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ドイツで火力発電減少、再生可能電力は需要の27%カバー みどりの1kWh  「石炭17.4%減 天然ガス19.7%減
http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/1416.html
投稿者 蓄電 日時 2014 年 7 月 14 日 20:38:06: TR/B2VKXCoTU6
 

発電量および発電量の推移は以下の通り:

ドイツで火力発電減少、再生可能電力は需要の27%カバー
http://midori1kwh.de/2014/06/08/5582

褐炭を燃やす火力発電の増加が主な理由で2013年に二酸化炭素の排出量が増えたドイツで、2014年の第1四半期に火力発電が大幅に減少した。これに対し再生可能電力がドイツの電力需要総量に占める割合は全体の27%に上昇した。ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW、Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)の発表による。

BDEWによると、今年1月〜3月までの3ヶ月間のドイツの総発電量は164TWhで、前年同期比5.4%減だった。暖冬で熱需要が低下したことが主因だが、非常に良いお天気の日が続き、太陽光発電などの再生可能電力が増加したことも大きく影響した。

個別では石炭による火力発電量が前年同期比で17.4%減、天然ガス発電19.7%減、褐炭発電4.8%減、原発4.6%減となった。

一方、太陽光発電は前年同期比で82.5%増。風力発電も好調で、オンショアが同20.6%増、オフショアは同33.5%増だった。この他バイオマス同5.4%増、地熱発電同195%増などとなったが、水力発電は水不足で同25.2%減だった。

太陽光発電は同期間中に大変大きく伸びたが、ドイツ全国ソーラー企業連盟(BSW 、Bundesverband Solarwirtschaft) によると、今年1月〜4月の間に新たに設置された太陽光パネルは618メガワットに留まり、1年前の同期間の約半分、2年前の同期間の約4分の1だという。なお、2013年にドイツで発電のために排出された二酸化炭素は3億5800万トンで、前年比2%増だった。  

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コメント
 
01. 2014年7月19日 11:32:09 : jXbiWWJBCA

欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その1)
移り行く中心軸
 ロンドンに駐在して3年が過ぎたが、この間、欧州のエネルギー環境政策は大きく揺れ動き、現在もそれが続いている。これから数回にわたって最近数年間の欧州エネルギー環境政策の風景感を綴ってみたい。最近の動向を一言で要約すれば「地球温暖化問題偏重からエネルギー安全保障、競争力重視へのリバランシング」である。
 日本を含め、多くの国でエネルギー政策は3つのE、即ちエネルギー安全保障(Energy Security)、環境保全(Environmental Protection)、経済成長あるいは経済効率性(Economic Growth, Economic Efficiency)を追求するものとされている。しかしその重心は時代の流れを追って変化する。欧州について言えば、1990年代はエネルギー市場の自由化、競争促進による効率性が重視され、2000年代は地球温暖化問題がエネルギー政策の中心軸に据えられてきた。私がIEAに在籍していた2002-2006年の頃、懇意にしていた欧州のあるエネルギー政策担当者が「欧州のエネルギー政策は温暖化問題にハイジャックされた」と言っていたことを思い出す。
欧州委員会の関与の高まり
 気候変動政策が欧州のエネルギー政策を席巻するプロセスはEU各国と欧州委員会との間の主導権争いとも重なる。貿易政策と異なり、EU諸国のエネルギー政策は元来、各国の主権に委ねられる部分が大きかった。

