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ロシア、LNG輸出自由化
独占体制見直し、開発促す シェール革命に対抗
【モスクワ=田中孝幸】ロシア下院は22日、国営天然ガス企業ガスプロムが独占する液化天然ガス(LNG)輸出を他のエネルギー関連企業に開放する法案を可決した。自由化によりLNG開発を促進し、急拡大が見込まれるアジアの需要に対応する狙い。供給先の多角化に加え「シェールガス革命」で加速する米国などのLNG輸出攻勢に対抗する思惑もある。
◆2社に輸出権を付与
法案はガス権益を持つ事実上の国営企業に限り、LNGの直接輸出を認める内容。プーチン大統領の署名を経て12月に発効する。
ロシアメディアによると、大統領の最側近であるセチン社長が率いる国営石油ロスネフチとガス大手のノバテクの2社が来年にも輸出権を得る見通し。その後も国内の開発ペースを速めるため、他の企業にも輸出権を与える可能性がある。
日本へのLNG輸出にかかわる日系企業にとっても追い風になる。ロスネフチはすでに丸紅などとサハリンの天然ガスを供給源とする年産1千万トンのLNG工場の建設を計画。ノバテクが北部ヤマル半島で進める年産1650万トンのLNG基地建設では日揮がプラント設計を受注しており、法案成立で事業化の動きは加速しそうだ。
◆世界の需要2倍に
ロシアは世界第二のガス産出国であるにもかかわらず、LNGの世界シェアは約4%にとどまっている。伝統的にガス輸出はパイプラインを利用した欧州向けに依存してきた。国内の生産拠点もサハリン南部の1つしかない。
世界のLNG需要はアジアの新興国を中心に今後20年で倍増が見込まれている。プーチン大統領はシェール革命による米豪などの台頭でシェアを失いかねないと判断。2020年までに年間輸出量を現在の約1千万トンの4倍に引き上げる目標を掲げ、輸出自由化を検討するよう指示していた。
低成長が続く欧州経済への依存度を下げる狙いもある。12年には欧州の景気低迷のあおりでロシアの天然ガス輸出は前年比で約9%減少し、経済の急減速の一因となった。タンカーで輸送するLNGには供給先を多角化しやすい利点がある。
◆ガス原料確保に難も
18年前後に生産開始を予定する主要3社のLNG事業がすべて計画通りに実現すれば、年間輸出量は20年までに政府目標である約4千万トンを達成する計算となる。これは日本の11年度の輸入量の半分に当たる。
ただ、LNG生産のためのガス供給源の開発・確保は思うように進んでいない。日本の官民が出資する資源開発「サハリン1」のガスを求めるガスプロムとロスネフチの対立も深まっており「新工場の生産開始は2〜3年遅れる可能性がある」(日系商社幹部)。
米豪に加えてカナダやナイジェリアもアジアへのLNG輸出を大幅に増やす構えで、競争激化は必至だ。気象条件の厳しさからプラントの建設費が膨らむ可能性もある。日本は供給増による価格低下に期待をかけるが、ロシア側が実際に国際競争力のある価格水準で販売できるか不透明な要素が残る。
[日経新聞11月23日朝刊P.6]
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