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再エネ買い取り制度を見直すドイツ 想定を超えて増える再エネの調整に本腰 価格高騰、競争力↓低所得者層苦境
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 22 日 05:25:45: cT5Wxjlo3Xe3.
 

再エネ買い取り制度を見直すドイツ 想定を超えて増える再エネの調整に本腰
2012年11月22日(木)  山家 公雄


再エネ賦課金で5割、料金全体で7%増加
 10月15日、ドイツの送電管理者(グリッドオペレーター)4社は、再生可能エネルギーの導入急拡大に伴う再エネ賦課金(サーチャージ)の見通しを発表した。1キロワット時当たりの負担は、2012年の3.6セントから2013年は5.3セントへ約5割上昇し、電気料金全体では7%上がる。これは3人標準家庭で年間60ユーロ(約6000円)の負担増となる。総額では2011年の17億ユーロから2013年は20億ユーロになると推定されている。2009年時点の水準と比べると4倍になる。
 ドイツの電気料金は1キロワット時当たり24セントであり、EUではデンマークに次いで2番目に高い。フランスが13セント、イギリスは14セントである。高い電力料金と上昇トレンドは、既に同国の大きな問題になっていた。メルケル政権も、FIT適用除外範囲の拡大や特に負担の大きい太陽光発電への適用見直しなどの対応をとっていた。しかし、送電管理者による見通し発表のインパクトは大きく、電力料金および再生エネ対策のあり方はユーロ通貨危機とならんで最大の政治問題となった。
 世論はかなり動揺し、政府も対応せざるを得ない状況に追い込まれた。産業界は、国際的に競争していけなくなると、批判のボルテージを一層上げる。低所得者層も苦境に追い込まれる。日本のマスコミは概して、ドイツ再エネ政策の失敗、再エネバブルによる電力料金高騰、高まる批判という論調で捉えている。
 しかし、ドイツ国民の反応は、単純ではない。直後の世論調査では、約7割が原子力発電廃止に賛成で、再エネ普及のためにある程度の電力料金上昇を受け入れるとしている。また、環境NPOは、2000年以降の料金値上げ幅に占める再エネ負担の割合は3分の1にすぎず、過剰反応と指摘している。また、電力料金には、発送電小売りコストや再エネ賦課金だけでなく、電力税、付加価値税、コジェネ促進税などが乗せられており、これが電力料金を押し上げている。税金負担を軽減すべきとする意見も多い(資料1、2)。

(注)EEG(グリーン電力)割増の推移(セント/キロワット時):1.2(2009)→ 2.3(2010)→3.5(2011)→3.6(2012)
(資料)連邦ネットエージェンシーギー
(出所)ドレスデン情報ファイル

