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再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度施行、期待外れか
2012年 7月 2日 16:13 JST
【東京】国内での再生可能エネルギー提供に向けた新たなインセンティブにより民間企業が同セクターに関心を示しているが、専門家らは新政策でも発電量の押し上げにはほとんど寄与しないとの見方を示している。
Bloomberg
SBエナジーの記念式典で挨拶する孫正義氏（1日、京都）
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が7月1日に施行されたことに合わせ、複数の注目されるイベントが開催され、ソフトバンクの孫正義社長や枝野幸男経済産業相もイベントに参加した。
孫社長は、ソフトバンクグループのSBエナジーが京都府で大規模太陽光発電所（メガソーラー）の運転を開始した記念式典で、同制度の施行は、全国で大規模太陽光発電プロジェクトが広がる前触れだと宣言した。孫社長は、これから日本中に自然エネルギーを普及させていくと表明。さらに、再生可能エネルギーが高過ぎるとの批判に対し、再生可能エネルギーの発電コストが「ほかの電力よりも安いという時代が必ずやってくる」との見方を示した。
ドイツなどヨーロッパ諸国のプログラム同様、再生可能エネルギー源から生み出される電力は高コストだが、これを利益が出るレベルの固定価格で長期間、買うことを電力各社に義務付けることによって、固定価格買い取り制度は太陽光や風力の普及を目指す。昨年の東日本大震災による福島第1原子力発電所事故の後、国内の原発はすべて、定期検査を終えたのちも再稼働されず、国内では電力供給に奔走する状況となっている。
関西電力は大飯原発の原子炉1基を1日に再起動したが、多くの地域で原発に対する反対は根強く、以前のように原子力で再び全国の電力供給の3割を賄える公算は小さい。再生可能エネルギーは現在、国内の電力総供給量の8〜9％に過ぎず、その大半は既存の水力発電が占める。風力と太陽光発電は合計でも1％に満たない。
固定価格買い取り制度の施行は、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及を促すことを目指しているが、長期的な価格の枠組みが不透明なことや現行の送電網の制限のために、新プロジェクトの構築が妨げられる見通しだ。新制度のもとでは、地域電力会社10社は全社、社外の太陽光や風力を利用したプロジェクトが生産する電力を買い取る必要がある。10キロワット以上の発電能力を有する太陽光発電所からの電力に各地域電力会社が払う価格はキロワット時当たり42円となる。（20キロワット以上の発電能力を有する発電所からの）風力発電による電力価格はキロワット時当たり23円10銭となる。これらの価格は20年間保証されている。
国内の風力と太陽光発電の増加量（単位：メガワット）
再生可能エネルギー業界は、この価格と買い取り期間ならプロジェクトは利益を出すことができるとしている。しかし、こうした条件は2016年6月までに必要な承認を得るプロジェクトに適用が限られ、まだ計画段階に入っていない大規模発電所にとってはほとんど時間が残されていない。
ユーラスエナジーホールディングスの広報IR室長、宇佐美光江氏は「プロジェクト1件について、環境アセスは3〜4年ぐらいかかります。その間に買い取り価格が大きく下がったら大変です」と話す。
日本には風の強い沿岸地域が多いものの、新制度は風力発電よりも太陽光発電寄りと言える。豊田通商の再生エネルギー専門子会社であるユーラスエナジーは、3月に、北海道と兵庫県での大規模太陽光発電プロジェクト計画を発表した。経済産業省は先月29日、7月1日に始まる再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、44の発電設備を買い取り対象に認定したと発表。内訳は太陽光発電が43件、風力発電が1件だ。
グリーンパワーインベストメントの堀俊夫・代表取締役社長は、「問題は、風は（グリッドのあまり整備されていない）そういう所で吹くんです」と話す。風力発電は、北海道や東北地方の沿岸や山の上など既存の電力供給網から離れた場所に適地が多い。国内北部地域に送電網を構築するだけでも5年かかり、費用は最低1兆円かかると政府はみている。
手元資金は豊富ながら保守的な国内銀行ももう1つの障害だ。
グリーンパワーインベストメントは、島根県で48MWの風力発電所を開始する用意があるが、資金繰りに苦戦していると明らかにしている。堀社長は「銀行は、（風力をよく知らないので）先にキャッシュフローを見たいと言うんですが、キャッシュフローを見せるには、施設を作る資金がいります」と語った。
記者: Mari Iwata
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