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愛知県沖でメタンハイドレートからメタンガスを取り出し燃焼させた試験は、日本国内で大きな注目を集めたが、中国もまじめに注目しているようだ。
メタンハイドレートからメタンガスを分解して採掘する試験は、天然ガス依存度が高まるなかで“高値買い”を強いられている現状を是正する一助にはなると思っているが、この論考でも触れられているように、環境保全的かつ安定的にメタンガスを取り出す技術の確立だけでも10年は試行錯誤を続けなければならないものであり、コストまで勘案すれば、他の手段で採掘されたガスが購入できなくなった段階になってようやく商業価値が浮上するものだと考えている。
転載する論考も、「米国の「シェールガス革命」も、日本の「メタンハイドレート」エネルギーも、現下の世界経済の低迷を緩和するその場しのぎの措置」と理解しつつ、「シェールガスやメタンハイドレートがその場しのぎの措置であっても、なおざりにしてはならず、研究から採掘まで、追いつくべきは追いつかなければならない」と主張しているように、経済成長にとって、一次エネルギーの確保は焦眉でかつ持続的な課題である。
「シェールガス」は“革命”ともてはやされるほど、米国やカナダで前のめりになって開発が進められているが、生活環境や農業条件で手痛いしっぺ返しを食うことになる。
中国は、ただでさえ生活・農業・工業での水の確保に問題を抱えているなか、シェールガス開発の中心地域が砂漠地帯で水の供給がままならないことが結果的に“幸い”となっているようだ。
※ 論考で書かれているメタンハイドレートからメタンガスを採掘する難点
「今回日本が行った採取実験方法「減圧法」自体が地質災害を引き起す危険性があると警告している。
減圧法はメタンハイドレートを埋蔵する海底に深い穴を数多く掘り、二酸化炭素を注入して減圧し、メタンハイドレートを分解する方法だ。この方法の危険性は、慎重に操作しなければ連鎖反応を引き起し、辺り一帯のメタンハイドレートを一気に分解させてしまうことにある。こうした場合、海底の地質に変化を引き起し、地震さらには津波を招くことになる。重要なのは、こうした災難は日本に被害を及ぼすだけでなく、極端な気候変動による被害は全世界に及ぶ」
「開発コスト面から見て、メタンハイドレートが経済効率的に石油や天然ガスに比肩しうるかどうかも疑問だ。メタンハイドレートの放出する気体は体積が大きく、輸送が極めて困難で、海底パイプラインを建設するか液化する必要があるため、採掘だけでなく貯蔵・輸送コストも相当高くつくと専門家は指摘する。こうした障害は短期間には解決困難だ。」
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メタンハイドレートは溺れる者のつかむ藁ではない
東日本大震災から2年を迎えた日本が、「心を高ぶらせるニュース」を急いで世界に発表した。日本エネルギー庁が12日、海底からのメタンハイドレート採取実験に世界で初めて成功したと発表し、5年後の商業採掘を目指す方針を示したのだ。中国青年報が伝えた。
メタンハイドレート採取のニュースは「脱原発」論争から一時注意をそらし、回避するとともに、日本経済に「好材料」の良薬を与えるという二重の効果をもたらしたようだ。日本周辺海域のメタンハイドレート埋蔵量は日本が100年間使用するに十分で、今回採取実験を行った海域だけでも10年以上持つという。エネルギーの対外依存に苦しんできた日本は、溺れる者のつかむ藁を手に入れたかのようだ。
メタンハイドレートは本当に日本のエネルギー問題を解決してくれるのだろうか?それは恐らく容易なことではない。
メタンハイドレートは凍土帯や深海堆積物に存在する。世界の陸地の27%と海底の30%がメタンハイドレートを形成する条件を備えているとされる。
