http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/502.html
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/ron-41-hot-1.html
原子力汚染vs超々クリーン・マグマ発電
(その1)何と、日本全国の「総発電設備量の約2.5倍、4億kW強」!
■国内問題+近隣
◆原子力汚染vs超々クリーン・マグマ発電(その1)日本全国の「総発
(その2)なぜ突貫研究せず
(その3)米・欧・日の3極研
(その4)「新エネルギー」
(その5)財界主導の助成金
(その6)2020までの新エ
(その7) 夢のエネルギー
(その8)原発反対運動に物
(その9)早くも出現!原子力
(その10)遂に発見!『週刊
(その11)「コスト高」で足
◆「原発に死を!」
◆入間基地事故:日本軍は流れ解散!
◆「反捕鯨」の大嘘
◆えひめ丸/原潜
◆神戸事件/冤罪の構造
◆タバコ問題
◆杉花粉症は"外交行政産業"環境公害!
◆武蔵野市民オンブズマン
■ 「絡み合う利権」
◆憲法違反の政教一致、創価学会ー公明党
◆オウム真理教
◆神奈川県警腐敗
◆北朝鮮
編集長の辛口時評
1999.10.1.mail再録。一部ミスプリ校正。
1999.10.11.連載題名の内「高温岩体」を「マグマ」に変更。理由は連載:7に記す。
かねてより準備中の「超々クリーン高温岩体発電・問題」に関して、ノストラダムスが当たったかとさえ言われる恐怖の「臨界事故」に接し、急遽、収集中の資料提供を開始します。
「問題」としたのは、これだけ有望なプロジェクトに年間予算が、何と、1.8億円しか付いておらず、ウランや石油でボロモウケの死の商人たちの「情報隠蔽工作」の対象となっている可能性が、非常に高いからです。
わが自称名探偵が、そう疑う根拠に関しては、研究現場その他からも情報提供を受けており、おいおい述べますが、簡単に言うと、技術の基本は簡単至極で、全国、全世界で一斉に、あらゆる場所で実験を積み重ねれば、直ちに実用化できると判断できるからです。それを、少ない予算で、チブチビ、チビチビ、やらせているのは、なぜでしょうか?
本日は、比較的分かりやすく全体像をまとめている少し古い[1992年発行「高温岩体発電」広報リーフレット]を紹介します。図に関しては、後にスキャナーで取り込み、HP収録します。電力中央研究所(略称「電中研」)作成のヴィデオもあります。
………………………………………………………………………………
『電中研ニュース』(217)
21世紀の新しい電源として期待される
高温岩体発電
[4頁のリーフレットの1頁目]
図1)浅部地熱発電一現在の地熱発電方式一(地下1,500メートル)
[本誌編集部の概略説明]:自然に存在する「熱水だまり」をドタカンのボーリングで探り当てて、パイプで「蒸気」を取り出し、発電用エンジンを回す。水は、やはりドタカンで近辺から浸み込ませる。
図2)高温岩体発電一新地熱発電方式一(地下3,000メートル)
[本誌編集部の概略説明]:ボーリングで穴を掘り、地下3,000メートルで、自然状態では固い岩盤、「高温岩体」に衝撃を与えて横にヒビを入れ、人口の「熱水だまり」を作り、2本のパイプの一方から水を入れ、もう一方から「蒸気」「蒸気」を取り出し、発電用エンジンを回す。上物の発電施設は、現在の技術のままでOK。人口の「熱水だまり」作りの技術改善が実用化の鍵。
[以下、リーフレット本文。2頁目]
1。「焼け石に水」を利用して電力をつくる
クリーンな自然エネルギーの中でも、太陽光発電とならんで注目を集めているのが、地熱発電の第2世代ともいえる「高温岩体発電」。資源は豊富にありますし、実用化されれば水力発電と同じコストが期待できます。すでに当研究所では、地下深く眠る高温で乾いた岩盤に人工的な熱水だまりをつくる第1段階の実験に成功。今年[1992]の夏には、実用化の鍵を握る、複数の熱水だまりをつくる実験に世界に先駆け挑戦します。
■水力発電なみのコストで日本の発電設備量の約2.5倍もカバー
火山国日本には、ほぼ無尽蔵といわれる地熱資源が眠っています。しかし従来の地熱発電では、発電に利用する地下の熱水だまりを掘りあてるのが難しく、また掘りあてても出力が小さいなど、さまざまな問題がありました。
そこで人工的に熱水だまりをつくり出し、発電に利用しようというのが「高温岩体発電」の発想です。それこそ無駄の代名詞でもある「焼け石に水」を逆手にとり、世界でも実用例がない方式を技術で新しく創り出そうとするものです。
地下2000m〜4000mにある高温の岩盤に地上から穴を掘って水を注ぎ、蒸気にして取り出すこの方式なら、発電コストは1kWhあたり約13円、水力発電に匹敵するコストです。しかも推定出力はl基あたり24万kWと、火力発電なみのパワーが期待できます。
かりに地下4000mまで利用するとすれば、いわゆる石油の可採埋蔵量に相当する推定資源量は、わが国の総発電設備量の約2.5倍、4億kW強もありそうです。このうち実際にボーリングをして確認された量を、少なめに見積っても約4000万kWは期待できそうです。
表1)高温岩体発電と浅部地熱発電の比較
_________浅部地熱発電_______高温岩体発電
________一現在の地熱発電方式一__一新地熱発電方式一
開発・利用状況___実用中__________研究開発中
利用深度_____1000〜2000m_______2000〜4000m
発電出力____小(5.5万kW/基)_____大(24万kW/基)
発電コスト____16円/kWh_________13円/kWh
社会的制約___国立公園内立地・温泉___国立公園内立地
[パンフレット本文。3頁目]
2。地下深くに熱氷の人工湖を自在にっくる
■実用化の鍵を握る熱水の人工湖づくり
「高温岩体発電」を実用化するためには、
1)どこに高温の岩体があるかを調べる技術
2)岩の中に人工の熱水だまりをつくる技術
3)つくった熱水だまりの大きさを測る技術
4)どれくらい蒸気が取り出せるか調べる技術
などを確立しておくことが重要です。
なかでも実用化の観点から難しいと考えられるのが、2)熱水だまりを人工的につくる技術です。たくさんの蒸気を取り出すためには、できるだけ広い面積の熱水だまりをつくらなければなりません。今までは地下深く穴を掘った後、高圧の水をかけ岩に亀裂を生じさせる方法(水圧破砕法)を採っていましたc
■実用化を想定した条件で複数の人工湖づくりに
世界で初めてチャレンジ
この方法を当研究所では、耐熱性の観点から鉄パイプと砂を使って改良し、昨年[1991]の夏には秋田県雄勝町において、約230度もある高温の岩盤に人工的な熱水だまりをつくる実験に成功し、実用性を確かめました。しかも熱水だまりの広さは、東京ドーム10個分の50万平方メートルにも達しました。
そして今年[1992]の夏には、さらにその上部に、第2の人工の熱水だまりをつくる実験に世界で初めてチャレンジします。これが成功すれば、発電に適したところに複数の人工の熱水だまりを自由自在につくれることになりますから、21世紀初頭の1基あたり24万kWの「高温岩体発電」の実現に向け、大きく前進することになります。
図3)高温岩体発電の推定資源量[日本列島の主要4島を区分し、可能性を示した図]
[パンフレット本文。4頁目]
3。熱水を利用したジオサ‐モピア構想が注目
■熱水の有効利用で地域の活性化も
「高温岩体発電」は、自然エネルギーですので環境を汚染する心配のないクリーンな方式です。しかも一度使った熱水は、循環させて再利用しますが、それでも水温が摂氏100度近くもあるので、地上での活用も検討されています。
「ジオサーモピア」と呼ばれるアイデアがそれです。たとえば、熱水を利用した温水プールや熱帯植物園などのレジャーエリアのほか、温室農場などの生産エリア、リハビリセンターなどの医療エリアを設置することができます。
自然のエネルギーを最大限使いきるこの方法なら、省資源はもちろん公害もなく、地域振興にも大いに役立つと期待されています。
図4)ジオサーモピア構想(イメージ図)
ひとこと
我孫子研究所
耐震研究室主査研究員
海江由秀志
わが国は国産資源に乏しいとされていますが、地下には地熱という膨大な量のエネルギー資源が眠っています。高温岩体発電はこの資源を積極的に活用する技術です。この技術を確立させれば、わが国のみならず世界のエネルギー源確保に貢献できるものと、その実用化を目指した研究に取り組んでいます。
[2-3頁のQ&A]
Q1.地下に水を注ぎ、地球の内部の岩を冷やし続けても、悪い影響はありませんか?
A1:そもそも高温岩体の温度が高いので、水で冷やしたからといって、「焼け石に水」ですから岩盤の温度に大差はありません。発電の利用を止めれば、岩盤の温度はもとに戻ります。
Q2.地下に人工湖をつくると、地盤沈下の心配はありませんか?
