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http://www.blwisdom.com/strategy/series/ecosp3/item/8634-11.html
電力不足を乗り切るための企業のエネルギー対策
第11回どうなる? 日本のエネルギー [前編]
経営・戦略 三木 優 2013年02月28日
1.電力・ガスの自由化
電力の市場は、一般の商品・サービスと違い、需要家には購入先企業を選ぶ自由がなく、長らく電力大手9社による地域独占体制が続いていました。契約電力50kW以上の工場やビル・店舗については、2000年以降、段階的に自由化がされており、電力会社以外の企業が新電力(従来は新規参入した電力小売事業者はPPSと呼ばれていましたが、最近では政府等で「新電力」の呼称が使われています)を立ち上げて発電事業に参入し、大口需要家や中規模のビル・工場へ電気を販売するケースが見られるようになりました。
一方、電力品質を保つために新電力へ大きな負担を求めたことや電力事業者同士が電気を売買できる「卸電力市場」が活性化しなかったため、新電力のシェアは増加せず、大手電力会社の営業区域をまたいだ「越境供給」も、ごく一部の例にとどまっていました。
しかし、福島第1原発事故後の計画停電を境に、環境は大きく変化しました。2012年7月には、経済産業省の有識者会議「電力システム改革専門委員会」において、「電力システム改革の基本方針」が示されています。この方針では、契約電力50kW未満の一般家庭や小規模事業者も、電力会社を自由に選択できる改革を実施することが明記されました。電気事業者の地域独占を撤廃し、料金規制(発電にかかった全てのコストを基に、一定の利益率を上乗せする料金体系)も撤廃されることになったのです。
同委員会は2013年2月、電力自由化に向けた制度改革案を公表。電力市場に競争を巻き起こし、電気料金の抑制につなげていくための、現実的なスケジュールを提示しました。
現在の電力自由化実施スケジュールでは、2013年および2014年の通常国会にて電気事業法を改正し、2015年に地域をまたぐ送電網の運用を行う「広域系統運用機関」を設立します。翌年の2016年に、既存の電力会社以外の企業にも家庭向けの電力販売を認める「小売り全面自由化」を開始し、2018〜2020年には、電力会社を発電・送配電・小売りの部門ごとに分社化するとしています。
2016年からの数年間は、経過措置として規制料金と自由料金が混在する時期があり、既存電力会社の分社化が終了し、一定の競争環境が整備された2020年頃に、自由化が完了します。これとオーバーラップする形で、ガス事業の自由化も進むことになり、2020年〜2025年頃に電力とガスの全面自由化が完了すると見込まれています。
● ●
これらの電力制度改革が“骨抜き”にならないよう、新規参入を促す各種制度も、並行して整備されることになります。現在、以下のような制度・しくみが計画されています。
●卸電力市場の改革(活性化)
日本において、卸電力市場で実際に取引されている電力は、現状では発電量全体のわずか0.6%程度に過ぎません。電力業界に健全な競争を起こしていくには、自前の電源を持たない(またはごく少ない)新電力が、市場から電気を調達しやすくする、つまり卸電力市場の活性化が不可欠です。そのために政府は、電力大手に対して、予備として確保する電源以外は原則として卸売市場で販売するように求めていく方針です。
●部分供給制度
新電力にとって、ビジネスとして成り立つのは、消費が増えるピーク電力の部分。その反面、ベース供給力を確保するための設備投資・体制構築は大きな負担となります。そこで需要家サイドが、ベース部分を既存の電力会社から、ピーク部分は新規参入者から購入できるようにするのが、「部分供給」というしくみです。これによって、新電力はベース電源を保有していなくても、顧客を獲得しやすくなります。
●常時バックアップ
新電力が、既存の電力会社からベース電源を長期的に購入できるようにするしくみです。ベース電源の調達コストを抑制できることで、新規参入者の競争力を高めるねらいがあります。
【2013年 → 2016年】
一連の電力制度改革により、何がどう変わるのか?