欧州諸国の電源構成(2011年11月)
 各国のエネルギー賦存状況や、特定のエネルギー源(特に原子力)へのポジションが大きく異なる以上、当然のことでもある。上の図にあるように、欧州諸国の電源構成を見ても、石炭中心のポーランド、原子力中心のフランス、水力・原子力中心のスウェーデン、スイス、原子力を排除するイタリア、デンマーク、オーストリア等、バラバラである。
 しかし伝統的に各国に委ねられてきたエネルギー政策についても90年代以降、欧州委員会の関与が段々に高まってきた。域内共通エネルギー市場に向けた電力・ガス自由化指令、域内共通エネルギー市場を機能させるための優先的エネルギーインフラ整備(特にガスパイプライン、送電網)等がその事例である。
次のページ:気候変動アジェンダと欧州の自信
 国境を越えた問題である気候変動問題は、欧州委員会の関与を拡大する格好のイシューでもあった。エネルギーの世界では、IEA閣僚理事会やG8エネルギー大臣会合に代表されるように各国のエネルギー大臣が発言するが、気候変動交渉の世界では通商交渉と同様、欧州委員会とEU議長国が代表して発言するのは、その象徴的事例である。2000年代初頭からEUワイドの気候変動政策という旗印の下、EU排出量取引、EU再生可能エネルギー指令、EU省エネ指令等の施策が次々に導入・強化されていった。
 特に私が経産省で温暖化交渉に登板した2008年はその傾向が頂点に達していたと言ってよい。EUは2009年のCOP15(コペンハーゲン)に向けて交渉の主導権をにぎるべく、2006年に「20:20:20目標」(2020年までに@温室効果ガスを90年比で20%削減、Aエネルギー消費に占める再生可能エネルギーのシェアを20%に引き上げ、Bエネルギー効率を20%改善)を発表していた。当時のEUのエネルギー・気候変動政策当局は「EUが範を示す。世界はそれについて来い」という鼻息の荒さであった。
揺らぐ欧州の自信
 しかし私がロンドンに着任してから3年余が経った今、EUのエネルギー・環境政策当局にかつてのような自信は見られない。
 巨視的に見て大きな要素は、ユーロ危機の深刻化と、それに伴う「EU」という枠組み自体への不信感の増大である。2013年5月に米国の調査機関ピューセンターが欧州各国で行った意識調査によれば、EUに対して好意的な感情を持つ人の割合は2012年の60%から2013年には45%に低下した。ユーロ危機からようやく立ち直りの気配を見せているとはいえ、直近の欧州議会選挙ではEU離脱を主張する英国独立党(UKIP)やフランスの国民戦線(FN)等のアンチEU政党が大きく議席を伸ばした。最近のエコノミスト誌は、エウロペが雄牛に振り落とされる絵(注:Europe の語源は美女エウロペに一目ぼれしたゼウスが白い雄牛に身を変えて彼女を乗せて連れ去ることに由来する)を表紙にして、一層の統合プロセスを目指す「欧州プロジェクト」への一般民衆の「反乱」について論じている。

Bucked off (The Economist 31 May-6 June 2014)
 全体としてEUが自信を喪失している中で、欧州委員会及び各国が推進してきたエネルギー環境政策も困難に直面している。
次のページ:再生可能エネルギー政策の蹉跌
 その典型例が日本で何かと理想化されて報じられる再生可能エネルギー促進策である(最近、ようやく欧州の再生可能エネルギー政策の実像が報じられるようになってきたのは喜ばしい限りである)。ユーロ危機の直撃を受けたスペインでは、財政赤字削減のため、政府が補助してきた再生可能エネルギー固定価格購入制度を中断せざるを得なくなった。またユーロ危機によって庶民の可処分所得が圧縮される中で、上昇を続けるエネルギーコストが各国で政治問題化している。エネルギーコストは逆進性が強く、低所得層になるほど、総家計支出に占めるエネルギーコストのシェアが増大する。「歴代政権の中で最もグリーン」を標榜していた英国のキャメロン政権は、再生可能エネルギーの中でも割高な太陽光発電への間接補助を大幅にカットし、むしろシェールガスの開発に重点を置き、環境団体の批判を浴びている。日本の固定価格購入制度のお手本となった本家本元ドイツでも、行き過ぎた消費者負担が政治問題化し、かつて環境大臣として再生可能エネルギー推進に辣腕をふるったガブリエル社民党党首が、大連立政権の副首相兼経済エネルギー大臣として再生可能エネルギー政策のコスト削減に取り組んでいるのは皮肉な構図である。
 もちろん欧州におけるガス、電力料金の上昇を再生可能エネルギー推進策のみに帰するのはフェアではない。英国エネルギー気候変動省が2013年3月に発表した資料によると平均的な家庭の年間電力・ガス料金1267ポンドのうち、エネルギー気候変動政策に由来する部分は112ポンド(約9%)とされている。他方、再生可能エネルギーへの支援、それに伴うネットワークコスト、スマートメーターの設置等でエネルギー代金は2020年までに更に200ポンド上昇するという電力事業者の見通しもある。石油やガスのコストは国際市況で変動するものであり、やむを得ない部分はあるが、問題は政府自身のイニシアティブであるグリーン政策によって、どこまでエネルギーコストを引き上げることが許容されるかということだ。英国では労働党のミリバンド党首は「エネルギーコストの上昇に直面しながら現政権は全く無策だ。2015年の総選挙で労働党が勝ったら、20ヶ月の間、エネルギー料金を凍結する」と咆哮し、保守党のキャメロン首相は「エネルギー価格上昇はミリバンド党首がエネルギー気候変動大臣の時代に導入した施策が原因だ。グリーン補助金を削減すべきだ」と応酬する等、エネルギーコストが次期総選挙に向けた主要イシューになりつつある。

