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電力不足を乗り切るための企業のエネルギー対策 どうなる? 日本のエネルギー
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/869.html
投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 01 日 15:05:14: .WIEmPirTezGQ
 

http://www.blwisdom.com/strategy/series/ecosp3/item/8634-11.html
電力不足を乗り切るための企業のエネルギー対策

第11回どうなる? 日本のエネルギー [前編]
経営・戦略 三木 優 2013年02月28日
1.電力・ガスの自由化

電力の市場は、一般の商品・サービスと違い、需要家には購入先企業を選ぶ自由がなく、長らく電力大手9社による地域独占体制が続いていました。契約電力50kW以上の工場やビル・店舗については、2000年以降、段階的に自由化がされており、電力会社以外の企業が新電力(従来は新規参入した電力小売事業者はPPSと呼ばれていましたが、最近では政府等で「新電力」の呼称が使われています)を立ち上げて発電事業に参入し、大口需要家や中規模のビル・工場へ電気を販売するケースが見られるようになりました。

一方、電力品質を保つために新電力へ大きな負担を求めたことや電力事業者同士が電気を売買できる「卸電力市場」が活性化しなかったため、新電力のシェアは増加せず、大手電力会社の営業区域をまたいだ「越境供給」も、ごく一部の例にとどまっていました。

しかし、福島第1原発事故後の計画停電を境に、環境は大きく変化しました。2012年7月には、経済産業省の有識者会議「電力システム改革専門委員会」において、「電力システム改革の基本方針」が示されています。この方針では、契約電力50kW未満の一般家庭や小規模事業者も、電力会社を自由に選択できる改革を実施することが明記されました。電気事業者の地域独占を撤廃し、料金規制(発電にかかった全てのコストを基に、一定の利益率を上乗せする料金体系)も撤廃されることになったのです。

同委員会は2013年2月、電力自由化に向けた制度改革案を公表。電力市場に競争を巻き起こし、電気料金の抑制につなげていくための、現実的なスケジュールを提示しました。


現在の電力自由化実施スケジュールでは、2013年および2014年の通常国会にて電気事業法を改正し、2015年に地域をまたぐ送電網の運用を行う「広域系統運用機関」を設立します。翌年の2016年に、既存の電力会社以外の企業にも家庭向けの電力販売を認める「小売り全面自由化」を開始し、2018〜2020年には、電力会社を発電・送配電・小売りの部門ごとに分社化するとしています。

2016年からの数年間は、経過措置として規制料金と自由料金が混在する時期があり、既存電力会社の分社化が終了し、一定の競争環境が整備された2020年頃に、自由化が完了します。これとオーバーラップする形で、ガス事業の自由化も進むことになり、2020年〜2025年頃に電力とガスの全面自由化が完了すると見込まれています。

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これらの電力制度改革が“骨抜き”にならないよう、新規参入を促す各種制度も、並行して整備されることになります。現在、以下のような制度・しくみが計画されています。

●卸電力市場の改革(活性化)
日本において、卸電力市場で実際に取引されている電力は、現状では発電量全体のわずか0.6%程度に過ぎません。電力業界に健全な競争を起こしていくには、自前の電源を持たない(またはごく少ない)新電力が、市場から電気を調達しやすくする、つまり卸電力市場の活性化が不可欠です。そのために政府は、電力大手に対して、予備として確保する電源以外は原則として卸売市場で販売するように求めていく方針です。

●部分供給制度
新電力にとって、ビジネスとして成り立つのは、消費が増えるピーク電力の部分。その反面、ベース供給力を確保するための設備投資・体制構築は大きな負担となります。そこで需要家サイドが、ベース部分を既存の電力会社から、ピーク部分は新規参入者から購入できるようにするのが、「部分供給」というしくみです。これによって、新電力はベース電源を保有していなくても、顧客を獲得しやすくなります。


●常時バックアップ
新電力が、既存の電力会社からベース電源を長期的に購入できるようにするしくみです。ベース電源の調達コストを抑制できることで、新規参入者の競争力を高めるねらいがあります。
【2013年 → 2016年】
一連の電力制度改革により、何がどう変わるのか?

「需要側の選択肢が増える」というメリット以上に重要なのが、自由化によって企業のビジネス形態にマッチしたさまざまなサービスや、合理的な料金メニューが登場すること。すでにエネルギーマネジメントを実践している中規模のオフィスビルや工場にとっては、大きなメリットが期待できます。

予想(1):魅力的な料金メニューを、新電力が相次いで開発
卸電力市場が活性化し、「部分供給」も可能になることで、たとえば従来から自由化部門において競争の激しかった、契約電力50〜500kW規模のオフィスビルや工場の需要家に向けて、新電力が知恵を絞った魅力的な料金メニューを提示するようになる。「ピークカットを実施していただくことで、料金を引き下げます」といった料金メニューの場合、昼の時間帯に長めの休みを設定したり、勤務時間を恒常的に早め・遅めにシフトさせるような企業の取り組みが、これまで以上に増えてくる。

予想(2):卸電力市場へ、ダイレクトにアクセス
卸電力市場へ直接アクセスする需要家、あるいは数社が共同で、卸電力市場から電力を調達するようなケースが相次ぐ。これによって、料金が高い時間帯には電力を使用せず、安い時間帯に集中して使うためのマネジメントシステムや、蓄電に対する需要が高まっていく。

