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発送電は機能分離か法的分離で年末までに決着 電力システム改革専門委が再開
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 09 日 07:58:56: cT5Wxjlo3Xe3.
 

発送電は機能分離か法的分離で年末までに決着

電力システム改革専門委が再開

2012年11月9日(金)  柏木 孝夫

 11月1日の午後1時から放送されたBS朝日の報道番組「ごごいち!ニュースキャッチ」の原子力行政に関する特集で、わたしは電力システムの専門家として解説を求められ、生出演した。テレビ朝日の経済部経済産業省担当の吉野実記者が、日米原子力協定にも言及しつつ、政府の原発ゼロ政策の矛盾点を整理して分析し、わたしが解説を加えていった。

 反原発を強力に主張してきたテレビ朝日の系列であるBS朝日で、こうした特集が組まれたことに、わたしは大手メディアの原子力関連の報道における大きな変化を実感した。ようやく社会全体が、現状と理想の間にある、リアリティーのある解決策に向けて、冷静かつ複眼的に原子力について議論できるようになってきたことを象徴するものであろう。

今冬の節電では非常事態も念頭に置くべき

 これまで一貫して主張し続け、本コラム(9月28日付「「原発ゼロ」政府方針の矛盾」など)でも度々述べてきたように、一次エネルギーの選択肢は減らすべきでなく、原子力についても明確な意志を持って一定の割合を維持すべきというのが、わたしの基本的な考えである。同番組においても、このことを改めて強調した。できるだけ選択肢を多く持つことによって、足元を見られてエネルギー資源の輸入価格が高騰してしまうことを抑えられる。それが、産業・経済の成長、国力の維持・増大につながり、雇用の確保、国民生活の安定にもつながるのである。

 喫緊の課題である今冬の節電においても、今夏と同様に、原発に関する政治決断が必要になる可能性がある。特に、冬の寒さが生命の危険にかかわる度合いが極めて高い、北海道電力の管内においてである。

 10月30日に開かれた、国家戦略室のエネルギー・環境会議の下に置かれた需給検証委員会で、今夏の電力需給のフォローアップ、今冬の電力需給の見通しなどに関する「需給検証委員会報告書」の案を議論し、取りまとめた。それを受けて11月2日には、電力需給に関する検討会合・エネルギー・環境会議合同会合が開かれ、「今冬の電力需給対策について」が取りまとめられた。

 その対策の中で、北海道電力管内だけは、節電の具体的な数値目標が設定された。「2010年度比マイナス7%以上の数値目標付きの節電」の要請など多重的な対策によって、計画停電を含む停電を回避することが明記されたのである。

 冬季に北海道電力管内で需給が最も逼迫するのは2月で、厳冬だった2010年度並を想定した最大電力需要は563万キロワット。一方の供給力は596万キロワットで、予備率5.8%、33万キロワットの余裕が見込まれている。だが、同電力管内の火力発電設備は、1基で最大70万キロワットなど大型のものが多く、それらが1基でもトラブルで停止すると、一気に需給が逼迫してしまう。さらには、他電力管内から融通を受けるための地域間連系線も、津軽海峡を越える北本連系設備のみで、その容量は60万キロワットにすぎない。大型火力発電設備の計画外停止と北本連系設備の停止が同時に起こってしまう非常事態なども想定しておくべきだろう。

 実際、過去15年間に発生した電源脱落で最大のものは137万キロワットだった。7%、40万キロワットを節電できたとしても、節電しない場合の予備率5.8%、33万キロワットと合わせて73万キロワット。北本連係設備で60万キロワットの融通を受けられたとしても、合計133万キロワットにしかならず、まだ足りない。

 北海道民が生命の危険にさらされるような、万が一の非常事態に陥ってしまうことも念頭に置くべきである。泊原発の再稼働も視野に入れ、政府の責任において政治決断が求められることもあり得るだろう。

発送電分離と市場活性化策が中心議題に

 11月7日には、経産省の総合資源エネルギー調査会総合部会の電力システム改革専門委員会が、約4カ月ぶりに再開された。7月に取りまとめた「電力システム改革の基本方針」に基づき、発送電分離や卸電力市場の活性化策などを中心に議論し、年末までに取りまとめることになる。

