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ドイツの省エネ政策の成果 「村上 敦のエコ・エッセイ」
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/860.html
投稿者 蓄電 日時 2013 年 2 月 28 日 15:28:07: TR/B2VKXCoTU6
 

ドイツの省エネ政策の成果
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51762291.html

はい、ブログ記事は今年はじめてになりますね。ツイッターでは新年開けてからもフラフラといろんなことをつぶやき、情報発信していますが、ブログのこの記入画面にはなかなか足を伸ばせない今日コノ頃です。

とはいえ、今回は皆さんにお見せしたいグラフがありますので、まずは以下を御覧ください:

これはなんだと思いますか? ドイツ国交省は、国内のあらゆる建築・住宅にかかわる統計情報を集積し、取りまとめて、年に一度年鑑を公表しています。

その年鑑には、
1.ドイツに存在する4047万戸の住宅ストックの合計延べ床面積の推移(毎年15〜20万戸の新築が追加されている)と

2.その住宅で消費される暖房用の最終エネルギー消費量

が、統計されており、同時に、建物ストックに対する

3.省エネ改修を推進するための予算額(主には、低利子融資OR無利子融資の財源)

の数字も出されています。

これを見ていただければ一目瞭然ですが、すでにドイツでは住居などをはじめとする建物の数の増加を上回る勢いで、省エネが進んでいます。

具体的には2000〜2010年における10年間の省エネ改修を累計で
1兆円ばかりの予算措置で進めた結果

12兆円程度の省エネ改修工事が建設業市場に出て、毎年40万人程度の雇用を生み出し、あるいは維持しながら、

1.9兆円は19%の付加価値税でしっかりと国が自分の懐に戻し、2010年の段階では1年間で1000PJの暖房用エネルギー消費を省エネしている、ということになります。

さあ、1000PJをみなさんは、燃料費換算でいくらに計算することができますか?

ドイツの暖房用のオイルの発熱量は1リットルあたり38.4MJです。ですからおおよそ260億リットルとなりますね。

現在の暖房用オイルの価格は、1リットル0.85ユーロ程度ですから、220億ユーロの節約となります。

今は円安になり、1ユーロ≒120円ですから、

毎年ドイツ人は、建物の改修工事によって、暖房費をなんと!!!2.6兆円!!!節約している計算になります。


このへんの詳しいロジックは、私の著書『キロワットアワー・イズ・マネー(kWh=¥)』に記していますから、興味のある方はそちらをご一読下さい。

とにかく、脱原子力2021年、脱化石2050年というドイツのエネルギーシフトは、50%のエネルギーは省エネによって、残りを再生可能エネルギーでというシナリオですので、この省エネの部分により注目していただければと思います。

2011年度の温室効果ガスの排出量の集計も上がって来ました。311の影響で、原発8基を一斉に廃炉にしたドイツでは、この年の温室効果ガスの排出量が増加したのではないかと言われていましたが、


3%のGDP経済成長を達成しながら、同時に2.9%のCO2の削減に成功しています。

つまり成長とエネルギー消費量がリンクしなくなったのが、今のドイツ経済の強みでもあります。

雇用効果の面でも、財政投資額 対 市場への投資額の面でも、それほど優れるとはいえない100%の公金で賄わなければならない公共インフラへの潤沢な予算の一部でも、こうした理性的な民間建築事業への投資に振り向ければなあといつも嘆いるている今日この頃でした。  

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コメント
 
01. 2013年3月04日 01:34:40 : SNljMa86tM
JBpress>海外>ロシア [ロシア]
東方重視、プーチンの新エネルギー戦略
中国を牽制しつつ、日本とアジアを引き込む
2013年03月04日(Mon) 杉浦 敏広
 仮に筆者が「21世紀、ロシア発展のベクトルは東方に向かう」と言っても、誰も信じないでしょう。しかし、もし一国の元首がそう発言したとしたら、事情は全く異なります。

 ロシアでは今、エネルギー分野において、地殻変動が起こりつつあります。

 現在、ロシア最大の石油会社は国営ロスネフチです。国営ロスネフチは10年前までは国内では中堅の石油会社に過ぎませんでしたが、ロシア最大の民間石油会社ユーコスの資産を実質的に乗っ取ることにより、ロシア最大の石油会社に成長しました。

 ウラジーミル・プーチン大統領最側近の1人、イーゴリ・セーチン前副首相(エネルギー管掌)は昨年5月に誕生したドミトリー・メドベージェフ内閣においては閣内に残らず、国営ロスネフチ社長に転出。そのセーチン社長が訪韓・訪中後の今年2月19日、日本を訪問したのです。

 ロシア紙や日系各紙報道に拠れば、翌20日、ロシア極東の大陸棚探鉱・開発におけるエネルギー協力案件にて、エネルギー関連の民間5社幹部と会談しました。

 ロシアでは現在、天然ガス輸出はロシア国営ガス会社たるガスプロム1社の独占事業となっています。ロシアの法律で、そう規定されているのです。一方、ロシア紙報道によれば、プーチン大統領は2月13日、LNG(液化天然ガス)輸出の自由化を閣僚に検討指示したと報じられています。

 ここで、疑問が湧きます。なぜ、ロシア発展のベクトルは東方に向かうのでしょうか?

