http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/1491.html
Tweet |
ドイツ、電力大手イーオンの原発・石炭発電部門の切り離しについて
ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上 敦
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51877538.html
はい、皆さん、一昨日、11月30日の日曜日には、エネルギー部門の大きなニュースが流れました。
ドイツの四大電力大手と言われる中でも、最大規模を誇るエーオン社(E.On)が、原子力・火力という既存型の発電事業を本体から切り離し、完全に分社化、そして本体とは切り離し上場するという計画がプレスリリースされたからです。
http://www.eon.com/de/presse/pressemitteilungen/pressemitteilungen/2014/11/30/new-corporate-strategy-eon-to-focus-on-renewables-distribution-networks-and-customer-solutions-and-to-spin-off-the-majority-of-a-new-publicly-listed-company-specializing-in-power-generation-global-energy-trading-and-exploration-and-production.html
(独語、プレスリリース)
このニュースは、ドイツの各メディアや日本にまで駆け巡りました。
http://www.spiegel.de/politik/deutschland/e-on-verabschiedet-sich-von-konventionellen-energien-a-1005865.html
(独語、例:Spiegel)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H0I_R01C14A2EAF000/
(日本語、日経新聞)
さて、この出来事を捉えて、ドイツでも、日本でも、「既存エネの大手までが、再エネを本流にする時代に!」、「化石や原子力ビジネスの崩壊!」などの趣旨で、脱原発派、自然エネ推進派は、鬼の首を取ったようなコメントをしているのが散見されます。
が、僕にはこの出来事は、大手企業の狡猾な「利益は株主に、損失は国民に」というフレーズのこれまで通りのやり方にしか見えません。
というのも、
1.エーオン社が推進しようと、しまいと、ドイツにおけるエネルギーヴェンデの動きは止められそうにはないこと。
理由:国民の9割以上が迅速なエネルギーヴェンデを重要なテーマだと賛同している。
http://jref.or.jp/column_g/column_20140710_01.php
http://www.unendlich-viel-energie.de/mediathek/grafiken/akzeptanzumfrage-erneuerbare-energie-2014
2.これまで散々にエネルギーヴェンデの推進を阻んできたエーオン社などの電力大手よりも、それを草の根で推進してきた市民エネ組合などの地域密着型で、分散型、そして小規模型のステークホルダーがより活躍したほうが、エネルギーヴェンデ自体は安価に、迅速に、うまく進みそうなこと。
理由:投資事業組合などの大投資主や電力大手、シーメンスなど大企業が、エネルギーヴェンデと唱えることは、洋上の大規模風力発電の大々的な開発(一極集中)と、そこを起点に国内を縦断する馬鹿げた規模のスーパーグリッドの大規模・大量導入を意味していることから。市民エネ組合など地域におけるステークホルダーは、都市+農村の広域地域範囲でのエネルギーヴェンデを推進したいと考えている。
http://www.amazon.co.jp/
3.自身で国内で大規模油田でも所有していない以上、既存エネのビジネス環境が、とりわけ欧州やドイツでは厳しくなっている情勢は変えられそうにないこと。
例えば、このニュースよりも先に、Vattenfall社は、自社の褐炭発電部門の売却を希望・計画していることが発表されている。
http://www.finanznachrichten.de/nachrichten-2014-11/31891465-vattenfall-plant-den-ausstieg-aus-der-braunkohle-stromerzeugung-171.htm
単に時代・社会の要請に(もちろん国民の希望も含む)、原子力発電、褐炭発電は、対応できなくなってきているという事実があるだけで、イデオロギー的にエーオン社が原発から再エネに改心したというようなニュアンスは一切ありません。
4.エーオン社は、プレスリリースで述べているように、「再エネを推進します!」という綺麗事だけを言っているわけではないこと。現在のエーオン社は、不採算部門の天然ガス発電、石炭発電事業部門と、将来のリスクが大きな原子力部門を単に、完全に切り捨てるという決断をしただけのこと。
2010〜11年には、第二次メルケル政権に振り回された形で、「脱原発の期限延長→福島第一原子力事故→古い原発の即時停止→原子力法の改正により脱原発期限の短縮(元に戻す)」という事柄に対して、国と州を相手取って、巨額の損害賠償請求を他の電力大手と同じように起こしており、裁判での審議は今も続けられている。
もちろん、表向きの法的な解釈のみを考えるなら、自由競争のもとでのこうしたじゃんけんの後出し的なメルケル政権の対応に対して、訴訟しないことは、株主への背任という理解もできる。
