http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/947.html
Tweet |
世界全体ではマイナーリーグ以下の原子力発電
全エネルギー消費量のわずか2%を供給しているに過ぎない
2013年10月21日(Mon) 藤原 秀樹
前回の「バイオ燃料で世界から取り残され始めた日本」では、バイオ燃料の製造方法として、木質資源のガス化が欧米では試みられており、2014年からは実働プラントも稼働予定であること、日本は国土の68%の森林面積を持ちながら、そういった動きがないことを述べた。
では、世界全体のエネルギー供給は一体どうなっているのだろうか。まず、その点から見てみたい。
原子力は2008年の世界のエネルギー消費のわずか2%
図は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2011年に発表した2008年のエネルギー消費である。IPCCと言えば、つい最近2013年度のリポートが久々に発表されたと話題を呼んだが(前回は2007年)、それは各ワーキンググループの作業をまとめた評価報告書のことである。
ワーキンググループはそれぞれの中間リポートを出している。図は、そのワーキンググループIIIの2011年リポートから引用した(原図は英語表記、著者の責任で和訳)。
2008年のエネルギー状況(IPCC・11回ワーキンキンググループIII・セッション 2011)
ワーキンググループIIIは産業活動と温室効果ガスの関係などを取り扱うグループである。2008年のデータであるので、再生可能エネルギーが若干増加しているなど、多少の差はあるだろうが大きくは変わっていないものと思う。
上の図のように、石油(34.6%)、石炭(28.4%)、ガス(22.1%)の3種類で全体の約85%を賄っている。ここで重要なのは、核(原子力)が世界全体で見ると、2008年(福島第一原発事故とその後の日本の状況変化の前)でわずか2%にすぎないということだ。
しかも、この時点では米国、フランス、日本の3カ国で世界の原発発電量の50%以上を占めていた。米国:フランス:日本=10:6:5 程度である。
したがって、2011年時点で先進国ではすでに実証済みとして、発展途上国が原子力をこれからの技術でしかも安定的な電力源と見なすのも無理はない。福島第一原発事故後も発展途上国で大きくこの流れを見直すようなことはない。
何しろ1カ所で発電できる能力が桁外れに大きい。この動きは先進国も(日本でも)同様であったが、今後はどのような流れになるのであろうか。
日本は豊かな森林資源を生かしたバイオ燃料生産ができる
さて、再生可能エネルギーの中で、従来型バイオマスは6.3%、モダンバイオマスが3.9%となっている。従来型バイオマスには、木材を薪として、そのまま燃やす分が入っているためで、使ったあと植林をするかどうか不明であり、本当に再生可能かどうか分からない。
モダンバイオマス、つまりいわゆるハイテクで再生可能なものは3.9%。それでも、世界的に見れば核(原子力)の2倍である。その他の再生可能エネルギーである太陽光、風力、地熱などは2008年時点で0.1〜0.2%である。古くから行われている水力発電は2%で原発並みである。
石油は電気のみならず、燃料として使用可能で、しかも多くの石油化学製品の原料となる利点がある。石炭は電気が主な用途であり、石油代替として使用できないわけではないが、化石燃料でカーボンニュートラルでもないため、ほとんど行われていない(第2次大戦中のドイツでは行われた)。
ガスも石炭同様に電気が主な用途であり、燃料としても使用可能、コストをかければ石油代替になる。すなわち、化石燃料の中では、石油が液体という最も取り扱いに優れた形状をしているために、コスト的に安価(相対的に)であると言える。
一方、太陽光、風力、地熱、水力は基本的に電力に変換するしか、今の技術では利用不可能である(温水は可能)。しかも、太陽光、風力は不安定である。とても、石油のように、燃料として使用したり、石油化学製品の原料とはならない。
バイオエネルギーを見てみると、各種穀物由来のバイオエタノールやパーム油(やし油)由来のディーゼルがある。これらは、逆に燃料用途が主で、しかも、日本の国土では穀物からの変換は、カロリーベースの食料自給率が40%であることを考えると非現実である。パーム油に至ってはそもそも生育できない。
しかし、木質資源を原料としたバイオ燃料の生産は日本でも可能なのだ。なにしろ、日本の国土はその68.5%が森林に覆われている。その値は先進国の中では、北欧のフィンランド(72.9%)、スウェーデン(68.7%)についで世界第3位なのだ。
今後予測されるバイオマスエネルギーの伸び
それでは、エネルギーの将来予測はどうなっているのだろう。
エコノミスト・オンラインの記事(2010年11月9日)によると、「国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、1次エネルギーの全世界の需要は、2008年から2035年の間に36%増加する。新興経済国は、この増加のほとんどすべて(93%)を占めることになる。
中国はこの期間に需要を75%高めると予測される。供給サイドでは、中国は2009年から2025年の間に、2008年の米国の全体の設備容量に相当する容量を増加させる」とある。
また、「化石燃料は、エネルギー全体に占めるシェアとしては再生可能エネルギー源や原子力への移行により低下するものの、2035年時点ではいまだにエネルギーの主要なソースであろう」と予測している。
すなわち、先進諸国ではエネルギー需要はそれほど増加しないということである。日本、EU、米国はほぼ変わらない。伸びが予測されるのは、インド、中国、その他の諸国である。
需要減となるのは、OECD諸国での石油、石炭で、マイナス40%である。その代わりOECD諸国で需要の増えるものは、ガス(18%)、バイオマス(30%)、その他再生可能(26%)、核(20%)となっている。
2008年の予測であることを考えると、OECD諸国での福島第一原発事故以後の対応変化によっては、CO2を出さないエネルギー源であるバイオマスやその他再生可能エネルギーの割合が増えることも考えられる。少なくとも、OECD諸国ではバイオマスが最も伸びるであろうと予測されている。
それでは、バイオマスの中でもバイオ燃料の動きはどうなのであろうか。次回は米国の例から論じてみたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38882
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。