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http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120511/231870/?ST=print
>環境・エネルギー>「そもそも」から考えるエネルギー論
米国からのシェールガス頼みは危ない綱渡り
内向きの希望的観測だけでエネルギー構成比は決められない
2012年5月14日 月曜日 大場 紀章
今回は、日本の化石エネルギー供給と米国との関係について述べたいと思います。まずは、以前に掲載した「シェールガスに期待し過ぎてはいけない」の続きとして、安い米国のシェールガスを輸入しようという話題の現在の状況についてです。
日米間のLNG輸出認可の合意は実現せず
4月30日に行われた日米首脳会談において、野田首相のLNG(液化天然ガス)対日輸出拡大の要請に対し、オバマ大統領は「(政府認可の可否は)政策決定プロセスにある」として、明言を避けたと報じられました(毎日新聞)。少なくとも11月の大統領選までは輸出認可が行われる可能性は低いという見方が強いようです。
これまでの米国LNGの対日輸出認可に関するプロセスを簡単に振り返ってみます。
まず2011年9月にAPEC(アジア太平洋経済協力)のため訪米した牧野経済産業副大臣が、チュー米エネルギー省長官に対し特例的に日本へのLNG輸出を認可するよう要請しています。
2012年2月、日米首脳会談でLNG輸出認可の合意をする方向で両政府が調整中と報道(読売新聞)。
そして2012年4月、三井物産・三菱商事、東京ガス・住友商事がそれぞれ800万トン、230万トンのLNG輸入契約の「基本合意」をしたと発表しました。
こうした流れだけをみると、米国からの対日LNG輸入は既定路線でほぼ決まるも同然のように感じられます。特に「基本合意」発表は、政府認可の可否が不透明な状況下でありながら大きく報じられましたので、この発表を見ていかにも米国の安いシェールガスの輸入実現が決定したかのような印象を持った方は多いのではないでしょうか。
しかし現実は、事務方が準備を進めていた輸出認可の合意は今回は実現せず、既に行われている交渉の継続を確認をしただけで終わりました。こうした、認可の問題や、予定されていた合意がなされなかったことなどの問題は、全くと言っていいほど報道されませんでしたので、気づかなかった方も多いでしょう。
日本の将来のエネルギーを懸念されている方の中には、米国の安いシェールガスが切り札になると期待している方は多いと思います。原発の再稼働問題を抱える中で、ほとんどの再生可能エネルギーは、短期的に原発の代替はおろか比較対象にすらなり得ないことを理解すれば、高騰するLNG価格をいかに下げるかが、現在の日本にとって死活問題であることは間違いありません。
確かに、異なる価格体系をもつ米国産のLNGが日本に入ってくれば、大半を占める石油価格にリンクしたLNG輸入価格に影響を及ぼし得るでしょう。
同盟国だからといって常に協力してくれるわけではない
しかし今回、輸入認可に合意できなかったことが、良かったことなのか、悪かったことなのかは、現時点では判断できないと私は考えています。以前の記事の中で、「もし米国からのLNG輸入を期待するならば、積極的な日本側からのトレードオフ提案を伴っているべき」と書きました。
つまり、一般に言われているように、普天間基地移設問題やTPP問題、その他の重要課題に関する日本側からの「おみやげ」がない状態では、オバマ大統領はリスクを冒して認可するわけにはいかなかったと思われるので(もちろん他の政策オプションも多く存在するでしょう)、何もないのでは認可が下りなかったのは当然とも言えるわけです。
民間での交渉が進んでいるのだから、判断のタイミングがずれ込んだだけで、認可が降りることは時間の問題だと考える方もいらっしゃるかもしれません。私も、将来的に認可される可能性は十分あると思います。
しかし、5月3日のウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、仏石油会社トタルのCEO、クリストフ・ド=マルジュリー氏が「(米国政府は)現在の安いガス価格を維持して産業競争力の優位性を保ちたがる」「(米国エネルギー省は)安いガス価格維持のために輸出を制限するだろう」と述べたと伝えています。期待感一辺倒の日本とは違い、非常にリアルな認識だと言えるのではないでしょうか。仮に輸入が開始されたとしても米国政府の都合で停止させられるリスクがあり、供給先の多様化という効果はあっても、主たる供給源として期待することは適当とは思えません。あまりにも当然のことですが、同盟国の米国だからといって、常に日本の都合に合わせて協力してくれるわけではないのです。
