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欧州2位の産油国ノルウェー、低炭素へ動く
石油大手が洋上風力 電動車両の比率2割
欧州でロシアに次ぐ産油量を誇るノルウェーで企業が低炭素社会に向けた取り組みを主導しようとしている。石油最大手スタトイルは洋上風力発電を拡大し欧州域外にも展開。同国の電気自動車(EV)など電動車両の比率は2割に達する。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を受け、世界に広がる商機をどうとらえていくのか、動きを追った。
ノルウェー南西部カルム島沖合で北海の強風を受け直径約82メートルの羽根が回転を続ける。水面下100メートルのバラスト水を入れた構造物で船のようにバランスを保つ、浮体式の洋上風力発電設備だ。
「我々は洋上鉱区の操業の経験が豊富。洋上風力でも工期や安全操業の経験が生かせる」。昨年5月新設したニューエナジー部門のシニアバイスプレジデント、ステーフェン・ブル氏は語る。
30カ国以上で操業する同社の2015年の原油・天然ガス生産量は日量204万6千バレル(原油換算)と欧米石油メジャーに迫る。だがホームグラウンドの北海で近年、脱石油の象徴、風力発電で存在感を増す。これまで洋上風力に数百億円投資。総出力は10万キロワット超で石油会社で唯一、欧州大手の一角に食い込む。
水深20〜50メートルの遠浅の海が多い北海やバルト海では、海底に風車の基礎を固定する「着床式」が盛んだ。スタトイルは浮体式で安定発電できることを確認。17年末に英スコットランド沖で約20億クローネ(約270億円)を投じ浮体式を建設し、約2万世帯の電力をまかなう計画だ。
ブル氏は「30年に洋上風力の2割は浮体式になりうる。コストは4〜5割減らせる」と指摘。目線は水深の深い海が広がる欧州域外に向く。福島県沖で昨年、浮体式の実証が始まった日本では日立造船と事業化を探る。「原油安でも地球温暖化のトレンドは変わらず浮体式は他社が参入しにくい。日本や米国、中国に期待している」という。
ノルウェーにはEV大国の顔もある。15年の乗用車販売(約15万台)に占めるEVの比率は17%、プラグインハイブリッド車(PHV)を含めると20%を超えた。
「15年の販売結果に独フォルクスワーゲン(VW)関係者から驚きの声が上がりましたよ」。ノルウェーEV協会のペテル・ホーゲネラン氏はこう語る。VWのEV「eゴルフ」は日産自動車の「リーフ」を抜きEV販売の首位に立ち、ガソリン、ディーゼル車の「ゴルフ」も上回ったのだ。
背景にはノルウェー政府の手厚いEV補助・優遇がある。購入時の25%の付加価値税減免や毎年の道路税の軽減、公共駐車場の無料駐車などだ。
オスロ市内のタクシーは20年までに二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにしなくてはならない。高級EV、米テスラ・モーターズのタクシーも登場。運転手のトゥルム・サンメさんは「市内に5台あり顧客の反応は上々だ。冬は寒さで航続距離が半減するが充電場所は車載装置で検索できる。全く問題ない」と語る。
同国の消費者アンケート(複数回答)によるとEVを持たない層の不安は航続距離(74%)、充電設備へのアクセス(62%)、充電時間(51%)の順だった。だが利用者はいずれも20%前後に下がる。ノルウェーは発電費用の低い水力発電が多く欧州で最も電気料金が安い国の一つ。EVのメリットを受けやすい。
ただ国内EVは20年までに25万台に増えるとの試算もある半面、7千カ所弱で今も不足気味な充電設備の不安は残る。政府はいずれ優遇措置を見直す方針で「伸びが鈍る可能性もある」(EV協会)という。
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スタトイルとは
スタトイル 1972年にノルウェー国営石油会社として発足し、北海で原油や天然ガスの生産を拡大。政府が株式の67%を握るが、株式を上場し経営は独立している。直近の原油・天然ガス生産量、時価総額(約4290億クローネ=約5兆7千億円)は欧米石油大手では仏トタルや英BPに次ぐ。15年12月期決算は原油安が響き、売上高が前の期比23%減の4653億クローネ、最終損益は375億クローネの赤字(前の期は219億クローネの黒字)だった。
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天然ガスシフトも加速 政府と企業、思惑が一致
ノルウェーは洋上風力発電、電気自動車に加え、既存のエネルギー間の転換を通じた低炭素シフトの旗振り役でもある。主役は石炭に比べCO2排出量が4〜5割少ない天然ガスだ。
スタトイルは近年、西欧で発電燃料のガスシフトなどでシェア拡大に動く。BP統計によるとノルウェーの2014年の天然ガス生産量は1088億立方メートルで世界7位。生産減が続く英国と比べ安定している。
ウクライナ危機で天然ガスをロシアに頼るリスクが改めて顕在化。西欧でロシア・ガスプロムに次ぐ約2割のシェアを持つスタトイルには商機だ。同社幹部は2月中旬「ガスプロムとシェア争いをするつもりはない。ただ信頼できる取引は担保する」とけん制した。
世界最大級の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金は昨年、石炭掘削関連や石炭火力依存度が高い電力会社への投資から手を引くと決めた。低炭素シフト推進が理由でスタトイルを後押しする。ノルウェー企業の低炭素戦略は政府の思惑と表裏一体の面を持つ。
オスロ=加藤貴行
[日経新聞3月8日朝刊P.6]
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