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ドイツは本当にFITで失敗したか(その1)?
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51594867.html
日本から聞こえてくる風の噂で、自然エネルギーにかかわる様々な分野(政治、学術、経済、NGOなど)で「ドイツのFITは失敗した」という批評が聞こえてくるというということを聞きました。そして、それが本当なのかどうか報告して欲しいとの要望もありました。
※FITとは、フィードインタリフの略で、再生可能エネルギー電力を、系統事業者に優先的に、全量、固定価格で買取りすることを定めた法律。日本でも現在、導入のための審議が続けられている。
おそらく、ドイツのFITに関して、様々なことを発言している方の多くは、そもそも一次情報であるFITの法律自体について、あるいは環境省と経済省、および大臣などが発表している公式なプレスリリースについて、直接は目を通されていないのではないかと思います。また、二次情報となると(私のこのブログ記事もそうなるわけですが)、どうしても書き手、話し手の主観が入ります。
さらに、三次情報以下(ドイツの新聞・雑誌、業界団体や研究機関のプレスなどでFITのことを報じた記事を読んでの感想)ともなると、本当にいろいろなメガネを通していますから、物事の本質はなかなか見通すことができません。とりわけ、再生可能エネルギーの推進の場面では、推進・反対の立場で、あるいは利害関係が複雑に交錯するエネルギーというテーマでは、すでに最初から立ち位置が明確で、「ありき」の情報も多く、なかなか中立の情報というのは手に入れることが難しいのも現実です。というより、政府や環境省のプレスであっても、政治的な意図が込められているので、中立の情報ではないとも言えるでしょう。
さて、このような複雑な事情を含んで、できる限りではありますが、丁寧にこのテーマについて記してみたいと思います。
まずは、そもそもこの「FIT失敗論」についての論旨を整理したいと思います。おそらく日本で失敗だといわれる契機になったのは、2010年の太陽光発電の設置量がドイツ政府が想定していたよりも大幅に超過してしまったため、スペインの過去の失敗例などと同列で、PV電力の買取り費用が予想以上に膨らんでしまったことに起因していると思います。2010年年末には、一般電力料金への上乗せ費用の急増とともに世界中のマスメディアは面白おかしくこのテーマを扱いました。ですから、ここでいうFITの議論とは、風力やバイオマス、水力などのその他の再生可能エネルギーは除いて、太陽光発電に限ってもよいと判断します。もちろん、その他の電源も含めてと考えておられる方もいると思いますので、ここで私の観察を少し記してみます:
ドイツの再生可能エネルギーに関連してドイツに広く存在する議論
・洋上風力の設置の伸び悩み
・地熱発電の設置の伸び悩み
→これはFITでの買取り価格の設定の問題であるというよりも、技術的に、そして許認可の部分で、当初想定していたよりも多くの問題点が出てきており、それを解決しながら、FITをより改善しているというのが現状だと思います(買取り価格は上昇している)。この分野で想定以上に伸び悩んでいる理由を、FITと結びつけるという議論は、ドイツ社会ではほとんど聞こえてきておりません。
・バイオマス発電の頭打ち
・小水力・マイクロ水力発電の頭打ち
・陸上風力の頭打ち
→これらのほぼ完成し、成熟した技術の分野では、FITの問題というよりも、そもそものポテンシャルの問題、農業政策との絡み、水利権を巡る許認可の問題、土地利用計画(州が作成する地域計画)の政治的な意図による問題であり、FITの買取り価格の設定をこれ以上上げる、または下げることにより解決するとは、考えられていないでしょう。4年毎のFIT改正の際に、現実と照らし合わせて、さらなるFITの成熟が期待されている分野です。ただし、上記の地熱、洋上風力も含めて、複雑になりすぎた買取り制度(各種のボーナス措置)などは、簡素化するべきだという意見も聞かれます。
・再生可能エネルギー発電の急増に際して、系統強化、蓄電導入、スマグリ導入などが遅れ、電力供給が不安定にさらされているという批判
→これは、FITにおける問題点というよりも、現在のレベルの再生可能エネルギーの導入を促進する一方で(政治的な目標であり、計画通り順当に増加しています)、その他の必要な対策、法案を迅速に生み出してこなかった政治の怠慢です。FITの将来の改正に関連し、このテーマに関しては、さらに記すべきこともあるのですが、ここではとりあえず触れません。
また再生可能エネルギー発電の導入量が多すぎるという意見も一部では聞かれますが、そもそもFITを策定した意味がそれであり、政府の導入量の目標とかけ離れているわけではないので、ここでは「問題」として取り扱いません。
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