世界のメタンハイドレートのエネルギー総量は、すでに知られた石油、石炭、天然ガスなど化石燃料の総量の2倍に達すると科学者は推測する。世界の海底のメタンハイドレートは人類の使用量の1000年分に相当するとの推測もある。巨大な潜在的エネルギーであることは確かだ。
だがメタンハイドレートの採掘は巨大な危険性も伴う。中国石油大学の陳光進教授は以前、海洋中のメタンハイドレートを軽々に採掘すれば、地質と生態に惨事をもたらす可能性があると指摘した。先史時代の何回かの生物大絶滅は極端な温暖化と関係があると推測される。こうした気候変動は突発的原因によって海底のメタンハイドレートが大きな範囲で分解され、大量のメタンが大気中に放出されたためと考えられる。メタンは二酸化炭素の20倍という強力な温室効果ガスで、海底のメタンハイドレート中のメタンの総量は大気中のメタンの3000倍に達する。
技術的関門を突破しなければ、メタンハイドレートの採掘が極めて危険な行為であることは明らかだ。すでにある専門家は、今回日本が行った採取実験方法「減圧法」自体が地質災害を引き起す危険性があると警告している。
減圧法はメタンハイドレートを埋蔵する海底に深い穴を数多く掘り、二酸化炭素を注入して減圧し、メタンハイドレートを分解する方法だ。この方法の危険性は、慎重に操作しなければ連鎖反応を引き起し、辺り一帯のメタンハイドレートを一気に分解させてしまうことにある。こうした場合、海底の地質に変化を引き起し、地震さらには津波を招くことになる。重要なのは、こうした災難は日本に被害を及ぼすだけでなく、極端な気候変動による被害は全世界に及ぶということだ。
米国が1960年代にはメタンハイドレートの採掘研究に着手しておきながら、長期的なエネルギー開発計画のままにしており、2015年にようやく小規模な採掘実験を行う計画であるのは、まさにこうした環境や生態への危険性のためだ。
技術上のボトルネックは採掘の障害の1つに過ぎない。開発コスト面から見て、メタンハイドレートが経済効率的に石油や天然ガスに比肩しうるかどうかも疑問だ。メタンハイドレートの放出する気体は体積が大きく、輸送が極めて困難で、海底パイプラインを建設するか液化する必要があるため、採掘だけでなく貯蔵・輸送コストも相当高くつくと専門家は指摘する。こうした障害は短期間には解決困難だ。
エネルギー面の苦境を脱しようと焦る日本の気持ちは理解できる。だが科学技術は客観的法則を尊重しなければならない。焦っても問題の解決にはならない。原子力の利用において「安全上越えてはならない一線」を克服することのできなかった日本が、メタンハイドレートというさらに不確定性の大きいエネルギーの利用において、さらに深刻な生態と環境への危険を前に、どうして安易に楽観的になることができるのだろうか?
エネルギー問題は確かに現在世界が金融危機の暗雲を脱するうえで肝要だ。蒸気機関の時代は石炭を利用し、内燃機関時代は石油や天然ガスを利用した。未来の時代に「新エネルギー」が必要なのは確かだ。だがメタンハイドレートは明らかに違う。本質的に、別の形の天然ガスに過ぎないのだ。
技術、コスト面の難題を克服すれば、メタンハイドレートは人類にもう1つのよりクリーンな燃焼エネルギーをもたらすかもしれないが、技術革命をもたらすことはできない。画期的な技術革命がないなら、いかなる「新エネルギー」も水泡であり、「旧経済」の延命に過ぎず、真の「新経済」を切り開くことはできない。
筆者が繰り返し強調してきたことだが、食料の採集から食料の生産へと移った農耕文明は人類にとって大きな技術的躍進だった。同様に、核分裂から核融合へと移り、人類の科学技術を微粒子のレベルにまで深化し、化石資源の採集から物質のミクロ構造と分子運動の分析を通じたその法則の把握へと移り、さらに「エネルギーの生産」へと移り、「再生エネルギー、永続的エネルギー」を真に実現する。これこそが人類にとって偉大な飛躍的技術進歩だ。
