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石油業界、盟友との利益相反
2012年11月7日(水) 山根 小雪 、 広岡 延隆
度重なる増税を甘受してきた石油業界が追い込まれている。とうとう税金を巡り、盟友だった自動車業界と対立する構図に。背景には抗いようのない需要減少がある。
「時代劇なら、悪代官が貧しい高齢者の煎餅布団を引き剥がすような状況。いいかげんに勘弁してほしい」
石油販売業者の業界団体、全国石油商業組合連合会の河本博隆副会長・専務理事は、窮状を吐露する。
高度経済成長期を支える基幹エネルギーであった石油。1970年代は、国内の1次エネルギーに占める石油の割合は7割を超えていた。だが、国の脱石油方針の下、消費量は減り続け、今では5割を割り込んでいる。
石油業界はこれまで度重なる増税を受け入れてきた。それは「政治力が乏しく遠慮もあったから」(石油業界幹部)。だが、2004年度に予想より5年以上早くガソリン需要がピークアウトし、A重油は7年で半減。悲鳴を上げる販売現場に、再び増税の脅威が襲いかかっている。
その脅威の遠因が、かつて二人三脚で歩んできた自動車業界だ。日本自動車工業会は10月29日、自動車関係諸税の簡素化・負担軽減を求める共同記者会見を開催。大手メーカー社長が勢揃いする力の入れようで、自工会の豊田章男会長は「超円高の中の消費増税で市場が低迷すれば、自動車産業と雇用が崩壊しかねない」と語気を強めた。
自動車業界にとって、自動車取得税と重量税の撤廃は悲願。特に気勢が上がっているのは、8月に成立した消費増税法を巡る3党合意で、「両税を抜本的に見直し、消費税率8%への引き上げ時までに結論を得る」としたためだ。
経済産業省は両税の撤廃を今年度の税制改正要望の一丁目一番地に据えるが、財務省や総務省の反対は根強い。総務省の地方財政審議会は10月22日、「両税を負担軽減するなら燃料課税を含む環境税制全体の見直しが必要」という内容を答申。財源の減少分は燃料税などで補うべきだとクギを刺した。
クルマで減税したら、またもや石油が増税される――。差し迫る増税の脅威に、石油業界の警戒はピークに達している。かねて石油製品は、価格弾力性があると言われてきた。「だが、それは昔の話。値上げをすれば需要は落ちる」と河本副会長は言う。
石油元売りの業界団体である石油連盟と全国石油商業組合連合会は11月14日に総決起大会を開くことを決めた。500人近い関係者が集まり、国会議員へ陳情する構えだ。
「八代亜紀のCMはおかしい」
追い込まれた石油業界の矛先は、ガス業界にも向かっている。
需要減の著しいA重油は、業務用コージェネレーションシステムなどに使われてきた。ところが、環境省がA重油から天然ガスへの燃料転換に補助金を出したことで、転換が一気に進んだ。
「石油業界は自由化されている。なぜ電力会社と同じく地域独占で総括原価方式を取るガス会社だけを国は支援するのか」。石油連盟の木村康会長もたびたび、ガス業界を批判してきた。
その対象は、ガス会社の広告宣伝費にも及んだ。6月には石油連盟の松井英生・専務理事が、歌手の八代亜紀を起用した東京ガスの燃料電池「エネファーム」のCMを批判。「ガスの安定供給などに無関係な広告宣伝費がガス料金の総括原価に計上されているのはいかがなものか」との指摘だ。
ガス業界は「需要開発に伴う費用の計上は認められている」(日本ガス協会)と静観。東京ガスは既に批判されたCMの放送をやめている。
自動車とガスという政治力を持った2業界と対立する構図に追い込まれた石油業界。増税を回避し、需要回復にメドをつけることはできるだろうか。
山根 小雪(やまね・さゆき)
日経ビジネス記者。
広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)
日経ビジネス記者。
時事深層
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