「需要側の選択肢が増える」というメリット以上に重要なのが、自由化によって企業のビジネス形態にマッチしたさまざまなサービスや、合理的な料金メニューが登場すること。すでにエネルギーマネジメントを実践している中規模のオフィスビルや工場にとっては、大きなメリットが期待できます。
予想(1):魅力的な料金メニューを、新電力が相次いで開発
卸電力市場が活性化し、「部分供給」も可能になることで、たとえば従来から自由化部門において競争の激しかった、契約電力50〜500kW規模のオフィスビルや工場の需要家に向けて、新電力が知恵を絞った魅力的な料金メニューを提示するようになる。「ピークカットを実施していただくことで、料金を引き下げます」といった料金メニューの場合、昼の時間帯に長めの休みを設定したり、勤務時間を恒常的に早め・遅めにシフトさせるような企業の取り組みが、これまで以上に増えてくる。
予想(2):卸電力市場へ、ダイレクトにアクセス
卸電力市場へ直接アクセスする需要家、あるいは数社が共同で、卸電力市場から電力を調達するようなケースが相次ぐ。これによって、料金が高い時間帯には電力を使用せず、安い時間帯に集中して使うためのマネジメントシステムや、蓄電に対する需要が高まっていく。
予想(3):“スマート”な街・地域が、全国各地に出現
一連の電力制度改革で、スマートシティ/スマートコミュニティの実現に必要な制度も整備される。現状では一部の実証実験を除いてほとんど普及が進んでいないが、今後は分散電源、デマンドレスポンスなどの設備とエネルギーマネジメントシステムが組み込まれた、低環境負荷の街・地域が、全国各地に現れる。
予想(4):スマートメーターの普及
電力の自由化が進むことで、全ての需要家においてスマートメーターの普及が一気に進む。これによって電力会社は、需要家向けに付加価値の高いサービスを提供しやすくなる。たとえば電力需給が逼迫した際にも、遠隔から電力需要を制御することが容易になる。
予想(5):余った電気は、他事業所へ――
自家発電設備を所有する企業が、余った電気を自社の他事業所へ送電して使う「自己託送」が、規制緩和によって実現する。複数の事業所にある自家発電設備の稼働状況や蓄電池の残量など、エネルギー需給の情報をネットワークで集約し、エネルギーマネジメントシステムによって統合管理することが一般的になる。
2.シェールガスの輸入動向
米国では、価格の安い新型ガス「シェールガス」の開発と大量生産が行われており、米国内の天然ガス価格は、百万BTU(英国の熱量単位)あたり3〜4ドルまで低下しています。米国内の需要を大きく上回る生産能力を持ったことから、輸出の動きも強まっており、現在、日本への輸出についても認可される方向で、調整が進んでいます。
日本のLNG(液化天然ガス)輸入量は、火力発電需要の高まりで8,730万トン(2012年)にのぼっており、しかもその価格は米国の約5倍で、百万BTUあたり15〜16ドルです。これが、大幅な貿易赤字の原因にもなっています。米国のシェールガスを液化して輸入する場合、現在の輸入価格の1/2程度に抑制できると見込まれており、需要家にとっては電力購入コストの低減が期待できます。
【2013年 → 2016年】
米国からのシェールガス輸入により、何がどう変わるのか?
予想(1):2017年を待たずして、既存輸入先との間で有利な価格交渉が可能に
LNG化した米国産ガスを輸入できるのは、2017年からである。この年より、国内需要の10%以上のLNGを、米国から調達可能になる。その調達価格が現状の1/2程度になれば、東南アジア・中東のLNG供給者をはじめ、現在は石油価格に連動する価格決定方法によって割高な調達を強いられている相手とも、シビアな価格交渉ができる可能性が出てくる。彼らにとっても、将来にわたって旺盛な需要が見込まれる日本をつなぎ止めるためには、2017年を待たずして、現状の価格決定方法を見直す可能性が高い。
予想(2):アフリカ、そして南米・・・。調達先をさらに多様化できる
広大なシェールガス層を持つ資源国は、アフリカや南米などに多くあり、徐々に開発がスタートしている。日本が米国産ガスを輸入することにより、これらの資源国が、輸出を視野に入れた開発を加速させることも考えられる。買い手である日本にとっては、さらなる調達先の多様化が期待でき、電力料金の抑制や貿易収支のいっそうの改善につながる。
第12回どうなる? 日本のエネルギー [後編]
経営・戦略 三木 優 2013年03月27日
3. 原発再稼働への道のり
職業柄、私はいろいろな企業のエネルギー管理担当者から生の声を聞く機会が多いのですが、原子力発電所の再稼働に関しては、「新しい安全基準が策定されて、活断層のリスクがなければ、再稼働できるわけですよね・・・」というような認識を持っている人が意外に多いことに気づきました。
再稼働までの道のりは、実は、そう簡単ではありません。
