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2012 年 10 月 11 日
第121回「シェール・ガスD‐地下水や河川・空気をも悪化させるタイト・オイルなどの上昇」
シェール・ガスの採掘で、地上に出てくるものはガスだけではない。坑井を伝って地上に噴出してきたものを「セパレーター」といわれるもので3層に分けている。ガスと、NGL(ナチュラル・ガス・リキッド)と呼ばれる透明な液体と、どす黒い原油のようなタイト・オイルだ。平均的なシェール・ガス井でのNGLの成分は、天然ガソリン23%、プロパン54%、イソブタン6%、ノルマルブタン17%といったところだ。
前回までに、水圧破砕に使うハイドローリック液体が破砕の対象だった頁岩(シェール)層ばかりでなく、その周辺の岩石層までも破砕し、漏れ出す同液体に含まれた様々な添加物による地下水の汚染が問題になっていると書いた。しかし地下水に混入したり地上に噴き出してくるのは水圧破砕に使った水ばかりではない。
この上に頁岩(シェール)の中に賦在されている物質も混入、噴出してくる。黒い液体のタイト・オイルは地下水や河川の水を変色させ、異臭を放つ原因となる。
水道の蛇口に火を近づけると炎が噴き出す現象はNLGの溶け込みによるものだ。
シェール・ガスは製品としても問題が発生している。ガスの主成分はメタンで、これにエタンやプロパンが混じっている。
ところが北米では、高熱量成分のエタンやプロパンをガスから抽出、高カロリー・ガスとして別途販売、残りのメタンをシェール・ガスとして流通させている。メタンは発熱量が低く、リーン・ガスともよばれている。このため、リーン・ガスを購入した場合はLPG(液化プロパン・ガス)など高熱量のガスと混ぜてカロリーをアップする場合がある。ところがメタンが主のリーン・ガスは比重が小さく、困ったことにプロパンなどの重いガスと簡単に混ざってくれないのだ。困ってしまう。
ちなみにこれまで流通している在来型のLNG(液化天然ガス)では、このような問題は発生していない。シェール・ガス生産業者だけが奇妙なビジネスに手を染めている。
この問題については、比重の重いプロパンなどのガス・タンクの底から比重の低いリーン・ガスのメタンを噴出させ、比重差でタンク内にメタン滞留を発生させて、均一に2つのガスを混ぜるといった方法がベンチャー企業などによって開発されている。
水圧破砕に使われるハイドレーリック液体として水に加えられるもので多いのがトリクロロベンゼンやトリエチレングリコールといわれる。
トリクロロベンゼンは皮膚や粘膜に対する刺激が強い液体で、潤滑剤として使用されることが多い。一方、トリエチレングリコールは吸湿・調湿剤として多用されており、溶剤としての用途もある。
(多摩大学名誉教授 那野比古)
http://www.vec.or.jp/2012/10/11/column_121/
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