予想(3):“スマート”な街・地域が、全国各地に出現
一連の電力制度改革で、スマートシティ/スマートコミュニティの実現に必要な制度も整備される。現状では一部の実証実験を除いてほとんど普及が進んでいないが、今後は分散電源、デマンドレスポンスなどの設備とエネルギーマネジメントシステムが組み込まれた、低環境負荷の街・地域が、全国各地に現れる。

予想(4):スマートメーターの普及
電力の自由化が進むことで、全ての需要家においてスマートメーターの普及が一気に進む。これによって電力会社は、需要家向けに付加価値の高いサービスを提供しやすくなる。たとえば電力需給が逼迫した際にも、遠隔から電力需要を制御することが容易になる。

予想(5):余った電気は、他事業所へ――
自家発電設備を所有する企業が、余った電気を自社の他事業所へ送電して使う「自己託送」が、規制緩和によって実現する。複数の事業所にある自家発電設備の稼働状況や蓄電池の残量など、エネルギー需給の情報をネットワークで集約し、エネルギーマネジメントシステムによって統合管理することが一般的になる。
2.シェールガスの輸入動向

米国では、価格の安い新型ガス「シェールガス」の開発と大量生産が行われており、米国内の天然ガス価格は、百万BTU(英国の熱量単位)あたり3〜4ドルまで低下しています。米国内の需要を大きく上回る生産能力を持ったことから、輸出の動きも強まっており、現在、日本への輸出についても認可される方向で、調整が進んでいます。

日本のLNG(液化天然ガス)輸入量は、火力発電需要の高まりで8,730万トン(2012年)にのぼっており、しかもその価格は米国の約5倍で、百万BTUあたり15〜16ドルです。これが、大幅な貿易赤字の原因にもなっています。米国のシェールガスを液化して輸入する場合、現在の輸入価格の1/2程度に抑制できると見込まれており、需要家にとっては電力購入コストの低減が期待できます。
【2013年 → 2016年】
米国からのシェールガス輸入により、何がどう変わるのか?

予想(1):2017年を待たずして、既存輸入先との間で有利な価格交渉が可能に
LNG化した米国産ガスを輸入できるのは、2017年からである。この年より、国内需要の10%以上のLNGを、米国から調達可能になる。その調達価格が現状の1/2程度になれば、東南アジア・中東のLNG供給者をはじめ、現在は石油価格に連動する価格決定方法によって割高な調達を強いられている相手とも、シビアな価格交渉ができる可能性が出てくる。彼らにとっても、将来にわたって旺盛な需要が見込まれる日本をつなぎ止めるためには、2017年を待たずして、現状の価格決定方法を見直す可能性が高い。

予想(2):アフリカ、そして南米・・・。調達先をさらに多様化できる
広大なシェールガス層を持つ資源国は、アフリカや南米などに多くあり、徐々に開発がスタートしている。日本が米国産ガスを輸入することにより、これらの資源国が、輸出を視野に入れた開発を加速させることも考えられる。買い手である日本にとっては、さらなる調達先の多様化が期待でき、電力料金の抑制や貿易収支のいっそうの改善につながる。

第12回どうなる? 日本のエネルギー [後編]
経営・戦略 三木 優 2013年03月27日
3. 原発再稼働への道のり
職業柄、私はいろいろな企業のエネルギー管理担当者から生の声を聞く機会が多いのですが、原子力発電所の再稼働に関しては、「新しい安全基準が策定されて、活断層のリスクがなければ、再稼働できるわけですよね・・・」というような認識を持っている人が意外に多いことに気づきました。

再稼働までの道のりは、実は、そう簡単ではありません。

現在、原子力規制委員会で策定されている新たな安全基準の骨子案には、地震・津波・航空機事故・テロなどを想定した複合的な事故対策、電源喪失対策、基準津波の設定(防潮堤の設置)といった要素が盛り込まれており、2013年7月18日から施行される予定です。この新しい安全基準は、「世界で最も厳しい」内容であり、これに対応するために、各電力会社は今後、非常に多くの期間と費用を要することになります。

現時点(2013年3月)で唯一、稼働している大飯原発も、新基準では必須とされる対策が完了しているわけではなく、2013年6月に実施される定期点検を機に追加的な対策を講じるため、一定期間停止になると見られています。つまり今夏には再び、国内の全ての原発が停止状態となる可能性が高まっているのです。

この安全基準には、稼働時にクリアしていることが必須の項目と、稼働後の一定期間内に完了すればよいものがあります。たとえば加圧水型原子炉のような、必須項目が少ない原子力発電所は7月以降、早期に安全審査を申請できる可能性があります。一方、沸騰水型原子炉を保有する原子力発電所では、審査を申請できるようになるまでに数年を要するケースも出てくるのです。

【2013年 → 2016年】
かつてない厳しい安全基準の適用によって、何がどう変わるのか?

