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際立つ自然エネルギーの躍進:ドイツ政策の成功と新興国での発展
http://jref.or.jp/column/column_20140606.php
第五回クリーン・エネルギー大臣会合自然エネルギーラウンドテーブル参加感想
2014年6月6日 大林ミカ 自然エネルギー財団事業局長
2014年5月12、13日にかけ、第五回クリーン・エネルギー・ミニステリアル(クリーンエネルギー大臣会合・CEM)が、韓国・ソウルで開催された。自然エネルギー財団理事長のトーマス・コーベリエルが、自然エネルギーのラウンドテーブルに招聘されたため、筆者もオブザーバー参加してきた。
CEMは、2009年のコペンハーゲンCOP15で米国が開催を呼びかけた会合で、G8を中心に、新興国を加えた20以上の国や地域に加え、国際組織が参加している。2010年のワシントンに始まり、今回が5回目だ。自然エネルギーや省エネルギーの普及促進を話し合う大臣級会合としては唯一のものである。
会議冒頭、米国エネルギー省のアーネスト・モニツ長官が、LEDの普及など省エネルギーの進捗はあるものの、自然エネルギーがいまだ世界全体のエネルギー供給の“2割弱にしかなっていない”現状に不満を示したのが印象的だった。
ここでは、筆者が主に参加した、自然エネルギーの国際的な進展を話し合ったラウンドテーブル「Public-Private Roundtable Discussion. 2:持続可能な成長と雇用のための自然エネルギー」での議論を紹介したい。
冒頭に、ドイツのライナー・バーケ産業経済事務次官が、自然エネルギーの拡大と成功についてキーノートを行った(以下は聞き書きによるサマリー)。
「豊かな国だけが自然エネルギーを活用してきたが、今は違う。先進国が促進した自然エネルギーの技術革新が、今や新興国での爆発的な自然エネルギーの拡大を招いている。短い期間で拡大と技術革新が進み、ドイツでは、もはや自然エネルギーは高価な技術ではない。わたしたちは、今後の20年も同じような進展を続けていく」
「ドイツには水力や地熱などの賦存量が少なく、バイオエネルギーにも限界がある。自然エネルギーとしては、太陽光と風力に集中することになる。固定価格制度・FiTの導入で、急速に自然エネルギーが拡大、すでに25%の電力消費を賄っている。
そして、その半分は、企業ではない市民や農業者の所有であり、自然エネルギーは人々と共にある」
「38万人の雇用を生み出し、2013年には約150億ユーロ(注・約2.1兆円)の利益があった」
「確かに、一般家庭の電気料金の中の自然エネルギー負担は上昇したが、マージナルコストを相殺するという自然エネルギーの特性により、卸電力価格は急速に低下した」
「これは、ドイツによる経済的成功の物語である」
明確なスピーチであり、参加者からは「ドイツはもっと自慢すべきだ。世界的な急速な太陽光コストの下落は、ドイツの投資のおかげだ」(コーベリエル理事長)、「特に風力エネルギーをみると、低コストとなった風力の近年の投資は新興国に集中している。そのパイオニアはドイツだ」(スティーブ・ソーヤー、世界風力エネルギー会議事務局長)などの発言があった。
その他、投資リスクを回避するための投資家市場の保証や政策の安定性の重要性(ウペンドラ・トリパシー、インド・新再生可能エネルギー省次官)、風力発電が地域にもたらす雇用や利益効果を明確にするための地域専門家の育成の必要性(ソーヤー)、系統連系の保証と市場独占を回避することの重要性が指摘された(コーベリエル)。
さらに、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の新しい報告書が発表され、世界ですでに650万人の雇用が自然エネルギー分野で生まれていることが紹介された。機会があればこの報告書についてもいずれ紹介したい。
ところで、今回のCEMは、日本からは、田中良生経済産業大臣政務官が参加、省エネルギー技術のアピールを行った。また、住友電工や東芝などの企業も蓄電池のラウンドテーブルに積極的に参加していたようだ。しかし、世界で拡大する自然エネルギー・省エネルギー政策との論点の乖離は否めない。
日本では業界紙以外の報道がなくメディアもこの分野に関心がないのがわかる。国内のエネルギー政策議論だけではなく、日本の国際的な立ち位置をみると様々な論点がみえてくる。支局があるのだから、メディアももっと国際交渉における日本のエネルギー政策のあり方を報じ、関心を喚起すべきではないだろうか。
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