http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/804.html
Tweet |
【第2回】 2012年11月13日 芥田知至 [三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員]
原油と天然ガス価格の二重構造
国際市況に比べ割安な米国価格
米国のエネルギー市況を見ると、年初に比べて、原油価格(WTI、ウエストテキサスインターミディエイト)は1割超の下落となっているが、天然ガス(ヘンリーハブ)は2割超も上昇した。これは、シェールガス革命で天然ガス価格は下がり、中東の地政学リスクによって原油市況が押し上げられているというイメージとは異なる。
確かに足元では、中国や欧州での需要鈍化が原油安につながり、減産見込みや冬場の暖房需要が天然ガス市況を押し上げた。
エネルギー市場の今後の展開を考える上では、エネルギー関連の技術革新が集中的に起こっている「閉鎖的な米国のエネルギー市況」と、地政学問題による「リスクプレミアムが上乗せされた国際エネルギー市況」という現在の二重の構図を押さえておくことが重要だと思われる。
まず、原油については、米国産のWTI原油は、欧州北海産のブレント原油に比べて2割安である。
実際には、米国でも海外市況の影響を受けやすい沿海部では、欧州並みの価格で原油が取引されているが、シェールガス開発の技術は原油にも転用されて内陸部では生産が増え原油が荷余りしている。米国では沿海部と内陸部では、1バレル当たり20ドルも価格差があるという状況になっている。
11年前には、1バレルの原油が20ドル前後で取引されていた。価格差が20ドルというのは尋常ではない。部分的には、列車での輸送が行われるほどだ。内陸部から沿海部に原油を輸送するパイプラインを建設・稼働させれば、大きな利益が生じるはずだが、オバマ政権では環境問題などを見極める必要があるとして、パイプラインの新設計画に慎重なスタンスを取ってきた。
一方、天然ガスについては、米国のヘンリーハブにおける価格は、英国のNBP(National Balancing Point)における価格の3分の1である。この価格の著しい低迷ぶりは、シェールガス革命によって、米国では極めて潤沢に天然ガスが生産されるようになったことを示している。天然ガスは、パイプラインを通じての輸送が主流であり、欧州と米国の間のようにパイプラインが接続されていない地域では、需給がまったく異なってしまう。
米国内での天然ガス開発の急進展や市況低迷は、エネルギー業者にも想定外であり、不採算のため撤退する動きも出ているほどだ。
パイプラインが敷設できない長距離については、LNG(液化天然ガス)として輸送する方法がある。LNGは、パイプラインに比べて、冷却設備や専用タンカーの建造が必要な分、輸送方法が割高だが、天然ガスをLNGにして輸出したいという声は、米国内のエネルギー産業でも根強い。
環境問題との折り合い等をどのように判断するのか、大統領選挙を終えて、エネルギー政策面でも新たな展開が生じやすくなるだろう。それは米国の内外で存在するエネルギー価格差の収束を規定することになる。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
http://diamond.jp/articles/print/27785
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。