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[インフラ再生](上)ダムに眠る原発4基の力 電力・道路「改修+α」競う
ダム、道路、橋など暮らしや経済活動を支えてきたインフラの老朽化が目立ってきた。少子高齢化などを背景に、新設よりも費用を抑えながら機能を維持・向上させることが求められる。技術や発想の転換で「インフラ再生」時代に乗り出す企業の姿を追った。
80年を経て増強
福島県境に近い新潟県阿賀町。今秋、東北電力のダム式水力発電所「豊実発電所」が運転開始から80年以上を経て生まれ変わる。巨大な放水路を掘り直すなどしたうえで高効率の水車を導入。単に寿命が延びるだけでなく、発電能力が約6万1千キロワットと1割高まる。
改造工事は2008年に始まったが、東日本大震災後の発電コスト急増に悩む東北電力には、燃料費がかからない水力発電の戦力アップは貴重だ。建設費は数十億円規模とみられる。
「ダムの堤を高くするなど全国の水力発電所を改良すれば原子力発電所4基分の電力を新たに生み出せる」。豊実の再生を請け負った前田建設工業のダムグループ長、山本与四朗氏は明かす。産業界横断の研究会で試算したという。
水力発電所の法定耐用年数は57年。経済産業省によれば、09年には稼働後60年を超す発電所の数は全体の48%だったが、30年には76%に達する見込みだ。火力への依存度を下げつつ温暖化対策を進める観点からも、既存水力の活用法を考える余地がある。
神奈川県西部の海岸線に沿って走る自動車専用道路、西湘バイパスでは耐震補強工事が進む。供用から約40年がたつ。道路を支える橋脚は塩害も懸念され、太平洋の南海トラフを震源域とする巨大地震など大規模な自然災害の被害想定が出されるなか、強度確保は待ったなしだ。
工事量を半減
工事そのものは地場の建設会社でも対応できるレベルだが、乗り出したのは最大手の鹿島。先端技術に基づき必要な工事量を半減させるアイデアが、道路を管理する中日本高速道路を動かした。「どう直すか、提案力が問われる」(鹿島土木技術部)。
橋脚の中の鉄筋の腐食を防ぐため、外側のコンクリートに塩分が染み込んでいれば削り取って施工し直す必要がある。だが高圧の水を吹き付けて除去する作業は工賃が高い。鹿島は電磁波による測定などで塩分の浸透状況や鉄筋の太さを詳細に把握。将来の劣化をシミュレーションし、除去範囲を最小限に絞り込んだ。
東海旅客鉄道(JR東海)は4月から、来年開業50年を迎える東海道新幹線で大規模改修に着手した。東京―新大阪間515キロメートルのうち5割近くが橋やトンネルだ。費用は10年間で約7300億円と従来計画の3分の2に圧縮した。コンクリート橋を鋼板で覆って最大9倍の強度を持たせるなど技術開発の成果だ。
建設経済研究所(東京・港)の推計では道路、鉄道など社会資本の累積量は10年度時点で約750兆円。国土交通省によると現状並みに更新した場合、11〜60年度に必要な費用は合計約190兆円に及ぶ。今後働き手が減り、社会保障費が増大する日本には重すぎる負担だ。インフラ整備とどう向き合うか。今の延長線上に解がないのは確かだ。
[日経新聞6月18日朝刊P.13]
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