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温泉発電の紹介記事(朝日新聞2010年3月8日朝刊) http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/208.html
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201003070322.htmlより引用 温泉発電広がるか 60度でOK、設備も小型 2010年3月8日1時58分 温泉のお湯を使って電気を起こせる「地熱バイナリー発電」をご存じですか。国内の電力会社では九州電力が1基動かしているだけですが、国内の「地熱資源」をフルに生かせば原発8基分もの電力をまかなえるという試算もあります。設備も小型。二酸化炭素(CO2)の排出抑制を担う柱の一つになるかもしれません。 大分県西部、九重連山に囲まれ温泉通に人気の筋湯温泉から数百メートルの坂を上ると、湯気が空を白く染めていた。九州電力の八丁原(はっちょうばる)地熱発電所だ。地熱としては国内最大の出力11万キロワットを誇る。 一角に地熱バイナリー発電設備がある。幅16メートル、奥行き24メートル。コンビニエンスストアくらいの敷地の中に、タービンや発電機などの主要機器がすべて収まる。地下約2千メートルからわき出るセ氏130度の温泉を熱源に使い、出力は2千キロワットだ。余った湯は筋湯温泉にパイプで送っている。 八丁原には、高温高圧の水蒸気でタービンを回す通常の地熱発電設備が2基ある。いまバイナリー発電が使っている温泉も以前は160度あり、通常の地熱発電に利用していたが、温度も噴出圧力も下がり、使えなくなった。そこで04年に、36度強で沸騰するペンタンを気化させて発電する日本初のバイナリーに転用。2年間の試運転を経て、営業運転に入った。 八丁原発電所全体の発電単価は1キロワット時あたり6〜7円前後で、長期間安定運転を続けられれば、他の電源より割安だ。ただ、バイナリーはイスラエル製設備を使っているため、通常の地熱発電より採算は劣る。国内でも三菱重工業などが技術を持っているが、海外向けの大型案件に力を注いでおり、小ぶりの設備には本格参入していない。 八丁原の池田篤発電所長は「海外製だと、維持管理に手間がかかる。競争力を高めるには国内メーカーや国の支援が欲しい」と話す。 九電は鹿児島県霧島市の烏帽子岳地区でも地熱発電所新設のための調査を始め、バイナリーの導入も検討中だ。担当者は「バイナリーなら、既存の温泉井戸で利用可能な範囲が広がる。周辺への影響も考えているので、ぜひ地元にも協力してもらいたい」と話す。 だが、地元では賛成、反対双方の陳情書が市議会に出され、開発は足踏みしている。反対する「霧島温泉を守る会」代表の蔵前壮一さんは「温泉の湯量が減ったら、どうしてくれるのか。バイナリーでも地下の温泉資源を使うことは同じ。温泉は国民の財産として守るべきだ」と話す。 地熱資源の利用や調査のため、温泉井戸を掘ったり、井戸の口径を広げたりする場合は、温泉法に基づく都道府県知事の許可が必要だ。既存の温泉井戸をそのまま転用するなら許可は要らないが、バイナリーを定着させるには、地元の理解が欠かせないだろう。 ■資源推計 原発8基分 昨年6月、経済産業省が有識者を集めて組織した「地熱に関する研究会」が、バイナリー発電に有望な53〜120度の地熱資源が合計833万キロワット分あるとの推計を発表した。現在稼働している地熱発電設備の合計53万キロワットの約16倍、中型の原発約8基分にあたる。通常の地熱発電の有望資源と合わせると1258万キロワットにのぼる。 調査に参加した産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の村岡洋文・地熱資源研究グループ長は「バイナリーは環境への負荷が小さく、開発余地が大きい。国民の理解と政府の支援さえあれば、地熱発電を飛躍的に拡大させるカギになる」と話す。 政府は第1次石油危機後、石油代替エネルギーの利用を進める「サンシャイン計画」を発表。国産エネルギーである地熱の利用も掲げた。しかし、地熱発電の合計出力は90年代後半からほぼ横ばいだ。政府も開発費補助の引き上げや、太陽光と同様に「再生可能エネルギー」として電力会社に買い取りを義務づける制度の導入を検討している。 08年のエネルギー白書によると、電源別の発電単価は1キロワット時あたり原子力4・8〜6・2円、石炭火力5〜6・5円。石油火力10〜17・3円、風力10〜14円、太陽光46円。地熱は新エネルギー・産業技術総合開発機構の試算で14・1円だ。 地熱学会長の江原幸雄・九州大学大学院教授(地球熱システム学)は「1キロワット時あたりの国の補助金は原子力が2円なのに、地熱は1円しかない。『地熱基本法』制定や開発拡大に向けた支援を政府に求めたい」と話す。(渡辺淳基) ◇ 地熱バイナリー発電 50〜60度以上の湯の熱で沸点の低いペンタンやアンモニアなどの物質を気化させ、それでタービンを回して発電する。水とペンタンといった「2系統」の流れを使うのが名前の由来。温泉発電とも呼ばれる。通常の地熱発電は、深さ2キロ前後の井戸を掘り、噴き出す高温(セ氏160度以上)高圧の水蒸気・熱水でタービンを回す。圧力や温度が下がると別の井戸が必要になる。
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