 わたしは、先に述べたように、原子力は明確な意志を持って一定の割合を維持すべきと考える。と同時に、電力システム改革も積極的に進めるべきと考えている。

 電源構成における原子力の具体的な割合は、安全性や技術開発、コストなどの要因から、市場が決めることになる。実際には、縮原発の方向へ進むことになるだろう。そして、原発代替として期待されるコージェネレーション(熱電併給、以下コジェネ)システムや再生可能エネルギーなどの分散型電源と、原子力を含めた大規模集中型電源とを併用する時代が到来することは間違いない。最適な電力システムを構築するには、小売りの全面自由化や発送電分離など、市場を生かすための改革が不可欠なのである。

 発送電分離については、電気事業連合会も協力していくことを、電力システム改革委員会の場で明言している。再開後の同委員会では、送配電部門を子会社にする「法的分離」と広域系統運用機関に運用させる「機能分離」のいずれの形態を採用すべきか、広域系統運用機関のあり方をどうすべきかなど、未決着だった課題について重点的に議論することになる。

 発送電分離も含めた電力市場改革については、公正取引委員会が9月に報告書「電力市場における競争の在り方について」を公表している。一般電気事業者(電力会社)の発電・卸売り部門と小売り部門を分離し、 送配電部門の開放性・中立性などを確保すべきといった見解を示している。公正な競争環境を整え、新電力(特定規模電気事業者、PPS)などの参入を促すためには必要なことである。ただし、デメリットがあることも考慮しなければならないだろう。

 例えば、発電・卸売り部門と小売り部門を分離すると、需要を把握しにくくなり、発電設備への投資が鈍り、電力供給が不安定になってしまうことも考えられる。公正な競争のために市場の監視を強化することは重要だが、メリットとデメリットを十分に吟味し、欧州などの先行事例も研究するなどして、慎重に制度設計を進めなければならない。

法改正を伴わない施策はすぐにでも実行

 卸電力市場の活性化も重要な課題である。経産省の対応は早く、6月には「分散型・グリーン売電市場」を創設した。これは、自家発電やコジェネ、太陽光発電など分散型電源を対象に、1000キロワット未満の小口の余剰電力などが取引できる新市場である。それまでは、最小でも1000キロワット×30分という単位でしか、取引できなかった。

 しかし、これまでに新市場で取引されたのは、わずか3件。売り物が出てこないというのである。新電力などの場合、いくらで取引されるか分からない市場に出すよりも、顧客と相対で取引する方が安心と考えることが多いからだという。新市場を活性化させるために、初期の段階では、大規模集中型からの電力の一部を強制的に売り出させるといった施策も必要になるかもしれない。

 これらのほか、部分供給ガイドライン、常時バックアップ電気料金の見直し、系統情報公開ガイドラインなど、法改正を伴わずにすぐに実施できる案件についても検討していく。電力システム改革専門委員会における議論については随時、本コラムで解説する。

 また、11月14日には、新たなエネルギー基本計画を議論する総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会も、いよいよ約2カ月ぶりに再開される。ただし先日、三村明夫委員長(新日鉄住金 取締役相談役)にお会いする機会があったが、原子力に関する政府のスタンスが明確になっていないこともあり、「新たなエネルギー基本計画の策定は越年することになるだろう」との見解を述べられていた。同委員会における議論についても随時、本コラムで解説していく。


柏木 孝夫(かしわぎ・たかお)

東京工業大学 特命教授/先進エネルギー国際研究センター長
1946年東京生まれ。1970年東京工業大学工学部卒業、1979年博士号取得。1980〜1981年、米国商務省NBS(現NIST)招聘研究員などを経て、1988年、東京農工大学工学部教授に就任。1995年、IPCC第2作業部会の代表執筆者となる。2007年から東京工業大学大学院教授、同大学ソリューション研究機構の先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)長、2011年からは放送大学客員教授も務める。2012年から現職。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長、日本エネルギー学会会長、日本学術会議連携会員などを歴任。2011年には、一般社団法人 低炭素投資促進機構(GIO)理事長、一般財団法人 コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(ACEJ)理事長に就任。現在に至るまで長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。主な著書に「スマート革命」(2010年、日経BP社)、「エネルギー革命」(2012年、日経BP社)など。


エネルギー革命の深層

エネルギー基本計画、原発再稼働問題、再エネ特措法、電力改革……。東日本大震災以降、歴史的な転換期を迎えているエネルギー政策の抜本的な見直しについて、議論の現場、その舞台裏、水面下での攻防などを交えて、ニュースの報道などだけでは分からない「深層」を、国のエネルギー政策づくりに長年かかわり続けてきた筆者が解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121106/239139/?ST=print  

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