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マイクロ水力で都市発電を実現 再生可能エネルギーの真実
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投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 19 日 04:54:43: cT5Wxjlo3Xe3.
 

マイクロ水力で都市発電を実現

多彩な方式、多様な地域で稼働する小水力

2012年7月19日(木)  山家 公雄

 前回は、水土里ネット那須野ヶ原の灌漑施設を利用した取り組みを詳しく紹介し、小水力発電の具体的なイメージに迫った。今回は、中小水力発電事業をリードする東京発電の取り組みについて、水道事業利用を主に紹介することで、都市部のマイクロ水力開発のイメージに迫る。さらに、全国で展開される様々な小水力の事例を概観する。

水道利用の都市発電を実現した東京発電

 東京発電は、東京電力系の発電事業者で、関東地方を中心に68カ所、計18万キロワットの水力発電の運転・維持管理を実施する。さらに、新規事業としてマイクロ発電部門を設置し、自治体の水道設備や農業用水路などを利用し、着実に実績上げている。特に水道事業関連は都市型の水力発電として注目される(資料1)。


水道の圧力を有効落差に見たてる

 水力発電の出力は、流水量と落差に比例する。地理的な高低差がなくとも、それに代わりうる圧力があれば、水力発電と同じ原理が利用できる。その原理を都市部の水道事業に応用した。

 南関東は、高低差が小さいために、ポンプで圧力を加えて水道を流している。この圧力の未利用分を活用して発電する。圧力残渣を落差に見立てるわけだ。とはいっても、圧力を利用した結果、配水に影響が出るのでは本末転倒になる。水道には圧力を調整する箇所がある。この調整機能を発電事業(回転エネルギーによる負荷)で代替することを同社は考えた。この方式だと、水道事業に影響を及ぼすことなく発電できる。圧力調整箇所の前後を配管でバイバスし、その中でマイクロ発電機を稼動させる。管内に横軸プロペラ、横軸フランシス水車を設置している。

 同社は、まず川崎市の水道局に提案し、協同作業で実現した。第1号は江ヶ崎水道局制御室に設置した。その後、川崎市の鷺沼配水所にも設置した(資料2)。水道設備の利用は、河川水や農業用水を利用する場合に比べて、浄化されている(ごみのない)分、運転は安定しやすい。しかし、一定の圧力と水量で流れる地点は少なく、設計は容易ではない。正しい設計の水車がつくと、運転は安定し維持管理が容易になる。川崎市との共同での取組みは評判を呼び、横浜市、千葉県、さいたま市に同種の発電所が展開されていった。


 下水処理施設において処理・放流される水も利用している。東京都の葛西および森ヶ崎水再生センターには、それぞれ37キロワット、177キロワットの水力発電機が設置されている。同社は、設計・建設・運転保守にかかわるテクニカルアドバイズを行っている。

北関東では高低差を利用

 北関東などでは様相が異なる。地理的に高低差があり、また人口密度が小さく消費量は少ない。こうした環境下では、水道の高低差を利用した発電を提案している。群馬県高崎市の若田浄水場は、烏川の取水口から導管を通して水を得ている。その貯水層の手前に発電機を設置した。同市の白川浄水場では、群馬用水の分水工からの導管を通して入ってくる水を利用する。甲府市では、羽黒配水池と圧力を調整する山宮減圧槽との高低差を利用している。

水道・水力発電のビジネスモデル

 このように東京発電は、既存の設備を使って都市にある未利用の水資源を活用することによって、小規模でも採算に乗る手法を開発し、実績を積んできた。補助金を活用してはいるが、RPS(買い取り義務量規制)制度下の安い価格体系の中で、事業として成立させてきた。FIT(固定価格買い取り)制度の導入で200キロワット未満は34円(税抜き)、1000キロワット未満は29円で販売できるようになり、事業が可能な範囲は拡大する。

 しかし、配水所などで配管や発電機を設置するスペースがなく土木工事などが必要な場合は、コストがかなり高くなる。同社は、補助金がなくなることも合わせ考えると、事業拡大にはポテンシャルのある地点の発掘努力と工夫が引き続き必要との認識である。