A2:人工の熱水だまりといっても、想像される(?)ような湖ではありません。水を貯える一つの亀裂の厚さは、数mm規模のものが集まってトータルでわずか数cm程度。その程度のすき間なら、自然の石盤でも無数に存在しています。地盤沈下の心配はありません。
『研究年報』(1995年版)
電力中央研究所
[p.34]
高温岩体発電の実用化
−5ヵ月間の蒸気回収実験一
背景
高温岩体発電は炭酸ガスを出さない発電方式として技術開発が1970年代から日米欧で精力的に進められている。世界有数の火山国である日本においても、貴重な国産資源の有効利用のため技術開発が期待されている。当研究所では、1986年から秋田県雄勝実験場において地熱資源の探査法、人工貯留層の造成法、各種計測法などの開発を行っている[図-1を省略]。
目的
岩盤から高温の蒸気が長期間取り出せることを実証する。
主な成果
高温岩体発電の実用化をめざして、雄勝地点における5ヵ月間の循環実験を実施し、下記の成果を得た。
1.高温岩盤からの熱抽出
高温岩盤中に造成した亀裂に水を注入、循環することによって、5ヵ月間連続して160度の蒸気が得られた[図12、図-3を省略]。これによりコスト試算以上の熱が岩盤から得られることを明らかにした。
2.生産量を増大する技術
生産量を増大するため、生産井での「迎え破砕法」を新たに考案し、これにより生産量を前年の約4倍に増大し、この有効性を確認した。
3.貯留層規模を推定するためのトレーサー法
トレーサー物質を投入し、その濃度変化を測定する方法により、抽熱に寄与する貯留層体積を明らかにする技術を確立した。この結果、上部貯留層では約80トン、下部貯留層は約220トン程度が抽熱に寄与していると推走される。
4.貯留層評価のための各種計測技術
これまで開発した地表ネットAE法、比低抗トモグラフイー法、地化学探査法、光フアイバー温度計測法、耐熱ボアホールスキャナー法などを用いて亀裂や温度の分布計測を行い、貯留層評価に役立つ技術であることを確認した。
今後の展開
2020年の実用化をめざし電力会杜の協力を得て、長期循環実験、発電実験などにより実用化のための要素技術を総合的に実証する。
主担当者 我孫子研究所 高温岩体発電課題推進担当 堀義
以下、まずは、 1999.10.3.pmn MLへのmailの一部再録・改訂増補です。
この際、常日頃と同様、急いで正義の味方の振りをして、中小企業のJCOとかの社長の土下座謝罪写真をデカデカと載せたり、ぐちゃぐちゃ言いながらも、実際には東京電力とかの大スポンサーには絶対に背けない大手メディアの実態を、徹底的に暴くべきだと思います。
核の「平和利用」の提灯持ちをした読売のワンマン、元警視庁特高課長、晩年に国務大臣科学技術庁長官の正力松太郎の正体に関しては、拙著『読売新聞・歴史検証』でも詳しく紹介した『巨怪伝』(佐野真一、文芸春秋、1994)を推薦します。
実は、土下座して詫びたJOCとかの中小企業よりも、つい最近でも、もっと残虐な結果を齎したばかりのユーゴ戦争、さらには湾岸戦争、さかのぼれば切りのない戦争煽動報道に、荷担し続けたというよりも、その「身の毛もよだつ」写真入り報道で発行部数を伸ばしてきた新聞などの大手メディアの正体の方が、もっと凶悪なのです。
もともと、それこそ大昔から、どの産業分野、どの公共機関にも、手抜き、ごまかし、ごますり、おべっか、賄賂、などなどが、横行しています。そういう性懲りもない自己中心の遺伝子に支配された裸の猿どもが、こともあろうに、「神をも恐れぬ」核開発などという所業に及んだのですから、むしろ、ノストラダムスの予言そこ退けの破滅的事故が起きない方が不思議なのです。
本日、1999.10.3.日経にも、「東海村臨界事故で注目度高まるが、〜〜〜新エネルギーに意外な弱点」と題する意味深の自称「スクープ」記事が出現しました。
この記事の目玉は、私が急遽送信中の「高温岩体発電」ではなくて、ドン・キホーテが巨人と間違えて突進しそうな巨大な風車、「風力発電施設」を写真入りで取り上げ、「コストも高く」とかとし、「発電量の4割を占める原子力は日本の総エネルギーの約10分の1」「新エネルギーはわずか1%」などとしています。「高温岩体発電」のコの文字もなく、わずかに「新エネルギーの種類」(新エネルギー財団まとめ)の表の中に「地熱」「地熱発電、等」と記すのみです。
結果として、「クーラー」(私は拒絶)と「暖房」(私は手製椅子式置火燵の「弱」のみ)がなければ生きていけない多数派の「ひ弱」堕落人種に、「我慢」を強いる世論誘導に荷担しています。
しかし、この記事の冒頭にも。電力事業連合会の会長の「原子力発電に対する大きなダメージは避けられない」との発言が載っています。もっと大きな、決定的なダメージに発展させましょう。上記「新エネルギー財団」の正体に関しては、次回に報告します。
………………………………………………………………………………
[1999年7月5日発行]……[ ]内は本誌編集部の注記。
『電中研ニュース』(320)
[p.1]
地下の熱水貯留層を可視化する
……高温岩体発電の実現を確かなものにするために……
[目次]
■当研究所の高温岩体発電の研究
■貯留層の広がりと流れを可視化する
■高温岩体発電の実現を目指して
●ひとこと 我孫子研究所 水理部 主任研究員 江口譲
[p.2]
1。当研究所の高温岩体発電の研究
二酸化炭素(CO2)[左の2の実物は小さい]の排出が少ないなど、環境に優しく、しかも安定した出力の得られるエネルギー源が求められています。地熱を熱源として使う高温岩体発電は、この条件を満たし、資源量が豊富で開発リスクの少ない新しい発電方式として、米国、ヨーロツパ、日本で、その実用化に向けた研究が進められています。
当研究所は地下の熱を効率よく取り出し発電に利用するため、熱水をためる貯留層を、複数造る方法を開発するとともに、水を地下に循環させて熱水と蒸気を安定して取り出すことに成功しています。しかし、実用化するためには、地下に造成したき裂がどのように広がっていて、水がどのように流れているかを、精度よく知る必要があります。このほど、岩盤が割れるときに発生する音(AE:アコースティックエミッション)の測定データから、き裂の造成状況や水の流れを視覚化する方法を開発しました。
■高温岩体発電とは
高温岩体発電は、地下深部の高温の岩盤まで井戸を掘り、この井戸を使って岩盤に高圧の水を注入する(注入井)と、水圧で岩盤にき裂が広がります。このき裂の中の水は岩盤の熱により高温の熱水になります。この岩盤のき裂が広がったところに、その熱水を取り出す井戸(生産井)を掘り、この熱水を地表に取り出して発電などに利用するというものです。そして、発電に使用した水は地下に戻します。この方法の利点は、地下に水を循環させ、岩盤の熱だけを取り出すため、温泉などへの影響がほとんど無いこと、CO2などの放出も無く環境に優しいこと、地下深部は高温の岩盤が多く在在し、資源量が豊富なこと、安定した出力が得られること……などがあります。
■これまでの研究では
当研究所では、1986年ころから、高温岩体発電が将来有望な発電方式と考え基礎的な研究を進め、1989年から秋田県に雄勝実験場を設けて研究を継続しています。1990年には深さ1,000メートルの注入井を掘り、1992年には水圧を利用して、貯留層を2段造成することに、世界で初めて成功しました。
1993年には深さ1,100メートルの熱水を取り出すための生産井を新たに掘り、この井戸の間で循環試験を行い、1995年には水を注入して165℃の熱水と蒸気を連続して取り出すことができました。
そして1996年からは、貯留層内のき裂の造成状況や、熱水の動きを解析する方法の研究を進めています。
[図:1]雄勝実験場の概念図と実験場の地点[省略]
[p.3]
貯留層の広がりと流れを可視化する
■貯留層の広がりをとらえる
高温岩体発電に利用する熱水を安定して取り出すためには、造成した貯留層の広がりを把握する必要があります。そのため当研究所は、高圧の水を地下の岩盤に注入し、岩盤のき裂が広がるときに発生する音(AE)をとらえて、き裂の位置とその広がりぐあいを推定する方法を採用しています。雄勝実験場では、井戸周辺の半径1,200メートルの範囲にllヵ所の観測点を設け、AEセンサーを配置しています。
AEの観測結果を解析したところ、下段のき裂は注入井から北に1,000メートル伸び、上段のき裂は東に800メートル伸びていると推定できました。このき裂を3次元で表示する工夫により、地下での貯留層の造成状況が直感的に理解できるようになりました。
■注入した水の流動解析手法を開発
地下での水の動きを予測するためのモデル、すなわち注入した水の流れを解析する手法(GEOTH3D)を開発しました。この解析手法の最大の特徴は、井戸の周りの水の通りやすさを表わす透水係数の分布を、水圧で破砕した時のAEの測定結果を用いて決めていることです。これに着目したことにより、地下の水の動きなどを正確に表現できるようになりました。
そこで、このGEOTH3Dの妥当性を確認するために、1995年の雄勝実験場での30日間の循環試験のデータを使い、水の回収率を解析してみました。その結果、注入した水の量と、生産された熱水の量との時間的な変化は、実験結果と解析結果でほぼ一致しました。