「日本は米国の庇護の下で石油・天然ガスなどのエネルギー安定供給を確保してきた」というイメージがあるかと思います。日本に来る石油タンカーの8割、LNGの3割(中部電力は6割がカタール産のLNG)が、ホルムズ海峡〜マラッカ海峡を経由します。最大のチョークポイントであるホルムズ海峡の周辺には、米軍がバーレーンに第5艦隊基地を配置して常時1〜2隻の空母を待機。カタールに空軍基地を保有して、ホルムズ海峡の警戒を行なっています。まさに米国が守っているというイメージ通りにも見えますが、時代は変わりつつあります。
ご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、2010年7月、商船三井が保有するタンカーが何者かに攻撃を受けて、13センチの厚みのある甲板がめくれ上がり、船体に幅11メートル、高さ6メートル30センチにも及ぶ大きな破損が生じました。幸い、航行には支障はありませんでしたが、もう少し衝撃が大きければどうなっていたかわかりません。
ところが、事件のあった数日後に私が聞いたある防衛省関係者の話では「米国の第5艦隊が情報をくれない」ということでした。2010年は、日本は米国のアフガン戦争の後方支援であるインド洋の給油活動を撤退(1月)した年です。一つの証言だけで断言はできませんが、日本はこの撤退によってこのエリアの危機情報を共有する資格を失って、米軍からの情報提供がなくなったとも考えられます。
米国にとってのホルムズ海峡の意味合いも変わっています。2003年のイラク戦争は、グリーンスパン前FRB(連邦準備制度理事会)議長による「石油が目的」との指摘もありましたが、その後に行われたイラク油田の入札では米国石油企業はほとんど落札しませんでしたし、二次入札では応札すらしませんでしたので、その指摘は外れていたことになります。
米国にとってホルムズ海峡が持つ意味は変わった
当時28%もあった米国の輸入原油の中東依存度は、現在は18%まで下がっています。その実現のために、米国の海底油田開発の規制緩和を行ってきました(ただ、その最中にメキシコ湾の石油漏れ事故が起きました・・・)。オバマ大統領は選挙時の公約として10年以内に中東からの原油輸入をゼロにすると言っており、米国にとっての石油供給源としての中東の重要度はかなり低下していることがうかがえます。米国がホルムズ海峡を警戒するのは、ホルムズ海峡に依存する同盟国の日本と韓国に対する配慮という意味合いがますます大きくなっていると言えます。
そうした中東情勢の変化や、日米関係の変化の中、日本はより大きくなった化石燃料供給リスクの状況を知ることすらできないまま、単に国内だけを見て、化石燃料依存度を高める方向に進んでいるようにさえ見えます。もしそうした選択肢をとるとするならば、自ら安定供給を担保するためのコストを負担する覚悟が伴っているべきではないでしょうか。安心や安定はタダでは手に入りません。
そもそも、エネルギーのほとんどを海外に依存しているということは、日本のエネルギー政策は外交政策と表裏一体であり、国際情勢の変化に強く依存しているということを意味しています。もちろん、国民の生活や安心、産業など、国内の事情が最重要であることには変わりはないですが、内向きの希望的な観測だけで、将来のエネルギー構成比の数値が決められるような性格のものではないということを、まず肝に銘じるべきではないでしょうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120321/230119/?ST=print
シェールガスに期待し過ぎてはいけない
持続的と考えられてはいない米国のLNG輸出
2012年3月26日 月曜日 大場 紀章