 水道設備利用の場合は、同社が設備を所有し運転・管理することを含め提案している。水道局は初期投資ゼロで、利益の一部の配当を受ける。マイクロ水力設置のESCO(Energy Service Company)事業である。また、状況に応じて自家消費により購入電力を減らす(省電)かあるいはFITを活用して電力会社に売電するかを検討する。

廃止発電所の再開発にも注力

 同社のマイクロ水力事業部門は同じ発想の下で、水道事業だけではなく、既存の灌漑設備と未利用の農業用水を利用した発電事業について支援している。大分県の大野原土地改良区連合、栃木県の那須野ヶ原土地改良区連合、岩手県の照井土地改良区などにおいて設計・建設をサポートしている。

 明治の黎明期から戦後の初期まで、全国で小水力発電の開発が行われたが、その後、老朽化し廃止になった発電所は少なくない。FITの導入により、廃止された発電所の再生が注目されている。工事が比較的容易であり、水利権が残っている場合もある。同社は、この分野においても実績を持つ。伊豆市湯ヶ島の老舗旅館である旧落合楼が1953年(昭和28年)に建設した出力100キロワットの流れ込み式水力発電所を再生した。95年に運転を停止していたが、設備の譲渡を受け、えん堤の改造、水車・発電機の交換を行い、2006年8月に運開している。

 東京発電は、水力発電のプロフェッショナルで人材を抱え、かつマイクロ水力にも実績がある。昨今の環境下で、自治体などから問い合わせや協力依頼が多く寄せられている。所有する発電所の運転・管理を持続しながら、新たな経営資源をどのように確保するかが目下の課題である。

砂防ダムを利用

 都市の上下水道を利用したものだけではなく、地域再生、地球温暖化対策、再生可能エネルギー普及などを背景に、小水力発電に取り組む例が全国に広がっている。

 瑞穂の国、日本は、降水量が豊富で、集落のあるところに水田があり灌漑施設がある。用水路の総延長40万キロメートルにも及ぶ。利水・治水用のダムも無数にあり、自治体が水道事業を行っている。小水力、特にマイクロ水力発電は、地域が主体となって開発し、地域で利用することが基本になる。最近の事例もほとんどが小規模なものである。以下で、最近の報道などを参考に、多様な小水力発電開発事例を整理・概観してみる。

 福井県では、砂防ダムを積極的に利用する。高さ15メートル以上の砂防ダムで小水力発電の可能性があるとして、県内約2000カ所のうち42カ所の砂防ダムで積極的に開発を進めていく予定である。

 越後市大滝町区は、同県内発の砂防ダムを活用した小水力発電計画を進めている。大滝町を流れる岡本川の上流には県が整備した「岡本ダム」がある。ダムのコンクリート壁に設置した導水管を活用する。出力は10キロワット程度を見込む。本年度内に事業計画を取りまとめ、2014年度の導入を目指す。大滝町区は、工業用水を管理しており、昔から製紙場で利用している。砂防ダムによる小水力発電を2003年ごろから検討してきたが、FIT制度の導入で一気に計画が動きだした。売電で得られる収益を街灯の電気代に充てる。

 また福井県は、県営の浄土寺川ダム(勝山市)に小水力発電設備を導入する。本年度から設備設計に入り、2014年度に運用を開始する予定。ダム放流水を使って発電し、ダム管理に必要な全電力を賄うほか、余剰電力は電力会社に売電する。維持流量は0.13立方メートル、落差は47.2メートルで発電出力は42キロワットを見込む。年間発電電力量は約30万キロワット時となり、余剰電力は20万キロワット時にのぼる。

 山梨県南アルプス市は、2010年4月に、富士川・金沢川の砂防堰堤を利用した発電所を運開した。取水口を堰堤上流部の堆積物内に埋没させる、堰堤の下部に穴を開けて導水するなどの工夫をこらし100キロワットの出力を確保した。近隣の温泉ロッジなど市営施設で消費し、余剰分は売電している。