[図:2]雄勝実験場で測定したAE発生点の分布[省略]
(CGは、電中研、日立、DCCの共同制作)
[グラフ]各井戸での流量変化[省略]
(解析結果と実験結果の比較)
[p.4]
3。高温岩体発電の実現を目指して
■GE0TH3Dで井戸の設計を支援する
地下の水の流れなどは、地上から直接測定したり、目視したりすることは現在のところ不可能です。そのため、GEOTH3Dで得られる計算結果は、地下の流れなどを知る唯一の方法となります。特に、新しく掘る井戸の位置や、その深さをどうしたらよいかなど、水の回収率の向上を図るための詳細な検討に役立ちます。
そこで、このGEOTH3Dを用いて、掘る位置や井戸に注入する水の圧刀など、さまざまな条件を与え、地下の流れや回収率の改善効果について試算してみました。その結果、新たに生産井を掘った場合の回収率は、水の圧力などの条件にもよりますが、現在の回収率にくらべて最大1.7倍の向上が期待できそうです。
[図:3]注入した水の流れ方(新生産井を掘削した条件で解析した結果[略]
■新たに生産井を1本追加掘削します
今後は、これらの成果をもとに、1999年8月から2000年5月までの予定で、深さ1300メートルの井戸を新たに掘り、これまでに推定している地下の熱水の流れの状況の確認を行います。
その後、この井戸を新しい生産井として利用し、水を実際に回収します。この結果をGEOTH3Dの予測結果と比較し、予測の妥当性を評価します。一方、汲み上げポンプなどを井戸に組み込むと回収率が現在の2倍程度に上がると予測されていますので、このような補助装置による回収率向上方策の具体化を検討します。これらの実験と検討により、多段貯留層・複数生産井方式による熱抽出の成立性の実証を進め、高温岩体発電の早期実現を目指します。
●ひとこと
我孫子研究所
水理部 主任研究員
江口 譲
これまで私が携わってきた“地上の”熱流動現象に比べて、地下の熱流動現象は直接観測できないためとらえどころのない面もありました。しかし、所内外の地質の専門家や前任者などの協力を得て、回収率などの予測が可能となりました。
今後は貯留層から高温水を抽出できる寿命年数をこのGEOTH3Dを使って評価したいと考えています。
これまで3回、「臨界事故vs超々クリーン高温岩体発電」の題でmail送信し、ホームページに所収してきたシリ−ズに関して、編集部一同、羽織袴姿で平伏し、編集長より一言、「看板文字の一部塗り替え」の口上を申し上げます。
「臨界事故」の部分を、今回からの題名変更のみならず、ホームページ所収分にも溯って「原子力汚染」に変更します。
勘の良い方は、きっと、すぐに下世話に勘ぐるでしょうが、確かに、最近の事件の余波にも鑑み、ホームペーシの検索でキーワードを「原子力」にすることの有利さをも、考慮に入れてはおります。しかし、それよりも重要なのは「大義」です。ウラン採掘現場における被曝、湾岸戦争で廃棄物の劣化ウランを弾丸や戦車の装甲に使った結果の悲惨さ、その使用の無反省、またもや最近のユーゴ戦争における使用などの、アメリカ帝国主義の戦争犯罪の告発をも加えて、さらに幅広い国際的な観点から、東海村臨界事件の処理を位置付けたいと願うからです。
さて、前回、日経1999.10.3.記事「スクープ/東海村臨界事故で注目高まるが……新エネルギーに意外な弱点」への疑問を、若干記しましたが、この件に関する詳細の議論は、次回に、この際、多少のお目目被曝を我慢し、記事全文をスキャナー読み込み、ミスプリ校正、むにゃむにゃの後、改めて展開します。そうでないと、一方的になってしまうでしょう。
とりあえず簡単に報告すると、本日夕刻、電話で日経の「スクープ取材班」の記者(ブンヤの多数派のハッタリ型男性ではなくて、優しい声で素直な女性。良かった!)と話すことができました。彼女は「高温岩体発電」という言葉自体を知りませんでした。エッと驚かないで下さい。恐らく体育会系デスクの命令の下、急遽、取材に走り回った彼女らの責任にするのには、いささか気の毒な事情があるのです。
東海村こと、その草分けの原子力研究所の東海村研究所という舌を噛みそうなジョジョと、今度の事件の発注元の核燃料サイクル機構の2つの特殊法人は、科学技術庁の管轄下にあります。しかし、電力の監督官庁は通産省です。通産省に電話(03-3501-1511)して、「新エネルギー」というと、「新エネルギー対策課」につながります。ところが、何と、出た方は、「高温岩体発電」という言葉そのものを知らないのです。「高温岩体」は、この御役所では、「新エネルギー」の分類に入っていないのです。
では、どこかと聞くと、しばらく周囲に聞いて回ってから、公益事業電力技術課の所管であると教えてくれます。そこへ電話を回してもらうと、出た方は、やはり、何と、「高温岩体発電」という言葉そのものを知らないのです。仕方なしに、昔の電報の注文のように、「温度が高い岩の体力の体」と教えると、やっと分かって、やはり、しばらく周囲に聞いて回ってから、「その担当の某と某は現在電話中ですから、あとでまた電話して下さい」と言われます。
ああ、また、あの日米経済摩擦の主のNTTに、余計な高額の電話料金を、むしり取られる羽目に陥ってしまったのでした。ここで時間切れ、また明日の仕事にしました。
上記日経記事で「新エネルギーの種類」と題された一覧表は「新エネルギー財団まとめ」となっているのですが、この「新エネルギー財団」(NEF)は、財界が助成金目当てに作ったのもので、記事の一部を借用すると、1997年の「新エネルギー特別措置法による国の助成制度」の受け皿になっています。しかし、「高温岩体発電」は、この法律の対象にはなっていません。
ああ、ここでまた、「新エネルギー」の御役所定義が入り乱れるのですが、通産省の管轄下の特殊法人、技術開発を主任務とする「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)では、「高温岩体発電」が「新エネルギー」に分類されています。
ネフだか、ネドだか知らねえが、鬼畜米英の敵性言語の頭文字で呼び合うのは、いい加減にしろや、とばかりに、元軍国少年Aは、ますます機嫌が悪くなるのですが、とりあえず、ネドちゃん作成、本文164頁の小綺麗パンフレットから、以下、「高温岩体発電」に関する部分を紹介します。
………………………………………………………………………………
『新エネルギー・産業技術総合開発機構の概要』
1989-1999
新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDO(New Energy and Technology Developement Organization)
[p.21-22]
高温岩体発電技術開発
昭和60[1985]〜平成14年[2002]度、10年[1998]度事業費1.8億円
高温であるが十分に天然の流体(熱水、蒸気)が含まれない岩盤を高温岩体(HDR:Hot Dry Rock)といい、火山国である日本には大量に賦存すると考えられています。高温岩体の持つ熱エネルギーを利用し発電するためには、まず地上から坑井を掘削し、高温の岩体に圧力を加えて人工的にき裂(フラクチャ)を造り、人工的な貯留層(き裂群)を造成します。次に地上から坑井(注入井)を使用し水を貯留層内を通過させ、岩体の熱エネルギーを奪った水を他の坑井(生産井)から蒸気・熱水として回収し、発電に利用します。
NEDOは、昭和55-61年度の7年間にわたり、IEAとの実施協定に基づき、日・米・西独3国による共同研究を、米国ニューメキシコ州フェントンヒルにおいて行い、1ヵ月にわたり熱出力10MW級の循環抽熱試験に成功するなど、技術的経験・成果を蓄積しました。一方国内では昭和60[1985]年以来、山形県肘折において実験を行っています。
平成3[1991]年度には、深度1,800m(温度約250℃)付近の浅部人工貯留層に対して、約3カ月の循環抽熱試験を行い、熱水・蒸気の安定回収に成功しました。また深度2,200m(温度270℃)付近の深部人口貯留層に対して、平成7[1995]年度は25日間の予備循環抽熱試験を、平成8[1996]年度には1ヵ月間の導通改善循環試験を行い、熱水・蒸気の安定回収に成功しました。
平成10[1998]年度は、今後計画している2年間の長期循環試験のために必要な地上設備の設計、製作、工事等を平成9[1997]年度に引き続いて、行っていく予定です。
………………………………………………………………………………
上記の「10年[1998]度事業費1.8億円」という金額が、いかに貧弱であるか。
ご自分の財布の中身と比べては駄目ですよ。たとえば、「新エネルギー財団」取り扱いの助成金、年間約300億円とか、原子力研究所の年間予算約1千億円とか、核燃料サイクル機構の年間予算約1千5百億円とか、科学技術庁の年間予算約1兆6千億円とか、あのバブル戦犯、大手銀行への公的資金投入、約30兆円とかと、比べてみて下さい。
研究費としては、1年に1回のボーリング調査すらできない金額なのです。小銭!小銭!ケッ!
