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エネルギー安保の新時代、太平洋島嶼国から水素輸入へ
2015年5月20日(水) 坂田 亮太郎
5月22日と23日、福島県いわき市で「第7回太平洋・島サミット(PALM7)」が開催される。太平洋・島サミットは、ミクロネシア・メラネシア・ポリネシアの国々からなる太平洋島嶼国と日本の首脳が一堂に集まり、地域が直面する様々な問題について意見を交換する。太平洋の島嶼国はどこも経済規模は大きいわけではないが、外交的には重要な国々ばかりだ。歴史的に親日的であり、これまで国際社会で日本の立場を支持してきた。
このPALM7に先立ち、21日には太平洋島嶼国の首脳らに対して日本側からある提案が行われる。それが、日本へ水素を輸出することを前提にした経済協力開発だ。PALM首脳らにプレゼンテーションするのは衆議院議員の福田峰之氏。自由民主党の「FCVを中心とした水素社会実現を促進する研究会」で事務局長を務め、日本の水素関連施策の立案に関与してきたキーパーソンである。
なぜ太平洋島嶼国から水素を持ってくるのか。そして日本にどんなメリットをもたらすのか。プロジェクトの公表を前に、福田議員に要点を聞いた。
(聞き手は坂田 亮太郎)
太平洋・島サミットについて詳しくはこちら
最近、水素に関する話題が増えてきたとは言え、太平洋の島嶼国から水素を持ってくるという構想には驚きました。
福田:日本では昨年末、トヨタ自動車から水素によって走行する燃料電池車(FCV)が発売されたのはご存じの通りです。日本の水素技術は世界でも最先端であり、既に太陽光や風力など自然エネルギーから水素を製造する技術は実用化段階にあります。そして、水素を安全かつ大量に輸送する技術の開発も着実に進んでいます。
福田峰之(ふくだ・みねゆき)氏
衆議院議員。1964年4月生まれ、立教大学社会学部卒業。88年衆議院議員亀井善之氏(元運輸相・農相)秘書、99年横浜市会議員初当選。2005年、2012年、2014年の衆議院議員選挙で当選。2015年より内閣府大臣補佐官就任。自由民主党では「FCVを中心とした水素社会実現を促進する研究会」(会長は小池百合子氏)の事務局長のほか、組織運動本部遊説局長、IT特命委員会事務局長、知的財産戦略調査会コンテンツ委員会事務局長などを務める(写真:的野 弘路、以下同)
こうした要素技術を組み合わせれば、太平洋の島々から水素を輸出して、日本に持ってくることは十分に実現可能なスキームなのです。
具体的に申し上げましょう。南の島ですから日本よりも日射量が多いので、太陽光発電に向いています。あるいは、騒音の問題で設置する場所選びが難しい風力発電でも、住んでいる人の少ない島の端などなら設置しやすいと言えるでしょう。こうしたクリーンなエネルギーで発電した電気のうち、余った電気を水素に変換して貯めておくことができます。
その水素をマイナス253度まで冷やして液化水素にすれば体積は800分の1にまで圧縮することができます。それをLNG(液化天然ガス)のように専用タンカーに積んで、日本へ向けて運搬すればいいのです。確かに水素を液化したり、運んだりするにはエネルギーが必要ですが、それは再生エネルギーで発電した電気を使えばいいのです。環境に新しい負荷をかけるわけではありません。
途上国もお金だけ貰っても意味がない
太平洋島嶼国はメラネシア(パプアニューギニア独立国、ソロモン諸島、フィジー共和国、バヌアツ共和国)、ミクロネシア(キリバス共和国、ミクロネシア連邦、パラオ共和国、マーシャル諸島共和国、ナウル共和国)、ポリネシア(サモア独立国、トンガ王国、クック諸島、ツバル、ニウエ)の3つの地域で構成されている。なお、ニウエは国ではなく地域(地図は外務省提供)
相手国は乗ってくるでしょうか。
福田:それは分かりません。各国の大統領に向かって、水素社会実現を促進する研究会を代表して、私がプレゼンテーションをします。夢のあるプロジェクトですから、お互い知恵を出し合って、まずは実証実験から始めませんかと働きかけるつもりです。
今回、特にアピールしたいのは相手国に産業と雇用を生み出すスキームであるということです。
