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(回答先: 再生エネ法案を批判 投稿者 蓄電 日時 2011 年 8 月 04 日 08:04:24)
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110406/106293/?P=1
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110406/106293/?P=2
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110406/106293/?P=3
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110406/106293/?P=4
引き締めに走るスペイン政府
国家エネルギー委員会によると、期間内に登録された発電容量は08年12月時点の集計で2934MWにまで拡大した。これは、引き上げ改訂した2010年目標の2.4倍(2004年の244倍)に相当する。実際には期限後の登録も相次いだのでその合計は4500MWを超えていた。07年6月から08年9月までに繰り広げられたこの熱狂は“ゴールドラッシュ”にたとえられた。
買い取り価格はこの間、市場価格の約9〜10倍と異常に高かった。カルサーダ博士の試算では100kWの太陽光発電施設の投資収益率は17%にのぼる。10万ユーロを元手として25年間投資すると500万ユーロとなる程の利回りが保証された投資だったわけである。スペインの30年物国債の利回り5%弱に比べるといかに有利な投資であるかは一目瞭然であった。08年には累計設置容量が一時的にだがドイツを抜いて世界一になった。スペインでの太陽光発電設備の増加は制御不能の状態だった。
このような状況を打開するための新たな政令(RD 1578/2008)が08年9月に公布された。投機的な動きを抑制するため、新規施設に対する買い取り価格を引き下げ(例えば100kw以下の建物設置型についてはそれまで44ユーロセント/kWhから、20kW以下が34ユーロセント/kWh、20kW超が32ユーロセント/kWhになった)、優遇措置を受けられる発電容量に上限を設定した。必然的に太陽光バブルははじけることになった。
以上がカルサーダ論文の概要である(一部、ほかの資料で補足)。太陽光発電での行き過ぎた促進策の結果が明らかにされている。
筆者らが本年2月に行った現地調査と帰国後に入手した資料でその後の状況を若干補足すると、政府は太陽光発電の過熱状況を鎮め、配電会社の赤字増大を防ぐ追加的措置として、10年11月の政令(RD1565/2010)で太陽光の買い取り価格を地上設置型で45%、大規模建物設置型で25%、小規模建物設置型で5%引き下げた。狙いは急増した大型発電所の抑制である。
続いて翌月の10年12月の政令法(RDL 14/2010)では「既設」の発電施設について契約内容の遡及変更を強行した。具体的には、ゴールドラッシュ期間に導入された太陽光発電設備(グラフ1からみてこれまでの発電容量の大部分と考えられる)に対して、11年以降FIT対象となる稼働時間の制限と、その代償としての固定価格買い取り期間の25年から28年への延長である。
買い取り時間に関しては、効率の低い(太陽の移動に合わせて角度を変えない)太陽光発電設備は年間1250時間、高効率型は最高で年間1707時間という具合である。14年以降は地域差を考慮したり、日照条件によっては買い取り時間を引き上げたりする配慮も加えた。しかし、スペインの太陽光発電協会はこの措置に納得せず、訴訟も視野に政府に補償を求める構えを見せている。
政府保証債券で赤字を穴埋め
配電会社は再生可能エネルギーによる電力を卸売り市場価格より高く買い取る義務を負っているが、電力消費量が10kW以下の小規模需要者向けの電力小売価格は自由化後も実質的には規制が残っており、しかも規制対象の割合が高い(*)。このため、買い取り価格の上乗せ分を小売価格に十分に転嫁できず、00年以降、配電会社は赤字がふくらんでいる。
配電会社の累積赤字は太陽光発電の急増とともに雪だるま式に増大し、12年までの見込みを加えると216億ユーロに達し、しかも将来にわたって年間30億ユーロも増え続けることが予想された。政府の政策のツケの一部を電力会社に負担させた結果である。
しかし、これ以上電力会社に赤字を押しつけるのは不可能になり、政府は累積赤字解消と13年以降の単年度赤字ゼロを実現する特別措置をとらざるを得なくなった。
その仕組みは次の通りである。まず特定目的基金であるFADE(電力赤字償還基金)を設立し、電力会社の債権を買い取り、その債権を裏づけ資産とした債券を発行する。債券はスペイン政府の保証を付けて内外の投資家に販売するが、電力会社が支払う金利部分は電力料金値上げで対処する。FADEは市場の動向をにらみつつ、順次、配電会社の累積赤字全額分の債券を発行する予定だ。
スペインの教訓は明白である。あまりに経済合理性から離れた高値の買い取り制度は一見、太陽光発電の促進に役立つように見えるが、最終的には電力料金の大幅引き上げによる国民負担と、それに伴う経済への影響や企業の国際競争力喪失という犠牲を強いることになった。たびたびの政策変更によって政府の信頼性も損なわれた。スペインほどではないが、太陽光のFIT政策の見直しが進むドイツに関しても、国際エネルギー機関(IEA)ではCO2削減の限界費用が1tあたり1000ユーロにもなるとして、「高値のFITは費用効果的ではなく、これ以外の政策の採用」を勧告している。
今後、再生可能エネルギーに関する論議が盛んになることが予想される。その際には単に発電容量や発電量という量的拡大のみを狙うのではなく、経済への影響、エネルギー安全保障、環境効果、雇用促進、技術革新など総合的観点からの検討が求められる。その重要な要素として政策のコストと電力料金への跳ね返り、その結果としての国民負担や国際競争力への影響を十分に加味した冷静な分析評価が不可欠である。
(*)10kW以下の需要家向けについては、供給先を変えない場合には政府が認可する料金(last resort tariff)が適用される。家庭用ではほぼ9割、非家庭用でも3割弱がこの適用を受けている(電力量ベース)
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