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アメリカシェール革命のウソとその目的
アメリカでシェールガスとかシェールオイルが大量に生産され、近い将来アメリカが石油や天然ガスの輸出国になり、日本がアメリカからシェールガスを輸入すれば現在の高値での天然ガス輸入から合理的な価格での輸入に切り替えることができると言われている。しかし、これは疑わしい。以下、その理由。
1.シェールガスは頁岩というものに閉じ込められているガスだ。閉じ込められているというのは頁岩が薄い層になっていて、その層の中の空間にガスが存在することを言う。シェールオイルも同じで、頁岩の層の中に閉じ込めれている。これを取り出すために、地下3000メートルから5000メートルぐらいまで立坑を掘り、そこからシェール層という頁岩の層にそって横に掘削し、そこへ600気圧とか700気圧程度の水を注入して頁岩にクラックを入れる。これで頁岩に閉じ込められているガスやオイルが横坑とつながるので採掘できるということだ。この水を回収した後、クラックがとじないように砂などを含んだ水を再度注入する。シェールガス田にはオイルが含まれているものとそうでないものがある。オイルは水をくみ出すことで水と混じったオイルを取り出す。当然、地上施設で水とオイルを分離する処理が必要だし、すぐにオイルは採れなくなるようだ。ガスは水をすべて抜き出した後の坑道へ自然とクラックから染み出してくるのでそれを採取する。ガスについては1年程度はある程度の量が採掘できる様子だ。普通のガス田と比べると、シェールガス田は10分の1から10000分の1程度しかガスの採掘量がない。こういった採掘方法なので、従来のガス田や油田での採掘に比べたらとても採算性はよくない。ただ、海底油田を開発するよりはずっと簡単に採掘ができ、初期投資も少なくて済む。
2.現在、アメリカ国内でシェールブームが起こっているのは単に投資資金が流れ込んでいるからの様子だ。この投資ブームはどう考えても合理的なものとは思えない。故意に投資がされてシェールブームが起こされていると思える。
3.アメリカ国内でのシェールガスや天然ガスの価格が低下しているがこれはいくつかの要因がある様子だ。一つはシェールガス田では、ガスの貯蔵施設をほとんどのサイトで作っていないため、採掘するとすぐに市場へ売却する必要があり、一種の投げ売り状態で価格が下落していること。シェールガスの採掘初期にオイルが採れる場合があり、そういったサイトではほぼ同じ投資金額でオイルとガスが得られるので、ガスを低価格で売ってしまってもある程度採算性があること。
4.アメリカで実際にシェールガスの採掘がおこなわれているところのほとんどは人口密度がかなり低いところだ。そのため、数キロごとに井戸を掘削し、あたり一面をシェールガスサイトとして使えるためほとんど環境面の考慮がいらず、環境保護のためのコストをかけていない。つまり、テキサスとかのような人口密度の低い地域でしか実質的には機能しない。環境面の問題は、地下水汚染が起こることだ。クラックがとじないようにするために様々な薬品が水に混ぜられていて、それが地下水を汚染するし、坑道自体が地下水脈とつながってしまい、水道水にメタンガスなどが混じって、水道水に火が付くということが起こっている。
5.韓国がアメリカからのシェールガスの輸入契約を取ったとされるがアメリカから実際にガスの輸出が始まるのは2017年からだ。そして、どうも契約はまだ価格を決めていないようで、その時の時価と言うことになっている様子だ。もしそうなら、韓国はあまり安くは買えないことになる。
6.現在、アメリカやカナダのシェールガス権益、つまり、サイトを開発してガスやオイルを採掘して売る権利がかなりの安値で売りに出ていて、日本企業などが買っているという。しかし、もしもともと利益が出るものならアメリカ企業が買っているだろう。現在安値で権益が売りに出ているのは天然ガス価格が低迷していて開発してもあまり利益が出ないからだという。しかし、一方で盛んにシェールガス開発はされていて、一採掘業者あたり年間数百と言う井戸を掘っているという。この事態自身がシェール革命が実際は一種のバブルで単に投資マネーが注ぎ込まれているからと言うことを示している。
7.シェールガス革命をもたらしたのは水平掘りや岩盤にクラックを入れてガスを採取する技術だと言われているが、これらの技術は10年程度前に既にほぼ開発されていて、これらの技術が現在の革命をもたらしたというわけではない。アメリカでのシェールガスブームは2000年ぐらいから起こっていて、特に2006年から開発が活発化している。日本がアメリカのシェールガスの輸入を考え出したのは2012年からのようで、実際、それ以前にはアメリカ自体が輸出を考えていなかった。