エネルギーの話題は、読者の関心のポイントや好き嫌いが実に様々で、議論のターゲットを絞るのが大変難しいです。本来は、短期の課題と長期の課題を分けて議論するべきです。しかし、例えば原発再稼働の問題をとっても、今年の再稼働の有無の判断が長期にも影響を与えると思われるため、容認派・反対派の両者にとって死活的問題となり得て、長期・短期を簡単に切り分けることができません。このように、直近のことを決めるにも、長期の話をせざるを得ません。しかし、長期 の議論が直近の事情に引きずられてしまい、本来の長期的な背景の部分がごっそり抜け落ちていることが、私の基本的な問題意識です。
今回は、最近少なからず目にすることのある、シェールガス(頁岩=シェールの中に残留した天然ガス)について取り上げたいと思います。
「シェールガスのお陰で米国ではガスがとても安く、それを日本に輸入できればいいのではないか」といった話題に何となく期待している方、またはその構想に一抹の不安を抱いている方に向けて、私の見方を紹介します。シェールガスのことを全く聞いたことがない方は、大変申し訳ないですが日経ビジネスオンラインに優れた関連記事が多数ありますので、そちらを参考にしてください。
シェールガスをテーマにするといっても、採掘時の環境問題や開発企業の経営上の問題、将来的な生産量、中国やポーランドなど米国以外での生産の広がりなど議論しなければならないことは山ほどあり、そこにご興味を持つ方もいらっしゃると思います。しかし、今回はすべてをすっ飛ばして、米国のシェールガスを日本が輸入するとことの意味に的を絞ります。
日本の7分の1、米国の天然ガスの安さは魅力
現在、日本が輸入している天然ガス(LNG:液化天然ガス)の価格と、米国内での天然ガス価格ではおよそ7倍の開きがあります(図1)。であれば、米国からその安いガスを輸入できれば、原発が止まってLNG購入価格の高騰にあえぐ日本にとっての救世主になるのではないか、と淡い期待を抱きたくもなりますが、事態はそう単純ではありません。
図1:2004年からの天然ガス価格の推移
日本エネルギー経済研究所、国際通貨基金、米エネルギー省エネルギー情報局の統計より
現在、米国政府に認可されているLNG輸出プロジェクトは8つあり、計画輸出量の総量は年間約1億トンと、米国のガス消費量の2割に匹敵します。そのうち、非FTA締約国に対する輸出認可が下りているのは今のところ1件(Sabine Pass)のみです(図2)。Sabine Passのプロジェクトは、英国、スペイン、インド、韓国(3月にFTA発効)などの国々に向け年間1600万トンが販売されることが決まっています。
これらの案件が生まれてきた背景には、もともと米国LNGの輸出ではなく輸入増大をあてこんでLNG受入基地を建設した事業者が、シェールガス生産の拡大により輸入量が激減したため開店休業状態となり、やむなく液化設備を増設し、内外価格差を利用して輸出業者になろうとしている、という事情があります。
図2:北米LNG輸出案件
連邦エネルギー規制委員会の資料、各種報道より作成
米国の認可とは別に、カナダにもいくつかのLNG輸出案件があります。しかし、コストなどの条件で米国案件には見劣りし、プロジェクトが生まれては消えています。また、カナダではオイルサンド(原油を含んだ砂岩)の生産のための安価な天然ガス供給確保が課題となっており、そちらへの供給と競合してしまうという別の問題があります。
米国ではLNGを輸出すべきかの議論に
一方、日本ではあまり知られていませんが、米国では「そもそもLNGを輸出すべきかどうか」が議論されています。8つの輸出案件のなかでSabine Passしか輸出認可されていないのもそうした事情を反映しています。もし、輸出しても余りあるほどのシェールガスが生産されるのであれば、このような議論は発生しないはずです。裏を返せば、懸念材料があるということです。
これまで、シェールガス生産量は順調に伸びてきましたが、必ずしもこの傾向が続くとは限りません。シェールガス生産の急増は、もともとは技術革新によるものですが、それ以外にも過剰期待によって産み出されたバブル的な過剰供給の側面が多分にあると指摘されています。1MMBtu(英国熱量単位)当たり2.3ドルという現在の価格水準は、シェールガス生産の採算分岐価格(4〜7.5ドルと言われる)を大きく下回っており、ガス販売自体では採算が取れていないと考えられます。実際、2012年1月、シェールガス米国第2位のチェサピーク社はできるだけ早い時期までにガス生産量を16%削減すると発表、ほかにもコノコフィリップス社、BG社、エンカナ社などがシェールガス生産計画の縮小を相次いで発表しています。
米国エネルギー省は資源量見積もりを4割下方修正
