http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/1635.html
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※関連参照投稿
「発送電の分離 改正案が衆院本会議を通過：本旨は料金の自由化、電力会社の利益のため大企業は安く一般家庭は高くなるという話」
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「“旧電力”９社で発電総量の９６．５％シェア：その自由化が電力会社に対する“勝手気まま優遇政策”になると理解されぬ日本」
http://www.asyura2.com/12/senkyo141/msg/816.html
「「電力自由化」と電力供給活動の特殊性：「電力自由化」は電力会社の勝手気ままな利益追求を許しかねない政策」
http://www.asyura2.com/12/senkyo142/msg/113.html
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［迫真］攻防 電力自由化
（１）東京で暴れてくれ
10月31日、東京都練馬区にある東京ガスグループの販売店。暖房機器などの需要喚起を狙う年間最大のイベント「ガス展」が開かれた。
来場者向けに用意したアンケート用紙に今年、新しい質問が加わった。東ガスが今最も知りたいこと。それぞれの家庭の電気使用量だ。用紙に記入を始めた70歳代の男性に店員がすり寄る。
「電気料金が月１万円とは高いですね。当社も電気を売りますので来年１月、詳細をご案内します」。まだ料金すら公表していない家庭向け電力を熱心に売り込む。
「今年はガス展というより電気展だ」。各地のガス展に足を運び、現場を鼓舞する東ガス社長の広瀬道明（65）。視線は冬商戦の先を見つめる。
2016年４月の電力小売り全面自由化によって、長らく規制に守られてきた家庭用電力の大手独占が崩れる。電力に続いて、17年には都市ガスも同じ道を歩む。これまでは東京電力との正面衝突を避けてきた東ガス。広瀬は「できれば東電とは戦いたくなかったが、そうもいかない」と覚悟を決めた。
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電力自由化の議論が一気に進んだきっかけは東日本大震災。それまで抵抗勢力だった東電が福島第１原子力発電所事故で財務面の危機に陥り、実質国有化された。国は自由化の旗を振り、東電を頂点とする大手電力10社体制に切り込む。来春には10社が独占してきた約８兆円の家庭向け電力が開放される。
「早く100人体制に増やさなければ」。関西電力子会社、関電エネルギーソリューション（大阪市）の社長、白井良平（62）はまだゆとりがある東京・京橋のオフィスを見回す。
人員増強に備え、４月に移転したこのオフィスには現在、関西で鍛えられた営業部門の精鋭約30人が陣取る。白井は毎週のように上京し、関電東京支社との連携による首都圏の攻略作戦を練る。「関電本体に構わず、東京で好きなように暴れ回ってくれ」。関電社長の八木誠（66）はかつてなら絶対に口にしなかった檄（げき）を飛ばす。
電力小売りの全面自由化で開放される家庭用などの小口市場。東電はその35％に当たる２兆８千億円を独占してきた。首都圏の巨大市場を狙うのは東ガスや関電だけではない。楽天は丸紅と組んで電力参入を表明し、ＫＤＤＩもＪＸ日鉱日石エネルギーとの連携を模索する。早くも「東電包囲網」が広がっている。
すでに自由化されている大口電力では顧客の争奪戦が過熱している。家電量販店の激戦区、東京都新宿区にあるヤマダ電機の旗艦店「ＬＡＢＩ新宿西口館」に電気を供給するのは関電だ。
ヤマダ電機は社長の山田昇（72）が常々、担当者に「電力大手の動きを知っているか。電気代削減を検討しろ」と指示するほどコスト削減にうるさい。関電エネルギーソリューションは新宿西口館を含む東京都、千葉県の４店で東電からの契約切り替えを勝ち取った。
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「新電力の発電所はいつから、どれくらい稼働するのか」
「営業部隊の戦力はどうか」
東電が社内でひそかに進めてきた新たに出現するライバルの分析。結果はいま東電が売っている電力の２割が奪われるという厳しいものだった。巨大市場に安住してきた東電も変わった。
