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海流や潮で発電 急浮上
再生エネ、天候問わぬ新顔
プロペラのような翼を海中に沈め、海流や潮の満ち引きを利用して発電する「海の風力発電所」が注目を集めている。日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の広さは世界6位で、発電に適した場所も多い。太陽光や風力と違い、天候に左右されずに発電できる利点もある。政府も開発を後押ししており、再生可能エネルギーの新顔は主役になる可能性を秘めている。
日本の太平洋側を流れる黒潮。水産資源など豊かな恵みをもたらす海流をエネルギー源として使う「海流発電所」を2030年ごろに実現する。そんな壮大な計画に、IHIと東芝、東京大学、三井物産戦略研究所(東京・千代田)が取り組んでいる。
直径40メートルの翼を2つつけた発電装置をワイヤで海底に固定。凧(たこ)のように浮遊させながら黒潮の流れを受けて回り発電する。10キロメートル四方に発電装置を400基設け、80万キロワットと小規模な原子力発電所並みの電力を生み出す。
海流発電の原理は風力発電と同じだが、風力にはない利点がある。海流は年間を通じて流れるため、安定して発電できる。黒潮の幅は100キロメートルあり、設置できる場所は広い。流れは平均で毎秒1.5メートル前後と比較的遅いが、水の密度は空気の800倍あり、エネルギーは十分に得られる。
こうした条件から、海流発電の稼働率を60〜70%と見積もった。これに対し、天候に左右される太陽光は10%台、洋上も含む風力は30〜40%にとどまるという。IHI技術開発本部海洋技術グループの長屋茂樹課長は「発電コストは1キロワット時当たり20円を目標にしている」と話し、風力発電並みを狙う。
海の流れを利用した発電は他にもある。潮の満ち引きで起こる速い流れを使う「潮流発電」だ。明石海峡や鳴門海峡をはじめとする瀬戸内海近海、有明海や八代海を抱える九州西部、津軽海峡などで潮の流れが秒速2〜5メートルある。
陸上の風力発電のように水車を海底に太い柱で固定するタイプのほか、ワイヤで海底につなぎとめるタイプなどアイデアはさまざまだ。三井海洋開発は潮流発電と風力発電を組み合わせて出力を高めた装置を開発した。今秋には佐賀県唐津市沖で実証試験を始める。
ハイブリッド発電装置は海に浮かべるタイプで、全長約70メートルある。海中部分には、丸く曲げた板を組み合わせた特殊な水車を設置。あらゆる方向から来る潮流をとらえて発電する。海上の風力発電も含めると、1基あたりの出力は500〜1000キロワット。「設置面積当たりで最高の出力を目指した」と中村拓樹事業開発部長は話す。16年にも実用化する計画だ。
海の流れを活用する次世代発電は、船舶や潜水艦で培った技術を生かせる。IHIのほか、川崎重工業など重工メーカーが相次いで参入し、技術開発を競っている。国も環境省などが装置の耐久性や発電効率を確かめる実証試験に助成、開発を後押ししている。
だが、課題もある。例えば、海洋発電は陸地から離れた場所に設置するため、発電した電気を送る専用の海底ケーブルは十キロメートルから数十キロメートル必要になる。IHIなどの発電装置はケーブル代も含めると1基あたり10億〜20億円かかるという。黒潮が大きく蛇行するおそれもあり、影響の少ない適地を選ぶ必要がある。
巨大な水車を水中に設置する影響も不透明だ。専門家は良い影響と悪い影響が両方出る可能性があると指摘する。三井海洋開発は水車が潮流以上の速さで回らないように設計、生態系に影響しないよう配慮する。
徳島県が徳島大学に委託した調査によると、鳴門海峡の潮流発電の潜在能力は400万キロワットの電力に相当するが、観光の目玉となっている渦潮が小さくなるおそれがあるという。沿岸域には漁業権が設定されており、漁協との協議も欠かせない。
政府は50年までに温暖化ガスの排出量を80%減らす目標を掲げる。4月には「30年に約2割」という参考値のもと、再生可能エネルギーを最大限導入するとした「エネルギー基本計画」も閣議決定した。海流発電や潮流発電は潮目をとらえ、新たな切り札となりうるか、期待が集まっている。
(浅沼直樹)
[日経新聞6月22日朝刊P.17]
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