また、米国エネルギー省(DoE)による米国のシェールガス資源量見積もりは、2010年から2011年にかけて2.4倍に増えましたが、2012年は逆に4割以上下方修正されています(図3)。これも、事前の過剰な期待による見積りが、実際に開発が進むにつれ現実が明らかになり、修正されたことを示しています。
図3:DoEの米シェールガス資源量見積もり
需要面にも懸念があります。米国では2020年までに老朽化した石炭火力発電所の約12%が停止することになっていますが、環境規制によってその多くが天然ガス火力に置き換えられることになっています。2020年までに新設されるガス火力発電所によるガス需要の増加量は、年間1.6〜3.5tcf(兆立方フィート)と予測されています<注>。これは、現在の年間消費量の7〜16%に相当します。
<注>ICF Internationalは年間1.6〜2tcf、デロイトは3.5tcf、ドイツ銀行は3tcfと予測
それでも、DoEは今年発表の最新のエネルギー見通しで前年までの輸入見通しを一変させ、北米全体の天然ガスは2016年から純輸出に転じるとしています。一方、英国のオックスフォードエネルギー研究所が1月に発表した報告書では、米国のガス生産量やアジアのガス需要の高低により4つのシナリオを設定し、北米の天然ガス輸出入の見通しを試算しています。その4つのシナリオのうち3つでは全期間で純輸入となり、唯一LNG輸出があるシナリオでも輸出は数年間だけで再び輸入に転じてしまいます(図4)。
図4:各機関による北米天然ガスのネット輸出入見通し
LNG輸出事業モデル自体にも懸念があります。既に述べたように、今挙がっているLNG輸出案件は、元はLNG輸入に失敗した事業者の生き残りを賭けた経営多角化であり、事業者自体はガス生産者ではありません。そのため、事業者は基地使用料と液化コストを取るだけのビジネスで利幅が狭く、さらに地域間の価格差だけに依存しているという非常にハイリスクなビジネスモデルです。
例えば、Sabine Passの案件では、北米ガス価格(1MMBtu当たり2.3ドル)の15%の基地使用料に固定の液化コスト3ドル、それに輸送費、保険費を加えると購入価格は約9ドルとなります。確かに日本の現在のLNG輸入価格である約16ドルと比べて安いですが、昨今の価格変動を考えるといつ差がなくなってもおかしくありません(図1)。おまけに、公共の利益に反すると判断されれば、政府から輸出許可の取り消しもあり得るという政治リスクもあります。こうした理由から、大手ガス企業はLNG輸出事業には参入する気配もなく、米国の投資銀行も投資に慎重な姿勢をみせています。
このように、米国からのLNG輸出が必ずしも持続的と考えられてはいないことが分かります。
価格上昇リスクを過小評価?
DoEは、LNG輸出が米国天然ガス価格に与える影響について検討した報告書を発表し、その中で24〜54%の価格上昇があると見積もっています。これは無視できない上昇ですが、現在の価格が非常に安いことを考えれば、著しく大きいとも言えません。ウッドマッケンジーやIHSのようなエネルギー専門機関も、LNG輸出による価格への影響は軽微だとの見解を表明しています。
しかし、こうした見通しは、ガス価格の低迷にあえぐガス生産者業界の声を代弁しているのかもしれず、リスクを過小評価している可能性があります。実際、ガスを大量に購入する化学、電力、製造業、アルミなどの産業界の懸念は根強く、特に雇用力の大きい製造業を中心に地元国会議員に対して強い圧力をかけています。
また、安全保障上の議論もなされています。非FTA国に向けてLNG輸出を認可することは、日本と同じように高いLNGを購入している韓国、台湾、中国に向けて輸出することを意味しますが、将来軍事的に敵対する可能性のある中国に対して、戦略物質とみなせるLNGを供給することは国家安全保障上問題である、といった議論です。
2012年1月4日、エドワード・マーキー下院議員(民主党)は、米国エネルギー省スティーブン・チュー長官に対し、LNG輸出許認可を再考するように進言する書簡を送りました。さらに2月14日にはLNG輸出認可を2025年まで差し止めさせるなどの内容を含む2つの法案を下院に提出しています。
一方、エネルギー省の石油・天然ガス局クリストファー・スミス副次官補は、2月24日チュー長官の指示により書簡に回答し、エネルギー省は許認可権を価格コントロールの手段としては考えていないとの立場を表明しました。