http://ieei.or.jp/2014/07/special201212072/ 
欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その2)2014/07/18英国で考えるエネルギー環境問題有馬 純日本貿易振興機構ロンドン事務所長、経産省地球環境問題特別調査員
高まる国際競争力への懸念
 欧州各国がエネルギーコストに神経を尖らせているもう一つの理由は、シェールガス革命に沸く米国とのエネルギーコスト差、国際競争力格差の広がりである。IEAの2013年版の「世界エネルギー展望」によれば、2012年時点で欧州のガス輸入価格は米国の国内ガス価格の4倍以上、電力料金は米国の2-2.5倍になっており、このままでは欧州から米国への産業移転が生ずるのではないかとの懸念が高まっている。事実、ドイツ化学メーカーのBASF、BMW、オーストリア鉄鋼メーカーの Volstalpine 等、低エネルギーコストに着目して米国に工場を新設する事例は既に発生している。Volstalpine社の社長は「欧州が政策転換しない限り、大移動(Exodus)は加速化し、修復不能になる」と警鐘を鳴らしている。
 もとより、ガスのコスト差は米国産シェールガスの低コストによるものである。電力のコスト差にもガスのコスト差が反映されている以上、欧州諸国のグリーン政策のみに原因を求めることは誤っている。また「エネルギーコストは産業立地を左右する多くの要素の一つに過ぎない」という反論もある。ただ、特にエネルギー集約度の高い産業にとって、エネルギーコストは大きな要素である。加えて、コスト差をもたらす諸要素の中で、グリーン政策は政府のコントロールの及ぶ分野であり、政府自身がコスト差を拡大するのか、という論点もある。

米国と比較した欧州、日本のガス輸入価格、電力料金(○倍)(IEA)
低迷するEU-ETS市場
 うまくいっていないのは再生可能エネルギー政策のみではない。EUの気候変動政策の中核であるEU-ETSは市況低迷に苦しんでいる。2008年頃、30ユーロ/トンをつけた炭素価格はリーマンショック、欧州危機を背景に下落を続け、5ユーロ/トン内外で低迷を続けている。2008年頃、よく連絡を取り合っていた炭素クレジットのトレーダーはクレジット価格が低迷する中で個人的にも大きな損害をこうむり、会社を売り渡した。2013年春に欧州委員会は炭素価格を引き上げるため、電力セクターのオークション量を絞ること(これをバックローディングと呼んでいる)を提案したが、欧州議会で一度否決され、「バックローディングは1回限り。かつ欧州からの産業移転の可能性について影響評価を行う」との条件付でようやく欧州議会を通すことができた。EU-ETSの市況が低迷する中でも、独自にフロアプライスを設け、それを2020年には30ポンド/トン(約36ユーロ)、2030年には70ポンド/トン(約84ユーロ)に順次引き上げるとしていた英国は、エネルギー価格の上昇に対する国民の反発が強まる中で、フロアプライス導入の棚上げを余儀なくされた。
Dash for Coal
 更に欧州において90年代英国のDash for Gas とは逆のDash for Coal とも言うべき現象が生じている。