(出所)Eurostat統計
適用除外の拡大で不公平性が問題に
 また、環境NPOや社会民主党、緑の党などは、FIT制度(再エネの固定価格買い取り制度)が内包する不公平性を指摘する。サーチャージは、大規模需要家向けに適用除外・軽減措置が講じられている。巨額の軽減分が家庭や中小企業に転嫁され、引き上げ幅の拡大を招く結果となっているため、不公平な除外措置を廃止すべきだと主張する。緑の党は、不要な除外措置を無くすだけで40億ユーロを節約でき、1キロワット時当たり1セント値下げできる、としている。
 にもかかわらず、この適用除外の要件は緩和されてきている。メルケル政権は、電力料金が上がる際に、軽減対象を拡大してきた。現在730社が対象となっているが、2013年は2000社を超える企業が申請すると見られている。
 企業によっては、無理に消費を増やして適用除外の対象になろうとしたり、一定規模以上の自家発電を持っている事業者も対象になるため、老朽化した石炭火力発電を取得して非効率な発電をしてでも減税のメリットを追求すたりする。
 さらに、適用除外・軽減措置を受けている大企業にとって、エネルギーコストの上昇は負担にはなるが、一方で優位性もある。再エネ発電所の能力急増で、時間帯によっては、電気料金が非常に安くなっている。大規模使用者は直接卸市場に参加できるため、この安い電力を市場から購入できる。また、需給が逼迫して市場価格が高騰する場合は、工場の操業を止めて、浮いた分を市場に高く売ることも可能だ。いわゆるデマンドレスポンスによって、再エネ拡大に伴うメリットを享受できるのだ。
 この「逸失収入」は中小事業者や家庭のサーチャージに上乗せされることになり、一層の上昇を招く。中小事業者の不満は大きい。家庭も、中間・富裕層と低所得者層との間に不公平がある。前者はパネルを購入すれば売電収入を得られるが、後者は負担だけを受け入れるしかない。ある福祉団体は、60万もの低所得者が料金未払いで電力供給を打ち切られた、と訴えている。
努力目標のはずが、達成確実な数字に
 こうした状況の中、アルトマイヤー環境大臣は、10月11日にFITなど再生エネ普及政策を再構築すると発表した。変革のポイントとして、以下の諸点を挙げた。
□太陽光発電と同じように風力・バイマスに総量キャップを設ける
□RPS制度のようなものも検討
□地域・場所によりきめ細かく監視、系統容量以上の発電量が予想される場合は一時的に稼働停止も
□広範囲で大規模な減免措置の見直し
□電力関連税金の見直し
 検討スケジュールについては、11月から2013年3月まで政府内で議論を行い、2016年度に国会で審議する予定。総選挙のある9月までに決定するかどうかは明言を避けている。一方で再エネ電力の2020年導入目標を、現行の35%から40%に引き上げる。
 40%という目標は、再エネ推進者をなだめるために強引に上げるのはなく、制御可能な伸びに収めるという意図を込めた数字である。というのも、現状のトレンドでは再エネが2022年に50%にもなり、様々な歪みが生じかねないのである。
 昨年「エネルギー変革」を発表し、35%の目標を提示した際は、努力目標とみなされていたが、いまでは誰もが実現を疑っていない。
たった5%の太陽光に半分のコストをかける
 ここで、昨年7月に公表した「エネルギー変革」(Energiewende)を確認してみる。2022年までの脱原発を決め、再エネを主要電源としていくことを決めた。当時電力に占める再エネの比率は17%であったが、2020年には35%へと倍増させ、その後も2030年50%、2040年65%、2050年80%と比率を高めていく目標を掲げた。そのためにFITの水準を維持ないし引き上げ、インフラを整備する方針を固めた。
 主役は洋上風力発電で、2030年までに2500万キロワット、うち2020年までに1000万キロワットを開発する。洋上風力はバルト海・北海に立地するので、産業が多く立地し原発依存の高い南部へ電力を送ることになる。洋上風力地帯から陸地まで海底ケーブルを敷設するほか、陸上は全国3600キロメートルの送電線建設が必要になる。インフラだけでなく増大する不安定電力を監視・制御する体制や電力市場の整備も行う。また、原発の減少と再エネ普及の時間差は、高効率の火力発電で埋めるが、老朽化設備代替分を含めて、10年間で2000万キロワットの建設が必要だとしている。
 ところが、太陽光発電の想定を超える急増により、事態が変化する。2011年750万キロワット、2011年と760万キロワットと2年連続で設置量が驚異的に拡大した。再エネのなかでもコストが高く効率の低い太陽光の普及で、様々な問題が前倒しで顕在化する。再エネに費やす負担の2分の1は太陽光だが発電の寄与は5%(再エネのなかでは2割)に過ぎないとの指摘もなされた。
 2012年6月には、再エネコストの上昇を抑えるべく、太陽光に絞ってFITを調整し、4月に遡り適用された。2〜3割の引き下げ、改定のタイミングを半年毎から月毎に変更、5200万キロワット総量キャップの導入(決定時実績3000万キロワット)などを織り込んだ。年間250万〜300万キロワットまで設置量が落ちると見込んでいた。ところが、設置コストの続落、電力料金の上昇などを背景に、2012年に入っても普及ペースは落ちていない。
 電力料金の上昇は、系統運用者が大幅再エネチャージ引き上げを示唆していたことから、メルケル政権は、何らかの対応をせざるを得なくなっていた。そして10月11日の環境大臣会見となる。6月は最大のコスト要因である太陽光発電だけ抑制策で対応したが、それだけではすまなくなったのだ。料金水準もあるが、需給逼迫による供給の不安定化問題を見過ごせなくなってきていた。
再エネ普及の勢いを適正な水準に制御
 このように、ドイツ政府が見直しを打ち出した最大の要因は、再生可能エネルギーの想定を超えた伸びにある。電気料金の高騰が論争を呼んでいるだけでなく、インフラ建設や市場整備などの設計が追い付かず、供給危機を招く懸念が出てきたからだ。再エネ普及の勢いを適正な水準に制御して、高水準の再エネを受け入れるシステム設計を確立するためだ。
