2. 2015年11月02日 15:23:43
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捨てた「下水熱」実は“宝の山” 1500万世帯の冷暖房エネルギーに相当 - SankeiBiz(サンケイビズ) http://www.sankeibiz.jp/business/news/151017/bsc1510171712001-n1.htm 地中を流れる下水の熱を回収し、冷暖房や給湯に利用する研究が進んでいる。もともとは流れるまま捨てられていた「下水熱」は、全国的に活用すると1500万世帯分の冷暖房のエネルギーに相当するとして注目されだした。下水処理施設で導入されることが多かったが、最近は広く下水管から熱を回収する技術の開発が進んでいる。滋賀県では、大規模工場の蒸気ボイラーに給湯する共同研究も始まるなど、地産地消の新エネとして普及する動きが加速している。 一石二鳥 千葉市美浜区の幕張新都心ハイテク・ビジネス地区、横浜市港北区の日産スタジアム、東京都港区のソニーシティ(ソニー本社)…。下水処理施設の近くにあるこれらの施設は、既に下水熱を利用した冷暖房システムが導入されている。 下水は、気温の影響を受けず、冬は温かく夏は冷たいのが特徴で、この未利用の熱に着目したのが下水熱利用の仕組みだ。空気や水中から熱をかき集めて大きな熱エネルギーに凝縮したり、逆に熱を拡散する技術「ヒートポンプ」を活用する。暖房や給湯は、熱を凝縮して温度を上げ、冷房はヒートポンプで熱を拡散させることで温度を下げる。 全国の下水を使った場合には、1500万世帯分の冷暖房のエネルギーになるとされる。これまでは捨てていたエネルギーを有効活用することから、省エネと温暖化ガス削減の一石二鳥の効果が期待される。 国土交通省も下水熱利用の普及を後押しする。平成24年に下水熱利用推進協議会を設け、官民の情報交換を活発化させるとともに、今年は導入に向けたマニュアルを整備した。同省下水道企画課は「下水熱は下水道が整備された都市にもとからあるエネルギー。さまざまな施設で活用できる」と説明する。 下水管から熱を回収 これまでの導入例では、下水処理施設から処理水をヒートポンプに送って使用することが多い。しかし、これでは下水処理施設の付近でしか下水熱の利用ができないという制限がある。これを克服し、全国1500万世帯分の冷暖房エネルギーを有効活用するため、下水処理施設以外でも広く整備された下水管から熱を取り出し、ヒートポンプに送り込む技術開発も進む。 平成24年度には、国土交通省が下水道革新的技術実証事業として共同研究を実施。大阪市と積水化学工業、東亜グラウト工業(東京)が参加し、大阪市内の下水処理場内の下水管に熱交換機を設置、取り出した熱をヒートポンプで熱エネルギーにして市下水道科学館(同市此花区)の空調への活用を検証した。 事業には、積水化学工業などが開発した「らせん方式」の熱交換機の性能が試された。太いコイルのような形状をした樹脂を下水管の内壁にらせん状に貼り付け、老朽化した下水管をリニューアルする工法を応用した。樹脂に熱交換機の管を埋め込んだ状態にしており、下水管のリニューアルと同時に熱の回収を可能にしたのだ。 このらせん方式の熱交換機は25年度、仙台市の実証事業でも採用された。食品スーパーの給湯にも活用され、1日平均4600リットルのお湯を供給し、従来比で年3割のコスト削減を実現した。 さらに今年7月には改正下水道法が施行し、自治体など下水道運営者に下水管の使用を認めてもらうだけで、民間業者が熱交換機の設置が可能になった。下水管からの下水熱を利用しやすい環境は整いつつある。 エネルギーの柱へ さらに滋賀県は、処理施設の未整備の地域から下水を県の施設に持ってくるための大型の「流域下水管」に着目した。この下水管は直径最大4メートルで、下水の流量も多いため、通常の下水管より効率的に熱の回収ができると想定し、システム開発に乗り出した。 共同で研究する企業を募集したところ、関西電力や積水化学工業などが応じ今年9月に研究に着手した。大量の熱の回収が見込めるだけに、オフィスビルや公共施設などの空調・給湯など業務用利用ではなく、大規模な工場での活用を目指す。工場の蒸気ボイラーに使う湯を、あらかじめ下水熱利用のヒートポンプで温めておき、燃料消費を抑える試みだ。 同県下水道課は「まだまだ認知度が低い下水熱だが、共同研究を通じて省エネ効果などを示していくことで利用を進めたい。将来は県のエネルギー政策の柱の1つにしたい」と期待している。 |