10月14日、東電本社10階の応接室。常務執行役の小早川智明（52）はＬＰガス大手、ＴＯＫＡＩホールディングス社長の鴇田勝彦（70）と固い握手を交わした。「電気やガスなどのセット販売で顧客をひき付けたい」。新電力に対抗するためなら、他社と組むこともいとわない。
６月に小売部門のトップに就いた小早川は工場や大型店向けの大口電力の営業を一貫して担当してきた。社長の広瀬直己（62）が小早川を起用したのは東電社内では数少ない競争の現場でもまれた経験を持つからだ。
８月18日の事業説明会で広瀬が打ち出したメッセージ「挑戦するエナジー。」。そこには「東電を変えないと生き残れない」という強い危機感がにじむ。既得権益が失われる自由化の時代を生き残るため東電も必死になっている。（敬称略）
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電力小売り全面自由化で大手独占が崩れた先にはどんな世界が広がるのか。競争の現場を追う。
［日経新聞１１月１０日朝刊Ｐ．２］
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（２） 主婦を味方につけろ
新電力のアイ・グリッド・ソリューションズ（東京・新宿）で顧客獲得を担う本部長の秋田智一（38）は11月６日、京都市にいた。市内に11店を展開するスーパー、なかむらの本部。各店の店長や営業担当者に「卵が５パック買えるポイントが毎月たまると具体的にＰＲすれば主婦の節約心をくすぐりますよ」と語りかける。
来春の全面自由化に向け、携帯電話会社などが電力小売り参入に名乗りを上げる。ライバルとの違いをどう打ち出すか。研究を重ねてきた秋田が狙うのが「チラシを片手にスーパーの安い商品を買い求める主婦」だ。
主婦を味方にするため、独自に開発したポイント制度「スマ電」。電力料金に応じて付与するポイントはスーパーの買い物に使える。電力の切り替えには氏名や自宅住所などを申込用紙に記入してもらう手間がかかる。「ポイント集めを楽しむ主婦なら節約につながる手間は惜しまない」と秋田はみる。
なかむらのほかにも秋田はいちやまマート（山梨県中央市）やカノー（大阪市）など全国の地場スーパーを行脚。これまでに15社で合計約600店という「地場スーパー連合」をつくり上げた。初年度の契約目標は12万世帯。手帳の予定欄は年末までスーパーの担当者との打ち合わせでびっしりと埋まる。
電力料金比較サイトを運営するエネチェンジ（東京・墨田）には毎日100件以上の電話がかかってくる。大半は「電力の切り替え方法を教えて」という主婦だ。社長の有田一平（33）は「小売り自由化まではまだ半年近くあるのに主婦の関心は想像以上に高い」。年明けには電話対応の要員を５倍に増やす。
福岡市にあるマンション「プライムメゾン照葉パティオスタイル」。ＣＡＴＶ最大手のジュピターテレコムはここで来春から本格展開するサービスを初めて事業化した。テレビ放送、インターネット接続、電力供給に４つ目のサービスとして加えたのは通信販売。各家庭に配ったタブレット端末からは有機栽培のニンジンや黒毛和牛の切り落としなどが注文できる。
現状はマンション１棟といった大口契約限定。このサービスが来春の自由化以降は戸建て住宅でも利用できる。「毎日の生活で主婦が求めるサービスを丸ごと提供する」と話す本部長の高橋邦昌（45）のもとには不動産開発会社などから問い合わせが相次ぐ。競争軸は料金だけではなくなっている。（敬称略）
［日経新聞１１月１１日朝刊Ｐ．２］
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（３） 競争の波「空白地」も
10月28日、西部ガスが開いた2015年４〜９月期の決算発表記者会見。中間期で過去最高の純利益を上げたにもかかわらず、社長の酒見俊夫（62）は表情が曇りがちだった。「2017年のガス小売り全面自由化に向けた前哨戦」と電力小売り参入を表明したものの、先行きを見通すことができないためだ。
新電力から売電の辞退が通知されるケースも
東京電力の福島第１原子力発電所事故を受け、稼働を停止していた全国の原発。九州電力管内では10月までに川内原発（鹿児島県）が稼働を再開し、玄海原発（佐賀県）でも再稼働の準備が進む。九電の家庭向け電力料金は全国の電力大手で下から２番目。発電コストが安い原発の再稼働が進めば、「九電に勝てる電気料金を打ち出すのは難しい」と酒見はみる。