英国の電源構成(石油換算百万トン)              ドイツの電源構成(億kw)
 上の図を見ると、英国、ドイツの電源構成を見ると石炭火力のシェアが増大していることがわかる。これはシェールガス革命によって米国内で売れなくなった米国炭が欧州市場に売られ、炭素クレジット価格が低迷しているため、クレジットを買って石炭を燃やしても十分にペイするという構図になっているからだ。これに伴い、両国の電力部門のCO2排出量は増大している。オバマ政権が石炭火力への環境規制を強めている一方で、米国よりもはるかに環境先進国であると自他共に任じていた欧州で、特に「脱原発」を選択したドイツで石炭回帰が生じているとは何とも皮肉な構図である
電力供給不安の高まり
 欧州が直面しているもう一つの問題は、発電所閉鎖と電力供給不安の発生である。欧州各国は遮二無二、再生可能エネルギーの拡大を推進してきたが、間欠性のある再生可能エネルギーの拡大は、火力発電の出力調整を強いる結果となった。それでなくともユーロ危機による景気低迷とそれに伴う電力需要の低迷、炭素価格の低迷による卸電力市場価格の低迷もあいまって、火力発電、特にガス火力の稼働率・採算性が大幅に悪化した。この結果、2013年中に欧州の電力会社10社で2130万kwのガス火力が閉鎖された。これは欧州の発電設備の12%を占め、しかも閉鎖されたガス火力のうち、880万kwは開設後10年以内のものである。ドイツでは電力規制庁が安定供給の観点から電力会社による発電所閉鎖申請を却下し、それに対して電力会社が政府に訴訟を提起するといったことまで生じている。電力会社からしてみれば「政府の再生可能エネルギー施策によってガス火力の稼働率、採算性の悪化を強いられ、それを閉鎖しようとすると政府からダメ出しをされるのはたまらない」というところであろう。
次のページ:より根源的な問題は、
 より根源的な問題は、欧州における新規の発電所建設のための投資環境が非常に不透明であるということだ。そもそも欧州では発電所に限らず、送電網、パイプラインを含め、エネルギーインフラの建設に対する周辺住民の反発が強い(いわゆるNIMBY: Not In My Back Yard)が、最近ではどこのどんなエネルギーインフラにも反対(BANANA: Build Absolutely Nothing Anywhere Near Anybody)という現象すら見られる。これは再生可能エネルギー関連施設も例外ではない。英国では陸上風力への反対運動は非常に強い。エネルギー関連投資は種々のリスクに晒されるが、「政策変更リスク」は大きな要素になる。再生可能エネルギーについては固定価格買取制度等によって投資リターンを保証されてきたが、その結果生じたエネルギーコストの上昇とそれに対する国民の反発を背景に、各国で政策の見直しが進みつつあり、これまでのような訳にはいかない。再生可能エネルギーの出力変動の帳尻あわせを強いられてきたガス火力の閉鎖が進んでいることは上に書いたとおりであり、そのままでは採算性が確保できないバックアップ電源の設置を進めるため、キャパシティ・ペイメントが議論されているが、このコストも最終的には消費者負担になるため、再生可能エネルギー補助金と同じような問題が発生する可能性もある。何より、エネルギー投資には長期の安定的な政策環境が求められるが、それを策定する政府は国民世論や選挙のプレッシャーに常に晒され、政策変更のリスクは常に存在する。これは欧州に限った問題ではなく、先進民主主義国に共通の問題でもある。
欧州のエネルギー環境政策の「成績表」
 このように、欧州のエネルギー環境政策は種々のジレンマに直面している。下の表は欧州のシンクタンク Institute for International and European Affairs が昨年5月に行った欧州のエネルギー環境政策の各手法が種々の政策目的にどの程度貢献したかを示す「成績表」である。CO2目標、EU-ETS、再生可能エネルギー目標などは、特に競争力強化、雇用創出、イノベーション喚起の面で落第点をもらっている。「グリーン政策はグリーン雇用とグリーンイノベーションを生む」というレトリックは実際には機能しなかったことを示している。

