07. 2013年6月06日 10:13:09
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「シェール革命」の行方を左右するTPP交渉やはり日本は足元を見られるのか? 2013年6月6日(木) 木暮 太一 日本は「革命」の恩恵を受けられるのか? 少し前から話題になっている「シェール革命」。今回は「世界のエネルギー地図を描きかえる」と言われているこのシェール革命について振り返ってみます。 そもそも「シェール革命」とは何なんでしょうか? これは粘土質の頁岩(けつがん、シェール)層に閉じ込められた天然ガス・原油が、技術革新によって採掘できるようになったことを指しています。 このシェールガス・オイルは、北米のほか南米、中国など世界に広く分布しています。存在自体は以前から判明していましたが、技術が追い付かず採掘が難しかった。しかし、地下数千メートルの岩盤を破砕する新技術の開発によって採掘が可能になり、人類が入手することが可能になったのです。それ自体が非常に画期的だったため、「革命」と呼ばれています。 最近はアメリカを中心に、このシェールガスの生産が拡大しており、供給増加のため天然ガス全体の価格が大幅に下落しています。エネルギー資源のほとんどすべてを輸入で賄っている日本にとっては、非常にありがたい話ですね。 ただし、日本がこれらの安いエネルギーの恩恵を自動的に受けられるわけではありません。自然に日本に入ってくるわけではないのです。 シェールガスの埋蔵量は150年分とも300年分以上ともいわれています。これが本当にすべて活用可能であれば、人類にとってかなりの「安心材料」になるでしょう。 とにかく埋蔵量が多く、なおかつ環境に優しい。CO2排出量が石炭に対して40%、石油比では15%少ないといわれています。そのため未来のエネルギーとして注目が集まっています。日本の場合は震災後の電力問題もあり、急いで代替エネルギーに目を向けないといけない状態にあるため、特に重要です。 ただ、残念ながら日本国内にはほとんどありません。なので、輸入する必要があります。そこで外交問題、TPP(環太平洋経済連携協定)の問題が絡んでくるのです。 現在、シェールガスを最も有効に活用しているのはアメリカです。埋蔵量が多い上に、採掘方法などの知的財産を特許で固めており、エネルギー輸出国としての存在感がどんどん強まってきています(シェールガスの埋蔵量で世界最大なのは中国と言われていますが、採掘技術が追い付いていないため、まだ活用できずにいます)。 アメリカが日本にシェールガスを売る2つの理由 元々アメリカは、シェールガスを日本に輸出することを原則として認めていませんでした。日本とアメリカがFTA(自由貿易協定)を締結していないからです。しかし、アメリカは、2017年から日本への輸出を解禁することを決めました。 その理由は、大きく分けて2つあります。 1つは、日本がTPPへの交渉参加を表明したこと。日本がTPPに加盟すれば(というか、既に加盟を前提としてアメリカは考えていますが)、日米は“自由貿易協定”を結ぶことになります。だから輸出OKになるのです。 もう1つは、アメリカ国内でシェールガスがダブつくからです。アメリカは、2005年以降からシェールガスの生産量が急増しています。そのためアメリカ国内では供給過剰に陥り、天然ガス価格は、かつて100万BTU(英国熱量単位)当たり13ドル(2008年時点)だったのが、昨年は2ドル前後まで暴落しています。 いくらたくさんとれるとは言っても、ここまで価格が急落してしまうと、採算が合わなくなってしまいます(※シェールガスの採算ラインは4ドルから6ドルといわれています)。そのため、輸出を加速して国内の供給過剰を解消するというのが狙いです。 「ではアメリカからどんどん輸入すればいい。これですべての問題が解決!」と思うかもしれませんが、それほど簡単ではありません。 アメリカは、シェールガスの主な輸出先として韓国や台湾、日本などを考えています。そして、日本もアメリカから買いたいと思っています。表面的には互いの思惑は「一致」しています。 しかし、切迫感が違います。 日本では震災以降、原子力の代替として化石燃料の消費量が増大し、輸入額が1日当たり100億円も増えています。日本はこの安価なエネルギーがノドから手が出るほど欲しいのです。 また日本は今、100万BTU当たり約15ドル前後で買っています。日本の液化天然ガスの輸入相手国は、マレーシア(19.1%)、オーストラリア(17.8%)、カタール(15.1%)、インドネシア(11.9%)、ロシア(9.1%)などです(かっこ内の%は構成比)。これらの国から非常に高い値段で液化天然ガスを買っています。 一方、アメリカでは、同じ量が約3ドルで取引されています。随分差がありますね。 しかし、これらの値段を単純に比較することはできません。日本にガスを運ぶには、気体のままだと効率が悪いので、冷やして液体にする必要があります。つまり“液化”天然ガスとして輸入するわけです。そして、当然、気体を液体にするためには相応のコストがかかります。 とはいえ、アメリカで同じ量が約3ドルで取引されていることを考えると、“異常な高価格で買わされている”と言ってもいいでしょう。日本は、なんとしてもこの安いエネルギーが欲しいのです。 ですがアメリカはそうは考えていません。もちろん、アメリカも「日本に売りたい」とは考えているでしょう。しかし、“安価”でとは考えていないかもしれません。さらに無理してまで売りたいというほどではありません。つまり、この交渉は明らかに日本が不利です。アメリカは、日本に“売ってあげる”代わりに、別の条件を出してくるはずです。 売ってあげてもいいけどさ…… それが「TPP交渉時」に出てくるでしょう。アメリカが出す条件を日本がのめばシェールガスを輸出してあげる、というイメージです。具体的には、自動車、医療保険などの分野で強気の要求を出してくるでしょう。 来月、日本は初めてTPP交渉に臨みます。日本にとっては、エネルギーも大事、産業やそれに伴う雇用も大事です。かなり難しい交渉を迫られることは間違いないと思います。 ただ、だからといって「アメリカに足元を見られるから、アメリカから買うのはやめよう」と考えるのは得策ではりません。それでは自分たちの選択肢を減らすだけです。日本が考えるべきことは、“アメリカから輸入”というカードに加えて、アメリカとの交渉の選択肢を増やしておくことだと思います。 そこで注目したいのがロシアです。ロシアはもともと資源大国で、天然ガスをヨーロッパへ大量に輸出していました。ですが、安いシェールガスの登場で天然ガスの相場が崩れ、対ヨーロッパの輸出戦略は破たんしつつあります。ロシアは今、ヨーロッパに代わって天然ガスを買ってくれる国を探しているところなんです。 この状況を生かすべきでしょう。将来的にアメリカからのシェールガスを受け入れられるようにしながら、同時にロシアとの関係も深めておきます。先月、安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領と会談し、経済・エネルギー分野について大きな進展がありました。シェールガス革命により、天然ガス輸出相手国を失いつつあるロシアが日本に急接近してきています。これは大きな転機です。 現在、日本は隣国とのトラブルを抱えています。しかし、日本が取るべき行動は、当然ながら「孤立すること」ではなく、「仲間を増やすこと」です。特に自前で確保できないエネルギーのことを考えると、アメリカとの外交(TPP参加を含む)やロシアとの外交は大きな意味を持つことでしょう。 10万部ベストセラー、待望の最新版!! 『新版 今までで一番やさしい経済の教科書』 新版 今までで一番やさしい経済の教科書
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