なお、別途、地震誘発の恐れがないかとの質問も受けましたが、その心配はないようです。鉱山やトンネル掘削の発破や、地下核実験などと比較することも必要でしょう。これも詳しくは次回に。
以上で:4終り。:5に続く。
東海村臨界事故で注目度高まるが……
新エネルギーに意外な弱点
[大ゴシック文字リード]
起こり得ない事故が起きてしまう恐怖。茨城県東海村の臨界事故は、原子力の安全体制が持つ危うさを改めて突き付けた。そこで重要性が一層高まっているのが、風力発電などの安全でクリーンな新エネルギ‐だ。一部で有力な発電手段として育つなど、健闘している。ところが、その成長につれて、思いもよらない障害が見えてきた。
[写真説明]:
1)東海村臨界事故の会見の冒頭で頭を下げる木谷宏治ジェー・シー・オー社長(手前)ら(9月30日午後、科学技術庁)
2)クリーンエネルギーとして期待されている風力発電施設(北海道苫前町)
[表]:新エネルギーの種類エネルギ−の種類 主なエネルギー変換および利用例
再生可能なエネルギ− 太陽 光 太陽光発電等
熱 ソーラーシステム等
風力 風力発電、風力揚水等
水力(中小水力) 水力発電、水車等
地熱 地熱発電等
海洋 波力発電、潮汐発電、海洋温度差発電等
温度差エネルギー 海水・河川・下水の温度差などの末利用エネルギーを利用した熱供給等
リサイクル型エネルギー 廃熱 工場等 工場廃熱等を利用した発電等
LNG LNG気化冷熱発電等
廃棄物 家庭 ごみ焼却熱による発電、ごみ焼却熱の利用等
排泄物等 下水(し尿)処理メタン発酵ガス利用、畜産廃棄物メタン発酵ガス利用等
工場 工場廃液メタン発酵ガス利用、木質系廃棄物燃料利用等
従来型エネルギーの新しい利用形態 クリーンエネルギー自動車(天然ガス・電気・メタノール等を使用する車、ハイブリッドカー等)
コージェネレーション
燃料電池発電
その他
新エネルギー財団まとめ
[本文]
「原子力発電に対する大きなダメージは避けられない……」。電気事業連合会の大田宏次会長(中部電力社長)は1日、苦り切った表情でこう語った。日本初の臨界事故は、原子力発電を推進してきた日本のエネルギー界に衝撃を与えている。
西欧全体の4基に対し、日本だけで6基。日本原子力産業会議がまとめた「世界の原子力発電開発の動向」で建設・計画中の原発の数を1998年末時点でみると、日本の原発増設ぺースは先進国の中でずば抜けて高い。2010年までに15基以上の原発を新設する方向だ。
ところが、今回の事故で「新しい原発の立地計画は大きな障害を抱えた」(太田会長)。核燃料加工会社と原発では事情が違うとはいえ、ただでさえ難しい地元との交渉に影響を与えるのは間違いない。
地球温暖化を招く2酸化炭素の排出を増やさず、絶対に安全な新エネルギーを一刻も早く育てる必要がある……。今回の事故を契機にこんな声が高まるのは間違いない。「事故は残念だが、新エネルギーへの注目度は高まる」。ある新エネルギーの発電事業者は期待をかけている。
新エネルギーは大陽光、太陽熱、地熱などクリーンで安全な自然エネルギーを活用する。特に近年は風力発電の伸びが目覚ましい。
景観などにダメージ
立地厳しく
茨城県東海村が過去最悪の原子力事故で注目を集めていた1日、北海道苫前町では、大規模な新エネルギー施設が試験操業を始めていた。トーメンの風力発電設備「苫前グリーンヒルウフィンドパーク」だ。
日本の風力発電能力は全国合わせても約3万キロワットだったが、これは1ヵ所で実に2万キロワットの発電能力を誇る。日本最大の風力発電設備だ。さらに、オリックスと電源開発は同じ苫前町で3万キロワット級、トーメンは青森県で6万キロワット級の風力発電を計画。大規模な風力発電施設の建設が目白押しだ。
急増のきっかけは、1997年の新エネルギー特別措置法による国の助成制度に加えて、昨年4月から各電力会社が大規模な風力発電に長期優遇買い取り制度を導入したこと。商社やメーカーが相ついで参入し、ブームのような様相を呈している。
順風満帆に見える風力発電ビジネス。ところが、一方では、大手資本が計画の見直しや撤退を迫られる事態に陥っている。2月に立ち上がった石川島播磨重工業(IHI)と三井物産との北海道椎内市での風車発電プロジェクトは8ヵ月足らずでとん挫。IHIは「一時的に事業そのものからの撤退も検討せざるを得ない状況」と、厳しい見方だ。
追い風が吹いているはずの風力発電に見え始めたほころびとは何か。第一は「環境」対「環境」の争いだ。クリーンなエネルギーをもたらす風車が何と「環境にダメージを与える」とみられているのだ。
強い風が必要な風車の立地侯補として事業計画者が熱い視線を浴びせているのが国立公園。ところが、自然公園法で景観保護を決めており「相談があっでもお断り」(環境庁)。2酸化炭素削滅の旗振り役の環境庁が、この点では風力発電の敵だ。
防風林や防砂林、農地、港湾地区などに指定されていれば、規制があって難しい。これらの規制は広い意味で環境を守るためのもの。環境規制が風力発電を妨げるという皮肉な構図だ。この結果、有望な立地をめぐって「風力発電地上げ」が起きているという笑えない話もある。
風力発電ビジネスに詳しいコンサルタントの前田以誠氏は「新エネルギーは通産省だけの問題ではない」と指摘する。「自治省、農水省、環境庁などが省庁間の垣根を取り払って調整する時期に来ている」
住民意識は各論反対
コストも高く
第2の難関が「総論賛成・各論反対」に陥りがちな住民の意識だ。
売電が目的の発電所は地元に電気を供給しない。無人が売り物だから新たな雇用も生まない。目障りな風車が目の前に立つだけだ。自分が参加している意識が育ちにくいため、賛同を得るのはむずかしい。
風力発電事業者、エコ・パワー(東京・港)の遠藤昭取締役は「コストを電気料金に反映させるなど、受益者負担の仕組みが必要」と主張する。札幌市の生活クラブ生協北海道は、電気料金に5%を上乗せし、上乗せ分を風力発電設備の建設に積み立てるという試みを始めている。
しかし、ここで第3の、そして最大の問題が待ち受けている。火力発電に比べて2〜3割高い発電コストだ。現状では電力会社が通常より高く買い取っている。プロジェクトが目白押しの北海道や東北地方の電力会社は、地域貢献の名目もあって、安定供給に不安を残す電気を高い価格で買わざるを得ない。
そこで北海道電力は買い入れ入札制を導入。価格競争をさせるとともに、風力発電の買い取り枠を当面15万キロワットに制限した。これが風力発電事業者にとって痛手になった。
関係者の間には「デンマークのように、買い取り額の一部を国が負担する仕組みがないと、ビジネスは成立しない」という声が多い。
これらの問題は自治体主体の小規模発電から企業の巨額投資事業へと風力発電の中軸が移った中で露呈した。風力発電に限らず、黎明(れいめい)期にある各種の新エネルギーがいずれ直面する関門でもある。
発電量の約4割を占める原子力は日本の総エネルギー需妻の約10分の1をまかなう。これに対して新エネルギーはわずか1%だ。原子力発電が負う危うさを安全でクリーンなエネルギーで補完するとしても、規模が拡大する過程でこんな問題が生じては普及は難しい。東海村臨界事故を契機に、新エネルギー開発のためのインフラ作りを考える機運が高まればいいのだが。
(スクープ取材斑)
このシリーズは、東海村臨界事故発生直後、一週間前に急遽、mailを開始し、昨日までに、Web週刊誌『憎まれ愚痴』に:1〜:5を入力するという、猛スピードで送信し続けました。われながらクレイジー、マニアックと、呆れ果ててはいたのですが、本日、またもや、どうにもこうにも、一言ぐらい愚痴らないと、怒りのストレスで寝れない夜の恐怖を覚える始末となりましたので、恐れながら。
実は、本日は半分休養の予定で、武蔵野市立中央図書館に赴き、関連資料を探索。「高温岩体発電」についての記述も、結構、沢山、発見。よし、よし、と。
ところが、むしろ、この重要なキーワード「高温岩体発電」が、なぜか、完全に欠けている資料の中に、決定的な重要性をはらむ閣議決定があったのです。
資料名は『総合エネルギー統計』。資源エネルギー庁長官官房企画調査課・編。
なお、資源エネルギー庁は、通産省に所属しています。通産省は「電力」の監督官庁ですが、「原子力」は科学技術庁の所管、つまり、原子力は、江戸時代で言えば幕府直轄領の産物、他の下司な電力とは血筋が違う。監督とは名ばかりで、どこぞのやんごとないお坊ちゃまを、後生大事に、お預かりしているような立場です。