欧州の気候変動エネルギー政策の目的・手法と有効性(Institute for International and European Affairs)
 こうした中で本年1月に発表された2030年に向けたエネルギー気候変動政策パッケージ案は欧州が直面するジレンマを色濃く反映するものとなった。
関連情報
• 欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その1)
• 英国と原子力(その2)
• 英国と原子力(その1)
http://ieei.or.jp/2014/07/special201212069/
 数週間前、ケンブリッジで「原子力の将来」と題する少人数のディスカッションに参加した。参加者の中には英国の上院議員、英国政府関係者、原子力規制当局関係者、英国における原子力新設に関与している企業、ケンブリッジ大関係者等が含まれ、英国における原子力の位置づけを理解する上で有益な機会だった。
 英国では原子力発電所、石炭火力、ガス火力発電所など、現在の発電施設の4分の1が2020年前に運転を終了し、深刻な設備能力不足が懸念されている。他方で英国は温室効果ガスを90年比で2020年に34%減、2025年に40%減、2050年には80%減にするという野心的な目標を掲げている。電力設備の増強と温室効果ガスの削減という難題を両立させるため、英国では原子力、再生可能エネルギーといった非化石電源とCCSの導入促進を目標としている。
 原子力に対する英国政府のポジションには紆余曲折があった。1990年代に電力市場自由化を行っていた時点では、エネルギー政策の観点から原子力発電の建て替え・新設を進めようという視点はなかった。全ては市場が決めるということである。1993年に私が英国の国別エネルギー政策審査に参加した際、英国貿易産業省(当時)の原子力政策担当者が「原子力が今後どうなるかは市場が決めること。英国政府は望ましいエネルギーミックスという視点はもたない」と断言したのを聞いて、我が国のエネルギー政策との違いに愕然としたものだった。脱原発ほど極端ではないにせよ、原子力を「推進もディスカレッジもしない」という政府のポジションは、結果的に英国における原子力技術・人材・産業の蓄積を細らせる結果となった。
 しかし、2000年代に入り、気候変動問題が大きな政策課題となってくる中で英国政府のポジションにも変化が生ずる。それまで原子力に対して積極的ではなかった労働党のブレア政権は2003年のエネルギー白書の中で初めて原子力を気候変動問題に対応する上で一定の位置づけを与えた。この方針は2005−2006年頃に更に明確となり、英国で今後予想される設備不足に対応しながら、温室効果ガス削減を図るためには原子力発電所の新設が必要という方向性を打ち出す。おりしもロシアがウクライナに対するガス供給をカットし、欧州においてエネルギー安全保障の議論が高まっていたことも原子力を後押しする要素となった。
次のページ:この方針は2009年に誕生した保守党のキャメロン政権にも引き継がれた
この方針は2009年に誕生した保守党のキャメロン政権にも引き継がれた。もともと保守党はサッチャー政権の頃から原子力に対しては肯定的な立場であったが、連立与党を構成する自由民主党はどちらかといえば反原発であった。このため、連立政権を組む際に、政策協議が行われ、原子力については公的補助金を出さないということを条件に自由民主党も反原発の旗を降ろし、原発容認を受け入れた。                                      
 この「原子力については公的補助金を出さない(No subsidy to nuclear)」という合意内容について、自由民主党からキャメロン政権のエネルギー・気候変動大臣になったクリス・ヒューンはこう解説した。
“This means that there will be no levy, direct payments or market support for electricity, supplies or capacity provided by a private sector new nuclear operator, unless similar support is also made available more widely to other types of generation”. “New nuclear power, for example, benefit from any general measures that are in place or maybe introduced as part of wider reform of the electricity market to encourage investments in low-carbon generation”.
 この「他の発電形式に対して同種の支援が行われるのでなければ(導入しない)」、「低炭素電源投資を推進するための、広範な電力市場改革の一環としてであれば(支援措置は有り得る)」というところがキモである。
 原子力発電は巨額な初期投資を必要とし、コストオーバーランや工期の遅れのリスクが大きい。更にメンテナンス、廃炉、廃棄物処理のコストも考えなければならない。市場だけに任せたのでは原子力発電所の新規建設に手をつけようという企業は出てこないだろう。
 かつて英国政府関係者は「炭素市場が導入されれば、原子力や再生可能エネルギー等の非化石電源の導入が進み、石炭火力等の化石電源は駆逐されていく」と豪語していた。しかし、炭素市場の切り札として導入されたEU排出量取引はトン当たり5ユーロ程度で低迷しており、原子力、再生可能エネルギーの推進はおろか、シェールガス革命の玉突き効果で米国から流入してくる安価な石炭を燃やしても十分ペイする水準になっている。事実、英国でもドイツでも石炭火力による発電量が増大し、CO2排出量は増大している。英国では低迷するEU排出量取引市場の動向を踏まえ、英国内では炭素価格にフロアプライスを設け、それを順次引き上げる(2014年18ポンド/トン→2020年30ポンド/トン)という施策を決定した。これは排出量取引の事実上の税への転化であったが、英国内で高まるエネルギー価格上昇への不満、更には欧州大陸の炭素価格が低迷する中で英国だけがフロアプライスを設ければ欧州への産業逃避につながるという批判に耐え切れず、2014年3月にはこの政策の導入を棚上げせざるを得なかった。このように炭素価格を通じて低炭素電源を導入するという施策は事実上、機能しなかったと言って良い。
次のページ:電力市場改革法の一環として導入されることとなったものとは
 低炭素電源導入を促進するために電力市場改革法の一環として導入されることとなったのが、差額補填契約(CfD: Contract for Difference)である。その基本的な仕組みは下図の通りである。