予想(1): 再稼働の可能性も、対策完了までの期間も、現時点では不透明
● 2013年7月の安全基準施行後、どの原子力発電所が再稼働できるかは、現時点では不透明。非常に厳しい安全基準となったため、7月までに対策が間に合わない可能性が高い。
● 安全基準を満たすための改修計画の審査も7月以降であり、半年程度を要するため、既に改修が承認されている原子力発電所以外は、対応を始めるまでにかなりの期間がかかる。
● 原子力規制委員会の委員は、「新しい安全基準を完全に満たそうとすると、3〜4年程度かかる可能性がある」とコメントしており、厳密な運用がなされた場合、大半の原発が向こう数年間は再稼働しない可能性がある。日本の電力は、電源を火力発電などに頼る構造が、中〜長期にわたって続くことになる。

予想(2): 「原発再稼働→電気料金値下げ」・・・というわけにはいかない
● 再稼働に必要な費用は、原発一基当たり約200億円、電力業界全体で1兆円とも言われており、非常に重いコスト負担となる。最終的には、電気料金に転嫁される可能性が高い。
古い原子力発電所では、そもそも追加的な対策をしてまで再稼働させるべきかの経営判断を迫られる。電力会社が廃炉を選んだとしても、廃炉に莫大な費用がかかる。つまり再稼働/廃炉のいずれであっても、需要家の負担増は避けられない。
● 新しい安全基準のもとで再稼働が始まっても、これまでのように「原発はコストの安い発電方式」というわけにはいかなくなる。場合によっては、再稼働を機に電気料金が引き上げられる事態も想定される。
4.再生可能エネルギーの普及と、需要家の負担
2012年7月にスタートした固定価格買取制度によって、太陽光発電などの設備が急速に普及していることは、皆様もご存じのとおりです。
たとえば、2012年4月〜11月末に運転を開始した再生可能エネルギー発電設備の発電出力は、トータルで144.3万kWに上っています。このうち、太陽光発電設備が139.8万kWを占めています。

出所:経済産業省 資源エネルギー庁 平成24年12月14日News Release
「再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表します」

(*1)・・・経済産業大臣による設備認定の際に登録された運転開始予定日を基にした数値であり、実際の運転開始時期を精査した結果、事後的に補正される可能性があります。

(*2)・・・4月〜11月末までに運転開始した設備容量には、上記の他、35万kWの石炭混焼発電設備を認定していますが、発電出力のすべてをバイオマス発電設備としてカウントすることは妥当でないと考え、便宜上、設備容量に含めていません。

2011年度までの累積導入量と、わずか数カ月〜1年の期間に運転を開始した
新たな設備容量を比較した際、その顕著な伸びにも注目したい
2012年度末までの導入予測では、再生可能エネルギー発電設備のうち、約8割は太陽光発電設備となり、固定価格買取制度の効果が大きく現れていることがわかります。導入が進んだことで、太陽光発電のコストは、住宅(10kW以下)/非住宅(10kW以上)のいずれにおいても低下しています。
・住宅:46.6万円/kW→42.7万円/kW
・非住宅:32.5万円/kW →28.0万円/kW

この低減効果を踏まえて、2013年度の買取価格は引き下げられる見通しです。現状のコスト低減効果は、上記のとおり10%程度であることから、今の買取価格である「40円(住宅は税込42円)」から、4円程度引き下げ、「37.8円(住宅は税込38円)」となる見込みです。そしてこの程度の引き下げであれば、多くの参入企業において事業への影響、つまり採算性の悪化は軽微であり、引き続き太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入は拡大していくと見込まれます。


【2013年 → 2016年】
再生可能エネルギーの普及によって、何がどう変わるのか?

予想(1): 需要家の負担する賦課金が、右肩上がりで増加する
●高めの買取価格を背景に、再生可能エネルギーによる発電容量は当面、拡大傾向が続くと見込まれる。
●その結果、需要家が負担している再生可能エネルギー買取のための賦課金も、上昇し続ける。2012年度の賦課金は、全国平均で1kWhあたり 0.29円。標準的な家庭(月に300kWhを使用)の場合、月額7,000円程度の電気料金に対して、月に87円の負担となっている。この負担額が、来年度には120円程度(0.4円/kWh程度)に上昇すると見込まれる。今後、再生可能エネルギーが大量に導入された場合は、電力網を安定させるために行われる系統強化の費用も、需要家に転嫁される可能性がある。
●メガソーラー発電事業への参入など、企業がこの制度を活用する側に立った場合は、たいへん有利となるが、電気の需要家として賦課金を支払う立場になると、当面は負担のみが増加し続け、ある意味、不利な制度だとも言える。

予想(2): ドイツと同様の道をたどる
●固定価格買取制度の先達であり、お手本でもあるドイツでは、増え続ける賦課金(*3)に国民の不満が高まり、2013年と2014年は買取費用の賦課金への転嫁を凍結することを決定している。2015年以降も、転嫁する割合を2.5%に制限することや、再生可能エネルギー発電事業者への補助金の支払いを遅らせ、支出を抑制する案などが出ており、この買取制度自体を大幅に変更することも視野に入れている。

(*3)・・・2012年時点で、月額1,380円程度の負担。翌2013年は、1,930円程度まで跳ね上がる見込みだった。
なお、これらの金額は、1ユーロ=125円で計算したもの。