さて、この『総合エネルギー統計』、面白いどころか、普段なら見る気になるはずのない御役所便覧ですが、この中に、なぜ、あれほど有望で無限で無公害が確実の、わが高温岩体発電の研究が、あたかもカタツムリ、あれ、鈍牛じゃなかった、蝸牛は、このワープロでは変換できない、ともかく、いかにも、ゆっくり、ゆっくり、進むのか、進まないのか、ひねもす、のたりのたりかな、の理由が、明確に刻み込まれていたのでした。もちろん、直ちに明確と判断できるのは、わが名探偵ならではの紙背に透徹する眼力と、「雄牛の労働」(カール・マルクス)の積み重ねと愚直(これもワープロ変換不可能。つまり、流行らない習慣)な資料収集の努力あればこそです。なお、わが名探偵も丑年生れですが、鈍牛は大嫌いで、突進型の猛牛の方が大好きです。
同便覧p.414「石油代替エネルギーの供給目標について」(平10年9月18日閣議決定)では、平成22(2010年)度までの「目標」が、すでに決定されていて、単位:万キロワットと%だけを簡略に紹介すると、下記のようになっています。
原子力__10,700万キロワット_33.0%
石炭____9,200_______28.2
天然ガス__ 8,000_______24.6
水力_____2,300________7.2
地熱______400________1.1
その他____1,900________5.9
この目標設定のクダクダシイ基本的条件の中でも、わが名探偵が「決定的」と判断するのは、次の項目です。
2-(2)この目標は、エネルギーの需要及び石油の供給の長期見通し、石油代替エネルギーの開発の状況その他の事情の変動のために必要があるときは、これを改定する。
つまり、原子力のお坊ちゃま、黒船、または朝廷の背後には、幕府本体の「石油の供給の長期見通し」が、ドーンと真ん中に座っていて、その他の親藩、外様が居並び、ズズッと下がって土間に平伏す民百姓の封建的構造が、議会ではなく閣議だけで決定されているわけです。「下郎ども、控えおろう!」です。
もちろん、ずるさでは最優秀の高級(高給でもある)官僚の作文ですから、「その他の事情」という逃げ口は用意されていますが、実際には、このどこにも、国際的に約束したはずの、二酸化炭素様の御威光を減らそうとか、ましてや放射能様の御光輪を削ろうとか、そのような許しがたい不敬罪の思想は、全く見られないのであります。ああ、いつまでも変わらないなあ、この国は。
ああ、……そこで。
見よ、東海の空明けて、旭日高く輝けば、天地の生気、溌剌と、希望は踊る、オオヤシマ(これもワープロ変換では出てこない。それどころか、手元の安物辞書にもない。確か、日本列島のことでしたが)!
この歌を、『新しい神様』の脇役、伊藤さんは、第2国歌に推薦しています。私は、国民学校1年生から3年生の夏まで毎日、この歌を含む勇壮ながら、まるで意味の分からない北支那派遣軍の歌などの軍国の歌の数々を、丸暗記で合唱しながら、北京の日本人専用の国民学校に向けて隊伍を組み、当然、呆れて見ながら笑う気にもなれないはずの中国人の眼の前で、オイチ、ニ、サン、シ、と一生懸命に手を振り、足並みを揃えて行進、健気に通学していたのでした。
ああ、恥ずかしい、ああ、心苦しい、ああ、見よ、東海の……。
そして、1年に平均1万人が、昨年から3万人に増え、今年は、ますます中高年男性(女性は強い!?)の比率が高まり、ハラキリ、神風の再来か、の恐怖の放射能を世界中にまき散らしつつあるオオヤシマ独特の自殺者の激増!
殺したのは誰だ!
孤児を激増させた犯人は誰だ!
この元産業戦士の皆様に、新型兵器による戦死者が続かないことを祈りつつ。
皆様、お休みなさい。
以上で:6終り。:7に続く。
本シリーズは、東海村の臨界事故を契機に、最初は「臨界事故vs超々クリーン高温岩体発電」、次に「原子力汚染vs超々クリーン高温岩体発電」と改名しましたが、さらに今回以後、「原子力汚染vs超々クリーン・マグマ発電」に再度改名し、ホームページ再録済みの分も同様に書き替えます。
改名の理由の第1は、もともとからの「こだわり」です。後に詳しく紹介しますが、私に「高温岩体発電」を教えてくれたのは、あるベテラン技術者です。その方は、原子力発電所の建設の草分けですが、退職して、原子力発電の危険を訴える全国行脚をしています。その方に、私が、「高温岩体では分かりにくいから地熱の一種と説明した方がいいのでは……」と言ったところ、言下に、いささか色をなして、「地熱発電は失敗ばかりしていて評判が悪い。高温岩体発電は地熱とは規模も桁外れに違う」と力説されました。
しかし、関係資料を漁ってみると、官庁の奥御殿に入り込めば込むほど、「高温岩体発電」は「地熱」の背後に引き下がり、まったく姿を現わさなくなるのです。この情報の構造が、実に怪しい。つまり、現場の技術者が一緒に考えてほしくないのに、お前は地熱の一種だと無理やりに押さえ込み、実質的に、絨毯の下に隠してしまおうとしているに違いないのです。あれほど宣伝費を「バラマク」電力会社が、高温岩体発電の「コ」の字も口にしません。東京電力の広報部員は、やはり、言葉そのものを知りませんでした。
口の回らないガキタレ世代までが、キャッチコピーがどうのこうのと粋がる今日このごろのことですから、言葉、キーワードは重要です。今回紹介する資料にも、つぎの部分があります。
………………………………………………………………………………
「地熱発電は[中略]、地球内部の熱を発電に利用する方式の総称である。しかし一般的にはすでに発電に利用されている浅部地熱発電を指す場合が多い。
………………………………………………………………………………
つまり、「地熱発電」の概念は、すでに世間的にも固定しているのです。専門用語の場合には、既成の言葉の概念を広げることがありますが、やはり、無理は通用しません。私自身の体験としても、今回、このシリーズを発表しながら、多くの友人に話してみると、発音だけの一発で「高温岩体発電」を理解した友人は、たったの一人で、元東京電力差別事件の原告だけでした。ただし、もう一人の原告は、まったく知りませんでした。
やはり、誰にでも分かる言葉を探すべきです。発想の転換が必要です。そこで、ほんの少し考えて、「マグマ」はどうかなと、軽く思い付いていたところ、何と、すでに、専門書では1970年から、「マグマ発電」が論じられていたのでした。ただし、「地熱発電」の中に、地熱発電、バイナリー発電、高温岩体発電、マグマ発電、という順序で位置付けられていました。
私は、断固、「地熱発電」の中には、地熱発電、バイナリー発電、「マグマ発電」の中に、高温岩体発電、マグマ発電、という順序に組み替えて宣伝することを提案します。
以下、「夢のエネルギー源」“マグマ”発電の、21世紀実現に迫る「地熱学会」の熱気の一部を紹介します。
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『地球時代の電気エネルギー』
1995年12月13日1版1刷
著者:茅陽一/鈴木浩/塚本修巳/一原喜昭
発行者/小沢治文
発行/日経サイエンス社
発売/日本経済新聞社
2編/資源供給
3章/自然エネルギー
(3)マグマ発電技術
火山の源でもあるマグマは、溶融状態では地下で1,000度C以上の高温を保持していることから、その熱エネルギー量は膨大であり、まさに夢のエネルギー源である。
大胆な仮定をおいたマグマ溜り残存熱量法により、我が国には20,000MWe・5,000年のマグマ資源が評価されている[野口1970]。
[野口1970]野口高:“地熱包蔵量に寄与するマグマの熱量とその電力換算値”、日本の地熱資源(地熱別冊第3号)、pp.96-99(1970)
溶融状態に近いマグマから直接エネルギーを取り出し発電に利用するためには、あまりにもその環境が過酷なため、探査、採取、利用技術など全般にわたり宇宙開発技術に匹敵するほどの高度な技術が必要となる。
ハワイのキラウェア・イキ火山では1,070-1,170度Cの溶岩湖を掘さくした実績はあるものの,地下深部のマグマを掘さくする技術にはなっていない。当面は450-650度C程度のマグマ近傍地熱資源を対象に、国際的視野からその利用可能性について研究を行うのが現実的である。
図4・45には,マグマからの抽熱法として提案されている坑井内同軸熱交換器を使用した発電概念図を示した[地熱学会1993d][盛田1991]。
図4・45:坑井内同軸熱交換器方式による抽熱の概念
[出典]盛田耕二:地熱、28,1(1991)
[盛田1991]盛田耕二:“地熱エネルギーの新しい採取方法”地熱、28,1,pp.61-78(1991)
4編/システム・技術
3章/発電技術
地熱発電
〔1〕発電システムの概念
地熱発電は図3・16に示すように、地球内部の熱を発電に利用する方式の総称である。しかし一般的にはすでに発電に利用されている浅部地熱発電を指す場合が多い。浅部地熱発電は地下約2kmまでの深さに貯留する高温の蒸気または熱水を孔井を利用して蒸気を取り出し、タービンを回し発電に利用する方法である。