 またなぜ、プーチン大統領はLNG輸出の自由化を閣僚に検討指示したのでしょうか?

 これこそまさに、これから始まるであろうプーチン大統領によるロシア・エネルギー政策の地殻変動の兆候にほかならないと言えましょう。

第3期第1回プーチン大統領年次教書/東方発展構想

 ロシアは今後、どのような対アジア・エネルギー戦略を展開するのでしょうか?

 ロシアのプーチン大統領は昨年5月、本人としては第3期目のロシア大統領に就任。その後、昨年12月12日に第3期目最初の大統領年次教書を発表しました。

 従来のプーチン大統領年次教書は発表文のみ掲載されていましたが、今回大統領府より公表された年次教書全文には、発言の一部が大文字で表記されております。ですから、その部分こそ、プーチン大統領が強調したかった内容ということになります。大文字文章は全部で21箇所あり、18番目が『ロシア東方発展構想』です。

 では、この東方発展構想の要旨を訳出したいと思います(次ページ、訳=筆者)。

 21世紀には、ロシア発展のベクトルは東方に向かいます。シベリアと極東−これはかつてロマノソフ氏(筆者註:モスクワ大学創始者)が述べているごとく、我々の巨大な(発展)潜在力です。

 我々は今こそ、東方発展を実現しなければなりません。東方発展こそ、世界で最もエネルギッシュ、かつダイナミックに発展している地域である環アジア・太平洋諸国において、ロシアが然るべき地位を占める可能性にほかなりません。

 つい最近(註:2012年11月29日)開催された国家評議会総会にて、我々はザ・バイカルおよび極東地域における具体的な経済発展策を検討しました。何を協議したかはここでは繰り返しませんが、魅力ある生活条件を創出することで合意しました。

 ロシア政府は2013年第1四半期末までに、新規参入企業用の暫定免税措置や、エネルギー・インフラ発展計画などを含む詳細な対策案を策定することになっております(中略)。

 最優先順位の発展課題。それは、地域間航空・海港・北洋航路・バム鉄道(註:第2シベリア鉄道)・幹線シベリア鉄道、その他トランジット回廊の整備です。

 これらすべて、単に考えるだけではなく、真摯に作業を続けることが必要なのです。我々には、ロシア全土を統一的に接続する輸送手段を確保することが、言葉の真の意味において必要なのです。

 このプーチン大統領発言の中に、ロシアは東シベリア・極東において今後、何をしなければならないのか明示されています。

 また、広大な国土を東西南北統一的に接続する輸送インフラ整備の必要性が強調されており、特に道路・鉄道・海港整備が最優先課題として言及されています。もちろん、東シベリア・極東発展が対中関係を視野に置いていることは言うまでもありません。

 原油・ガスパイプライン(P/L)建設が言及されていないではないかと思われるかもしれませんが、それは既に決定済みです。東シベリアのタイシェットからロシア極東原油出荷基地コズィミノ港までの原油パイプライン(P/L)(ESPO P/L)は2012年12月25日に全面稼働開始。既に、順調に原油を輸送・出荷しております。

 天然ガスP/L建設に関しては、ガスプロムは2012年10月末、極東サハ共和国(ヤクーチャ/Y)からハバロフスク(K)経由ウラジオストク(浦塩/V)までの天然ガスP/L(通称 YKV P/L)を建設すると発表。天然ガス供給源はサハ共和国のチャヤンダ・ガス田と、将来的には東シベリア・イルクーツク州のコビィクタ・ガス田を想定しています。

 一方、サハリン(S)からハバロフスク(K)経由浦塩(V)までの天然ガスP/L(通称 SKV P/L)は、2011年9月に全面稼動開始となりました。

東シベリア・極東発展公社設立構想

 東シベリア・極東発展公社設立構想は2012年1月、プーチン首相(当時)の意を受けて、ショイグ非常事態相(当時/その後モスクワ州知事に転出/現在は国防相)が東シベリア・極東開発公社設立構想を策定し、プーチン首相に上程しました。

 プーチン首相が同年3月の大統領選挙に当選すると、ロシア経済省は翌4月、東シベリア・極東の16連邦構成主体(国土の6割以上)に特別法を適用して、天然資源開発促進を目指す『東シベリア・極東開発法案』を策定。

 これは、16連邦主体の資産を新設予定の東シベリア・極東開発公社に統合して、プーチン大統領直属の国営会社とする構想でした。

 ところが、同年5月に誕生したメドベージェフ内閣では、極東開発を担当する極東発展省は新設されましたが、開発推進母体となる開発公社は設立されませんでした。

 では、東シベリア・極東開発公社設立構想は破綻したのでしょうか?