国営農業事業に付随して建設

 福井県は、農業用パイプライン敷設を機に小水力発電設置を検討している。2016年度に7カ所での導入を目標に掲げる。電気は農業施設での活用を考えている。九頭竜川下流地区は、米作を中心とした一大穀倉地帯を形成しているが、基幹的用水路の老朽化が進んでおり、国の農業用水再編対策事業により老朽化した開水路をパイプライン化し、農業用水の再編と配水システムの再構築を行っている。工期は1999〜2015年度、総事業費は1133億円に上る大規模事業であり、受益面積は福井、あわら、坂井市、永平寺町の約1万2000ヘクタール、受益農家数は約1万2000戸に及ぶ。福井県は、5月22日に、供給を受ける地域の農業、農村振興の方向性を示した「九頭竜川地域 農と水の振興ビジョン」を発表した。その一環して小水力発電も活用していく。

 前回紹介した、那須野ヶ原発電所も、国営の農業水利事業に伴って建設したものである。

 また、国の小水力発電モデル事業を利用する例もある。大分県竹田市米納では、農水省のモデル事業として、2010年4月、農業用水路の高低差約8メートル、長さ約83メートルの区間を利用した最大出力25キロワットの小水力発電所が稼働した。田のあぜに直径50センチメートルの塩化ビニル製パイプを埋設し、地元事業者が開発したプロペラ式発電機を回す。

上下水道施設を利用して発電

 上下水道を利用する発電は、東京発電が先鞭を切った形であるが、全国に広まっている。

 富山県は、下水処理をした水を川に放流する際の落差を利用した小水力発電を建設する。2012年6月に着工し今秋に稼働する予定。場所は、高岡市の「二上浄化センター」である。

 同浄化センターでは、高岡市や射水市など5市計約19万人分の下水を処理しており、1日あたりの流量は約6.7万立方メートルになる。塩素消毒した下水処理水が、幅約6メートル、高さ約2メートルの池から流れ落ち、約600メートルの放流管を流れて小矢部川に注いでいる。最大出力10キロワットのマイクロ水力発電機で発電し、年間発電量は一般家庭21戸分に当たる約8万キロワット時で、すべて浄化センター内で使用する。県の下水道公社が運営する下水処理場は、2施設だが、市町村の下水処理場は32施設あり、県は今後の市町村による展開に期待している。

 川崎市は、入江崎水処理センターにて、2011年6月に出力14キロワット(最大使用水量毎秒1.4立方メートル、有効落差1.4メートル)の発電所を運開し、自家消費している。最終沈澱池の流出水路から流出ピットへの落差を利用し、プロペラ水車を設置している。

 次に上水利用である。大阪市は、泉尾配水場を建設中であるが、2013年中にも出力110キロワットの発電所を運開する予定である。配水場では、配水管から引いた水を地下にある配水池でいったん貯留した後、家庭に給水する。配水管がもつ圧力と配水池までの落差を利用した合計の有効落差39メートルを利用する。

 福岡市水道局は、福岡県大野城市の乙金浄水場にて、100キロワットの発電所を計画中である。

 奈良県は、桜井浄水場にて、2010年5月に出力197キロワット(最大使用水量毎秒1.0立方メートル、有効落差29メートル)の発電所を運開し、自家消費している。接合井(せつごうせい)と原水貯留池との標高差を利用し、横軸フランシス水車を設置している。宇陀市の室生(むろう)ダムで取水された水は一度、接合井に貯められ、そこから浄水場の原水貯留池へ送られている。

 神奈川県は、芹沢配水池にて、2010年3月に出力55キロワット(最大使用水量毎秒0.35立方メートル、有効落差21メートル)の発電所を運開し、自家消費と余剰電力売電を行っている。ポンプによる圧力で配送するが、その残圧(有効落差)を利用し、横軸リンクレス・フランシス水車を設置している。

廃止された発電所を再開発

 既存ないし廃止された発電設備を利用して再開発する例も増えてきている。千葉県大多喜町は、観光地である養老渓谷において小水力発電の計画を進めている。渓谷の約45メートルの高低差を利用して出力50キロワットを見込み、2013年8月までの稼働を目指す。自治体の小水力発電は千葉県内で初の試みになる。この場所では、昭和30年代まで東京電力が水力発電を行っていたが、水力不足などから東電は撤退し、町に土地を譲渡した。既存導水路の存在やFIT導入が、計画推進の決め手となった。前回紹介した那須野ヶ原の蟇沼発電所も、廃止された東電発電所の跡地である。

