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http://eetimes.jp/article/22594
EETIMES JAPAN
2008/11/28
R. Colin Johnson:EE Times、翻訳:松永恵子、編集:EE Times Japan
米University of MichiganのMichael Bernitsas教授を中心とした研究チームは、魚の動きを流体力学的に応用した水力発電装置を開発した。この装置は、水中の渦のエネルギを利用しながら上流に向かって泳ぐ魚の動きにヒントを得て開発された。水流速度に関係なく、穏やかな水流も電力源にできるという。
この装置は、「Vortex Induced Vibrations for Aquatic Clean Energy(水からクリーン・エネルギを生成する渦励振)」の頭文字を取って、「VIVACE(ビバーチェ)」と名付けられた。この装置を利用すると、穏やかな川の流れさえも電力源にできる可能性がある。しかも、ほかのエネルギ源に比べて、発電コストも低く抑えられる。Bernitsas教授は、同技術の商用化を目指し、2004年に米Vortex Hydro Energy社を設立している(参考リンク:VIVACEのコンセプトや詳細を掲載した同社ホームページ)。
水力発電用タービンのように、水力を利用した発電方法では従来、5ノット(時速約9.3km)以上の水流が不可欠だった。しかし、今回開発された発電装置VIVACEは、1ノット(時速約1.6km)程度の穏やかな水流でも発電源になり得るという。Bernitsas教授は、2〜3階建ての建物の高さに相当する発電アレイを水中に設置するだけで、河川付近の10万世帯に電力を供給できると予測している。
さらにBernitsas教授は、流体力学を応用した同発電装置では、1kW/時当たりの発電コストがわずか5.5米セント(約5.3円)と低いことに触れ、コスト面の利点も強調した。
この発電装置は、水中につながれた物体が水流の中で上下に動こうとする現象を利用している。例えば、係留されたボートが水流の速さに合わせて浮いたり、沈んだりしている光景を思い浮かべてほしい。このボートの動きは、水中の渦によって振動が励起される「渦励振」という現象によって生じている。Bernitasas教授は、水流を水平に横切るように複数のシリンダをつり下げて、それらのシリンダが固有共振周波数で上下に動くようにした。
「渦励振は交番変化しており、交番揚力を発生させる。シリンダの動きが水流に影響を与え、(次は反対に)水流がシリンダを動かす。この結果、水流に対して垂直方向に交番揚力が発生する。こうしてシリンダが上下に動くことで、発電が可能になるというわけだ」(同教授)。
Bernitsas教授は以前、デリック(石油掘削用のやぐら)のように、固定されたプラットフォームで発生する渦励振の抑制手法を研究していた。「この研究を通じて、渦励振を抑制するのではなく、反対に増大させれば、発電に利用できるのではないかと気付いた」と同教授は話す。
Bernitsas教授は以来、低周波の振動を増大させる手法の開発に取り組んでおり、現時点で540%まで増大させることに成功しているという。通常、水中に係留された物体が浮き沈みする範囲は、物体の高さの範囲内に限られている。しかし同教授が開発した発電装置では、発電中にシリンダが上下する範囲は、上下それぞれシリンダの高さの2.7倍(上下を合わせれば5.4倍)にまで拡張されているという。
同装置に応用されている技術は、魚が水流に対抗しながら上流に向かう際に、水中の渦のエネルギを利用する泳法を模倣したものである。魚が体を湾曲させると、曲げた側に渦が発生する。この渦が体を前進させる。次にこの渦を放出するとともに、体を逆に湾曲させ、反対側に渦を発生させる。つまり魚は、体の両側面で交互に渦を発生させることで、本来備えている筋力では対抗できないほどの水流の中でも、上流に向かって泳ぐことができるのだ。
ただし建築物の設計では、渦励振を補償しないと、渦励振が激しくなってしまう。最も知られた事例は、1940年に米ワシントン州タコマ市に建造されたつり橋が崩壊したことだろう。このつり橋は、風による振動が続いた結果、ついに崩壊に至ったのである。水は、この効果を増大させる。
Bernitsas教授は、弾性のあるスプリングでシリンダを垂直スロット中につるすことで、この現象を発電に利用したという。こうすることで、シリンダが上下に動くと、発電機が駆動される。この上下動が、魚のように、両サイドに交互に渦を収集したり放出したりする。こうして振動を発電に利用する。
(R. Colin Johnson:EE Times、翻訳:松永恵子、編集:EE Times Japan)
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