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眠れる電源 有効活用
都市の川で発電 ボタン一押しで 大学など実用研究進む
これまで発電に活用してこなかった身近な場所にあるエネルギーを有効活用する技術の開発に大学などが動き始めた。都市部の川の流れや人の動きなどを活用して発電する。生活環境に潜む小さなエネルギーに着目することで、節電だけでなく、都市で使う電気の一部の地産地消に道を開く。
有効に使われていないエネルギーはさまざまな場所に存在している。たとえば産業部門の廃熱だけでも年間1兆キロワット時に達するといわれる。国内の年間電力消費量に匹敵する数字だが、大半はそのまま捨てられている。ただ、個々のエネルギーの多くは規模が小さい。不安定で、利用コストも高くなる傾向がある。
福岡工業大学の阿比留久徳教授らは都市の平地を流れる川や農業用水で発電できる装置を開発した。幅2メートル、重さ300キログラムで、2枚の板を垂直に水の中に沈める。板は飛行機の翼のように丸みがあり、水流によって魚の尾びれのように左右に振動する。これを回転運動に変え、電気を作る。毎秒1〜2メートル程度の流れがあれば発電できる。
橋桁からつるしたり船に乗せたりして使う想定だ。常時稼働させれば照明や空調、炊事など住宅2軒分で使う電気をまかなえる年間9000キロワット時弱の電気を作れる見通し。装置は100万円程度で作製できるとみており、2〜3年後の実用化を目指す。「従来の水車は落差のある山間部の川でないと実用的な発電が難しかった」(阿比留教授)
金沢大学の上野敏幸准教授は指を軽く動かす動作で発電できる手のひらサイズの装置を作った。親指でボタンを押すと鉄とガリウムの合金でできた棒が振動して発電する。形が変わると磁力が生じる現象を利用した。1回押すと照明や呼び鈴のリモコンを動かせる程度の電気が得られ、内蔵電池が不要になる。工場や道路などの振動も発電に活用できるという。
1個500円以内で作れる見込みという。機械製造の梶製作所(石川県かほく市)などと協力し、1〜2年以内に家電や住宅メーカー向けに試験出荷する計画だ。
神戸市立工業高等専門学校の赤松浩准教授らは下水処理場から出るメタンガスを利用して発電する機器を試作した。処理場のメタンガスは濃度が低く燃やしにくいがプラズマ(電離ガス)を発生させる装置を組み合わせることでガスの状態を変化させ、燃焼しやすくした。材料加工や殺菌などに使う装置を通常の発電に使うアイデアだ。
下水処理場は都市部に近い場所にあり、発電できれば送電の際の損失も減らせる利点がある。数年後の実用化を目指す。 国も未利用エネルギーの活用を目指している。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2015年度から8年間で120億円以上を投じ、車や工場の廃熱をもとに発電する技術を開発する。ほとんど利用されていない比較的低い温度のセ氏200度以下の熱で効率よく電気を作る。
車向けでは熱を電気に変える材料などの開発を目指す。車はガソリンのエネルギーの約3割を動力に使い、残りは熱や振動になっているという。
[日経新聞4月21日朝刊P.14]
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