イタリアで開発された当初は高温の蒸気だけを利用していたが、技術の進歩に伴い200度C以上の熱水であれば、さらに熱水から低圧の蒸気を取り出し発電量の増大を図るダブルフラッシュ発電方式が開発され、地熱発電が世界的に普及した。現在はより低温度(150〜200度C)の熱水から低沸点媒体を用いて発電に利用するバイナリ発電方式、地下2kmより深部の熱水を利用しようとする深部地熱発電方式などの技術開発が進められ、熱水を利用する発電方式の範囲が広がった。
バイナリ発電は温度の低い熱水をフロン、ブタンなど低沸点の媒体を利用して発電に利用する方法である。温度の低い熱水は坑井を掘削しただけでは自噴しないので、坑内に設置して熱水を汲み出す耐熱・耐水圧ポンプおよび環境に影響の少ない低沸点媒体の開発が必要である。
深部地熱発電では温度400度C、深さ4kmの生産井を経済的に掘さくする技術の開発が必要である。そのため、効率良く掘削するためのビット(歯)や耐熱性の坑内計測機器などの開発が進められている。これらを用いて平成4年度から実際に4kmを掘削しようとする実験が東北の地熱地域で始められている。
一方、蒸気の存在しない高温の岩盤に水を注入し、蒸気を取り出す高温岩体発電の研究が進み、21世紀の初頭には実用化されるものと想定される。
今後の課題としては、地下4kmよつ深い400度C以上の高温の岩盤を利用するマグマ発電があるが、高温材料の開発など困難な問題があり、実用化は21世紀中頃と考えられている。
図3・16:地熱発電の概念
東海村の臨界事故以後、当初は「臨界事故vs超々クリーン高温岩体発電」、逐次改題して「原子力汚染vs超々クリーン・マグマ発電」の連続mailを送り、ホームページにも収めました。テーマとしては、原発代替エネルギーの提案です。
今回は、趣を変えて、「臍曲りの憎まれ愚痴」として、ここらで本性を露わすと、実は、政党や、原発反対運動に、物申したい点が多々あったのです。
いつぞやは、「東京に原発を!」の運動があり、急速に盛り上がってポシャリました。面白い発想には違いないのですが、私自身、似たような発想の運動をした際、先輩から、「これはオチョクリ」との批判を頂いたことがあります。極論すれば、「批判のための批判」であって、事態の根本的な解決策を持ってはいないのです。体制批判と言えば格好良いようですけれども、それでは、結局、「永遠の反主流運動」に止まり、安住し、甘えていることになるのです。
根本的な解決策とは、他ならぬ代替エネルギーの確実な提案です。それも天気まかせ、潮まかせ、風まかせ、などの不確かな、コストの高い、しかも抽出エネルギー総量の可能性の低い提案では、補助的な意味しかありません。確実な提案なしに反対ばかりしていても、政治の主導権すら握れません。電力を必要とする有権者が、まともに相手にしてくれないのです。現在、有権者は、自分の生活圏への原発の進出を拒否し始めています。しかし、沖縄の米軍基地の場合のように、どこか他の場所でなら「背に腹は代えられない」とばかりに、黙って許してしまうのです。
有権者のわがままを責めても仕方ありません。有権者を意識する点で、最も過敏なのは政党ですが、その政党は、原発問題で、どういう態度を示しているのでしょうか?
私が問題にする政党は、政権党ではありません。ジジコウなんて汚らわしい連中など、論評に値しません。一応、論評するのは、議員数の多さでは、昔は社会党、共産党の順序でしたが、今は、名前も変わり、逆になって、共産党、社会民主党の順になります。
共産党は、今度の事件以後にも、私が広報に直接電話で確かめましたが、原子力平和利用の方針を変えていません。私の分析では、共産党は、湯川秀樹の平和利用「幻想」を真似たまま、スリーマイルやチェルノブイリを横目で見ながらも、ズルズルと方針変更を回避しています。「危険のないように」といいます。それも幻想にすぎないのですが、今度の電話では、ウラン採掘現場での被曝をどう思うかと質問すると、返事ができませんでした。再考を促して電話を切りましたが、他の数多い事例から判断して、共産党の場合には、方針変更は簡単ではありません。過去の方針決定に関わった責任者の自己批判、ひいては降格に繋がる事態になるからだと、私は、確信しています。一般の「利権政党」との比較上、私は、共産党を「沽券政党」と呼んでいますが、沽券も結局は幹部の個人的地位確保のための利権なのです。しかし、同時に、電力を必要とする有権者に対して、確実な代替エネルギーを公約できない弱腰が、決定的な要素となっているのでしょう。
社会民主党は原発容認に方針変更しました。この理由は簡単で、社会党支持労働組合の中心だった総評が解体し、特に組織的に社会党支持だった大組合が同盟と一緒の連合に加盟したからです。同盟の主力として連合に加わった電力労連は、御用組合の最たる部類ですから、当然、原発推進に決まっています。連合全体も「右へならえ」となります。労働組合を重要な支持基盤とする政党は、労働組合が右に転べば、一緒に右に転ぶのです。社会民主党も、結局は、有権者と、それ以前に必要な労組の政治献金の重さに、大判を結び付けられた達磨が転ぶ姿を、あられもなく示しているのです。
今回の事故以後のmailも、そのほとんどは、やはり、体制批判一辺倒です。批判は大いにしなければなりません。しかし、この資本主義の体制が醜いことは、ずっと前から明らかになっているのです。原子力汚染問題だけでも、もうかれこれ半世紀、ここらで、いい加減に決定的な痛打を与え、敵に止めを刺す工夫をすべきではないのでしょうか。
それには、まず、戦争で言えば決定的な武器、決定的な代替案を、真剣な議論で見いだすべきです。つぎには、いきなり体制に物申したって、まともに相手にされっこないのですから、まずは身近な庶民を味方にすることです。その際に重要なのは、そういう庶民を結果的には騙している共産党や社民党に理論的な痛打を与えることです。電力労連に対しても、悪質な御用幹部の正体を暴露して、一般組合員を味方に付ける戦いを挑むべきです。これは労働争議の基本ですから、ここでは詳しくは述べません。
以上の内、特に「共産党や社民党に理論的な痛打を与える」点について、一応述べると、現在の共産党や社民党の原発に関する方針には、一般党員も不満なのです。真面目な一般党員の不満を押さえ込んで現状維持を図る幹部は、結果的には電力労連の御用幹部と同じことになるのですから、個々に態度表明を迫るべきでしょう。党の体質改善も迫るべきでしょう。
以上の提案の原理を、分かりやすくするために、戦国時代の実例で説明すると、織田信長は、いきなり京都に迫ったのではありません。桶狭間の戦い以前に、まずは一家の主導権を握り、周囲を切り従え、着々と実力を蓄えたのです。この内の「周囲を切り従え」の中に、「共産党や社民党に理論的な痛打を与える」ことを位置付けるべきでしょう。これを成し遂げられなければ、反体制の粋がりだけでは、小さな運動すらも長持ちしないでしょう。
物言えば唇寒し秋の空とか。枯れ葉も散り始めました。とりあえず以上。
以上で:8終わり。:9に続く。
前回、「(その9)原発反対運動に物申すと唇寒いか?」の中で、「事態の根本的な解決策を持ってはいない」運動に安住せず、「他ならぬ代替エネルギーの確実な提案」を、と主張しました。また、別途、いかな厚顔無恥、宣伝費タップリの電力会社といえども、今の今は、原子力発電擁護の発言はできなかろう、だから、今がチャンスだと全国に檄を飛ばしました。
ところが、何と、「兄はカラン屋」、と、わがワープロの一発転換では出てきてしまうのですが、昔懐かしき漢文の常用句、豈図らんや(手元の安物辞書では「意外なことには」)、なのですが、わがサイバー界の水先案内役から、次のような発言が飛び出してしまったのです。
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『日本経済新聞』(1999.10.16)
SATURDAY NIKKEI“X”/Digitallian
“サイバー時評”欄
今の好条件下で高度情報化急げ
東海村の臨界事故後、ある調査で原子力発電の推進に「反対」は全体の42%。うち3割の人が「今回の事故で考えが変わった」と答えているとも言う。
しかしアンケート以前に、果たして正しい知識が共有されているのだろうか。たとえば電気は「量」だけでなく「質」も重要。日本では周波数変動の少ない非常に高品質な電力が供給されており、その恩恵を被っているのは、他でもない半導体技術なのだ。日本の総発電量の約4割をまかなう原発からの離脱は、電力供給状況をシビアにし、停電や周波数変動のリスクを高める。そのためデリケートな半導体の作動が不安定となってエラーや故障を導かれるようになると様々な対策が必要となる。