8.アメリカ以外の国では同様なシェールガスブームは起きていない。ポーランドでシェールガスブームが起こるかもしれないとされていて、ポーランドの国土の3割にあたる面積に111の鉱区を設定し、石油メジャーなどが参加して開発が始められようとしている様子だ。しかし、石油メジャーは、ポーランドで権益を確保するならなぜアメリカ国内で権益を確保していかないのか。ポーランドはまだまだ人件費が安く高値でのガス購入はできない。今後急速に経済発展するとしても高値での購入はしないだろう。仮にフランスやドイツへの輸出を狙っているとしてもロシアや中東の天然ガスがあるのでそれと競合してしまう。中国もシェールガスが大量にあるとされるが実際に採掘がはじまるのは2020年以降のこととされている。中国は多くが地震の多発地域であり、地盤条件もアメリカとは異なる様子で、そのための技術開発が難しい様子だ。ともかく、ポーランドも中国もアメリカのようなブームが起こるにはまだまだ時間がかかりそうだ。つまり、本当にシェールガスというものが商業的に成り立つものかどうかの実証はされていない。もちろん、一昔前は海底油田はとてもペイしないものであったわけで、それが現在では盛んに採掘されているのは原油価格の高騰がある。それと同じで、今後も原油価格の高騰が続くはずで、一定以上の水準になれば世界中のシェール資源がペイするものに変わるだろう。ただ、それまでにはいろいろなことが起こるはずで、必ずしも10年先20年先に石油などの化石燃料の大量消費が必要かどうかは分からない。
9.下手にアメリカのシェールガス権益を買うと、その区域自体かその周辺の区域での地下水汚染が問題視され、結局環境回復の費用だけを負担させられる可能性がある。そもそも、アメリカでシェール資源のある地域の半分ぐらいはウラン残渣などで放射能汚染が問題化している。
10.アメリカの天然ガス輸出はアメリカとFTAを結んでいる国に一応限られている。だから、アメリカでのシェールガスブームは、アメリカ産シェールガスを輸入できるかもしれないと日本に考えさせ、TPP加盟へ誘い込む疑似餌とされている可能性がある。
ともかく、もともとの資源の在り方からして採掘コストを考えたらシェールガス・オイルはあまり採算性があるものではない。そして、現実にアメリカでシェールガスがかなり安価に生産されているのはどうやら単に初期投資ブームが起こっていて、そのため供給過剰の状態が続いているというだけのことなのだ。コストに見合うだけの価格が付けばそれなりに高いものになり、それは多分今の価格の数倍にはなるだろう。そしてその価格で売れるものになるかどうかは不明だ。
では、なぜ今投資ブームが起こっているか。一つにはアメリカ自体のエネルギー安全保障があるとされている。つまり、アメリカ国内での天然ガス生産余力が落ちつつあり、在来型のガスではないものを利用したいという意向が強くなったのだ。
もう一つは日本の原発事故だ。原発が停止し、再生可能エネルギーに切り替えようにも時間がかかるため当面はガス火力に頼るしかない。大陸からガスパイプラインがつながっていないため、売り手に足元を見られて日本は欧米の数倍、アメリカの5倍以上の価格で液化天然ガスを買わざるを得ない状況に置かれている。だから、そのままにしておけば日本は一気に財政破たんしてしまうかもしれず、そうなれば日本が保有している米国債が売りに出されてしまう。更に、本格的に日本がエネルギー不足になれば日本は地熱開発を進めてしまうかもしれず、そうなれば日本が高い価格で石油やLNGを買うことが無くなってしまうし、地熱発電でベースロードの電力量を供給し、それこそ原発そのものを止めてしまう可能性があるからだ。
地熱発電は発展途上の技術だ。発展途上と言うのはまだ実用化できないというのではなく、既に40年以上安定的に商業ベースで発電できている地熱発電所が存在する。その意味ではかなり完成された技術だ。発展途上と言うのは、現在主流の蒸気卓越型の地熱井戸を利用して蒸気だけを取り出してタービンを回すものや熱水卓越型の地熱井戸を利用してシングルフラッシュ発電、ダブルフラッシュ発電という熱水をも取り出すもの、そして今実用化しつつあるバイナリー発電という水よりも沸点が低い媒体を使ってタービンを回すものがある。更に、地下に水源がなくとも地上から地下の熱源に水を供給することで日本ならほぼどこでも地熱発電が可能な高温岩体発電と言う技術や、マグマを熱源として利用するマグマ発電などがある。特に高温岩体発電はかなり技術開発が進みつつあり、中心となる技術の一部はなんと水平掘りと水圧破砕なのだ。
平成12年に出された「ニューサンシャイン計画 高温岩体発電中間評価報告書」
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286890/www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/e00/03/h12/057.pdf
には次の文言がある。
「水平破砕による人工貯留槽の造成は不安定要素が多いことから、将来的には指向性掘削を駆使した方法などを検討するべきであろう。現状の水平掘削技術を導入すれば、地下の自然条件に左右されやすく人工的に制御が難しい水圧破砕も補助技術としてしか必要が無くなる可能性がある。」
この報告書には高温岩体発電そのものがアメリカで1970年にロスアラモス研究所で最初に提案されたものであり、日本もIEA実施協定に基づいて1979年からアメリカや西ドイツと共同研究を始めていたとも記されている。