 筆者が聞いている限りでは、今年2013年度予算にて開発公社が設立される可能性が高いようです。この場合、開発公社の権限はどの程度のものになるのか、開発公社の社長(総裁)が誰になるかが、注目の的になります。

21世紀、ロシア発展のベクトルは東方に向かう

 ではここで、冒頭の問いに戻りたいと思います。

 なぜ、ロシア発展のベクトルは東方に向かうのでしょうか?

 プーチン大統領はなぜ、東シベリア・極東開発にこだわるのか、東シベリア・極東発展構想の背景を考察したいと思います。

 西シベリアでは、ソ連邦時代に探鉱・開発された原油・天然ガス鉱区の生産量が減少しています。西シベリア油田を生産拠点に持つロシア第2の石油会社ルークオイルは直近の3年間、原油生産量が減少しています。

 直近の3年間で原油生産量が毎年減少しているのは、ルークオイルとスラブネフチの2社だけです。同じく、西シベリアの大ガス田を生産拠点とするガスプロムもガス生産量が減少しており、ガスプロムの地盤沈下が目立ちます 。

 上記のごとく、西シベリアを生産拠点とする石油会社ルークオイルとガス会社ガスプロムは生産量が減少。かつ、ガスプロムは欧州ガス市場にてシェア低下しつつあります。

 ゆえにここに、東シベリア・極東開発の必要性と、新規市場としての環アジア太平洋諸国市場の重要性が増しているのです。

 上記の事情がプーチン大統領をして極東開発に走らせていることは確かですが、ここではほかの側面にも言及してみたいと思います。

 ロシアの人口は約1億4300万人ですが、このうち、ロシア極東連邦管区(創設時10連邦構成主体/現在9連邦構成主体)の人口は約650万人に過ぎません。

 中国の人口は約13億人。うち、ロシアの東シベリア・極東と国境を接する中国東北3省には1億人以上が居住しています。

 プーチン大統領は、大統領就任直後に発表した文書(2012年5月7日付け『外交方針に関する大統領令』)にて、「中国・インド・ベトナムが露の戦略的パートナーである」と指摘しました。

 ここでの注目点は、中国とベトナムを並立して挙げたことです。両国は南シナ海の領有権を巡り、対立しています。その両対立国をロシアにとり戦略的パートナーとして大統領令に記載したことは、中国に対する牽制の意味合いが含まれていると考えて間違いないでしょう。

 実は、このことをもっと直截的に表現した人がいます。誰でしょうか?

 それは、メドベージェフ首相その人です。2012年8月10日付けデイリータイムズ(Daily Times)によれば、メドベージェフ首相は「ロシアは極東地域を、国境を接する国々による過度の拡張政策から防衛しなければならない」と述べました。

 「国境を接する国々」と複数形を用いることにより一国を名指しすることは避けましたが、それが誰を(どの国を)指すのかは一目瞭然です。これは、ロシア首相による隣国脅威論・敵視論にほかなりません。

 一見、蜜月関係を標榜するロシアと中国ですが、プーチン大統領の東シベリア・極東開発構想の真意・背景は「隣国警戒感」にほかならないと言えましょう。

 東シベリア・極東を開発し、各種インフラを整備して、外資を積極的に導入する。また、ロシア人を極東に移住させ、対中防衛の防波堤とする。これがプーチンの本音と、筆者は理解しております。

プーチン大統領は何故、LNG輸出自由化構想を指示したのか?

 ここで、もう1つのなぜに迫りたいと思います。ロシアでは、天然ガス輸出はガスプロム1社の独占事業になっています。ですから、ロシアの石油会社は従来、天然ガス輸出は不可能で、国内で生産する天然ガス(随伴ガス)はガスプロムに国内売りしていました。

 では、プーチン大統領はなぜ、LNG輸出の自由化を閣僚に検討指示したのでしょうか?

 その鍵は2013年2月13日にあります。プーチン大統領はモスクワ郊外の大統領別荘で2月13日、『ロシア燃料・エネルギー分野発展戦略・環境保護大統領諮問委員会』の定例会を開催。プーチン大統領はその席上、LNG輸出の自由化に言及したのです。

 ちなみに、同委員会は2012年6月15日付け大統領令#859にて設立され、同年7月10日にプーチン大統領主催のもと、第1回委員会がクレムリンで開催されました。

 今回2月13日に開催された会議におけるエネルギー関連の要点は、記の通りです。

(1)資源埋蔵量に関する透明性を高める。
(2)探鉱・開発にあたり、相応しい技術を導入し、効率を高める。
(3)天然ガスの世界市場への供給拡大と供給路多様化。特に、LNG輸出の自由化必要。

 上記のプーチン大統領指示と関連しますが、ロシア政府のエネルギー担当ドヴォルコビッチ副首相は2月15日、今年3月末までにLNG輸出自由化政策に関する政府原案を策定予定と発表しました。

 プーチン大統領自身がLNG輸出自由化を指示していますので、政府原案も多分、この指示に沿ったものになると予測されます。

 プーチン大統領はガスプロムによるLNG輸出独占に風穴を開けることにより、ロシアの天然ガス生産と輸出産業に競争原理を導入し、ロシア産天然ガス輸出市場の多様化を視野に入れているのではないでしょうか。