何が起きるか正しく理解して判断を下すべきだと思うのだ。21世紀の日本が原子力とどういう関係を担って行くか。そんな極めて重要な問題については、十分に情報が共有された上で世論が形成され、民意が正しく政策に反映されてゆくべき。そうした情報の共有化や、政策決定手続きの民主化は情報化システムを活用すれば実現可能だ。今なら高品位の電気を前提に安い社会コストで高度情報化が進められる。いつまで続くか分からない好条件を無駄にすべきではない。
(評論家 武田徹)
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どうでしょうか、皆様。この「サイバー評論家」、「脅すつもりはない」、なんちゃって、やはり、脅してるんじゃないでしょうか。難しい用語を並べていますが、いつも、とてもとてもオタクっぽい文章ばかり書いてる方なので、かなり多いとかの噂の、中学生の背伸びインターネットじゃないのでしょうか。
でも、「情報の共有化」とか「高度情報化」というのなら、この際、オタク技術を駆使して、関連のインターネット情報を、すべて検索してから発言してほしいものです。もちろん、そうすれば、私が発信した「マグマ発電」情報にも到達するはずです。
とりあえず、杞憂ならぬ実例発見、「要警戒!」のお知らせまでにて失礼します。
以上で:9終り。:10に続く。
本日、1999.10.18.月曜日、午前11時51分、電力中央研究所の広報部から、FAX通信で『週刊朝日』(1993.2.19)掲載の記事、「21世紀の新エネルギーになれるか/高温岩体発電スイッチオンへ」が送られてきました。
古い雑誌記事のコピーの入手、と一言でいえば、何ほどのことでもないようなのですが、この記事の存在を知った経過が、非常に象徴的なのです。記録はないのですが、多分、1995〜1996年、民衆のメディア連絡会のスタッフ会議が、少し交通の不便な板橋区向原のビデオプレスで開かれていたころ、一度だけの参加ですが大変に印象深い、高年の元原子力発電建設技師がいました。原子力発電の危険を訴えて、全国を行脚しているとのことでした。その元技師が、最も有望な代替エネルギーとして、高温岩体発電を語り、その後、わが家に、電力中央研究所が制作した宣伝ヴィデオを送ってくれたのでした。
ビデオプレスで、その元技術者が語った主旨は、「高温岩体発電は非常に有望なのだが、電力会社が開発にブレーキを掛けている。成功すると原発が不要になるからだ」ということでした。さらには、『週刊朝日』の記者が現地取材をして良い記事を書いてくれたのですが、その記者が「左遷された」というのでした。大いにあり得る話なのですが、その記事を掲載した日付は分かりませんでした。以来、ずっと気に掛かりながらも、記事そのものを見てはいませんでした。まったく探索の努力をしなかったわけではありません。朝日新聞の広報部と『週刊朝日』編集部に聞くと、キーワードで検索できるデータベースを作っていなかったのです。『週刊朝日』編集部は、朝日新聞記者の持ち回りで、交替が激しく、少しでも古い記事のことは聞いても、まったく分かりません。
今度は、武蔵野市の中央図書館に行って、評論家の故大宅壮一が残した書籍を基礎に運営されている大宅文庫の雑誌項目リストの「電力」を検索しました。ところが、「高温岩体発電」は、全くないのです。しかし、私は、これまでの経験から、大宅文庫の雑誌項目リストには、かなりの脱落があることを知っていましたので、先週末、電力中央研究所の広報部に電話をして、関連記事の切抜きをしていないかと聞きました。その返事が今朝あり、続いてFAX通信で記事のコピーが送れられてきたのです。
以上、前置きが長くなりましたが、以下の記事を読めば、上記の「裏」の事情が、ほんのりと薫ってくるでしょう。執筆者本人とも電話で話すことができましたが、その内容は、個人的会話として公開はしません。[ ]内は本誌編集部の注。年度の92などはY2K問題にも鑑み1992などに書き換え、数字は比較しやすいように、1,000などと3桁で区切ります。
………………………………………………………………………………
『週刊朝日』(1993.2.19)
21世紀の新エネルギーになれるか
高温岩体発電スイッチオンへ
[題字の背景の見開き写真]:[高い鉄の櫓の中に太いパイプなどが見える実験現場]
[その他の写真の説明]:
1)「ことしの夏にはぜひ」……新エネルギーへの夢は広がる[実験場の技術者たち]
2)「この道を選んでよかった」と語る海江田秀志さん
[図の説明]:[本シリーズ(その1)の図と同じもの]
3)浅部地熱発電(現在の地熱発電方式)/高温岩体発電(新地熱発電方式)
[ゴシック文字のリード]
原子力はもういらない。国産で、それも安全な電気がこんなにたくさん創れるのではないか。日本はエネルギー大国になれるかもしれない……ふと、そう口走ってみたくなるような試みが、電力中央研究所(電中研)によって、秋田県雄勝町の山中で進められている。高温岩体発電という、まだ赤ん坊だが、将来性豊か、と見た。
[以下、本文]
あかつき丸が日本に持ち帰ったプルトニウムは、原子力発電推進論者が“夢の燃料”と期待する逸品。だが、使いようによっては原爆もつくれる物騒な代物だけに、不安と懸念と疑惑の目を浴びながらの帰国となった。
私は昨年暮れ、プルトニウム積み出し国のフランスで人々の話を聞いて回ったが、「ヒロシマ、ナガサキの体験を持つ世界で唯一の被曝国が、なぜプルトニウムにご執心なのか」と問われ、返答に困った。
高温岩体発電の存在は、私自身、「その日本がどうして?」と考えながら、プルトニウムを取材する過程で知った。地球が長い間、地底に蓄えてくれた高温の熱を取り出して電気を起こす。原発より、こっちの方がずっと分かりやすそう。早速、実験現場を訪ねることにした。
奥羽本線横堀駅で下車、目的地の雪の状態を確かめて車に乗り込む。国道108号線を左折し、黒沢林道を慎重に上っていく。
小さい雪崩の跡を2ヵ所ほど見る。雪がいちだんと深くなる。また空が暗くなる。雑木林の一角に突然、鉄の櫓が現れる。標高650メートル、晴れていると鳥海山がはるばると見渡せるはず。だが、いまは厚い雲の中だ。
高温岩体発電の誕生地は、原発の堂々たる偉容に比べると、拍子抜けするくらいミニかつ素朴。激しい音を立てるボーリングマシーンを操り、屈強な男たちは、雪に埋もれた大地のはるか底に眠るエネルギー源を手さぐりする。山麓の湯治場で合宿生活しながらの作業が昨年夏以来、もう半年以上も続いている。
このプロジェクトの存在を知り、そこに接近する。そして、大事な可能性を信じて歩き続ける人間に出会う。
海江田秀志さん、電中研主査研究員。まだ30代。雄勝町の実験現場の研究グループの一員。海江田さんは言う。
「私は鹿児島の出身なんです。桜島のお陰であそこの人がどれだけ困っているか、子どものときから思い知らされてきた。あのエネルギーを人間にとって助けになるほうに使えないもんだろうか。そう考え続けてきたのです。そして大学で高温岩体と出会った。これだっ、と思いましたね」
修士課程を終え、電中研に入る。11年前のことだ。すでに発電が始まっているアメリカ・ロスアラモスへ留学し、経験を積む。
この人の夢は、地下数千メートルのマグマにまで及ぶ。マグマが無理やりエネルギーを放出するのが噴火。あれを上手に制御できないか。あの高熱で蒸気をつくり、タービンを回せないか。そうすれば桜島や普賢岳で困る人が減る。おまけに電気を無尽蔵に創り出せる。本気でそう考えている。
高温岩体発電のメカニズムは、原発に比べるとはるかに分かりやすい。井戸を2本掘る。一方の井戸が高温の岩盤にたどり着く。思いっきり水圧を上げた水を噴射し、岩盤にひび割れをつくる。できた亀裂部分に水を注いでやると、激しく蒸気を噴き上げる。もう一方の井戸から蒸気を取り出す。その力を使ってタービンを回す。蒸気とともに戻ってきた水を、再び第1の井戸から注ぎ込む。この回転を続けていくのだ。
現在、電中研が雄勝町で行っている実験では、まず直径78ミリの鉄管を990メートルの深さまで埋め込んだ。セメントで岩盤に固定する。注水井戸である。次いで280気圧という強力な水圧(土木用ウォータージェット削岩機のほぼ2倍の力)をかけた水を注いで、岩盤に深さ数十ミリ程度の多数の亀裂をつくることに成功する。
さらに今度は270メートルほどの上部の、深さ711メートルから719メートルの間の鉄管に切れ目を入れ、そこから注水を行って第2の亀裂をつくることにも成功した。1本の注水井戸を使って複数の亀裂箇所がつくれると経済性がグーンとアップするとあって、“電中研方式”は高温岩体発電先進国アメリカの研究者からも注目されている。