●日本でも、賦課金の負担が増えることで電気料金が値上がりすると、再生可能エネルギーの賦課金に対する不満が顕在化し、制度変更などが生じる可能性もある。たとえば、ドイツの現状が日本でも広く認知されてくれば、買取価格をさらに引き下げることで、再生可能エネルギーの導入量を抑制せざるを得なくなる。
5.地球温暖化対策の強化
わが国において、地球温暖化対策への人々の関心は、ひと頃に比べると、大きく低下しています。その大きな理由は2つあります。ひとつは2011年末に開催されたCOP17において、日本が京都議定書の第二約束期間へ参加しないことを表明し、翌2012年末のCOP18で不参加が確定したことです。もうひとつは言うまでもなく2011年の原発事故に伴う電力不足と輪番停電です。

あの重大な事故が発生して以来、国内では温暖化対策よりも、電力不足問題がクローズアップされる状況が続いています。かといって、日本は温室効果ガスの削減を放棄しているわけではありません。現在は、COP16において承認されたカンクン合意(*4)に基づいて自ら削減目標を設定し、自主的な温室効果ガス排出削減へ取り組むこととなっています。

温室効果ガスの削減目標といえば、「1990年比25%削減」というものが、皆様の記憶にも新しいかと思います。しかし2011年以降は、エネルギー・気候変動対策のための政策に大きな変更を施しているため、2013年末のCOP19までに、この削減目標を見直すことになっています。
「気温の上昇を、工業化以前よりも2℃以内の範囲に抑える」という、世界共通の削減目標を達成するためには、国際交渉の場で各国が表明している目標を積み上げても、なお10億トンの温室効果ガス排出削減が不足していることが指摘されています。途上国が先進国にさらなる排出削減の上積みを求めているのは、このことが背景にあります。そのため、日本が火力発電に依存した現在のエネルギー構成などを理由に、容易に実現可能なパーセンテージを設定すると、それは「後退した目標」とみなされ、途上国からの批判に晒される可能性が高いのです。

こうした理由から、削減目標については一定の水準を保ちつつ、25%に満たない部分は二国間オフセット・クレジット制度など、途上国で削減した温室効果ガスを、日本の削減分としてカウントする方法で対応していくと見込まれます。
国内対策については、地球温暖化対策に特化した施策こそ現時点ではないものの、2012年10月から実施されている環境税の税率が、2014年4月と2016年4月に引き上げられます。2012年の税率は、電気料金(東京電力の場合)に換算すると0.05円/kWh程度であるため、それほど大きなインパクトはありませんが、2016年には0.15円/kWh程度になります。

国内目標の設定次第では、今後は各企業がビルや工場の現場で取り組んでいる省エネが、努力目標ではなく「義務化」され、検証・報告のプロセスが発生したり、家庭における省エネについても、「断熱基準の徹底」、あるいは半ば強制的な「省エネ改修」などが、実施される可能性があるのです。

(*4)・・・2010年、メキシコのカンクンで開催されたCOP16で合意された国際的な枠組み。地球の気温上昇を、工業化以前よりも2℃以内の範囲に抑えるために、2050 年までの大幅な排出量の削減と早期のピークアウトを、共有のビジョンとする前提のもとで、一連の合意がなされています。

【2013年 → 2016年】
地球温暖化対策の強化により、何がどう変わるのか?

予想(1): 現状で判明している施策や法改正は、滞りなく実施される
「25%」という削減目標は引き下げられるものの、国内対策に力を入れていることを国際社会にアピールするために、追加的な取り組みが必要な水準は、保つ必要がある。そのため、環境税の引き上げなど、現状で判明している政策は滞りなく実施されていく。

予想(2): 企業が進める省エネへの取り組みが、「義務化」される
●追加的な対策としては、エネルギー対策として実施される省エネ法の強化や補助制度により、省エネ機器の導入促進などが想定される。
●国内対策の水準次第では、省エネの取り組みが義務化され、たとえば省エネ効果のモニタリング・管理が必須となる可能性がある。
Topic 新規エネルギー源 開発の動向

メタンハイドレート
「資源が少ない国」と認識されている日本列島および近海には、じつは未利用の資源・新規エネルギー源が多く存在しています。その代表的なものが、メタンハイドレート。海底の奥深くに存在する固体状のメタンガスであり、これを取り出すことで天然ガスとして利用できるのです。
2012年2月より愛知県沖で、世界初となる海洋におけるメタンハイドレートの産出試験が始まっており、2013年度には本格的な試掘が開始されます。

日本の周辺には、国内需要の100年分をこえるメタンハイドレートが存在していると見込まれており、効率よく安全に採掘できる技術が開発されれば、2020年以降に商業的な生産が行える可能性があります。エネルギー調達の多様化やエネルギー価格の抑制など、大きなインパクトを秘めているのです。

天然ガス
もうひとつの有望な新規エネルギー源は、天然ガスです。とりわけ新潟県沖には、大規模なガス田が存在している可能性があります。新潟県は、ロシアからのLNG輸入受入基地としての側面があり、ガス田開発とLNG受入が並行して進むことで、将来は日本におけるガス供給の一大拠点になる可能性があります。

このほかにも、「石油を作る藻」「光触媒による水素生産」「人工光合成」など、今後3年程度で大きくブレークスルーする可能性のある新規エネルギーの技術開発が、国内で相次いで進められています。近い将来、全く新しいエネルギー供給の形態が、実現しているかもしれません。
まとめ
「どうなる? 日本のエネルギー」と題し、2回にわたって、日本のエネルギーに関する重要課題を考察してきたわけですが、企業や生活者に与える影響の部分にもう一度焦点を当て、締めくくります。