CfDの仕組み
 再生可能エネルギー、原子力を含む低炭素電源の発電事業者と政府との間でエネルギー源毎に購入価格に合意する(これをストライク・プライスと呼ぶ)。
 ストライク・プライスが英国の電力市場で決まる市場価格を下回る場合には発電事業者がその差額分を受け取り、ストライク・プライスが市場価格を上回る場合には発電事業者がその差額分を払い戻す。差額分のコストは消費者の支払う電力料金の形で徴収される。天然ガス等、化石燃料のコストがよほど高騰しない限り、市場価格がストライク・プライスを上回ることは想定されないため、この制度はドイツで施行されている固定価格買取制度とほとんど同じものであると考えていいだろう。ストライク・プライスは原子力の場合、35年間、再生可能エネルギーの場合は15年間保証される。
 次回はCfDにおける原子力の位置づけについて述べたい。
http://ieei.or.jp/2014/07/special201212070/
前回は差額補填契約(CfD: Contract for Difference)の基本的枠組みについて触れた。CfDが他国の固定価格買取制度と決定的に違う点は、原子力も政策支援の対象としているということだ。英国政府は、エネルギー供給安全保障、温室効果ガス削減という公共政策目的を達成するためには原子力発電が必要であると考えており、他方、市場に任せていたのでは新規の原子力発電投資は見込めない。これは「市場の失敗」であり、再生可能エネルギーと同様、原子力についても政策的な支援措置が必要だというのが英国政府の考え方である。
 原子力もCfDの対象とするということは、原子力に対して電力料金への上乗せの形で間接補助が支払われることを意味するのだが、CfDは原子力に特化した支援措置ではなく低炭素電源全体を対象とするものである。ここで「他の発電形式に対して同種の支援が行われるのでなければ(導入しない)」、「低炭素電源投資を推進するための、広範な電力市場改革の一環としてであれば(政策支援は有り得る)」という上述のヒューン前大臣のコメントが効いてくる。
 原子力もCfDの対象とするという政策が可能になった背景は、原子力の必要性について英国内で概ねコンセンサスができているということだ。保守党はもともとエネルギー安全保障の観点から原子力を支持しており、労働党は気候変動への対応、更には原子力プロジェクトによる雇用創出効果の観点から支持に方針転換をし、反原発的傾向の強かった自由民主党も、自らが重視する気候変動への対応のための原子力の必要性を認め、容認に転じた。原子力に対する国民の支持は福島事故でも影響を受けず、2010年の46%から2011年にはむしろ54%に上昇した。もちろん英国内にも反原発運動は存在するが、それが政治的な影響力を持つには至っていない。こうしたバックグラウンドがあればこそ、他国に先駆けて原子力に対する政策支援が可能になったということだろう。
 もう一つ注目すべき点は、CfDが政府と民間事業者の「契約」になっていることだ。ドイツ、スペインの固定価格買取制度では政府が購入価格を政策的に決めるのに対し、こちらは民事契約である。政府がストライク・プライスを反故にして訴えられた場合、まず敗訴することは間違いない。それだけ履行に対する確度が高いというわけだ。ディスカッションに参加していたEDFエナジーの関係者は、この点が確保されたことにより、巨額な投資に対するファイナンスが格段に調達しやすくなったと述べている。
 英国の原子力の新規立地サイトは以下の通りである。その中で最も先行しているのがフランスのEDFエナジーが関与しているヒンクリーポイントだ。これに続くのがウィルファのプロジェクトであり、その実施主体となるホライズン・ニュークリア・パワーを日立が買収した。更にセラフィールドのプロジェクト実施主体であるニュージェンの株の50%を東芝が買収し、これに続いている。ヒンクリーポイントのストライク・プライスがどうなるかは、後に続く原発プロジェクトの帰趨にも大きな影響を与えることになるため、英国内でも種々の議論の対象となってきた。