 東シベリア・極東を新規探鉱・開発して、原油・天然ガスの増産を図る。一方、LNG輸出を自由化して、ロシア天然ガス産業を活性化する。

 これが、プーチン大統領の意図ではないかと推測します。もちろん、このプーチン構想が実現・成功するのかどうかは、今後のプーチン大統領その人の具体的政策いかんとなりましょう。

 今年2月20日には、森喜朗特使がロシアを訪問しました。今年4月末には、安倍晋三首相がロシア訪問予定と報じられています。両国間には領土問題が存在しますが、両国間の氷は少しずつ融け始めました。

 日本はエネルギー安保確立のため、隣国ロシアの天然資源を必要としています。ロシアは天然資源輸出市場多様化の一環として、近隣の日本市場を含む環アジア・太平洋諸国の市場を必要としています。

 ロシア発展のベクトル。それはまさに「東方に向かわざるを得ない」と言えましょう。


 

シェールガス革命の死角

熱狂を超えた調達改革を

2013年3月4日(月)  北爪 匡

 連日のように報道で「シェールガス」という言葉が飛び交っている。低コストに非在来型の天然ガスが採取できるようになり、北米ではこの3年ほどの間に急速な開発が進んだ。その結果、北米における天然ガス価格は暴落し、天然ガスは最有力の化石燃料に生まれ変わった。

 改めてこのシェールガスとは何か。採取方法としては、地中深くの頁岩(けつがん=シェール)層にヒビを入れることで、内部に吸着した天然ガス成分を抽出する。存在そのものは以前から確認されていたが、米国において低コストの開発技術が確立され、瞬く間に開発が北米に広がった。回収可能量は世界で208兆立方メートルとも言われ、単純にLNG(液化天然ガス)に換算すれば1664億トン。実に日本の年間輸入量の2000年分に相当する。この天文学的な量が、北南米や中国、東欧などに分散して埋蔵されている。

 このガス田からは、同様に原油(シェールオイル)を採取できるケースも多い。こうした膨大な資源を低コストで開発できることで、IEA(国際エネルギー機関)などの予測では、米国は2025〜30年頃に、世界最大のエネルギー生産国になる。最大の経済国が最大のエネルギー生産国になることのインパクトは、まさに「革命」の呼び名にふさわしい。現に、震源地の米国は革命に沸いている。

高給取りはウォール街からシェールガス開発へ

 「指5本」。米国でシェールガス開発に携わるある日本の大手商社の幹部は、現在の米国における鉱山技術者や地質学者の給与水準をこう言い表す。つまり、年収50万ドル(4500万円強)。以前のこの業界では考えられなかった水準で、「2008年までのウォール街の金融工学の専門家の給与水準がそのままシフトした」のだという。

 この事例が示す通り、全米各地で開発に次ぐ開発が進み、米国の天然ガスの指標価格は2008年ころまで100万BTU(英国熱量単位)当たり6〜8ドルで推移していたが、昨年には一時2ドルを割り、現在も3ドル強の低水準にある。天然ガスは燃焼時の二酸化炭素排出が原油や石炭と比べても大幅に少ないことから、米国の火力発電燃料も一気に天然ガスへとシフトしている。

 また、天然ガスを使用する製造業にも大きな影響が及ぶ。製鉄プロセスでガスを使う鉄鋼メーカーや、シェールガスの副産物を使用してエチレンを造る化学メーカーの恩恵は莫大だ。シェールガス由来のエチレンは、日本でナフサ由来のエチレンを造る場合に比べて、原料のコスト競争力が3〜4倍ともされる。製造業の復権と、輸出振興を目指すオバマ政権にとって、シェールガス革命は強力な切り札となっているわけだ。

 米国に次いで、この革命に最も大きな期待を寄せているのが、日本だろう。1月に1兆6000億円強という単月で過去最大の貿易赤字を生みだした主因はまぎれもなくLNG輸入の増加。東日本大震災と原子力発電所事故の影響からいまだ脱しきれず、天然ガス火力が急増。かつガス価格の高止まりが日本の貿易収支を圧迫している。それだけに、太平洋の対岸で勃興するエネルギー革命が大きなインパクトを持って受け入れられている。

 しかし、この日本におけるシェールガスの論議が、熱しすぎてはいないかという懸念を抱く。「安いガスが日本に入ってくる」との論点のみが先行し、本来見落としてはいけない懸念材料が封殺されてしまっているためだ。

 その1つが、2月25日号の日経ビジネス時事深層の欄でも指摘した価格の問題だ。米国のヘンリーハブという価格体系はアジアや欧州の指標価格と比べても、その変動性の高さが懸念される。米国では発電所や製造業向けの内需がこれから本格的に盛り上がり、LNG輸出も始まれば天然ガスの需給は急速に締まる。つまり、価格が高騰する可能性は高い。また、日本へは天然ガスをそのままパイプラインで供給できるはずもなく、プラントで液化し、それを長距離海上輸送するという物流コストが、8〜10ドルほどガス価格に上乗せされる。