とはいいながら、チュー長官自身、価格上昇の影響の懸念を表明しており、LNG輸出の影響評価が終わるまでは決断をしないと発言しています。
お金さえあれば買えるものではない
2月22日、我が国政府は米国からのLNG輸入に向け米政府と協議をしており、今春予定している日米首脳会談で合意できるように調整していることを明らかにしました。Bloombergが報じたところによれば、日本はCameron(計画:年間1200万トン)、Cove Point(計画:年間782万トン)、Freeport(計画:年間1320万トン)から輸入しようとしており、経済産業省の安藤資源燃料部長は合計3000万トンを超えるこれらの供給力のうち2割の600万トンが輸入されれば、日本の総ガス需要の約1割を占めることになると言いました。ただし、輸入開始時期は早くても2015年以降になると考えられます。いずれにせよまだ数年間は何の足しにもなりません。
しかし、これまで述べてきたように、今の米国にとってこれ以上LNG輸出を認可することは、簡単ではありません。天然ガスを輸出することで得られるメリット(販売量増加と価格上昇によるガス事業者の利益拡大、ガス開発投資増、日本などの輸出先の景気下支え)と、デメリット(国内ガス価格上昇、化学・製造業等の雇用減、国家安全保障リスク)を比べて、総合的に国益にかなうかどうかを見極めなければなりません。
オバマ大統領は、輸出を倍増して雇用を拡大する方針を掲げていますし、現在米国ではガソリン価格が上昇し、中間選挙を控えたオバマ大統領にとってエネルギー価格はセンシティブな問題になっています。輸出を認可するハードルはかなり高いと思われます。そうなると、日本への輸出認可合意には何らかの政治的対価を求められると考えるのが当然ではないでしょうか。LNG輸入を取得した韓国も、FTA締結という対価を既に払ってきたと言えるでしょう。
そうした国際政治上のリアリティを考慮に入れず、安いならただお金を払って分けてもらえばよいと考えてしまいがちなのは、日本のエネルギー議論のナイーブでとても危うい部分かと思います。もし米国からのLNG輸入を期待するならば、積極的な日本側からのトレードオフ提案を伴っているべきです。問題は、あまりに外交力のない今の日本にめぼしい交渉カードが見当たらず、足元を見られてどんな厳しい要求を飲まされるかわからないということです。おまけに要求を飲んだ上でも、実際に安いLNGが長期的に輸入できる保証はありません。
現在の米国の安いガス価格は確かに魅力的に見えますが、ただそこだけを見て安易に「シェールガスがあるから大丈夫」などというのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。エネルギーはお金さえあれば買えるものではないのですから。
「そもそも」から考えるエネルギー論
原発事故を受けて現在、エネルギー利用の新しいあり方について広く議論されています。その中では、「原発はダメで、自然エネルギー拡大を、でもそれには時間がかかるから、とりあえず天然ガス発電を増やす」という声がきこえてきますが、実はこの議論は日本のエネルギー消費の23%に過ぎない電気のことだけを語っているに過ぎません。エネルギー消費の5割を超える石油は、2020年ごろから生産減退することがかなりの確度で予想されています。安定供給が期待される天然ガスや石炭も、実は多くの問題を抱えています。その影響の大きさは脱原発の比ではありません。果たして、我々はエネルギー問題にどのように向き合えばよいのか。表層的な議論に流されず、「そもそもどう考えるべきか」を問題提起していきます。
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大場 紀章(おおば・のりあき)
1979年生まれ、愛知県江南市出身。2008年京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。株式会社テクノバ研究員。ウプサラ大学物理・天文学部博士課程グローバルエネルギーシステムグループ在籍中。専門は、化石燃料供給、エネルギー安全保障、無機物性化学。テクノバは、エネルギー・環境、交通、先端技術分野の調査研究を行う技術系シンクタンク。
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