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3月11日に発生した東日本大震災と原子力発電所事故は、世界のエネルギー政策に大きな影響を与えつつある。特に欧州では反原発の動きが広がり、風力や太陽光など再生可能エネルギーの需要が増える可能性が出てきた。ただ、こうした状況の中で、遠い将来をにらんだ「夢の発電設備」として「レーザー核融合」の研究も進められている。核融合と言っても、原子力ではなく、光を増幅させて強力なレーザー光線を作り、そこで生じるエネルギーを取り出す発電技術だ。核分裂反応を利用する原発よりも安全性が圧倒的に高いとされ、米国のオバマ政権も力を入れている。この分野では日本も負けていない。実は浜松ホトニクス、トヨタ自動車、大阪大学などが次世代技術の開発を急いでいる。
まず、レーザー核融合の仕組みについて説明したい。これは、重水素などで構成する燃料に強力なレーザーを照射して一気に圧縮させ、原子核同士が融合する際に発生するエネルギーを取り出す。技術的に説明するのは難しいが、簡単に言えば、太陽のエネルギーと同じ仕組みだ。それゆえ、「地上に太陽を」を合言葉に、人類未踏のエネルギーの獲得に向け、世界のレーザー研究者たちが研究に取り組んでいる。
米カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所で新しいNIFを説明する研究員=AP
世界的に知られるのが核兵器開発の拠点として知られる米ローレンス・リバモア国立研究所(カリフォルニア州)だ。2009年に、レーザー核融合を研究する新たな施設が加わった。米政府が約4000億円を投じて建設した「国立点火施設(NIF)」だ。オバマ政権も新エネルギー戦略に沿ったものとして、その後も強力に後押ししてきた。
NIFでは12年に計画する「点火」へのカウントダウンが始まっている。192本のレーザービームを直径数ミリの燃料に注ぎ込み、太陽の中心部分と同じように核融合を発生させる。
実現すれば史上初の快挙となる。取り出したエネルギーを熱に変換し、蒸気タービンを回せば発電への道が開けてくる。原発と違って核分裂反応が起きないため、臨界状態になって暴走する危険がないという。レーザーを止めれば核融合の反応もすぐに止まるので、地震に対する安全性も高いとされる。発生する放射線量も微量という。
まさに「究極のエネルギー」と言え、米国では2030年をメドにレーザー核融合炉を商用化するロードマップを描く。ただ、実用化には解決すべき課題も多い。
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