現在、原子力規制委員会で策定されている新たな安全基準の骨子案には、地震・津波・航空機事故・テロなどを想定した複合的な事故対策、電源喪失対策、基準津波の設定(防潮堤の設置)といった要素が盛り込まれており、2013年7月18日から施行される予定です。この新しい安全基準は、「世界で最も厳しい」内容であり、これに対応するために、各電力会社は今後、非常に多くの期間と費用を要することになります。
現時点(2013年3月)で唯一、稼働している大飯原発も、新基準では必須とされる対策が完了しているわけではなく、2013年6月に実施される定期点検を機に追加的な対策を講じるため、一定期間停止になると見られています。つまり今夏には再び、国内の全ての原発が停止状態となる可能性が高まっているのです。
この安全基準には、稼働時にクリアしていることが必須の項目と、稼働後の一定期間内に完了すればよいものがあります。たとえば加圧水型原子炉のような、必須項目が少ない原子力発電所は7月以降、早期に安全審査を申請できる可能性があります。一方、沸騰水型原子炉を保有する原子力発電所では、審査を申請できるようになるまでに数年を要するケースも出てくるのです。
【2013年 → 2016年】
かつてない厳しい安全基準の適用によって、何がどう変わるのか?
予想(1): 再稼働の可能性も、対策完了までの期間も、現時点では不透明
● 2013年7月の安全基準施行後、どの原子力発電所が再稼働できるかは、現時点では不透明。非常に厳しい安全基準となったため、7月までに対策が間に合わない可能性が高い。
● 安全基準を満たすための改修計画の審査も7月以降であり、半年程度を要するため、既に改修が承認されている原子力発電所以外は、対応を始めるまでにかなりの期間がかかる。
● 原子力規制委員会の委員は、「新しい安全基準を完全に満たそうとすると、3〜4年程度かかる可能性がある」とコメントしており、厳密な運用がなされた場合、大半の原発が向こう数年間は再稼働しない可能性がある。日本の電力は、電源を火力発電などに頼る構造が、中〜長期にわたって続くことになる。
予想(2): 「原発再稼働→電気料金値下げ」・・・というわけにはいかない
● 再稼働に必要な費用は、原発一基当たり約200億円、電力業界全体で1兆円とも言われており、非常に重いコスト負担となる。最終的には、電気料金に転嫁される可能性が高い。
古い原子力発電所では、そもそも追加的な対策をしてまで再稼働させるべきかの経営判断を迫られる。電力会社が廃炉を選んだとしても、廃炉に莫大な費用がかかる。つまり再稼働/廃炉のいずれであっても、需要家の負担増は避けられない。
● 新しい安全基準のもとで再稼働が始まっても、これまでのように「原発はコストの安い発電方式」というわけにはいかなくなる。場合によっては、再稼働を機に電気料金が引き上げられる事態も想定される。
4.再生可能エネルギーの普及と、需要家の負担
2012年7月にスタートした固定価格買取制度によって、太陽光発電などの設備が急速に普及していることは、皆様もご存じのとおりです。
たとえば、2012年4月〜11月末に運転を開始した再生可能エネルギー発電設備の発電出力は、トータルで144.3万kWに上っています。このうち、太陽光発電設備が139.8万kWを占めています。
出所:経済産業省 資源エネルギー庁 平成24年12月14日News Release
「再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表します」
(*1)・・・経済産業大臣による設備認定の際に登録された運転開始予定日を基にした数値であり、実際の運転開始時期を精査した結果、事後的に補正される可能性があります。
(*2)・・・4月〜11月末までに運転開始した設備容量には、上記の他、35万kWの石炭混焼発電設備を認定していますが、発電出力のすべてをバイオマス発電設備としてカウントすることは妥当でないと考え、便宜上、設備容量に含めていません。
2011年度までの累積導入量と、わずか数カ月〜1年の期間に運転を開始した
新たな設備容量を比較した際、その顕著な伸びにも注目したい
2012年度末までの導入予測では、再生可能エネルギー発電設備のうち、約8割は太陽光発電設備となり、固定価格買取制度の効果が大きく現れていることがわかります。導入が進んだことで、太陽光発電のコストは、住宅(10kW以下)/非住宅(10kW以上)のいずれにおいても低下しています。
・住宅:46.6万円/kW→42.7万円/kW
・非住宅:32.5万円/kW →28.0万円/kW
この低減効果を踏まえて、2013年度の買取価格は引き下げられる見通しです。現状のコスト低減効果は、上記のとおり10%程度であることから、今の買取価格である「40円(住宅は税込42円)」から、4円程度引き下げ、「37.8円(住宅は税込38円)」となる見込みです。そしてこの程度の引き下げであれば、多くの参入企業において事業への影響、つまり採算性の悪化は軽微であり、引き続き太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入は拡大していくと見込まれます。
【2013年 → 2016年】
再生可能エネルギーの普及によって、何がどう変わるのか?