しかし、そもそも第二次メルケル政権の発足を可能にした選挙で(2009年秋)、保守勢力に大きな支援を行い、脱原発期限を延ばすように要求したのは、他でもない電力大手であり、同時に、エネルギーヴェンデに対して大きなキャンペーンで反対してきたのも(その財源を捻出したのも)エーオンを中心とする電力大手である。
もともと、1999年のシュレーダー政権との契約を反故にし、脱原発の進展を実質的に先送りしていたのも、エーオン社である(2000年の原子力法による脱原発の規定が、脱原発の年月日ではなく、それぞれの原発に振り分けられた残り運転時間に対してだったので、2009年の選挙で保守勢力が勝利するまで、古い原発の設備利用率を意図的に低下させることで、本来はすでに廃炉されるはずの原発も、第二次メルケル政権による原子力法の改正まで延命を図った)。
5.また電力自由化が本格化した今では、料金で他社との差別化、つまり規模の原理でより安価に電力を提供することができないようになり、同時に企業イメージも悪く、顧客を減少させ続けてきたこれまでの経緯があり、それを今回の分社化でグリーンウオッシュしようとしている意図が見られること。
6.そして最大の問題点が、原子力発電所の廃炉と、核廃棄物(低・高レベル)の処理問題だ。
時間順に解説すると
@脱原発が決まるまでは、これらの処理費用は安価であることを喧伝し続け、電力料金における処理向けの積立・上乗せ費用は安価に抑え、原発は安価であるがゆえに推進するべきとの立場だった大手電力企業が、
Aかつ、こうして集められた巨額の積立費用を、基金などにする積立や特別口座ではなく、自社の資本として他の事業分野に流用し、莫大な利益をこの積立金によって得てきた企業が、
B2011年の脱原発期限の短縮(というか元に戻す)によって、これ以上の原発の延命処置は不可能と判断し、これまでの積立資金では、将来の廃炉+核廃棄物処理するコストには足りないと言い出し(また、市場は完全にこの費用では足りない、もしくはリスクがかなり大きいという判断をしている)、
C国が脱原子力基金(バッドバンク)を作るなどして、これまでの積立費用(それによるこれまで上げてきた巨額の利益はもちろん含まない積立原資のみ)は国に返すから、廃炉・核廃棄物の処理は国(=脱原子力基金)がやるべきだと言い出し、それが国民から大きな反発を受けると、
DVattenfall社が素早く、ホールディング形態を見直し、再組織化することで、親会社とドイツの原発運営会社とを切り離すことで、破綻&逃げ切り策で、債務履行の追求を避けるような動きを示し、これまた国民からの大きな反発を受けると、
http://www.handelsblatt.com/unternehmen/industrie/kosten-fuer-den-ausstieg-vattenfall-entzieht-sich-der-haftung-fuer-akw/9911578.html
E政治的に、こうしたホールディング内での債務不履行を許さないように法整備を進めるとの方向になり、
F最後には、このエーオン社の決断は、分社化→売却・株式上場による完全独立化で、本体との債務不履行を狙っているとしか思えない。
ということで、このニュースを喜んでいる場合ではありません。
明らかなことは、
1.これまで日本でも、ドイツでも、政治的に正当だと考えられてきた廃炉&核廃棄物の処理費用のための積立金では、本来必要になるだろう廃炉&廃棄物処理の金額には、全然足りないように(ボンクラ市民・政治家以上に)市場はすでに考えていて、
2.その程度は、常に先送りをしてきた原子力事業モデルでは表面に出てくることはなく(だって本格的な廃炉を1基もしていないんだもん、日本は・・・)、ドイツのように旧東ドイツの原発廃炉を経験し(とはいえ、計画の数十倍のコストをつぎ込んでも、まだ廃炉の終わりが見えていない・・・統一から25年経とうというのに・・・)、同時に、脱原発、廃炉の「先」の時期が明らかになって、はじめて表に出てくるが、
3.その程度が明確に社会に判明するよりも前に、当然、運営事業者は、いかにそれを自身で負担せずとも良いのかの抜け道を探し、それを仕組みとして決めてしまう、
ということですね。で、それによる僕自身の不安なんですが、
4.結局は、国民による負担で処理することになるが、問題は、その額(負担)が大きすぎて、かつ、その負担は、高度成長&バブルを謳歌してきた世代ではなく、少子高齢化で重度の社会保障費を負担しなければならない世代によって担われれなければならず、かつ、その将来の原子力発電による恩恵をほとんど受けていない世代では、その負担を受け付けることができそうもないように思われ、
5.同時に、それは今現在に理性で考えられている安全な廃炉&核廃棄物の処理のレベルを大きく下回ることを意味しているように思われることである。
つまり、僕個人の予想ですが、ドイツや日本での人間の命が50年前と同じぐらい安価にならない以上は、とりわけ日本の場合、大半の原発は、廃炉と言ってもほとんどの原発は単に停止・放置されるだけで、実際には解体作業の無期限の先送りという事態になりそうだと思っています。
これは福島第一の事故処理でも同じですね。最終的な理性的な廃炉処理はできっこないように思います。
僕だけかな、こんな心配性は・・・
独最大手、原発を分離 再生可能エネルギーに特化 - 47NEWS(よんななニュース) http://www.47news.jp/CN/201412/CN2014120101001152.html
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。