電力・ガスの自由化
高圧(*5)需要家にとっては、電気料金の引き下げ効果あり。ただし、新電力から提示される廉価の料金メニューに対応するために、需要家サイドでピークカットなどへの取り組み、および設備投資が必要。
(*5)・・・契約電力が50kW以上、2,000kW未満の需要家に適用される契約種別

シェールガスの輸入動向
米国からの輸入が実際に始まるのは、2017年。しかし、調達先の多様化によって、既存の売り手への牽制効果が生まれ、電力・ガス価格の引き下げ効果が、ある程度は見込める。

原発再稼働への道のり
新しい安全基準が定められ、7月から施行されるものの、この厳しい基準をすぐに遵守することができる原子力発電所は限定されるため、早期の再稼働による電気料金の引き下げ効果は期待できない。逆に再稼働の遅れ、安全基準を遵守するための追加コストにより電力の価格が上がる可能性もある。

再生可能エネルギーの普及と、需要家の負担
再生可能エネルギーの導入は引き続き進み、需要家が負担する賦課金も上昇し続ける見込み。電気料金の引き上げ要因となる。

地球温暖化対策の強化
温室効果ガス排出削減目標の大幅な引き下げは難しい。環境税の税率アップなど、独自政策により若干の影響はある。省エネ法改正など、他の政策に相乗りが基本。電気料金の引き上げ要因となる。

省エネ法改正(連載第10回で解説)
ピーク対策による省エネへの取り組みの評価がますます高くなる。BEMSや蓄電池の導入・活用を進めなければ、ピーク対策が遅れ、自由化のメリットを享受できない。むしろ、電力購入コストの上昇につながってしまう。
+αふたことアドバイス
1. 「対策なし」だと、トータルでコストアップになる

電力の自由化やシェールガス輸入により、エネルギー価格が引き下げられる可能性が出てきた。反面、原子力発電所の全面的な再稼働があと数年は難しいこと、再生可能エネルギーの普及による賦課金の上昇などを踏まえると、何も対策を講じない場合は、自社で購入するエネルギーのコストが、トータルではアップする可能性が高い。

2. 電力自由化などの改革で、ICT投資を上回るコスト抑制効果が見込める時代に

電力の自由化によって、従来の大手電力会社とは全く違うビジネスを始める事業者が登場したり、自社内で複数の事業所を束ねて、電力の卸売市場から直接電気を購入してトータルでマネジメントを行う製造業・流通業が相次ぐなど、今後はアグレッシブな動きがいろいろな業界で起きてくる。動きの激しいエネルギー関連の動向に対して、これまで以上に情報のアンテナを張り巡らしておけば、自社にとって最善の対策を立て、素早く行動することができる。政府の補助メニューを上手く活用すれば、初期費用を抑制しながらエネルギーコストを削減することも可能になる。社内/外で起きている“事実”を集積し、分析・施策へとつなげられる体制を整えておけば、コストダウンなどの恩恵を最大限受けることができるのである。

こうした取り組みと並行して、自社のエネルギー使用の現状を、正確に知っておく必要がある。そのための有効な手段は、これまでの連載記事でも記載してきたとおり、ICTを活用したエネルギー使用量のきめ細かな「見える化」である。現状を把握したうえで、たとえばエネルギーの効率的な活用を目的とした事業所間の連携も、有効な策となり得るし、その推進にはICTによる統合的なエネルギー管理のしくみが大いに威力を発揮する。

今までは、こうしたことがわかっていても、ICT投資を上回るメリットが見込めないため、見える化をはじめとするエネルギーマネジメントには慎重な企業が多かった。しかし、これからの変化を考慮すると十分なメリットが見込めるし、むしろ企業にとって必須のしくみになると、私は予想している。

(2013年3月27日公開)
【講師:三木 優 氏】株式会社日本総合研究所 総合研究部門 社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ マネージャー。これまでにエネルギー企業を中心としたコンサルティング・調査業務に従事。主にエネルギー・環境に関する新領域に進出する際の事業性評価・事業戦略の策定に関するコンサルティングを行なってきた。近年は、地球温暖化を背景とした省CO2戦略の策定やカーボンブランディング、海外における二国間オフセット・クレジット制度やCDMプロジェクトに関するコンサルティングを行っている。
放送一覧
• 節電2年目の夏、去年と今年は何が違う?2012年8月1日放送
Podcastダウンロード
• 開始から1ヶ月、再生可能エネルギーの買取制度!2012年8月8放送
Podcastダウンロード
• 電力自由化で電気代は安くなる!?2012年8月15日放送
Podcastダウンロード
• 電力自由化・ガス自由化でエネルギー業界はどう変わる!?2012年8月22日放送
Podcastダウンロード
• これからのエネルギーの話をしよう!2012年8月29日放送
Podcastダウンロード
http://www.blwisdom.com/strategy/series/ecosp3/item/8635-12/8635-12.html?mid=w405h90200000492638&start=1
 