 現在のヘンリーハブ価格は歴史的にも極めて低水準。日本への輸出プロジェクトは早ければ今春にも許可が下りる公算が大きいが、実際の輸出開始は2017年以降だ。その時に米国産シェールガスが安価に入手できる確証はどこにもない。

日本の製造業の強力ライバルが復活

 また、米国の政治リスクをゼロと考えるのも過信だろう。確かに米政府はシェールガス輸出に前向きな姿勢を示しているが、輸出許可は議会の意向が色濃く反映される。日本と同様、米国は上下両院で与野党が「ねじれ」状態にあり、かつシェールガス革命で打撃を受けた石炭産業がロビー活動におけるネガティブキャンペーンを繰り広げている。

 さらに、日本の産業界への打撃も看過できない。米国の製造業が低コストの原料・燃料で復活することは、日本の産業界にとって、強力なライバルが復帰することを意味している。ただでさえ国内製造拠点の存続が厳しさを増す汎用化学品などの分野への負の打撃も勘案すべきだ。

 過剰にも思える日本のシェールガスブームの裏側、エネルギー業界内では様々な憶測、思惑が錯綜し始めている。

 「シェールガス輸入のための旗を振る経済産業省は、これを機に予算を多額計上して“ナワバリ”拡大に動いていないか」

 「価格の不安定さを承知でシェールガスを輸入しようという電力会社は、シェールガス調達を電力料金値上げの言い訳に利用しているのでは」

調達力を自ら失う日本

 こうした議論の真偽とは別に、日本は冷静にシェールガスを輸入する本来の意義を見つめ直すべきだ。それは、日本のエネルギー調達戦略の改革だ。あるエネルギー業界関係者は次のように解説する。

 「日本は巨大なエネルギー輸入国でありながら、バイイングパワーがない。電力会社などは、調達の安定性、経済合理性、柔軟性など別々の注文をつけ、これまで共同調達が実施されてこなかった。しかも原油・ガスの調達先は中東や東南アジア、オーストラリアに偏り、小口の契約ばかり。それでは売り手に足元を見られる」

 このゆゆしき事態を打開するための一里塚になるのが、シェールガス調達ではないだろうか。北米からのガス輸入によって、調達先の地域分散が実現される。しかも、アジア価格とヘンリーハブという2つの価格体系のガスを手中に収めてバランスできれば、新規契約の際に高値に吊りあげられるリスクは減る。米国のシェールガスに限らず、一層の調達ソース拡大が必要だ。

 ここに、電力・ガス会社などの意思疎通による調達時の量の拡大が実現できれば、日本は強力な輸入国へ変貌できる潜在力を秘めている。最も避けるべき事態は、現在のように日本ばかりが割高な燃料を掴まされることにある。「メタンハイドレート」など、日本近海に非在来型の資源は眠るが、商用化にはなお時間がかかる。それまで日本はやはり「持たざる国」だ。シェールガス革命という熱狂の中で、あえて冷静さを保った日本の調達改革は待ったなしだ。


北爪 匡(きたづめ・きょう)

日経ビジネス記者。


記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。


02. 2013年3月04日 14:56:27 : xEBOc6ttRg
− 第11回 −

どうなる? 日本のエネルギー [前編]

1.電力・ガスの自由化

電力の市場は、一般の商品・サービスと違い、需要家には購入先企業を選ぶ自由がなく、長らく電力大手9社による地域独占体制が続いていました。契約電力50kW以上の工場やビル・店舗については、2000年以降、段階的に自由化がされており、電力会社以外の企業が新電力(従来は新規参入した電力小売事業者はPPSと呼ばれていましたが、最近では政府等で「新電力」の呼称が使われています)を立ち上げて発電事業に参入し、大口需要家や中規模のビル・工場へ電気を販売するケースが見られるようになりました。

一方、電力品質を保つために新電力へ大きな負担を求めたことや電力事業者同士が電気を売買できる「卸電力市場」が活性化しなかったため、新電力のシェアは増加せず、大手電力会社の営業区域をまたいだ「越境供給」も、ごく一部の例にとどまっていました。

しかし、福島第1原発事故後の計画停電を境に、環境は大きく変化しました。2012年7月には、経済産業省の有識者会議「電力システム改革専門委員会」において、「電力システム改革の基本方針」が示されています。この方針では、契約電力50kW未満の一般家庭や小規模事業者も、電力会社を自由に選択できる改革を実施することが明記されました。電気事業者の地域独占を撤廃し、料金規制(発電にかかった全てのコストを基に、一定の利益率を上乗せする料金体系)も撤廃されることになったのです。

同委員会は2013年2月、電力自由化に向けた制度改革案を公表。電力市場に競争を巻き起こし、電気料金の抑制につなげていくための、現実的なスケジュールを提示しました。


現在の電力自由化実施スケジュールでは、2013年および2014年の通常国会にて電気事業法を改正し、2015年に地域をまたぐ送電網の運用を行う「広域系統運用機関」を設立します。翌年の2016年に、既存の電力会社以外の企業にも家庭向けの電力販売を認める「小売り全面自由化」を開始し、2018〜2020年には、電力会社を発電・送配電・小売りの部門ごとに分社化するとしています。

