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[かがくアゴラ]燃料電池、新型発電のカギ
金子祥三氏
太陽電池市場で、日本は競争に負けた。二の舞いは避けるべきだ
太陽電池など再生可能エネルギーの導入拡大には、天然ガス火力発電、または石炭ガス化発電を燃料電池と組み合わせた新しい発電システムが必要だと、東京大学生産技術研究所の金子祥三シニア協力員は指摘する。
――新しい発電システムとは。
「天然ガスを燃やしガスタービンで発電、さらに蒸気をつくって蒸気タービンでも発電する2段階の発電方式を天然ガスコンバインドサイクル(複合発電)という。発電効率が52%程度と高い。これに燃料電池を組み合わせたのが、トリプル複合発電だ」
「蒸気で天然ガスを水素と一酸化炭素に分解、これを固体酸化物型燃料電池(SOFC)に燃料として供給し発電する。発電効率は63%程度まで上げられる。天然ガスの代わりに石炭をガス化してもいい。トリプル複合は世界でもまだ実証されていない。カギを握るのがSOFCの量産による低コスト化だ」
――再生エネ拡大に火力が要るのは矛盾にも聞こえます。
「太陽電池も風力発電も出力が変動するためバックアップが必要だ。火力発電か、電力貯蔵システムが要る。二酸化炭素(CO2)排出を抑えるには、バックアップ用の火力はできるだけ高効率でなければならない」
「またSOFCは燃料電池としてだけでなく水の電気分解にも使える利点がある。再生エネの余剰電力を使って水を分解し水素をつくって貯蔵、必要なときにその水素を使って燃料電池で電気をつくれる」
「再生エネの比率が30%を超えたドイツでも、余剰電力で水素やメタンをつくって貯蔵したりパイプラインで運んだりする構想がある」
――開発は具体化しているのですか。
「経済産業省がつくった次世代火力発電のロードマップではトリプル複合発電の実用化時期を2025年ころとしている。しかし自由化で発電事業の競争が厳しくなると、リスクが大きい新技術を民間の力だけで実現するのは容易ではない」
――難しいのはSOFCですか。
「電池1本で200ワット程度が出る製品があるが、50万キロワットの発電所には250万本が要る計算だ。工場を建てて量産化する態勢を整えないといけない。太陽電池は日本が技術で先行したが、量産化で中国などに負けた。燃料電池で同じことを繰り返すべきではない」
「SOFCだけが課題ではないが、温暖化対策税などを財源とした支援策を政府が講じないと、美しいロードマップをつくっても実現しない」
(編集委員 滝順一)
[日経新聞8月21日朝刊P.15]
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