予想(1): 需要家の負担する賦課金が、右肩上がりで増加する
●高めの買取価格を背景に、再生可能エネルギーによる発電容量は当面、拡大傾向が続くと見込まれる。
●その結果、需要家が負担している再生可能エネルギー買取のための賦課金も、上昇し続ける。2012年度の賦課金は、全国平均で1kWhあたり 0.29円。標準的な家庭(月に300kWhを使用)の場合、月額7,000円程度の電気料金に対して、月に87円の負担となっている。この負担額が、来年度には120円程度(0.4円/kWh程度)に上昇すると見込まれる。今後、再生可能エネルギーが大量に導入された場合は、電力網を安定させるために行われる系統強化の費用も、需要家に転嫁される可能性がある。
●メガソーラー発電事業への参入など、企業がこの制度を活用する側に立った場合は、たいへん有利となるが、電気の需要家として賦課金を支払う立場になると、当面は負担のみが増加し続け、ある意味、不利な制度だとも言える。
予想(2): ドイツと同様の道をたどる
●固定価格買取制度の先達であり、お手本でもあるドイツでは、増え続ける賦課金(*3)に国民の不満が高まり、2013年と2014年は買取費用の賦課金への転嫁を凍結することを決定している。2015年以降も、転嫁する割合を2.5%に制限することや、再生可能エネルギー発電事業者への補助金の支払いを遅らせ、支出を抑制する案などが出ており、この買取制度自体を大幅に変更することも視野に入れている。
(*3)・・・2012年時点で、月額1,380円程度の負担。翌2013年は、1,930円程度まで跳ね上がる見込みだった。
なお、これらの金額は、1ユーロ=125円で計算したもの。
●日本でも、賦課金の負担が増えることで電気料金が値上がりすると、再生可能エネルギーの賦課金に対する不満が顕在化し、制度変更などが生じる可能性もある。たとえば、ドイツの現状が日本でも広く認知されてくれば、買取価格をさらに引き下げることで、再生可能エネルギーの導入量を抑制せざるを得なくなる。
5.地球温暖化対策の強化
わが国において、地球温暖化対策への人々の関心は、ひと頃に比べると、大きく低下しています。その大きな理由は2つあります。ひとつは2011年末に開催されたCOP17において、日本が京都議定書の第二約束期間へ参加しないことを表明し、翌2012年末のCOP18で不参加が確定したことです。もうひとつは言うまでもなく2011年の原発事故に伴う電力不足と輪番停電です。
あの重大な事故が発生して以来、国内では温暖化対策よりも、電力不足問題がクローズアップされる状況が続いています。かといって、日本は温室効果ガスの削減を放棄しているわけではありません。現在は、COP16において承認されたカンクン合意(*4)に基づいて自ら削減目標を設定し、自主的な温室効果ガス排出削減へ取り組むこととなっています。
温室効果ガスの削減目標といえば、「1990年比25%削減」というものが、皆様の記憶にも新しいかと思います。しかし2011年以降は、エネルギー・気候変動対策のための政策に大きな変更を施しているため、2013年末のCOP19までに、この削減目標を見直すことになっています。
「気温の上昇を、工業化以前よりも2℃以内の範囲に抑える」という、世界共通の削減目標を達成するためには、国際交渉の場で各国が表明している目標を積み上げても、なお10億トンの温室効果ガス排出削減が不足していることが指摘されています。途上国が先進国にさらなる排出削減の上積みを求めているのは、このことが背景にあります。そのため、日本が火力発電に依存した現在のエネルギー構成などを理由に、容易に実現可能なパーセンテージを設定すると、それは「後退した目標」とみなされ、途上国からの批判に晒される可能性が高いのです。
こうした理由から、削減目標については一定の水準を保ちつつ、25%に満たない部分は二国間オフセット・クレジット制度など、途上国で削減した温室効果ガスを、日本の削減分としてカウントする方法で対応していくと見込まれます。
国内対策については、地球温暖化対策に特化した施策こそ現時点ではないものの、2012年10月から実施されている環境税の税率が、2014年4月と2016年4月に引き上げられます。2012年の税率は、電気料金(東京電力の場合)に換算すると0.05円/kWh程度であるため、それほど大きなインパクトはありませんが、2016年には0.15円/kWh程度になります。