本質上、石炭、石油、天然ガスといった「古いエネルギー」と光エネルギー、風力エネルギー、バイオマスエネルギーを含むいわゆる「再生可能な新エネルギー」は、いずれも広義の太陽エネルギーだ。そして太陽エネルギー自体が核融合によるエネルギー放出の1つの形なのだ。制御核融合は人類の掌握できる真の「無限エネルギー」であり、人類の技術進歩と文明の高度化の主流の方向性、未来の終着点を代表するものでもある。この技術革命を月開発プロジェクトや深宇宙探索プロジェクトと結びつければ、人類の文明は飛躍的な高度化を実現し、「地球人」は「宇宙人」に進化する。
要するに制御核融合を基礎とする原子力の利用こそが世界のエネルギー戦略の重点的な攻略方向なのだ。米国の「シェールガス革命」も、日本の「メタンハイドレート」エネルギーも、現下の世界経済の低迷を緩和するその場しのぎの措置に過ぎない。
現在の世界構造では、米ドルが覇権通貨として資源バブルを煽ることで、世界経済の命脈を支配している。これは客観的事実だ。日本経済は米ドルに追随しており、最近は大幅な円安によって「通貨の増水」をもたらしているが、これは米ドルの数回の量的緩和に注釈をつけるだけであり、独立性など全くない。エネルギー戦略においても同様で、原子力における彼らのふらつきを見れば、彼らに定見がなく、長期的視点はなおさらにないことがわかる。
中国は日本とは違う。いくつかの個別の技術分野で日本との間に落差があるが、中国経済は整った大規模な工業システムと独立自主の研究プラットフォームを備え、市場の潜在力も巨大で、整った、独自の産業チェーンを形成する可能性がある。したがって、エネルギー戦略において中国は長期的構想を持たねばならない。
中国の南中国海海域のメタンハイドレート資源埋蔵量は石油650億トン(中国の現在の年間石油消費量は5億トン超)に相当し、130年間は十分に使えると推定される。このほか青海省の永久凍土帯でもメタンハイドレートが見つかっており、これは中低緯度の凍土地帯で見つかった初のメタンハイドレートだ。世界第3位の凍土大国である中国の陸地のメタンハイドレート埋蔵量はおよそ石油350億トンに相当し、中国は90年間近く使用することができる。
こうしたデータは制御核融合という「究極のエネルギー」の実現までの間、中国はエネルギー戦略において「卵を別々の籠に入れておく」必要があることを物語っている。中国はエネルギーの足りない後発工業大国であり、たとえシェールガスやメタンハイドレートがその場しのぎの措置であっても、なおざりにしてはならず、研究から採掘まで、追いつくべきは追いつかなければならない。
現在の最も根本的な難題は、世界の大口商品貿易とエネルギー貿易において中国に価格決定権がないことだ。資源において他国に首を絞められず、より大きな発言権を得るには、自分で立っていることができなければならない。
中国の技術の蓄積と科学研究の実力をもってすれば、「複数の足で道を歩む」のに十分な力があるはずだ。原子力という主たる攻略の方向をしっかりと固定して、難関攻略に力を入れ、リードを目指すと同時に、各種の「新エネルギー」分野で世界の技術の潮流を追い、しっかりとついていく。
歴史上、安価な資源のみに頼って利益を得て、繁栄した国が真の強国となることはできず、繁栄も長続きしなかったことをわれわれはしっかりと覚えておかなければならない。こうした国々は自国の資源をすぐに使い込みすぎて、衰退へと向かったのだ。
強大な、さらには代替不能な科学技術革新力と製造能力を持つ国のみが、技術のたゆまぬ高度化を通じて、また新エネルギーを持続的に開発し、新たな経済成長方式を切り開く国のみが、世界の先頭を歩むことができるのだ。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年3月19日
http://j.people.com.cn/94476/8172834.html
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