2016年からの数年間は、経過措置として規制料金と自由料金が混在する時期があり、既存電力会社の分社化が終了し、一定の競争環境が整備された2020年頃に、自由化が完了します。これとオーバーラップする形で、ガス事業の自由化も進むことになり、2020年〜2025年頃に電力とガスの全面自由化が完了すると見込まれています。

●                                 ●

これらの電力制度改革が“骨抜き”にならないよう、新規参入を促す各種制度も、並行して整備されることになります。現在、以下のような制度・しくみが計画されています。

●卸電力市場の改革(活性化)
日本において、卸電力市場で実際に取引されている電力は、現状では発電量全体のわずか0.6%程度に過ぎません。電力業界に健全な競争を起こしていくには、自前の電源を持たない(またはごく少ない)新電力が、市場から電気を調達しやすくする、つまり卸電力市場の活性化が不可欠です。そのために政府は、電力大手に対して、予備として確保する電源以外は原則として卸売市場で販売するように求めていく方針です。

●部分供給制度
新電力にとって、ビジネスとして成り立つのは、消費が増えるピーク電力の部分。その反面、ベース供給力を確保するための設備投資・体制構築は大きな負担となります。そこで需要家サイドが、ベース部分を既存の電力会社から、ピーク部分は新規参入者から購入できるようにするのが、「部分供給」というしくみです。これによって、新電力はベース電源を保有していなくても、顧客を獲得しやすくなります。


●常時バックアップ
新電力が、既存の電力会社からベース電源を長期的に購入できるようにするしくみです。ベース電源の調達コストを抑制できることで、新規参入者の競争力を高めるねらいがあります。

【2013年 → 2016年】
一連の電力制度改革により、何がどう変わるのか?

「需要側の選択肢が増える」というメリット以上に重要なのが、自由化によって企業のビジネス形態にマッチしたさまざまなサービスや、合理的な料金メニューが登場すること。すでにエネルギーマネジメントを実践している中規模のオフィスビルや工場にとっては、大きなメリットが期待できます。

予想(1):魅力的な料金メニューを、新電力が相次いで開発
卸電力市場が活性化し、「部分供給」も可能になることで、たとえば従来から自由化部門において競争の激しかった、契約電力50〜500kW規模のオフィスビルや工場の需要家に向けて、新電力が知恵を絞った魅力的な料金メニューを提示するようになる。「ピークカットを実施していただくことで、料金を引き下げます」といった料金メニューの場合、昼の時間帯に長めの休みを設定したり、勤務時間を恒常的に早め・遅めにシフトさせるような企業の取り組みが、これまで以上に増えてくる。

予想(2):卸電力市場へ、ダイレクトにアクセス
卸電力市場へ直接アクセスする需要家、あるいは数社が共同で、卸電力市場から電力を調達するようなケースが相次ぐ。これによって、料金が高い時間帯には電力を使用せず、安い時間帯に集中して使うためのマネジメントシステムや、蓄電に対する需要が高まっていく。

予想(3):“スマート”な街・地域が、全国各地に出現
一連の電力制度改革で、スマートシティ/スマートコミュニティの実現に必要な制度も整備される。現状では一部の実証実験を除いてほとんど普及が進んでいないが、今後は分散電源、デマンドレスポンスなどの設備とエネルギーマネジメントシステムが組み込まれた、低環境負荷の街・地域が、全国各地に現れる。

予想(4):スマートメーターの普及
電力の自由化が進むことで、全ての需要家においてスマートメーターの普及が一気に進む。これによって電力会社は、需要家向けに付加価値の高いサービスを提供しやすくなる。たとえば電力需給が逼迫した際にも、遠隔から電力需要を制御することが容易になる。

予想(5):余った電気は、他事業所へ――
自家発電設備を所有する企業が、余った電気を自社の他事業所へ送電して使う「自己託送」が、規制緩和によって実現する。複数の事業所にある自家発電設備の稼働状況や蓄電池の残量など、エネルギー需給の情報をネットワークで集約し、エネルギーマネジメントシステムによって統合管理することが一般的になる。

2.シェールガスの輸入動向

米国では、価格の安い新型ガス「シェールガス」の開発と大量生産が行われており、米国内の天然ガス価格は、百万BTU(英国の熱量単位)あたり3〜4ドルまで低下しています。米国内の需要を大きく上回る生産能力を持ったことから、輸出の動きも強まっており、現在、日本への輸出についても認可される方向で、調整が進んでいます。

日本のLNG(液化天然ガス)輸入量は、火力発電需要の高まりで8,730万トン(2012年)にのぼっており、しかもその価格は米国の約5倍で、百万BTUあたり15〜16ドルです。これが、大幅な貿易赤字の原因にもなっています。米国のシェールガスを液化して輸入する場合、現在の輸入価格の1/2程度に抑制できると見込まれており、需要家にとっては電力購入コストの低減が期待できます。

【2013年 → 2016年】
米国からのシェールガス輸入により、何がどう変わるのか?