国内目標の設定次第では、今後は各企業がビルや工場の現場で取り組んでいる省エネが、努力目標ではなく「義務化」され、検証・報告のプロセスが発生したり、家庭における省エネについても、「断熱基準の徹底」、あるいは半ば強制的な「省エネ改修」などが、実施される可能性があるのです。
(*4)・・・2010年、メキシコのカンクンで開催されたCOP16で合意された国際的な枠組み。地球の気温上昇を、工業化以前よりも2℃以内の範囲に抑えるために、2050 年までの大幅な排出量の削減と早期のピークアウトを、共有のビジョンとする前提のもとで、一連の合意がなされています。
【2013年 → 2016年】
地球温暖化対策の強化により、何がどう変わるのか?
予想(1): 現状で判明している施策や法改正は、滞りなく実施される
「25%」という削減目標は引き下げられるものの、国内対策に力を入れていることを国際社会にアピールするために、追加的な取り組みが必要な水準は、保つ必要がある。そのため、環境税の引き上げなど、現状で判明している政策は滞りなく実施されていく。
予想(2): 企業が進める省エネへの取り組みが、「義務化」される
●追加的な対策としては、エネルギー対策として実施される省エネ法の強化や補助制度により、省エネ機器の導入促進などが想定される。
●国内対策の水準次第では、省エネの取り組みが義務化され、たとえば省エネ効果のモニタリング・管理が必須となる可能性がある。
Topic 新規エネルギー源 開発の動向
メタンハイドレート
「資源が少ない国」と認識されている日本列島および近海には、じつは未利用の資源・新規エネルギー源が多く存在しています。その代表的なものが、メタンハイドレート。海底の奥深くに存在する固体状のメタンガスであり、これを取り出すことで天然ガスとして利用できるのです。
2012年2月より愛知県沖で、世界初となる海洋におけるメタンハイドレートの産出試験が始まっており、2013年度には本格的な試掘が開始されます。
日本の周辺には、国内需要の100年分をこえるメタンハイドレートが存在していると見込まれており、効率よく安全に採掘できる技術が開発されれば、2020年以降に商業的な生産が行える可能性があります。エネルギー調達の多様化やエネルギー価格の抑制など、大きなインパクトを秘めているのです。
天然ガス
もうひとつの有望な新規エネルギー源は、天然ガスです。とりわけ新潟県沖には、大規模なガス田が存在している可能性があります。新潟県は、ロシアからのLNG輸入受入基地としての側面があり、ガス田開発とLNG受入が並行して進むことで、将来は日本におけるガス供給の一大拠点になる可能性があります。
このほかにも、「石油を作る藻」「光触媒による水素生産」「人工光合成」など、今後3年程度で大きくブレークスルーする可能性のある新規エネルギーの技術開発が、国内で相次いで進められています。近い将来、全く新しいエネルギー供給の形態が、実現しているかもしれません。
まとめ
「どうなる? 日本のエネルギー」と題し、2回にわたって、日本のエネルギーに関する重要課題を考察してきたわけですが、企業や生活者に与える影響の部分にもう一度焦点を当て、締めくくります。
電力・ガスの自由化
高圧(*5)需要家にとっては、電気料金の引き下げ効果あり。ただし、新電力から提示される廉価の料金メニューに対応するために、需要家サイドでピークカットなどへの取り組み、および設備投資が必要。
(*5)・・・契約電力が50kW以上、2,000kW未満の需要家に適用される契約種別
シェールガスの輸入動向
米国からの輸入が実際に始まるのは、2017年。しかし、調達先の多様化によって、既存の売り手への牽制効果が生まれ、電力・ガス価格の引き下げ効果が、ある程度は見込める。
原発再稼働への道のり
新しい安全基準が定められ、7月から施行されるものの、この厳しい基準をすぐに遵守することができる原子力発電所は限定されるため、早期の再稼働による電気料金の引き下げ効果は期待できない。逆に再稼働の遅れ、安全基準を遵守するための追加コストにより電力の価格が上がる可能性もある。
再生可能エネルギーの普及と、需要家の負担
再生可能エネルギーの導入は引き続き進み、需要家が負担する賦課金も上昇し続ける見込み。電気料金の引き上げ要因となる。
地球温暖化対策の強化
温室効果ガス排出削減目標の大幅な引き下げは難しい。環境税の税率アップなど、独自政策により若干の影響はある。省エネ法改正など、他の政策に相乗りが基本。電気料金の引き上げ要因となる。
