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ロシア、対日電力輸出提案へ
サハリンから、日ロ経済協力の目玉に
【モスクワ=石川陽平】ロシア政府が日本への電力輸出を検討していることが、18日明らかになった。極東のサハリンに発電所を建設し、北海道まで大容量の海底ケーブルを敷いて輸送する計画だ。日本では東京電力福島第1原子力発電所の事故以降、電力需給が逼迫している。ロシア側は新たな日ロ経済協力の目玉として「エネルギー(電力)の懸け橋」を提案する考えだ。
対日電力輸出では、ロシアのエネルギー省が幾つかの案を検討した。同省は日本経済新聞に「短い距離と日本の電力需給を考慮し、サハリンに発電所を建設して北海道との間に送電ケーブルを敷設する構想が現実的だ」との結論に達したと述べた。
20日にはシュワロフ第1副首相が共同議長を務める「貿易経済に関する日ロ政府間委員会」が都内で開かれる予定で、資源エネルギー協力も主なテーマになる。第1副首相の同行筋は「中長期的な課題として、政府間委員会で対日電力供給での協力を取り上げる可能性がある」と語った。
日本政府はロシア側の具体的な提案を踏まえて、電力の輸入に関する法令上の問題点がないかなどを詰めるとみられる。事業を支える資金面の協力も課題となる見通しだ。
サハリンに建設を計画する発電所は、日本企業も参画するサハリン沖の資源開発で生産する天然ガスを燃料とする。サハリン最南端と北海道の宗谷岬の間は最短距離が40キロメートル余りで水深も比較的浅いため、海底ケーブルの敷設は技術的に難しくないとみる。
日本政府はロシアとのエネルギー協力を強める方針だが、当面は極東での液化天然ガス(LNG)生産の協力拡大を優先する意向。ただエネルギー協力の拡大は北方領土問題を抱える外交関係にも好影響を与えるとの期待があり、ロシアからの電力供給も今後の検討課題となる見通しだ。
日ロ間では1998年、サハリン中部に出力400万キロワットの大型発電所を建設し海底ケーブルで電力を日本に供給する計画が浮上した。当時、約1兆円と見積もった総工費や電力の売却先の確保、天然ガスの調達などが課題となり、実現しなかった経緯がある。
しかし日本政府は福島第1原発の事故を受け、新しい電力の供給源の開拓を急ぐ方針に転じている。日本の電力需給の逼迫や電気料金の上昇を背景に、ロシア側では資源の豊かな同国と日本を結ぶ「電力の懸け橋」は「相互利益にかなう」と考えている。
ロシアでは民間企業も、電力の対日輸出の検討を進める。発電や資源開発企業を傘下に収める大手持ち株会社En+は、東シベリアの水力発電所と中国と韓国、日本を広域の送電網で結ぶ「電力の輪」の建設を提唱。9月に極東で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場などを利用し、ロシア政府に実現を働きかけている。
[日経新聞11月19日夕刊P.1]
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