予想(1):2017年を待たずして、既存輸入先との間で有利な価格交渉が可能に
LNG化した米国産ガスを輸入できるのは、2017年からである。この年より、国内需要の10%以上のLNGを、米国から調達可能になる。その調達価格が現状の1/2程度になれば、東南アジア・中東のLNG供給者をはじめ、現在は石油価格に連動する価格決定方法によって割高な調達を強いられている相手とも、シビアな価格交渉ができる可能性が出てくる。彼らにとっても、将来にわたって旺盛な需要が見込まれる日本をつなぎ止めるためには、2017年を待たずして、現状の価格決定方法を見直す可能性が高い。

予想(2):アフリカ、そして南米・・・。調達先をさらに多様化できる
広大なシェールガス層を持つ資源国は、アフリカや南米などに多くあり、徐々に開発がスタートしている。日本が米国産ガスを輸入することにより、これらの資源国が、輸出を視野に入れた開発を加速させることも考えられる。買い手である日本にとっては、さらなる調達先の多様化が期待でき、電力料金の抑制や貿易収支のいっそうの改善につながる。

次号予告

どうなる? 日本のエネルギー [後編]
後編では、原発再稼働問題、再生可能エネルギー、地球温暖化対策に関する最新動向と、今後3年程度で起こる変化、その結果として企業にもたらされるインパクトを、予測・解説します。

【執筆者:プロフィール】


三木 優 (みき ゆたか) 氏

株式会社日本総合研究所 総合研究部門 社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ マネージャー。これまでにエネルギー企業を中心としたコンサルティング・調査業務に従事。主にエネルギー・環境に関する新領域に進出する際の事業性評価・事業戦略の策定に関するコンサルティングを行なってきた。近年は、地球温暖化を背景とした省CO2戦略の策定やカーボンブランディング、海外における二国間オフセット・クレジット制度やCDMプロジェクトに関するコンサルティングを行っている。

(2013年2月28日公開)


03. 2013年3月15日 20:43:29 : xEBOc6ttRg
再生可能エネルギーは悪者か?

タグ: アジア・オセアニア, エネルギー資源, 東日本大震災, 原発, 福島, 経済, 日本関連, 記事一覧, 国際
ヒロヨシ ヤスモト
10.03.2013, 21:05

Фото: EPA
福島原子力発電所の事故をきっかけに、日本ではパイプライン、メタンハイドレート、休耕田の油田化といったことまで様々なエネルギーに関する議論が注目されている。ただ再生可能エネルギーについては、それだけで「グリーン」というレッテルを貼られてしまい、マイナスイメージを持つ人も多いのではないだろうか。しかしイメージを超えたところにこそイノベーション、さらには新しい国際競争力の種が隠されているのかもしれない。VOR「ロシアの声」の安本浩祥アナウンサーが、京都市にあるNPO法人「環境市民」の癘{育生代表に話を伺った。
福島原発事故の後には、日本で反原発の動きが非常に盛り上がったように思われますが、最近では再び、原発への揺り戻しの動きがあるような感じもしますね。

―安部政権になりましてから、あたかも原発が再度支持されたかのように見せかけられていますが、実際はそうではありません。日本の新聞各社による世論調査におきましても、期間はいろいろありますが、原発をやめたほうがよいという意見が7割を超えるような世論にはなっています。ですから、日本の人々がまた「原発は仕方がない」と思いだしたということではないんです。

ただ、これからは原発がなくともやれるという具体的なものを実際に作っていかなくてはならないと考えています。日本全体ですぐに、ということはなかなか難しいとは思いますが、たとえば、地域社会とか、企業とか、いろいろなところで具体的なものを作り出すことが可能なのではないかと思います。

我々の取り組んでいる一つのことは、市町村のなかでも環境を本当に大切にして、持続可能な社会を作っていこうというところと一緒に、環境首都創造ネットワークというものを作っております。そこではエネルギーをもっと少なく生活することができる社会と同時に、地域社会のエネルギー自立を高める、という取り組みをしています。エネルギー自立というのはそのほとんどが再生可能エネルギーなわけです。そういうことを地域から具体的に見せていこう、ということで、お互いに助け合いながらやっていけるネットワークを作っています。

そのほかに、日本の大きな企業から小さな企業のなかにも、結構いままでとは違って、原発というものをなくした次の段階にいくべきだ、とはっきりというところが増えてきているんですね。このあたりも変わってきていると思います。そういう企業の活動を我々がサポートしていって、実際に原発のないサンプルというべきものを作っていくことが、この活動を行っていくうえで重要であると思っています。

原発というのは実際に建設や資源供給に関わっている側としてみれば、長期的に大きな利益が安定して見込めるという点もあるかと思いますが、やはり人間として安全性に危機感をもつというのも当然かもしれませんね。

―やはり大企業であっても人間で構成されているわけですから、トップを含めた方々が、子子孫孫のことを考えて、原発をはじめエネルギーや資源を使いまくる社会、それによって地球温暖化などの環境問題を引き起こしている社会を続けていくことはもうだめなんだ、という意識がもうすでに、(福島原発事故前から)すでにかなり進んできていたと思います。それが福島での原発事故を受けてより明確になり、そのような行動をとる企業も増えてきたと思います。