 ドイツの発電量に占める再エネの比率は、2000年は6%に過ぎなかったが、2010年は17%に、2011年は20%に上昇した。2011年は、同年に7基停止した原発を初めて上回った。2012年に入っても勢いは衰えず、上半期で24%と急上昇し、9カ月累計では26%まで上がっている(資料3)。10年強でシェアが2割増えたことになる。設備容量は、全体で約7000万キロワットで、内訳は風力3000万キロワット、太陽光3000万キロワット、バイオマス550万キロワット、水力440万キロワットである。太陽光はこの9カ月間で発電量が前年比53%増の250億キロワット時に達し、シェアは4.1%から6.1%に上がった。風力は8.0%から8.6%に上がり、バイオマスは6%である。
資料3.発電量構成比(ドイツ、2012年上期)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121119/239583/zu03.jpg
(資料)エネルギー・水道事業連盟(BVEW) "Entwicklungen in der Deutschen Stromwirtschaft im 1. Halbjahr 2012
(出所)ドレスデン情報ファイル
 これだけ電源が増えると、優先性が担保されているだけに発電量は増え続け、2012年は電力輸出超過が大きくなることが確実な情勢である。ドイツは電力自由化が実施されて以降常に輸出超過であるが、2011年は7基の原発が止まったこともあり超過量は減少した。しかし、本年に入り輸出の勢いが増している(資料4)。量が増えた結果、電力市場価格は下がり、ドイツの電力価格競争力がついている。EU内の炭素取引相場が下がり低水準で推移しているのも、経済不調だけでなく、CO2を出さない再エネ電力が増えたことも要因である。
資料4.電力の月別輸出入バランスの推移(ドイツ)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121119/239583/zu04.jpg
(注)年間輸出出超過量の推移(億キロワット時):144(2009)→176(2010)→60(2011)
(資料)連邦統計庁 GENESIS-ONLINE Aussenhandel
(出所)ドレスデン情報ファイル
 系統運用機関の代表者は先月、「2020年35%との目標は容易に達成できるし、原発が廃止になる2022年には50%になる。計画がすべて遂行されれば2025年には63〜64%に達してしまう。これは持続可能ではない。原発がもう1基廃止になる2015年までは危機的な状況に陥ることはないが、それ以上は保証できない」と警鐘を鳴らした。
顕在化する課題の解消に本腰
 再エネ急増により、これまで紹介したように、まず料金問題に火が付いた。さらに、インフラや監視・制御システム整備の遅れ、火力発電建設意欲の低下、中央政府と州政府との間の認識ギャップなど多くの解決すべき課題が一気に顕在化した。
 例えば、海底ケーブルの敷設が遅れ、洋上風力建設のスケジュールに影響が出たため、その負担軽減をどうするのかが問題になった。再エネへの優遇とそれによる急増で、火力発電を新設する意欲が下がっている。出力不安定な再エネ発電をバックアップするための電源としての役割が増え、利用率が下がってきている。バックアップ電源でも投資を回収できるような仕組みを導入しなければ、ならない。
 メルケル政権の「エネルギー変革」は、必ずしも地方まで浸透しているわけではない。北の州は洋上風力を含む風力開発を自給はもちろん他州への移出を計画に盛り込む。不足するはずの南の州は、太陽光やバイオマス、コジェネを活用した「分散型システム」を構築し、天然ガス火力発電の建設で自給しようとする。こうして個別の州の計画を積み上げると、再エネが前倒し普及する一方で、送電網整備の必要性がぐらついてくる。建設しても使われないインフラになるかもしれない。中央と地方の意思疎通を密にして、国の政策を浸透させる必要がある。
 さらに、ドイツの再エネ普及は周辺国に影響をもたらしている。西側のベルギー、オランダ、東側のポーランド、チェコは、ドイツの南北間の潮流の変化に翻弄されている。送電線がつながっている限り、電力は空いているところを通過する。ドイツに風が吹くと大量に発生する電力は隣接国の送電線を通過するため、地域の発電を止める必要も出てくる。隣接国は、ドイツの天候を常に監視しつつ自国の需給調整を行わなければならない。送電線の使用ルールについてはまだ検討中であり、「フリーランチの状況」に不満が高まっている。EUは、域内全体で調整する方向を打ち出しているが、早急な実行が求められる。
壮大な実験にどう立ち向かうか
 再エネを主要電源とするドイツの「エネルギー変革」は、自ら「先進国としては類を見ない壮大な実験」と称しており、まさしく世界が注目している。多くの課題があることは、政策策定の時点で予想していた。メルケル政権は、再エネ普及速度を緩やかにするとともに、調整速度を上げようとしている。
 11月2日、メルケル首相は16州政府の代表と会議を開催し、情報と政策の共有を確認した。海底ケーブルの遅れにともなう負担を国民全体で負担する仕組みを決めた。送電線整備を進めるべく、立地地域への支援策を議論している。EU指令により、加盟国は2020年までにエネルギーの2割を再エネで賄う義務を負っているが、EU全体で電流などの監視・制御を行い、国家間の連系線整備が非常に重要であるというコンセンサスがある。EUは、同時にローカルで需給バランスをとるスマートグリッドも進めている。ノルウェーは、その水力ダムに発電機などを設置して揚水発電化すれば、2500万キロワットの調整力を創出できるとしている。
 議論の多い太陽光発電は、2012年初めに導入コストが小売料金と同水準になりグリッドパリティを達成した。環境省は「現在FITは30キロワット以下の規模で1キロワット時当たり17.9セント、1MW以上の規模では同12.4セントになり、その視点からはいくら導入しても家庭用電力料金を上げることにならない」としている。
 筆者は、EUの経済大国であるドイツは、EUと連携しながら着実に課題を解決していくだろうと予想する。12〜13年で再エネ電力2割シェアアップという奇跡を既に実現しており、顕在化する課題にどのように立ち向かうか注目したい。

