などの指標である省エネルギー基準が、今年4月1日に建築物(非住宅)について改正され、続いて住宅についても10月1日に改正されました。住宅・建築分野は、日本の最終エネルギー消費の3割以上を占めていますが、ライフスタイルの欧米化とともにエネルギー消費やCO2(二酸化炭素)排出量は過去より顕著に増加しています。低炭素社会の実現をめざし、エネルギー供給の問題を解決するためにも、住宅・建築分野の省エネルギー対策を一層進めていくことが求められています。今回は住宅の断熱性能の向上によりどのような便益(メリット)があるかについて考えてみたいと思います。 改正省エネ法のポイント 今回の改正省エネルギー法の最大のポイントは、省エネルギー性能の評価法の変更です。これまで住宅については、外皮(冷暖房する空間と外気の境界に位置する部位)の断熱性と個別設備ごとの性能をそれぞれ分けて評価していましたが、よりわかりやすく建物全体の省エネルギー性能を評価するため、「一次エネルギー消費量」を指標とする評価方法へと改正されました。 一次エネルギー消費量は、空調・暖房設備、換気設備、照明設備、事務機器・家電・調理などの設備のエネルギー消費量を合算して算出されます。太陽光発電システムやコージェネレーションといった創エネ設備がある場合は、省エネ効果はエネルギー削減量として差し引くことができます。 一般財団法人建築環境・省エネルギー機構理事長で、東京大学名誉教授の村上周三氏に今回の改正省エネ法をどう評価されるか伺いました。「国は、2020年に新築住宅の断熱基準の義務化を行うことをすでに発表していますが、これは、断熱基準に適合していなければ、家を建てることができないということです。義務化に向けて、今回の改正省エネ法の施行は、消費者と大工・工務店を含めた住宅産業が新たな断熱基準に慣れていただくという意味もあります」 断熱による意外な便益 日本の新築住宅のうち、建物外皮の断熱性能を指標とした1999年基準の適合率は約50%、既存住宅(約5000万戸)全体の適合率は6〜7%で、断熱性能は欧米に比べると大変低水準です。住宅の断熱が遅れてきた背景には、どのような理由があるのでしょうか。 住宅の用途別エネルギー消費の国際比較(図1)を見ると、日本は欧米に比べて暖房需要が非常に少ないことがわかります。日本では必要な時だけ暖める間欠暖房や必要な場所だけ暖める部分暖房が一般的で、北海道以外の東北以西では住宅全体を暖房するという考えがほとんどありません。そのため、一般に消費者にとって断熱の向上による光熱費削減は、投資回収の観点から見るとコストが高く、費用を負担するほどの魅力は少ないという面があります。住宅の断熱向上がどれだけ省エネや光熱費削減につながるのかと考えてしまいがちですが、断熱はそうした直接的便益だけでなく、同時に快適性や健康性、知的生産性の向上などの便益(ノン・エナジー・ベネフィット)を実現できるのです。 実際、日本の冬期における屋内環境の水準が欧米より低いことが問題になっています。入浴中の死亡者数(図2)は冬期に急増し、主な原因として、居間と脱衣所・トイレとの大きな温度差などが指摘されています。 「断熱性能が優れた住宅は室温が高くなり、それが健康にとって良い効果をもたらします。低い室温がもたらす健康障害についてはイギリスがもっとも研究が進んでいて、保健省が指針を出しています。室内は21度を推奨温度とし、18度は許容温度、16度未満は呼吸器系疾患に影響が出る恐れがあり、9〜12度の室内では血圧が上昇し、心臓血管疾患のリスクが生じます。5度になると低体温症を起こすリスクが高くなります。イギリスでは室内温度が10度以下のアパートの大家には強制的に断熱改修をさせるなど、法律で義務化しています」(村上理事長) 健康を考えると投資回収は見合う 2011年8月に日本建築学会で発表された「健康維持がもたらす間接的便益を考慮した住宅断熱の投資評価」によると、断熱性能の低い家から高い家に転居した人(1万257人)を対象にした調査で、心疾患の改善率は81%、糖尿病は71%、気管支ぜんそくは70%、関節炎は68%のほか、アレルギー性の疾患(鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎)についても、断熱性向上により病状の改善が見られたことがわかりました。疾病予防による医療費軽減と休業損失予防の便益は、1世帯あたり年間約2.7万円という試算も出しています。 アレルギー性疾患の改善は、断熱材をきちんと使うことにより防湿効果を高め、カビや細菌の発生につながる結露を防ぐことができるからです。「光熱費だけを考慮すると、投資回収が見合わないと思われるかもしれませんが、健康維持促進効果は家計負担を減らし、社会全体として医療費の国庫負担分など行政負担の減少につながります。断熱がもたらす便益は大きいのです」(村上理事長) 超高齢化社会に向かう日本において、家族や自分の健康維持・増進効果を考慮すると、断熱住宅の投資回収は負担に見合うものだと考える消費者が増えるように思います。既存住宅については、土壁木造住宅以外は、基本的に断熱改修リフォームは可能だそうです。断熱性能の向上がもたらす健康や快適性といった便益の価値をより多くの方に知っていただきたいと思っています。 |