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コメント
 
01. 2013年4月02日 15:29:17 : xEBOc6ttRg
米シェールガス会社が破綻=生産過剰で値崩れ
時事通信 4月2日(火)7時11分配信
 【ニューヨーク時事】非従来型の天然ガス資源のシェールガスなどを生産する米エネルギー会社GMXリソーシズは1日、オクラホマ州の連邦破産裁判所に対して、連邦破産法第11条(民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した。
 米国産シェールガスに対しては、安いエネルギーとして日本から注目が集まっている。だが、「シェール革命」による生産過剰で、米国では天然ガス価格が2008年のピーク時から3分の1程度に値崩れしており、GMXの経営も行き詰まった。 

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採取試験、日量2万立方メートル=「開発、明るい方向に」
世界初の海底産出成功=愛知沖メタンハイドレート−国産資源活用へ前進
最終更新:4月2日(火)14時15分

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02. 2013年4月05日 02:38:14 : nJF6kGWndY
【第12回】 2013年4月5日 
新エネルギー政策の全体像提示に
避けては通れない三つの要因
――植田和弘・京都大学大学院経済学研究科長・経済学部長
日本のエネルギー政策はいかにあるべきか――。その方向性を見定めるには、エネルギー政策の方向性を左右する要因を明らかにしておく必要がある。その要因とは何だろうか。こういう問いに対しては、これが決定的な要因だといった、何か1つの答えを用意したくなる。そして、実際に決定的と思える要因をいくつか挙げることができるが、本稿では三つの要因を取り上げる。

シェールガス革命を発端に
世界のエネルギー事情は激変


うえた・かずひろ
1952年、香川県生まれ。京都大学大学院経済学研究科長・経済学部長。京都大学博士(経済学)、大阪大学工学博士。97年、京都大学大学院経済学研究科教授。2002年、同大学地球環境大学院教授兼任。政府の「総合資源エネルギー調査会総合部会」委員、大阪府市「エネルギー戦略会議」座長。著書に「国民のためのエネルギー原論」(日本経済新聞出版社)など多数。
Photo by Masato Kato
 第一の要因として挙げられるのが、いわゆるシェールガス革命である。

 シェールガスの生産コストが低下し商業化したことで、天然ガスの可採埋蔵量が現状約60年分といわれていたのが約120年分と倍増するという。

 その結果、これまで化石燃料の大量輸入国であった米国が、2020年頃には天然ガスの純輸出国に変わると予測されている。米国ではシェールオイルも産出するので、関連製造業の復活すら起こり始めている。米国が化石燃料を中東に依存していたために生じていた政治的・軍事的諸問題にも激変が起こるであろう。

 シェールガス革命が、エネルギー需給関係だけでなく、より広くエネルギーに関する政治的経済的状況に対して、いつ頃、どの地域に、どの程度の影響を及ぼすことになるのか。このことをどう見通すかは、単なる予測の問題ではなく、日本のエネルギー政策の背景を理解し、前提条件を設定する際に欠かせない作業でもある。

 2000年以降ほぼ一貫して上がり続けてきた化石燃料の価格(石油価格でみると2008年は2000年の約5倍である)動向への影響が特に注目されるが、2008年以降、米国の天然ガス価格は低位に推移し、現状では日本のガス価格との差が顕著になっている。

 しかし、シェールガス革命の影響は米国内にとどまるものではない。米国で天然ガスと石炭の相対価格が変化し、天然ガスが石炭にとってかわったために、米国産の石炭が安値でアジアやヨーロッパに輸出されるなど、すでにグローバルな影響が表れている。

 また、シェールガス革命の結果、日本のガス調達価格が、いつ、どれくらい下がることになるのか。福島原発事故後、電源構成が大きく変化し、2011年2月の時点では32%であったLNG火力発電の比率は、2012年の10月から12月の3カ月平均では48%にのぼっているため、ガス調達価格を低減できることの効果は一層大きくなっている。

 要するに、ガスに始まって化石燃料全体の世界的な需給関係が大きく変化する可能性があり、日本のエネルギー政策の将来、特にエネルギーコスト低減戦略にきわめて大きな影響を与えることになる。

4つの原発事故報告書は店晒し
根拠薄れる新たな「安全文化」

 第二の要因が、原子力発電所の再稼働問題である。

 日本のエネルギー政策の見直しは、東京電力福島第一発電所の事故(以下、福島原発事故)を受けて始まった。現政権は、「前政権のエネルギー・環境戦略をゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築する」としている。

 その具体的内容はまだ明確ではないが、「省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入」を進めることと、「原子力規制委員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します」という方針を示している。

 この方針が提示されたことをもって、現政権は原発再稼働に舵を切ったといった新聞報道がなされている。しかし、この方針に基づいて、実際に何基の原発が再稼働されるかは、きわめて不透明である。なぜなら、この方針が言っているのは無条件の再稼働ではなく、再稼働には「原子力規制委員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げます。その上で、安全が確認された」という前提条件が付いているからである。

 原子力規制委員会の下で、どのような安全文化がつくられるのだろうか。また、安全が確認されたとはどういう状態を指すのだろうか。これらのことが明確にされなければならない。

 福島原発事故に対する反省という原点に立ち返るとすると、まずなすべきことは、福島原発事故の原因を明らかにし、対策を明確にすることである。この当然と思われることが国民に分かりやすい形で進められていないことは問題といわざるを得ない。