英国の原子力発電所サイト
次のページ:EDFと英国政府の間で1年近く、交渉が行われてきたが、
 EDFと英国政府の間で1年近く、交渉が行われてきたが、2013年10月に92.5£/Mhwを35年間保証するという合意がなされた。この水準については英国内でも「高すぎる」との批判がある。92.5ポンドという数字は再生可能エネルギーに関するストライク・プライス、例えば洋上風力(155£/Mhw)、大規模太陽光(120£/Mhw)、陸上風力(95£/Mhw)と比較すれば低い。しかし、フィンランドが昨年末、新規原発建設についてロシアのロスアトムと合意した数字、43£/Mhwと比較すると倍以上である。保守系の雑誌 Spectator の2月の記事では「ヒンクリーポイントのストライク・プライス92.5£/Mhwは電力市場価格の50£/Mhwよりも43ポンドも高い。これは英国政府が署名した契約の中でも最悪のものだ。このような合意がなされた背景は英国が2030年までに温室効果ガスを60%削減するという恣意的な目標・期限を設定したからだ。そのためには2020年代初めには新規原発を稼動させる必要があり、その要請に応えられるのはEDFだけだった。もし政府がもう数年、時間に余裕を持たせれば、EDF以外の企業も競争に参加させ、もっとリーズナブルな価格で合意できたはずだ」という批判を展開している。

ヒンクリーポイントの完成予想図
 英国政府とEDFの合意内容については、欧州委員会競争当局が国家補助の妥当性の観点から調査に入っている。その調査結果については予断を許さないが、英国における原子力発電所新設の帰趨、更には他の欧州諸国における原発新設の議論にも種々の影響を与えることになるだろう。仮に合意内容を白紙に戻すことを求めるような結果が出た場合、「英国のエネルギー政策上の要請に基づく政策がブラッセルの横槍で頓挫させられた」との理由で、英国内に根強く存在するEU離脱論に拍車をかけることになることは間違いない。
 英国と原子力をめぐる動向を紹介してきた。原子力に対するCfDの水準等、色々な議論があるとはいえ、日本との決定的な違いは、「エネルギー安全保障、温暖化防止のために原子力が必要」という点で国内のコンセンサスがほぼ取れているということだ。もっとも、上述のディスカッションに参加していた英国上院議員(彼はサッチャー政権下でエネルギー大臣を務めた保守党の重鎮である)は「原子力の必要性に関する英国内の議論は、地球温暖化問題に対応せねばならないとの点が前提となっている。温暖化懐疑論の台頭によってこの前提が揺らぐことがあれば、全ての議論が揺らいでくる」との懸念も漏らしていた。先般の地方選挙、欧州議会選挙で大きく議席を伸ばした英国独立党(UKIP)のファラージュ党首は温暖化懐疑論を主張しており、風力等の再生可能エネルギーへの支援を日本でも有名になった「ルーピー」という表現で批判している。そんな風潮への懸念もあったのだろう。
次のページ:この上院議員のコメントに対し、
この上院議員のコメントに対し、私から「温暖化懐疑論が台頭すると原子力への支持基盤が揺らぐというご指摘であるが、日本では厳しい温暖化目標を主張する人々の多くが、同時に原発の新設はおろか、再稼動に反対している」と紹介すると、この上院議員は目をむいて「それではどうやって温室効果ガスを削減するのか」と聞いてきた。「再生可能エネルギーと省エネルギーだ」と応えたところ、彼は口をあんぐりと開けて(まさしく英語表現に言うjaw dropである)頭を左右に振った。ディスカッションに参加していた他の出席者からは「どんなシナリオでも論理的には可能だ。しかし、原子力を再生可能エネルギーと省エネだけで代替するという議論は、 affordabilityの視点を欠いているのではないか」とのコメントがあった。
 ディスカッションではそれ以外にも単位発電量当たりの死者数で見ると石炭火力が最も高く、原子力は太陽光発電よりも更に低い(意外に思われるかもしれないが、太陽光パネルを屋根に装着する際に転落死するケースがあるらしい)という調査結果や、福島事故後に適用された線量基準を適用すると英国南西部の景勝地として名高い一方、自然放射線による平均被曝量が英国平均を大幅に上回るコーンウオールの住民は全員退避しなければならないといった論点も紹介された。
 「それはそうなんだけれど・・・・日本では原子力を感情論抜きに議論できる土壌がまだ十分できていない」と返しつつ、原子力に関する議論の成熟度に関する彼我の違いを改めて痛感したのであった。


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