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クリーンディーゼルが世界のエコカー市場を席巻する日
米国燃費基準で見えてきた本当の実力
2012年11月05日(Mon) 相場 英雄
前回の当欄で欧州の自動車メーカーがエンジンのダウンサイジングの第2フェーズに入ったことを伝えた。
今回は、ダウンサイジングとともに注目されているクリーンディーゼルにフォーカスする。また、新しいタイプのエンジンが有効に活用されるために、米国で採用されている燃費基準を分析する。
一般ドライバーがリッター30キロ近くを達成
「1リッターで大体28〜29キロの計算だな」・・・。
過日、新型車の試乗に出かけた友人がこんなことを言った。乗った車は独BMWの「320d」。モデル名末尾の「d」が示す通り、クリーンディーゼルだ。
友人は満タン方式の簡易な燃費計測を実施。東名高速でエコモードを使って時速80キロで走り、冒頭の数値を導き出した。
前回の当欄では、BMWや仏プジョー・シトロエン、伊フィアットなどが相次いで2気筒、3気筒の小型エンジンにターボなど過給器を加え、低燃費かつ高性能を併せ持つ新たな動力源にシフトしつつあると触れた。ここ数年続いてきた欧州勢のダウンサイジングは、新たなフェーズに入ったのだ。
今回、ダウンサイジングとともに注目したいのはクリーンディーゼルである。
独メルセデス・ベンツが本国や欧州全域での売れ筋だったディーゼルを日本市場に投入したあと、今年に入ってからはBMWも本腰を入れ始めた。私の勝手な予想だが、他の欧州勢も続々とディーゼル車を日本市場に投入するはず。
欧州でのディーゼルのシェアは約6割に達する。先に示したように、燃費テスト専門のプロドライバーではない一般のドライバーでも悠々1リッター=30キロ近い低燃費を達成できるからだ。
ディーゼルは黒い煙を吐き出し、エンジン音がうるさいというイメージがつきまとうが、私自身が感じたクリーンディーゼルは以前の“環境の敵”とは全くの別物。
アイドリング時の音はガソリンエンジン車に比べ多少大きいことを除けば、分厚いトルクが低速からわき出し、高速走行時の加速性能が劣ることはない。
マツダが今年に入ってから本格的にクリーンディーゼル搭載車をプッシュしていることからも分かるように、「日本市場でも有望な存在になり得る」(米系証券のアナリスト)。日本勢では、マツダのほかに富士重工業が欧州でディーゼルのモデルを積極的に販売している。いずれ、同社も日本での販売を始めるとみるアナリストは多い。
米国トヨタが記載する2種類の燃費
一昨年の当欄で、私はこんな記事を書いた。
「誰も批判しない『実燃費』の内外格差 燃費ランキングを鵜呑みにしてはいけない」
要するに、日本で消費者が購入の目安としている「燃費」が全くアテにならないということを多くの読者に知ってほしかったからだ。
先の記事を踏まえた上で、先を進める。
エンジンのダウンサイジングの進化とクリーンディーゼル車のシェアが上がってくると、日本メーカー、特にトヨタ自動車とホンダのお家芸とも言えるハイブリッド車(HV)は脅威にさらされる。当欄でも何度か触れてきたが、HVは日本市場では人気だが、世界市場の中では決して主流ではないのだ。
面白い事例を紹介しよう。米国トヨタの公式ホームページには、取り扱いモデルの写真が並び、この中で2種類の燃費が掲載されている。
1つは「市街地」、もう1つは「高速」モードだ。米国はリッター換算ではなくガロンが基準なので、ホームページ中は「MPG」と表記されている。
1マイル当たり何ガロンか、という意味だ。プリウスの表示を見ると、「市街地=51マイル / 高速=48マイル」とある。分かりやすく日本式に1リッター当たりで引き直すと「市街地=22キロ / 高速=20キロ」となる。
ちなみに同社の日本版ホームページでは、これが30.4〜32.6キロとなる。なぜこのような乖離が生まれたかは、本欄の拙稿をご参照いただきたいが、「米国でHVの燃費がカタログとかけ離れているとして訴訟が起こったように、米国の消費者は非常にシビアであり、日本基準のような緩い数値は集団訴訟に発展するリスクがある」(同)からだ。つまり、米国表示の燃費がより実態に近いのだ。
当欄でなんどか触れてきたように、ハイブリッドは発進と停車を繰り返す市街地で威力を発揮する。一方で専用バッテリーの重量がかさむため、高速巡航時には燃費が伸び悩む。これが米国基準で如実に表れているのだ。
日本も米国基準で新需要を
本稿はHVをけなすのが目的ではない。様々な低燃費車が登場している一方で、日本のJC08基準があまりにも実態を反映せず、消費者にデメリットになっていることを懸念しているのだ。
具体的に、私はこんなことを考える。東京や大阪、名古屋などの大都市圏で車を使う向きには、先に触れたようにHVが有効だろう。一方、日本のその他多くの地方都市は事情が違う。多くの消費者が自動車を通勤の足としている。また、地方都市では、高速道路並みの速度で巡航が可能なバイパスが整備されている。
米国基準のように、「市街地/高速」それぞれの燃費数値の目安がカタログに載れば、消費者の車選びの幅が広がるのではないか。
郷里に住む友人が昨年「プリウス」を購入した。だが、カタログに提示された燃費を1回も達成したことがないと嘆いている。彼は空いたバイパスに乗り、毎日職場と家を往復するサラリーマンだ。米国基準がカタログに刷られていたら、プリウスを選ぶことはなかっただろう。
私自身はと言えば、前回記したように今春にダウンサイジングしたエンジン搭載車を購入した。だが、さらにクリーンディーゼルのラインアップが充実してくれば、もう一度買い替えを検討する。
取材やプロモーションで、年間2万キロ近く、それも高速道路主体の移動が多いためだ。零細個人事務所の経営者としては、ハイオクと軽油の燃料コストもバカにならないからだ。
ダウンサイジングやクリーンディーゼルの台頭は、欧州だけでなく米国や新興国市場にも及ぼうとしている。HV至上主義、そして実態を全く反映しない燃費基準に日本が依存し続ける限り、クルマもガラケーや薄型テレビのような道を辿ると言ったら言い過ぎだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36408
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