山家 公雄(やまか・きみお)
1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行入行、新規事業部環境対策支援室課長、日本政策投資銀行環境エネルギー部課長、ロサンゼルス事務所長、環境・エネルギー部次長、調査部審議役を経て現在、日本政策投資銀行参事役、エネルギー戦略研究所取締役研究所長。近著に『今こそ、風力』



再生可能エネルギーの真実
今年7月1日から固定価格買い取り制度(日本版FIT:Feed In Tariff)が導入されるのをはじめ、日本が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めている。この連載では、風力や太陽光などの発電の種類ごとに、その実力と課題を解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121119/239583/?ST=print
 

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コメント
 
01. 2012年12月04日 18:13:38 : irt9XgZ5fY
「ドイツの電力料金は再生可能エネルギーの急増で低下」とドイツ政府機関などが講演
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20121113/250891/

02. 2012年12月08日 21:54:16 : YxpFguEt7k
森摂氏
「ドイツの自然エネルギー全量買い取り制度(FIT)は失敗した、その証拠に買い取り価格は年々下がっている−という人がいるが、それは誤り。買い取り価格を下げるのは当初の設計通りであり、最初に高価格なのは導入を促進するため。そして20年ほど掛けて通常の電気料金と同価格になるまで下げていく」
https://twitter.com/setsumori/status/277390590709215234

とはいえ、産業構造の転換は困難も多そうですね。がんばりましょう。


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