そして原発をなくすことはなにも経済的にマイナスばかりではなく、国内に新しい産業を作り出すことにもつながります。ですからある意味では、企業の利益としてもむしろ今後はそちらの方向なのではないかという意識がより明確に、企業の皆様の方々のなかでも理解されてきているのではないかと思います。

面白いデータを挙げますと、2011年、福島原発事故が発生する2カ月ほど前に、帝国データバンクによってまとめられた資料があります。これは今後の企業の発展のために何がキーワードとなるか、という点についてのものですが、その時点で一位が環境、二位がエネルギーだったんですね。

ということは、福島原発事故の2カ月前からすでに実は、多くの企業が環境やエネルギーといったことをテーマに、今後のイノベーションでありますとか、技術革新をしていくことには気が付いていた、それが福島原発事故を受けてより明らかになったと思います。

すでにそのような意識が煮詰まってきていたというのは確かに興味深いですね。

―おそらく福島原発事故がなかったとしても、気候変動という問題とエネルギーの将来を考えた場合に、自ずと答えは出てきているはずなんですね。再生可能エネルギーで今後どれだけやれるか、というのはまさにこれからの挑戦だと思うわけですが、人間というのは目標を定めてしっかりやれば、どんどん技術革新はできるというのが面白さなのではないかと思っています。

たとえば、省エネルギーにしてもここ10数年の間に日本の乗用車の燃費は大きく向上しています。ではなぜいままでそれができなかったのか、ということを自動車メーカーの技術者の方に聞きましたら、「トップからいままでそういう指示がなかったんだ」という面白い答えが返ってきました。つまり、燃費を向上させることがあなたたちの一番の仕事ですよ、なんてことは言われてこなかった、ということなんですね。むしろ居住性とかデザインということが言われていたということです。しかし今や燃費ということがドライバーの一番の関心事であるということで、それに絞ってやれば、10数年でこれだけ変われるわけですよね。

日本もいままで再生可能エネルギーにそれほど絞ってやってきたわけではないので、それにもっと注目していけば、いろいろな新しい研究や技術が出てくると期待したいですし、それが人間の面白さなのではないかと思います。

たしかに乾燥したロシアやヨーロッパにいると、日本の自然の満ち満ちている感覚、というのは、可能性として大きな違いがあるようにも思えます。

―日本はよくエネルギー資源小国と言われておりますが、再生可能エネルギーでいえば決して小国ではないんですね。というのは、太陽は冬でもさんさんと注ぎますし、雨も降りますから、太陽と雨でバイオマスもどんどん育ちますし、地熱も利用できますし、周りは海で海流も考えられますから、日本というのは面白い可能性があると思うんですね。

これだけの人口がある国で、ある程度再生可能エネルギーへの依存で生きていくことができるというのを世界に示すことができれば、すごく面白いものを示せるのではないかな、と思っています。

確かにロシアでも基礎科学というものをどのように現実のものとして実現していくか、というのは議論になるところです。

―もう一つ面白いのは、いままでエネルギーというのは国がやること、大企業がやること、という感覚を多くの方が持っていたわけですが、それが福島原発事故以降はだいぶ変わりましたね。

むしろ市町村のような小さな自治体も、自分たちの問題だ、ということをだいぶ感じたんですよね。そこがひとつ大きな転換点かもしれません。さきほども地域とのネットワークのお話をさせていただきましたが、そういうことを自治体の側も思ってくれるようになったなと思います。

いままでエネルギーを作るとかいうことが自分たちの仕事だなんて思っていなかったんだと思いますけれども、しかし福島原発事故以降は、それをやらないと住民の生命とか財産とかを守れないということに自治体が気付いた、というのもとても大きな変化だと思います。

私が大学生だった時には、バイオマスで作った燃料で車を走らせる、というような自治体が出てきた頃でした。

―従来そのようなものはどちらかといえば、地球温暖化防止のために、というようなものだったんですね。いまはもちろん気候変動もありますけれども、エネルギーそのものの問題を地域全体で捉えなおそうではないか、という感覚に変わったことはとても面白いことだと思います。

我々も一年に一度ほど全国の市長さんたちとお話しする機会を設けていますが、ここでも何をテーマにしようかという時に、エネルギーをやりましょうという市長さんたちが増えています。国が変わらなくても、地域から変えていこう、とおっしゃる市長さんたちが増えていることも面白いことです。

そういうことが新しい社会モデルとして、次の成長力につながっていくのかもしれませんね。

―日本がこれから経済発展しようとする国に対して、するなとは絶対に言えませんし、むしろ発展したほうがいいとは思いますが、その発展のモデルが今までのものではないということを示すのが、まずは日本の役割なのではないかと思います。エネルギーをこれだけ使わなくても、こういう社会や暮らしができますよ、というモデルを示すことができれば、それは世界への素晴らしい貢献になると思いますね。

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