従来の資源調達を考えてみて下さい。資源を輸出している国の多くは発展途上国で、日本を含めた先進国に有限の化石資源を切り売りすることで外貨を稼いできました。それによって資源国は確かに豊かになりましたが、資源が尽きればそれで終わりです。化石燃料を燃やした結果、地球の温暖化が進んでしまったことは、もはや説明する必要もないでしょう。
その点、我々の提案はサステイナブル(持続可能)なスキームだと自負しています。先ほども申し上げた通り、水素を生み出す元は太陽光や風力という無尽蔵なエネルギーです。気候条件が恵まれているという島嶼国の持つポテンシャルを生かして水素を生みだし、それをお金に換えるのです。水素の製造施設や液化施設では働く人が必要です。つまり、雇用も安定的に生み出すことができます。
外交のあり方はいろいろあっていいのですが、相手国とずっと付き合っていける関係作りが大事です。日本は水素に関する技術を提供し、その見返りに成果物である水素を手に入れることができる。相手国に産業を興して、しかも日本が買い手になる。長期間に渡って日本と相手国がウィン・ウィンの関係を構築できると考えています。
まだ試算段階ですが、水素を売ったお金で設備投資の費用が賄えるようにするのが理想ですよね。もはや、途上国にとってお金だけ貰っても意味があるとは思えません。
日本のエネルギー安全保障を考えるうえで、どのようなメリットがあると言えますか。
福田:まず、「場所を変える」というメリットがあるでしょう。日本では石油のほぼ全量を海外から輸入していますが、中東依存度は未だに8割以上です。資源を調達するエリアを、比較的安定している太平洋の島嶼国に広げることができれば、地政学的にもメリットは大きいと言えるでしょう。
もう1つは「モノを変える」というメリットです。資源エネルギーとして、日本は原油だけでなく石炭やLNGなどに幅を広げてきましたが、そこにCO2フリーの水素も加える。これは地球温暖化対策を考える上でも重要ですし、調達交渉でも有利に働きますよね。日本としてはカードを複数用意しておいた方が良いに決まっています。
二酸化炭素の削減目標、技術的な裏付けあってこそ
今年末にパリでCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が開催されます。日本も温室効果ガスの削減目標を上積みする必要に迫られるのは必至です。
日本らしく技術力を生かした新しい資源外交を提唱する福田峰之氏
福田:今、政府内でも二酸化炭素の排出削減目標について、いろいろな数値が出ています。目標を掲げるのは大事なことですが、それを達成するにはどうしたらいいか。技術的な裏付けがなければ責任ある議論にはなりません。
先日もフランスのCOP担当大使と議論したんですが、これからの交渉は削減目標をお互いに押し付け合うのではなく、一緒に削減していこうという合意形成が必要でしょう。現代を生きる我々は既に豊かな生活に慣れています。今さら電気のない生活に戻れるわけでもない。地球環境のことを考えることは大事ですが、何かを我慢するやり方は長続きするとも思えません。
水素にこだわる理由は何ですか。
福田:私は水素社会を推進する立場ですが、合理的に考え抜いた上で水素を推しています。環境への負荷が少なく、埋蔵量にも際限がないという意味で、水素以外に他の選択肢はないんじゃないかとさえ感じています。
日本近海に眠るとされるメタンハイドレートにしたって、仮に経済的に発掘できたとしても燃やせば温暖化を進めてしまう。
水素に対する永田町の期待も高まってきました。自民党のFCVを中心とした水素社会実現を促進する研究会に参加する国会議員は昨年まで100人程度でしたが、直近は150人に迫る勢いです。小池百合子氏が会長を務め、私は事務局長として汗をかいていきます。
国際社会にいかに貢献していくか。日本ができることって、やっぱり環境と技術に尽きると考えています。
このコラムについて
日本発、水素産業ピラミッドを目指して
燃料電池車(FCV)や燃料電池に使われる素材や部品は日本メーカーのシェアが圧倒的に高い。つまり世界中で水素社会が広がれば広がるほど、日本企業に有利となる。日本発の水素産業ピラミッドを構築するチャンスを前に、企業がどんな取り組みをしているのか。行政の支援も含めて探っていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150519/281322
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