さらに今度は、生産井戸と呼ばれる第2の井戸を掘らなければならない。こちらは深さ1,100メートルまで掘っておいて、700メートルまでは鉄管を埋め込み、その先は掘ったままのむき出しの状態にした。こうしておけば、亀裂が広がってきた場合、ここでガッチリ水蒸気をキャッチできるという寸法。
従来の地熱発電は高温の水たまりをたずね当てるのがなかなか厄介だった。温泉の水脈を掘り当てるのに似た困難さがつきまとった。
しかし、高温岩体発電の場合、水はなくていい。高温の岩が存在すればそれでいい。火山国日本は、高温岩体だらけだ。電中研が全国地質調査結果などを参考に試算したところによると、全国で7,000万キロワットの発電が可能だという。
1992年1月現在、全国で稼働中の原発は42基、発電可能量は3,240.4万キロワット。もし、ことがうまく運んで高温岩体発電がフル稼働する日がやってきたら、原子力発電の分を使ってなお、おつりがどっさりくる。
では、公害問題を起こすことはないのか。従来の地熱発電は、地中の水が硫化水素など有害物質を含んでいる恐れがあった。これが水蒸気や高温の水に混入し、地表に出てきたらえらいことになる。だが、「岩体」のほうは河川、湖沼の水や雨水を使用するから、あらかじめチェックを入念にしさえすれば、毒入り蒸気を大気中にまきちらす心配は少ない。
地震計も使いよう
地底の岩盤の様子が見える
では、技術面ではどうか。研究者たちがいちばん苦労したのは、亀裂の状態の把握。潜って見てくるわけにはいかない。ファイバースコープでも役立たない。そこで先進国アメリカが着目したのが、岩が割れるときの音を高感度地震計でキャッチする方法。地表に何台もの地震計を設置し、時間を追って、音源をたどっていく。亀裂を生じた箇所が把握でき、地底の状態を示す絵が描ける。
電中研の技術陣は、いまアメリカが気がついた方法に改良を加え、精度を高めつつあるところだ。
これ以外の技術は、たとえばボーリングにしても削岩にしても、従来、多方面で使用されてきたテクニックの応用ですむ。新しく技術を開拓していかなければならない原発に比べずっと楽だ、と研究者たちは言う。
秋田県雄勝町の実験場は先月末。作業を終えて冬ごもりに入った。
2本の井戸を掘り、2ヵ所に割れ目をつくり、初期のお膳立てを整えての小休止である。今年7月か8月には、いよいよ注水開始だ。めでたく蒸気が噴き出してくれるかどうか、結論がこの夏には聞けるはずである。
電中研の役目は、実はここまででおしまい。あとは個々の電力会社がどう出るかだ。研究の成果を電中研から譲り受け、実用化に踏み切るかどうか、注目されるところ。
実用化するにはコスト高が問題
実用化に向けて障害があるとすると、一つはコストだろう。諸設備の耐用年数を考慮に入れた1キロワット当たりの原価は、12円70銭と試算されている。水力発電なみだが、原発の9円程度という原価に比べると少々高くつく。
電中研は、9電力、電源開発会社、日本原子力発電株式会社が資本・資金を出し合って設立した機関。したがって、「原発はもういらなくなる」などとはだれも言わない。
「火力、水力、原子力の3つがメーン。そこへ風力、太陽熱、地熱を組み合わせ、バランスのとれたエネルギー対策を進めるのが望ましい」
これが公式見解だ。
だが、さきほど紹介した海江田さんたち技術者の打ち込み方を見ていると、そして、日本という国の地の利を考え合わせると、思いがけないエネルギー革命がやってくるかもしれないと、ふと夢を見てしまう。
高温岩体発電に関しては国も不熱心ではない。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が山形県大蔵村で井戸掘りを進めており、こちらのほうはすでに蒸気を噴出させるところまでこぎつけている。だが、発言はきわめて慎重。「適地の発見は容易でない。コストの克服も困難。10万キロワット規模の発電所ができたとして、1キロワット時当たり20円から30円を達成できるかどうか。原発とは実力が違います」(通産省担当者)
しかし、海江田さんは意に介さない。もう夢中だ。亀裂がうまく入れられたといっては目を輝かし、どうやらアメリカに追いつけそうだと声をあげて喜ぶ。
その目に火山灰を噴き上げる故郷・桜島の姿が映っているようだ。
本誌・村上義雄
本シリーズは、東海村臨界事故の衝撃を、「超々クリーン・マグマ発電」の話題浮上のチャンスと捕らえて、急遽、開始したものですが、個人宛てmailでも、様々な御意見、御激励をかたじけなくしました。本来なら、それらのmailにも応えて、さらに深く論じたいところですが、この間、中断の止むなきに至ったユーゴ戦争問題でも、寄せられた資料が山ほどあり、このところの数回のNHK「コソボ」報道のあり方など、急ぎ批判を加えるべき点も多々ありますので、今回、総合的な意見を述べて、一応の締めと致します。
今回の主要テーマは、一番肝心な「コスト」です。
前回、幻の『週刊朝日』記事を紹介しましたが、あの記事にも、コスト問題が出てきました。高温岩体発電の1キロワット時当たりの「原価」の試算が、12円70銭で、原発の9円程度より「少々高くつく」となっていました。通産省の外郭団体、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の方の試算は、「20円から30円」となっており、むしろ、こちらは、足を引っ張るための深慮遠謀の研究なのではなかろうかとの疑いも生じます。
ところが、まず、原発反対運動関係者や、電力会社の労組の反主流派に聞けば、誰でも知っていることですが、原発のコスト「9円」なるものには、意図的な数字の操作が明らかなのです。
電力会社の内部の費用でさえ、「原発の安全性」の真っ赤な嘘をバラマクためにフンダンに使われる宣伝費はもとより、放射能の防護服など、原子力発電に特有の費用さえ、加算されていないのです。しかも、原子力「平和利用」の隠れ蓑として設立された科学技術庁、東海村、その他の再利用のための核燃料サイクルなどの費用は、まったく含まれていません。電力消費者は同時に納税者です。双方を合算しなければ、本当のコストとは言えません。実際の話が、現在、バブル崩壊の主犯の銀行救済で「公的資金」を大盤振る舞いして財政困難な国そのものが、核燃料再利用の費用を電気料金に上乗せしようと画策している最中なのです。
さらには、今回の臨界事故でも、「農家400戸が賠償請求/JCOに約7億円/名産品に風評被害」(『日本経済新聞』1999.10.19.夕刊)とあります。その他の実質被害を加え、総合的な観点から、「コスト」を論じ直すべきです。
ついでに、二酸化炭素を発生する石油発電も、串刺しにしましょう。
石油の主な輸入ルートを「シーレーン」とか称して、軍事費の支出の必要性の屁理屈をこねています。湾岸戦争では、中東からの輸入に60%を頼っている日本に、アメリカの鷹派は、「金を出せ!」とわめき、援助など合わせて130億ドルもの税金を、むしり取られました。アメリカ軍への「思いやり予算」も含めて、軍事費を全部、石油による電力の原価に加算してみて下さい。
しかも、原子力発電は、そのものが危険で、石油をめぐる戦争は、さらに危険です。石油に関しては、別の問題もあります。石油産出国の経済の問題です。しかし、それらの国〃々、特にイスラム圏は、石油文明以前には世界の文明の中心でした。むしろ、石油資源が、呪いとなって、石油文明による工業先進国の侵略を受けたのです。世界経済の仕組みを根本から変えることを、今こそ、真剣に考えるべき時なのです。
私個人は、実は、ユーゴ戦争の問題で、今年の夏、ニューヨークで開かれたNATOを裁く独立国際戦争犯罪法廷に参加してきました。打ち上げのパーティで、環境問題に関心を持つ熟年のアメリカ人から、日本ではどういう議論になっているかと、意見を求められました。私は、簡略に言うと、石油文明(Oil civilization)を止めるべきだと述べました。ついでに、相手が2メートル近い大男だったので、あんたらは食い過ぎだ(You eat too much)と言ったところ、相手は腹を抱えて大笑いしました。
この最後の台詞は、別に深く考えて用意して行ったものではありませんが、戦後日本の背の低い日本人の欧米コンプレックスを、根本的に覆す大ヒット、会心作、痛快なる逆転ホーマー、カウンターパンチであります。若い頃のギリギリ165.5センチメートルが、現在163センチメートルにまで寸詰まりした元軍国少年Aとしては、大いに自負しております。
はい、下から見上げて胸を張って、さらに大声で、
「あんたらは食い過ぎだ(You eat too much)!」
以上で:11終り。これで一応の締めとします。「原発に死を!」シリーズへは、下記をクリックして下さい。
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