 電気化学工業は、6月19日、同社が所有する流れ込み式水力発電所「大所川発電所」の許可取水量をアップさせ、最大発電可能電力を8400キロワットから9800キロワットへと1400キロワット増加させた、と発表した。同社は新潟県糸魚川市の「青海工場」の近くに、流れ込み式水力発電所を15カ所保有している。国土交通省、経済産業省の協力を得て、導水路に流し込む水を増量した。同社は、流れ込み式発電のノウハウを他の水力発電所所有者に提供し、グリーンエネルギー増産に向け事業展開するという。

ビル内の空調を利用

 ビル内の空調設備を利用した発電も登場しているが、究極のマイクロ発電とも言える。NHKは、ビル内の空調機を冷却するために使われる循環水を利用して、2008年5月に出力7キロワット(最大使用水量毎秒0.045立方メートル、有効落差33.6メートル)の発電システムを設置し、自家消費している。循環水は地階にある蓄熱糟に溜めてあり、ポンプで上層階に運び、使用後はパイプを通して地下の蓄熱糟に落とす。この力を利用する(資料3)。


 福岡放送会館は、2009年1月出力9キロワット(最大使用水量毎秒3.2立方メートル、有効落差28メートル)の発電システムを設置し、自家消費している。宮崎県の都城市役所も、2008年に3キロワットの発電システムを導入している。

 これらは、日立産機システムが開発し、縦軸単段フランシス水車を設置している。日立産機システムは、同社の習志野事業所に機械冷却の水を使って2キロワットの発電を行っている。

地域のシンボルとして設置

 自治体が中心となり、地域のシンボルとして開発する例も増えている。

 富山市は、2012年3月、市内施設に2つの水力発電所をオープンした。常西公園には、伝統的な開放型下掛け水車を設置し、2メートルの落差を利用し9.9キロワットの出力を得る。東新町公民館には、専用水路を引き水車を地中に設けて、4.5mの落差をとり88キロワットの出力を得る。S型チューブラ水車を設置。いずれ農業用水を利用し、ライトアップ用LED照明、防犯灯などに利用し、余剰分は北陸電力に売る。富山市は、環境モデル都市行動計画を策定しているがその目玉になる事業である。

 山梨県都留市では、「小水力発電のまち」を掲げており、家中川の水を利用して市役所近くに3機の発電機を設置している(資料4)。「元気くん1号」は木製の下掛け水車で、出力20キロワット(落差2メートル)にて2006年設置、同2号は上掛け水車で、出力19キロワット(落差3.5メートル)にて2010年年設置、そして同3号は鉄製の開放型らせん水車で出力7.3キロワット(落差1メートル)で2012年4月に設置している。2011年度の視察者は2475人と前年比倍増となったが、うち8割強は県外からである。


 このように、全国で様々な種類の小水力発電が建設・計画されてきている。一件当たり出力は小さいが、地域に与えるインパクトは大きい。最近の小水力発電の開発数は年間20件程度であるが、FIT制度導入によりこの動きが加速しケタ違いの地点数になれば、量的にも存在感が出てくる。 資料5は、環境省が2010年度に実施した中小水力発電導入ポテンシャル調査の概要である。農業用水路を含め多くの開発可能地点がある。しかし、河川部が圧倒的な存在を示しており、この開発へのチャレンジも求められる。



山家 公雄(やまか・きみお)

1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行入行、新規事業部環境対策支援室課長、日本政策投資銀行環境エネルギー部課長、ロサンゼルス事務所長、環境・エネルギー部次長、調査部審議役を経て現在、日本政策投資銀行参事役、エネルギー戦略研究所取締役研究所長。近著に『今こそ、風力』


再生可能エネルギーの真実

今年7月1日から固定価格買い取り制度(日本版FIT:Feed In Tariff)が導入されるのをはじめ、日本が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めている。この連載では、風力や太陽光などの発電の種類ごとに、その実力と課題を解説する。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120717/234503/?ST=print  

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