西部ガスは出力40万キロワット以上の火力発電所建設を検討している。記者会見で見通しを問われた酒見は「今年度中に正式に決めないと間に合わない」と厳しい顔を見せる。
「沖縄に来てくれて、とてもうれしい」。10月14日、那覇市を訪れた新電力、イーレックス副社長の本名均（67）は地元の中小企業経営者からこんな言葉を掛けられた。来春の沖縄県内での電力小売り開始に向けて、本名は地元のニーズをくみ取る市場調査を進めている。
沖縄電力の料金水準は全国で最も高い。にもかかわらず、自由化済みの大口電力で小売りを手掛ける新電力はゼロ。本州や九州とつながる電力系統がないため、販売する電力そのものの調達が難しいからだ。
市場調査と合わせ、地元の工場などから自家発電で余った電力を買い取る交渉も担う本名。「思い切って自前で発電所を建設するには採算が見極めきれない。電源を確保できるかどうかが勝負になる」。そのハードルの高さを改めて痛感している。
北海道電力の２度の値上げが企業や家庭の負担となっている北海道。60ほどの中小工場が立ち並ぶ札幌手稲工業団地（札幌市）の協同組合専務理事、水谷勝慶（65）は新電力最大手のエネットに電力供給の見積もりを依頼した。答えは「残念ながら辞退させていただかざるを得ません」とつれなかった。理由は沖縄と同様だ。北海道と本州を結ぶ送電線は細く、需要をまかなう電力の調達が難しい。
これまで電力小売りを縛ってきた規制が来春にはなくなる。しかし、自由化による競争の波が全国津々浦々にまで届くとは限らない。
（敬称略）
［日経新聞１１月１２日朝刊Ｐ．２］
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（４）「魂込める」
「自由化に魂を入れる詳細設計に全力を尽くす」。資源エネルギー庁の電力・ガス事業部長、多田明弘（52）は10月27日、東京・霞が関にある経済産業省の大会議室で開かれた審議会で熱弁を振るった。５カ月後に迫った電力小売りの全面自由化を前に、参入を計画する通信会社などから約300人の関係者が詰めかけ、市場環境の整備に向けた議論に熱心に耳を傾けた。
政府が一連の電力改革の総仕上げとなる改正電気事業法を閣議決定したのは３月３日。「エネルギーをどこから買うか、消費者が選ぶ時代になる」。経産省が20年以上の宿願としてきた電力自由化の道筋を固めたことに当時の経産相、宮沢洋一（65）は高揚感を隠せなかった。
だが制度をつくれば、うまく回るわけではない。経産省が創設に注力した再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度も、認定だけ得て発電しない事業者が相次ぐなど社会問題化した。
「ご心配をおかけして、申し訳ございません」。10月19日、東京・内幸町の東京電力本店にある中央給電指令所。経産省傘下で電力市場の“番人”を務める電力取引監視等委員会の八田達夫委員長（72）に対し、広瀬直己社長（62）は頭を下げた。家庭が電気の購入先を変更する際に必要な基幹システムの開発が難航し、2016年４月に開始予定の全面自由化が遅れる可能性すらあるためだ。
東電は他の電力大手に先駆けて16年４月から会社を分割するため、とりわけ開発が難しいという。「必要なサービスを提供できないリスクがある」。副社長の山口博（64）は懸念する。「出だしからけちがつく。間に合わなければ社員が手動で対応を」。自由化の旗を振る経産省も気が気でない。
自由化で先行した欧米も必ずしも国が期待したように競争が進んだわけではない。英国では1999年に小売りを全面自由化してから13年までに電気料金は約２倍に上昇した。大手電力が卸電力の価格を操作するなどして新規参入を妨げ、市場競争が働かなかったとされる。
大手電力が地域ごとに１社ずつ電気事業を担う独占体制が60年以上続いた日本。自由化で本当に消費者の利益になる料金、サービスが実現するのか。歴史的な転換点を控え、暗中模索が続いている。
（敬称略）
西岡貴司、国司田拓児、宇野沢晋一郎、榊原健、鈴木大祐、小野沢健一、栗本優、大本幸宏、中戸川誠、志賀優一が担当しました。
［日経新聞１１月１３日朝刊Ｐ．２］
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