 特に、福島原発事故の原因を調査した委員会の報告書が出されたにもかかわらず、店晒し状態になっているのは解せない。国会事故調査委員会、政府事故調査委員会、民間事故調査委員会、もし東京電力から出された報告書も含めるとするならば、福島原発事故の原因を調査した4つの報告書があり、それぞれ重要な指摘が行われている。

 しかも見過ごすことができないのは、これら4つの報告書の内容に齟齬があるという点である。塩谷喜雄氏の近著『「原発事故報告書」の真実とウソ』によれば、地震の第一撃による安全上重要な機器とシステムの損傷について、報告書間で次のような違いがあるという。

 政府事故調は「壊れた証拠は見つからないから、壊れていない」と推認し、国会事故調は「壊れなかったと断じる証拠はなく、壊れた可能性を示唆する証拠もある」と逆の報告をしている。東電事故調は、破損と破綻はすべて異様に巨大な津波が原因だと主張し、地震では無傷だったとしているが、民間事故調は「データ記録からプラントの健全性を示すパラメーターを読み取るだけでは、実際の破損状況はわからない」としている。

 いずれの報告に基づくかによって安全対策の内容がまったく違ったものになることは明らかであろう。政府と国会は、報告書を受けて直ちに討議の場を設定する責任があろう。そうでなければ、何のために事故調を組織し報告書を作成したかが分からなくなるし、二度と福島原発事故を起こさないという根拠がなくなってしまう。

拙速な原発再稼働は
安全神話復活に繋がる

 当面、原発再稼働に大きな影響を及ぼすと考えられるのが、原子力規制委員会が今年7月に提示する予定の原子力安全規制基準の内容とその適用問題である。世界最高水準の規制基準がバックフィットで適用されることになると、安全規制の面から再稼働してもよいという原発の数はかなり限定されることになるであろう。仮に技術的には基準に適応可能だとしても、適応するために要するコストが膨大になり、原発再稼働は経済的合理性を持たなくなるかもしれない。

 これに対して、原発再稼働をしなければ、海外からの化石燃料調達費の負担が重く、貿易収支が赤字化し国富の流出が避けられないという危惧の念が表明されている。こうした懸念はよく理解できることであるし、化石燃料調達コストを下げる努力はなされなければならない。だが、化石燃料調達コストを下げるために、安全基準を緩くして原発の再稼働を急ぐべきだというのでは、まったくの本末転倒である。

 なぜなら、原発再稼働のために安全基準を緩くするということになると、何のための独立性を持った原子力規制委員会をつくったのかわからなくなり、エネルギー政策に対する信頼の回復という命題の実現は遠のいてしまう。

 福島原発事故の原因でもあり、我々が事故に対して何の準備もしていなかったに等しかった、いわゆる安全神話が復活してしまう。福島原発事故の最大の教訓は、世界最高水準の安全性は、何よりも優先して徹底的に追求されなければならないということである。もし、安全規制基準が現状を追認するような内容になるならば、規制基準は原発再稼働の免罪符の役割を果たすことになってしまう。

自国だけでは決められない
克服が難しい廃棄制約

 今後のエネルギー政策を考える上で考慮しなければならない第三の要因は、廃棄制約である。

 廃棄制約とは廃物を棄てられないという制約がエネルギー政策の制約条件になるということである。廃物を棄てると廃棄物になるが、棄てることができるためには廃棄物を受け止めてくれる処分先がなければならない。その処分先を決められない場合には、廃棄制約が明るみに出る。

 廃棄制約の一番わかりやすい具体例は、原発事故が起こった福島に現れている。

 福島県では現在除染が行われているけれども、そこで行われている活動は除染ではなく移染に過ぎないと言わざるを得ない。除染の対象になっている放射性物質を除いているのではなく、移しているだけだからである。

 すなわち、除染の対象地域において除染が行われることによって、その地域の放射性汚染の濃度は低減しているはずである(これ自体検証されなければならない)。しかし、一般に放射性物質は除染活動によってなくなるものでもないし、直ちに無害化されるものでもない。だとすれば、除染活動によって取り除かれた放射性物質はどこに行くのだろうか。

「除染ではなく移染である」というのは、まさにこのことであり、除染活動によって「除かれた」放射性物質は、別の場所に「移された」だけなのである。そして現状は、その放射性物質を移す処分先が見つからないために、仕方なく例えば自宅の庭に暫定的に埋めているという現実である。これが廃棄制約でなくて何であろうか。

 今後、エネルギー選択においてこの廃棄制約問題を避けて通ることはできない。エネルギーというと、どうしてもエネルギーの質と量、そしてコストが議論の対象になる。福島原発事故の前まで、大半の国民は、電気代さえ払えば電気は送られてくると考え、コンセントの向こう側、すなわち自分の使う電気のつくられ方、例えば東京で消費している電気がどこのどういう発電所でつくられているかについてまで関心を持たなかったのではないか。

 しかし、同じ電気を生産するにしても、どの発電方式を採用するかによって、廃物の量と質は大きく異なることになる。

 原子力発電のアキレス腱の1つは、廃棄制約の克服が難しいということである。使用済み核燃料について現政権は、従来の核燃料サイクル政策を継続するという方針であるが、六ヶ所再処理工場は、当初1997年の竣工を想定していたものの、累計19回にわたり竣工時期を変更してきた。

