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http://www.nytimes.com/2011/11/07/opinion/krugman-here-comes-solar-energy.html?_r=1
(Paul Krugman, “Here Comes the Sun,” New York Times, November 6, 2011)
この数十年にわたって,テクノロジーの話といえばもっぱらコンピューティングとその応用のことばかりだ.一般人がテクノロジーで思い浮かべるのもそうだし,たしかに現実もだいたいそうなっている.計算能力の価格が18ヶ月ごとにおよそ50パーセント下落するという「ムーアの法則」は,ファックスからフェイスブックまで,テクノロジーの実用化の範囲をどんどん広げていくのに大いに力を貸してきた.
一方,この物質的な世界を意のままにする方法は,それに比べてずっと進歩が遅い.エネルギー源,ぼくらがモノを動かす方法は,1世代前とたいして変わりない.
でも,これもまもなく変わろうとしてるらしい.エネルギー革命の幕開けはすぐそこまできている.少なくとも,そのはずなんだ.その要因は,急速に太陽発電の価格が下落していることにある.いやマジですとも,太陽発電だ.
あれっと思った読者がいるかもしれない.太陽発電をいまだにヒッピーのたわごとかなにかだと思っている人もいるだろう.そういう向きは,化石化したぼくらの政治体制を恨むことだね.この政治体制では,化石燃料の生産者が強力な政治同盟と強力なプロパガンダ装置を手にして,代替案を過小評価させている.
プロパガンダについて:太陽発電のはなしをする前に,まずは水圧破砕法,別名「フラッキング」についてかんたんに話しておこう.
フラッキングとは,高圧の流体を地下深くの岩盤に送り込んで化石燃料を取り出すことだ.たしかに,目を見張る技術ではある.でも,この技術は公共に大きなコストを押しつける技術でもある.フラッキングでは,有毒な(かつ放射性の)汚水が生み出され,これが飲用水まで汚染してしまう.この産業は否定しているけれど,地下水すら汚染されていると疑うべき理由がある.それに,重機の移動で道路に多大な損害も生じる.
経済学概論を受講すれば,第三者に多大なコストをもたらす産業は,そのコストを「内部化する」ことを求められるべきだと教わる.つまり,産業がもたらした損失の対価を支払い,これを生産コストに含めるべきだというわけ.フラッキングは,そうしたコストを含めてもなおやるだけの価値があるかもしれない.でも,どんな産業だろうと環境や国のインフラに及ぼす影響を免除されるべきじゃあない.
ところが,周知のとおり,この産業とその擁護者たちが求めているのは,他でもなくみずから引き起こしてる損害に目をつぶってもらうことだ.なんで? 「それはですね,ぼくらにはこのエネルギーが必要だからですよ!」っていうのよね.たとえば,この産業が後ろ盾になってる組織 energyfromshale.org はこう宣言している:「この論争には2つの陣営しかありません:一方は天然資源を安全かつ責任ある方法で開発することをもとめる陣営,そしてもう一方は天然ガスや石油の開発をそもそももとめない陣営です.」
というわけで,ここで,フラッキングに特別扱いをするのは自由市場の原則に似て非なるものだって点を指摘してしかるべきだろう.フラッキング支持の政治家たちは補助金に反対するけれど,産業が補償も払わずコストを押しつけるのをみすごすのは,実質的に巨額の補助金を与えるのとおんなじだ.彼らの言い分では,じぶんたちは政府に「勝ち馬を選ばせる」のに反対しているんだそうだけど,彼らがこの産業への特別扱いを求めている理由は,ほかでもなくこの産業が勝ち馬になるという彼らの主張にある.
さて,ここでお話はかわりまして:みなさんが聞いた事のないサクセスストーリーについて.
最近は,太陽発電に言及すると「ソリンドラ!」と声が上がる〔ソリンドラは有望な太陽電池パネルメーカーだったが倒産した〕.共和党は,この失敗した太陽光パネル企業を政府のムダのシンボルにして,再生可能エネルギーを叩く棒っきれに使っている(ソリンドラ融資疑惑のスキャンダルはナンセンスだったってのに).
でも,実はソリンドラの失敗の原因は,技術的成功にある:太陽光パネルの価格は急速に下がっている.ソリンドラはこの競争について行けなかったんだ.それどころか,太陽光パネルの進歩は劇的かつ持続的で,「サイエンティフィック・アメリカン」ブログが述べているように,「いまや太陽エネルギーについて「ムーアの法則」が語られることが多くなっている.インフレ調節済みの価格が1年に約7パーセント下落しているのだ.」
これによりすでに太陽発電設備が急速に成長しているけれど,さらなる変化がもうそこまで近づいているのかもしれない.この下落傾向が続けば――というか加速しているように見えるんだけど――ほんの数年後には,太陽光パネルによる電力が石炭を燃やしてえられる電力よりも安くなる時がくる.
それに,健康その他のコストを算入して石炭による発電を適正な価格にすれば,おそらくこの転換点はすでに通過してしまっているはずだ.
そうは言っても,ぼくらの政治体制は,手の届くところにあるエネルギー革命を遅らせるんじゃないだろうか?
この点をちゃんとみておこう:ぼくらの政治階級の大部分(事実上これには共和党全体が含まれる)は,化石燃料に支配されたエネルギー部門からズブズブに資金を得ていて,代替案には積極的に敵対している.この政治階級は,化石燃料の採掘としようへの助成を固めるためならなんだってやる.直接的には納税者のお金を使い,間接的にはこの産業に環境コストを免除している.その一方で,彼らは太陽発電みたいなテクノロジーを小馬鹿にする.
というわけで,こうした連中から聞かされることは何一つ正しくないってことを知る必要がある.フラッキングは夢の実現じゃあない.太陽発電はいまやコスト効率的だ.夜明けは近い――ぼくらにその気さえあれば.
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