アメリカで現在使われているシェールガス掘削技術は基本的にアメリカ政府が1980年代から補助金などで育成させてきたものであり、その究極的な狙いはシェールガスにあるのではなく、確実に高温岩体発電にこそある。現在は単に高温岩体発電を急速に普及させるための準備期間であり、業者や設備の充実をやっているはずだ。なお、現在のシェールガスブームの直接のきっかけを作ったとされるテキサス州のミッチェル・エナジー・アンド・ディベロップメント社が実際に水平掘りや水圧破砕の技術を完成させたのは1990年代後半であり、この時期、日本では東電OL殺人事件が起こされてい、また、フジタによる大分県での地熱開発事業がアメリカの総合エンジニアリング会社ベクテルの参加がありながら失敗に終わったことは注目に値する。この時期に、日本では、地熱発電が新エネルギーの補助金対象から外されたのだ。
シェールガス開発に対してのアメリカ政府の関与はウィキペディアのShale Gas の項目に次のように述べられている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Shale_gas
Early federal government investments in shale gas began with the Eastern Gas Shales Project in 1976 and the annual FERC-approved research budget of the Gas Research Institute, where the federal government began extensive research funding in 1982, disseminating the results to industry.[2] The federal government also provided tax credits and rules benefitting the industry in the 1980 Energy Act.[2] The Department of Energy later partnered with private gas companies to complete the first successful air-drilled multi-fracture horizontal well in shale in 1986. The federal government further incentivized drilling in shale via the Section 29 tax credit for unconventional gas from 1980-2000. Microseismic imaging, a crucial input to both hydraulic fracturing in shale and offshore oil drilling, originated from coalbeds research at Sandia National Laboratories. In 1991 the Department of Energy subsidized Texas gas company Mitchell Energy's first horizontal drill in the Barnett Shale in north Texas.[citation needed]
Mitchell Energy utilized all these component technologies and techniques to achieve the first economical shale fracture in 1998 using an innovative process called slick-water fracturing.[14][15][16] Since then, natural gas from shale has been the fastest growing contributor to total primary energy (TPE) in the United States, and has led many other countries to pursue shale deposits. According to the IEA, shale gas could increase technically recoverable natural gas resources by almost 50%.
*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<1306>>TC:38380, BC:17780
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