「新電力」初の経営破綻 日本ロジテック破産手続きへ 4月15日 20時37分 「新電力」初の経営破綻 日本ロジテック破産手続きへ 1200を超える全国の企業や自治体に電力の販売を手がけていた「日本ロジテック協同組合」は、低価格での電力販売によって収益が悪化し資金繰りに行き詰まったとして、15日、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けました。大手の電力会社以外で電力供給を行う「新電力」が経営破綻したのは全国で初めてとなります。 東京・中央区に本所を置く「日本ロジテック協同組合」は、平成22年に新たに電力小売り事業に参入したいわゆる新電力で、1200を超える全国の企業や自治体などに電力を販売してきましたが、業績の悪化を理由に先月末で電力事業から撤退しています。組合では資金繰りが悪化し、経営再建のめどが立たないことから15日、東京地方裁判所に破産を申し立て、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けました。組合の発表では負債総額はおよそ163億円に上るということです。 経済産業省によりますと、大手の電力会社以外で法人向けに電力事業を行うことが認められた2000年以降、電力供給を行う新電力が経営破綻したのは全国で初めてだということです。 関係者によりますと、この会社はみずからは発電所を持たずに大手電力会社や工場などから電力を一括して購入し、割安な料金で販売していました。しかし、ライバル企業との価格競争が激しくなり顧客を奪われたほか、取引先に約束した電力が供給できずに、大手電力会社から緊急で供給してもらった分のペナルティー費用が膨らみ、業績が悪化したということです。 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160415/k10010481761000.html 新電力大手「経営破綻」のインパクトは大きい 日本ロジテックが資金繰りに窮して店じまい 岡田 広行 :東洋経済 記者 2016年3月21日
電力自由化が進むが、契約は慎重に(写真:L-HOPE/PIXTA) 電力販売ビジネスで業容を急拡大してきた企業が近く、破産申し立てする見通しだ。問題の企業は「日本ロジテック協同組合」(東京・中央区、軍司昭一郎代表理事)。同社の幹部が東洋経済の取材に対し、破産申し立ての準備をしている事実を認めた。 同社は「新電力」と呼ばれる特定規模電気事業者(PPS)の中で第6位(販売電力量ベース、2014年度)。「組合員」になってもらった企業や地方自治体などを顧客にして「電力共同購買」の仕組みにより、設立からわずか7年余りで売上高を555億円(2015年3月期)にまで伸ばしてきたが、資金繰りが行き詰まった。同社幹部によれば、2月末時点の未払い金は約80億円にのぼる(金融機関に対する債務を除く)というが、債務総額はさらに膨らむ可能性が高い。 組合員に手数料を払って顧客拡大 日本ロジテックが入居するビル(東京・中央区) 下記は同社の井上博文財務部長との一問一答である(3月18日付け)。
――現状はどうなっているのか。 状況が混とんとしている。忙しすぎて。 ――破産申立の準備をしているのか。 その理解で正しい。 ――なぜこのようなことになったのか。 一気にインバランスが拡大して、それを埋めきれなかった。 (注)インバランスとは、調達電力量と供給電力量の差。調達電力量が不足した場合に、送配電を担う大手電力会社が穴埋めすることになり、インバランス料金(ペナルティ)が課される。 ――つまり、電力の調達がうまくいかなかったのか。 そういうことだ。需要家を取捨選択できればよかったのだが、組合なのでお客さんを切ることができない。需要家イコール組合員イコール株主なので、あなたの契約は儲からないからやめますというわけにいかない。 ――顧客数はどのくらいの数になるのか。 一般企業(組合員)が約640、自治体や公的機関が約630になる。自治体は賛助会員で、名前を挙げるとさいたま市や川崎市、仙台地方裁判所や松山地方裁判所などだ。 ――電気を供給している拠点数はどのくらいあるのか。 役所からの問い合わせに答えなければいけないので資料を作成中だ。供給拠点数、つまりメーター数は前期(15年3月期末)までしか集計できていないが、その時点では4057カ所。ただし心もとない。今は9000くらいあるはず。正確なところは集計中だ。 ――なぜ一気に業容を拡大させたのか。 組合員からの紹介で増えてしまった。専門の営業マンもいるが……。 ――組合員となった企業からの紹介に一定の手数料を払っていた、ということか。 そういうことだ。 ――自治体との契約も多い。 自治体向けの電力供給は自社で入札によって拡大してきた。採算は合っていたり、合わなかったりさまざまだ。競争状況によって異なる。 ――電力会社や自治体への未払い金はいくらあるのか。 どの時点によるかで一概に言えないが、2月末時点では約80億円(金融機関への債務を除く)。大きく(水力発電所やゴミ発電など電力購入先の)自治体向けが約40億円、託送料(送配電料金)を支払わなければならない電力会社向けが約40億円といった具合だ。 ※ ※ ※ このようなやりとりの後、「多忙」を理由に電話が切れてしまったため、これ以上の質問ができなかった。 株式市場でも注意すべき企業とみなされる もともと、中国やネパール、ベトナムからの外国人技能実習生の受け入れなどをビジネスにしてきた日本ロジテックが電力販売に参入したのは2009年。その後、自治体が持つ水力発電所やゴミ焼却工場から電力を購入してきたほか、日本卸電力取引所からも調達してきた。それらの電力を組合員となった企業や自治体などに販売。その差額を「もうけ」としてきた。一方、販売先の企業などに対しては「年間1〜8%程度の電気料金削減が可能」などとPRしてきた。だが、業界では「そもそも成り立つ仕組みなのか」(電力業界関係者)と疑問を持たれてきた。 かつて有価証券報告書虚偽記載で課徴金納付命令を受けたリミックスポイントや、ゴーイングコンサーン注記が付けられているクレアホールディングスの子会社であるクレアとの提携(いずれも現在は解消)を通じて業容の拡大を図ろうとしたことから、株式市場でも注意すべき企業とみなされてきた。また、中国人実習生からの賃金ピンハネや銚子信用金庫の不正融資事件で逮捕された人物とのつながりも取り沙汰されている。 同社の経営不安は昨年5月に再生可能エネルギー発電促進賦課金を期限までに納付しなかったことを理由に経済産業省によって社名を公表されたことがきっかけで表面化した。 だが、その後も規模を拡大しており、今年2月24日に、4月からの電力小売り販売に必要な「小売電気事業者」の登録申請を取り下げたことで再燃。さらに3月11日には再び、再生エネルギー賦課金の未納が経産省によって再び公表されたうえ、同18日には日本卸電力取引所が代金未払いを理由に除名処分にした。 東京電力をはじめとする大手電力会社への託送料(送配電線利用料)の未払いもかさんでいることが判明した。 多くの自治体など公的機関が未回収金抱える 日本ロジテックに電気を供給していた自治体では、新潟県の10億9100万円を筆頭に、横浜市や名古屋市など20近くが未回収金を抱えている。また、同社の電力販売先の中には、自治体のほかに、国土交通省や財務省などの中央省庁、地方裁判所や自衛隊、海上保安庁、警察、刑務所などさまざまな公的機関が顔をそろえている。 託送契約を結んでいた大手電力会社は現時点で電力の供給を止めることはないため、電力を購入していた最終ユーザーには停電のリスクはない。ただ、今後は契約が宙に浮いてしまうために、「別の電気事業者と電力の供給契約を結ぶように(企業や公的機関に)働きかけている」(東京電力)という。 そもそも、日本ロジテックが踏み倒した再生エネルギー賦課金は、電気を使用する企業や自治体が広く負担しているものだ。その意味でも、今回の被害の広がりは計り知れず、真相究明が待たれる。 http://toyokeizai.net/articles/-/110358
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