http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/1523.html
Tweet |
再生エネ、勢いに陰り
制度頼みは限界 難しい需給調整 コストなお高く
政府が将来の日本の電力供給をどうまかなうかの検討を進めている。原子力発電とともに、焦点となるのが再生可能エネルギーの位置づけだ。東京電力福島第1原発事故後、クリーンな電力として期待を集めたが、一筋縄では普及が進まないこともわかってきた。今後、再生エネの利用を広げていくために何が必要なのか。
再生エネは英語で「Renewable Energy」。一度使っても比較的短期間に再生できるエネルギーという意味を持つ。火力発電で使う石炭や天然ガスなどの化石燃料はいったん燃やすと元に戻らないが、再生エネは枯渇せず繰り返し利用できる。「自然エネルギー」と呼ぶこともある。
代表例は太陽光や風力、水力、地熱、バイオマス(生物資源)などだ。2013年度の日本の電力供給に占める割合は水力を中心に10.7%だった。単純比較はできないが、ドイツやスペインに比べるとだいぶ低い。政府は30年に2割以上に高める計画だ。
再生エネはもともと二酸化炭素(CO2)の排出削減に役立つ地球温暖化対策の切り札とされ、原発事故後に利用の拡大を求める声が高まった。大規模な水力発電は国内での開発の余地が乏しくなっており、それ以外をどう活用していくかがカギになる。
期待集める太陽光
特に期待を集めているのが太陽光発電だ。半導体の技術を使い、太陽の光を電気エネルギーに変えて家庭などで「地産地消」としても利用できるようにする。シャープなど日本メーカーが先頭に立って技術開発を進め、実用化の道を切り開いてきた。
普及への最大の壁はコストだ。100万〜200万円かけて自宅に太陽光発電を導入しても、簡単には回収できない。政府は12年7月から「固定価格買い取り制度」と呼ぶ普及策を取り入れた。再生エネで生み出した電気を10〜20年にわたり、大手電力会社に高い値段で売ることができる仕組みだ。
この制度のおかげで太陽光発電の普及は急速に進んだが、最近になって新たな問題が浮上した。電力会社は買い取った電力を送配電網に受け入れて地域の家庭や事業所に送るが、北海道、東北、四国、九州、沖縄の各電力でその能力が追いつかなくなる事態が生じたのだ。
電力は需要と供給が常に一致しなければならない「同時同量」が鉄則だ。電力会社は常日ごろ、刻一刻と変わる需要に対応して供給量を調整している。一時的とはいえ、必要以上の電気が送られると周波数が乱れ、停電につながる恐れもある。北海道などで受け入れ困難な状況が起きた背景にはこうした事情があった。
出力が不安定なことも弱点だ。日が陰ると発電量が落ち込むため火力発電などで補助(バックアップ)しなければならない。残念ながら太陽光発電だけでは電力供給はまかなえないのが現状で、今後は余った電力を地域間で融通する仕組みや電気を一時的にためる蓄電池の導入が必要になる。
コストの引き下げも欠かせない。新エネルギー・産業技術総合開発機構によると太陽光発電で1キロワット時の電力をつくるのにかかる費用は23円(13年)。10円前後とされる石炭や天然ガスの火力発電と比べ高い。光を電気に変える変換効率の向上など技術革新が求められる。今後の開発では20年に14円、30年に7円まで下げることが目標だ。
電気料金に上積み
そもそも固定価格買い取り制度にはいつまでも頼れない。電力会社が再生エネを買い取った費用は電気料金に跳ね返ってくる。期間は長期に及ぶため、電力中央研究所の主任研究員である朝野賢司さんは「国民負担は累計で50兆円に達する可能性もある。もっと安い費用で普及を進められるはずだ」と指摘する。
太陽光以外の再生エネもさまざまな課題を抱えている。風力の導入拡大にも送配電網の増強が必要だ。陸地では建設の適地が限られており、今後は洋上への進出を進めていくことも重要になる。地熱は安定したエネルギー源だが、開発に費用や時間がかかる。導入を後押しする規制緩和などが不可欠だ。
政府は1月末、30年時点の日本の電力供給の最適構成(ベストミックス)についての議論を始めた。2割以上を目指す再生エネの比率もこの中で具体的に決める。日本はこれまで原子力や火力を軸に据えてきたが、再生エネもその役割を担うことになる。課題を克服し、賢く普及を進める知恵が求められている。
(生川暁)
[日経新聞2月13日朝刊P.35]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。