 また建設費についても当初7600億円を想定していたものの、現実には約2兆2000億円にまで増加している。およそ通常の民間事業ならば疾うの昔に断念されているであろう。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分地も決まっていない。日本にある一般の企業から排出される産業廃棄物に関して、その最終処分地が決まっていない企業はないはずだ。もし処分地が決まっていない企業があるとしたら、それは法律違反だからである。日本で排出される産業廃棄物は廃棄物処理法に基づいて管理されている。

 ところが、放射性廃棄物は廃棄物処理法の対象から外されており、別扱いになっている。2000年からは「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(特廃法)に基づいて最終処分地選定を進めてきたが、まったく見通しは立っていない。国際的には、自国で発生した放射性廃棄物は、発生した国でそれぞれ処分するのが原則である。我々が考えるしかない。

 日本学術会議から2012年9月に「高レベル放射性廃棄物の処分について」と題する(審議依頼をした原子力委員会に対する)回答書が出され、「暫定保管と総量管理を柱とした政策枠組みの再構築」が提言されている。この提言を踏まえた原子力委員会の見解でも、「廃棄物処分への取組が原子力・核燃料サイクル政策と一体で議論されてこなかった」と述べられているが、今後、廃棄物処分に関する明確な見通しとそれに対する国民的合意なくして、原発再稼働が進められることがあってはならないだろう。

 廃棄制約は、火力発電にも重くのしかかっている。CO2をはじめとする温室効果ガスも廃物であり、それを大気中に棄てれば廃棄物である。20世紀の半ばまでそれに対する制約がかかることはそれほどなかったが、公害対策が必須のものになり、地球温暖化防止が人類史的課題として顕在化する中で、火力発電生産から排出される廃物を大気中に捨てられなくなってきたのである。

 今後この制約はますます厳しくなっていくであろう。仮に大気環境容量に限界があり、中国やインドの成長に伴う温室効果ガス排出量の増加があるとするならば、日本を含む先進国からの排出量がより厳しい制約を受けることは必然といわざるを得ない。

 エネルギー政策はこの廃棄制約を考慮したものでなければならないが、この廃棄制約の具体的内容は自国だけで決めることはできず、国際交渉を通じて決まるところに難しさがある。

 今後のエネルギー政策を考える上で避けて通れないいくつかの問題を検討してきた。しかし、まだ序の口に過ぎず、日本のエネルギー政策はいかにあるべきかという問いに対して答えることはできない。エネルギー政策に大きな影響を及ぼす要因が、これら以外にも数多くあるからである。

 実際にはエネルギー政策はさまざまな要因が絡み合っている複雑系なので、実に多くの要因が関連しているし、その全体を考えなければならない。エネルギー政策の全体像、トータル・ソリューションを示す必要があるように思われる。
http://diamond.jp/articles/print/34261

 


03. 2013年4月12日 08:06:17 : eDSpB4Kx1M
いずれにしても、安全措置を無視し、かつ廃炉処理を先送りした上での「原発安価神話」が崩れることは結構なことだ。

04. 2013年4月22日 20:08:23 : YxpFguEt7k
金子勝氏
「The Pew Charitable Trustsの調査で、日本のクリーンエネルギー投資が163億ドル、73%増加となり、発電容量2GW余りに。日本は世界4位に入り、トップ10入りした。風力、地熱、小水力などはまだまだこれからです。」
https://twitter.com/masaru_kaneko/statuses/325769546357174272

まだまだ、これから。クリーンエネルギーを促進しましょう。


05. 2013年4月24日 19:17:08 : YxpFguEt7k
伊藤公紀氏
「IBMが本気で集光型太陽光発電に取り組んでいるらしい。冷却部分にCPU冷却技術を使用。日本でも是非、重要な技術改良を! 補助金頼みのメガソーラーでは先が知れている。」
https://twitter.com/Itoh_Kiminori/statuses/326971637410983936

補助金事業から離陸を!


06. 2013年5月19日 17:38:50 : Ak1sbzdHKU
九電 地熱発電所新設へ調査、大分の国立公園内で
http://kyushu.yomiuri.co.jp/zoom/20130518-OYS9I00310.htm
 九州電力は17日、大分県・くじゅう連山の国立公園内で6月から、地熱発電所建設が可能かどうかを見極めるための調査を始めると発表した。国立・国定公園内の開発規制は昨春に緩和されており、一帯の温泉成分の分析や地層の状況などを調べ、発電所の新設につなげたい考えだ。

 調査地点は大分県由布市と竹田市、九重町にまたがり、規制が緩和された「特別地域」を含む「平治岳ひいじだけ北部」地区の15平方キロ。九電は6月に温泉源の現状調査に着手し、7〜11月に地層の状況や地中の電気、磁気の流れ方などを地表から調べる。その結果や地元との協議を踏まえ、井戸を試掘するかどうか判断する。

 九電は大分、鹿児島県に計6か所の地熱発電所を保有しており、出力ベースでは全国の4割を占める。ただ、低温の地熱エネルギーを利用する小規模な八丁原はっちょうばるバイナリー発電所を除くと、1996年以降は新設できていない。開発が規制されていた国立・国定公園に適地が多いためだが、環境省は規制緩和により、条件付きながら特別地域の一部での開発を認めるようになっている。

(2013年5月18日 読売新聞)

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20130518-OYS1T00315.htm


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