省エネ法改正(連載第10回で解説)
ピーク対策による省エネへの取り組みの評価がますます高くなる。BEMSや蓄電池の導入・活用を進めなければ、ピーク対策が遅れ、自由化のメリットを享受できない。むしろ、電力購入コストの上昇につながってしまう。
+αふたことアドバイス
1. 「対策なし」だと、トータルでコストアップになる
電力の自由化やシェールガス輸入により、エネルギー価格が引き下げられる可能性が出てきた。反面、原子力発電所の全面的な再稼働があと数年は難しいこと、再生可能エネルギーの普及による賦課金の上昇などを踏まえると、何も対策を講じない場合は、自社で購入するエネルギーのコストが、トータルではアップする可能性が高い。
2. 電力自由化などの改革で、ICT投資を上回るコスト抑制効果が見込める時代に
電力の自由化によって、従来の大手電力会社とは全く違うビジネスを始める事業者が登場したり、自社内で複数の事業所を束ねて、電力の卸売市場から直接電気を購入してトータルでマネジメントを行う製造業・流通業が相次ぐなど、今後はアグレッシブな動きがいろいろな業界で起きてくる。動きの激しいエネルギー関連の動向に対して、これまで以上に情報のアンテナを張り巡らしておけば、自社にとって最善の対策を立て、素早く行動することができる。政府の補助メニューを上手く活用すれば、初期費用を抑制しながらエネルギーコストを削減することも可能になる。社内/外で起きている“事実”を集積し、分析・施策へとつなげられる体制を整えておけば、コストダウンなどの恩恵を最大限受けることができるのである。
こうした取り組みと並行して、自社のエネルギー使用の現状を、正確に知っておく必要がある。そのための有効な手段は、これまでの連載記事でも記載してきたとおり、ICTを活用したエネルギー使用量のきめ細かな「見える化」である。現状を把握したうえで、たとえばエネルギーの効率的な活用を目的とした事業所間の連携も、有効な策となり得るし、その推進にはICTによる統合的なエネルギー管理のしくみが大いに威力を発揮する。
今までは、こうしたことがわかっていても、ICT投資を上回るメリットが見込めないため、見える化をはじめとするエネルギーマネジメントには慎重な企業が多かった。しかし、これからの変化を考慮すると十分なメリットが見込めるし、むしろ企業にとって必須のしくみになると、私は予想している。
(2013年3月27日公開)
【講師:三木 優 氏】株式会社日本総合研究所 総合研究部門 社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ マネージャー。これまでにエネルギー企業を中心としたコンサルティング・調査業務に従事。主にエネルギー・環境に関する新領域に進出する際の事業性評価・事業戦略の策定に関するコンサルティングを行なってきた。近年は、地球温暖化を背景とした省CO2戦略の策定やカーボンブランディング、海外における二国間オフセット・クレジット制度やCDMプロジェクトに関するコンサルティングを行っている。
放送一覧
• 節電2年目の夏、去年と今年は何が違う?2012年8月1日放送
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• 開始から1ヶ月、再生可能エネルギーの買取制度!2012年8月8放送
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• 電力自由化で電気代は安くなる!?2012年8月15日放送
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• 電力自由化・ガス自由化でエネルギー業界はどう変わる!?2012年8月22日放送
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• これからのエネルギーの話をしよう!2012年8月29日放送
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http://www.blwisdom.com/strategy/series/ecosp3/item/8635-12/8635-12.html?mid=w405h90200000492638&start=1
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