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地熱発電に沸くケニア、日本勢のチャンスは?
開発計画は目白押し、約20年で発電量を30倍以上に
宇賀神 宰司
2012年1月4日(水)
今、ケニアは地熱に沸いている。
2011年11月7日、首都ナイロビにある高級ホテルで、ケニア電力公社(KenGen)が進める地熱発電所の新規プロジェクトの調印式が行われた。受注したのは豊田通商と韓国・現代エンジニアリングのチームでタービンや発電機などの主要機器は東芝が納入する。ナイロビの北西約120キロメートルに位置するオルカリア地域に、発電容量14万キロワットの地熱発電所を2か所建設する計画だ。工費は3000億円で2014年4月の完成を目指す。
ケニアは現在、総発電容量の12%に当たる16万キロワットを地熱によって発電している。今回の新規プロジェクトで一挙に3倍近い発電量になるが、さらにケニア電力公社は2030年までに30倍以上の500万キロワットまで引き上げる。これは現在のケニアの総発電容量の約4倍になる。日本の原子力発電所、55基の総発電容量と比較すると約10分の1程度だ。
ケニア電力公社のプロジェクトエンジニア、ジョセフ・ムンヤスヤ氏は「ケニアにはオルカリアのように地熱発電が可能な場所が20カ所あり、その潜在的な発電容量は700万キロワットになる」と語る。
調印式に出席した豊田通商の清水順三・副会長は「豊田通商にとって初めての地熱発電プロジェクトだが、これを契機に地熱ビジネスをアフリカでどんどん手掛けていきたい」と攻めの姿勢を見せる。
2011年11月7日、ナイロビで開催した地熱発電新規プロジェクトの調印式でケニア電力公社のエディー・ンジョロゲ社長兼CEO(最高経営責任者)と握手をする豊田通商の清水順三・副会長
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ケニア電力公社が進めるオルカリアの新規プロジェクトは、三菱商事と三菱重工、丸紅と富士電機がそれぞれ受注を目指した。今回は豊田通商が受注を勝ち取ったが、新たな地熱発電所建設が今後も計画通りに続けば、日本企業にとって商機が広がる。
丸紅ナイロビ支店の生貝寿夫・支店長は「資源の少ないケニアにおいて、地熱発電は最も成長が期待できるビジネスだ。タービンや発電機など地熱発電の設備は日本企業が世界シェアの7割を占めていて高い技術力がある。日本企業にはチャンスだ」と語る。
大地の裂け目に広がる地熱発電の候補地
大陸プレートの境目、「地球の割れ目」とも呼ばれる大地溝帯(グレートリフトバレー)が国土の西部を南北に走るケニア。大地溝帯は地殻変動により地表が裂けて谷になったもので、紅海からエチオピア、ケニア、タンザニアなど東アフリカの国々を通りモザンビークまで7000キロメートルに及ぶ。この一帯は地下のマントルの上昇流があり地熱温度が高く、地熱発電に適している。
ナイロビから車で2時間程の場所にオルカリアがある。近くには温泉が湧き出るヘルズゲート国立公園や、クレーター山のロンゴノット国立公園などがあり、この地域が火山帯であることが見た目にもすぐに分かる。
オルカリアには現在1号から3号まで3つの発電所がある。1号発電所は1981年、2号発電所は2003年から稼動している。豊田通商が手掛ける新規プロジェクトは1号発電所の拡張と4号発電所の新設だ。
現在の1号発電所と2号発電所では三菱重工の機器が稼動している。それぞれ発電容量は4万5000キロワットと10万5000キロワットだ。地熱発電は地中からマグマによって熱せられた高圧の蒸気を取り出して、蒸気の圧力でタービンを回して発電させる。火山帯はマグマ溜まりが地上に近く、蒸気が溜まっている場所も比較的地表に近い。そのため地熱発電は火山帯に集中する。オルカリアの場合、高圧の蒸気を得る井戸は1000〜3000メートルの深さ。2号発電所では20本の井戸があり、1つの井戸で5000キロワット程度を発電する。
1つの井戸を掘るには2カ月程度かかる。高さ40メートルの切削装置で3000メートルの深さまで掘り進める。
井戸から発電所へはパイプラインがつながり、中を蒸気が通り抜ける。オルカリア発電所に着くと山のあちらこちらで「プシュー」という轟音とともに白煙が上がり、山を這うようにパイプラインが延びる。温泉地特有の硫黄のにおいもただよう。
不安定な水力発電を補う
ケニア政府が地熱発電に力を入れているのは、不安定な水力発電を補う狙いがある。現在、ケニアの発電容量の68%を水力発電が占めているが、気候変動の影響もあり降水量変動に伴って発電量も変動する。干ばつが続き水量が枯渇すれば電力量も減る。送電の問題もあるが首都ナイロビでも週に何度も停電する。
一方で地熱は天候に左右されず安定して発電ができる。二酸化炭素(CO2)排出量が少ないこともメリットだ。クリーンエネルギーの中でも水力に次いで少なく、風力や太陽光よりも圧倒的に少ない。
ケニア電力公社は「ケニアでノウハウを培って将来はウガンダやエチオピア、タンザニアといった東アフリカの周辺国にも事業を広げていきたい」と野心的な目標を立てている。
しかし、地熱発電は地下の地質構造を調査して、井戸を試しに切削するなど開発に時間と費用がかかる。今回のオルカリアの新規プロジェクトも建設資金は、日本政府が国際協力機構(JICA)を通じて供与する円借款などで支援している。
将来の潜在性を示すだけではなく、ケニア政府とケニア電力公社がどこまで本腰を入れて海外の投資を呼び込むかがこれからの課題だが、資源の少ない東アフリカで沸き起こる地熱ブームは今後も続きそうだ。
福島第1原発事故以後、エネルギー政策の転換が迫られている日本も地熱発電の潜在性は高い。日本の将来を考える意味でもケニアの地熱ブームに日本企業が加わることは意義があるだろう。
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